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連載Cocotame Series

ヒットの活かし方

マネスキンが来日で巻き起こした熱狂の舞台裏――洋楽ヒットを生み出すスタッフの挑戦【後編】

2024.03.18

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“0”から生み出された“1”というヒット。その“1”を最大化するための試みを追う連載企画「ヒットの活かし方」。

今回取り上げるのは、イタリア出身の新世代ロックバンド、マネスキン。昨年12月には、最新アルバム『ラッシュ!』を引っさげたワールドツアーの一環として、東京と神戸で開催された1万人規模の4公演が瞬く間にソールドアウトする人気ぶりを見せつけた。

ジャパンツアーの合間には、海外アーティストとしては珍しい、約2週間の長期に及ぶプロモーション活動も実現。「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)や「DayDay.」(日本テレビ系)への生出演も大きな話題を呼び、洋楽ロックのリスナーはもちろん、10~20代の幅広いファンを獲得している。

音楽の聴かれ方の変化から、洋楽離れが進んでいると言われる今の日本で、マネスキンが大反響を巻き起こしている理由とは? 彼らの国内活動を全力でサポートするソニー・ミュージックレーベルズのスタッフに話を聞いた。

後編では、来日時のプロモーション活動でのエピソードや今後の展開について語ってもらった。

  • 奥平裕紀プロフィール画像

    奥平裕紀

    Okudaira Hiroki

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 佐藤里沙プロフィール画像

    佐藤里沙

    Sato Risa

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 風岡涼太プロフィール画像

    風岡涼太

    Kazaoka Ryota

    ソニー・ミュージックレーベルズ

長期にわたるプロモーション活動が実現した理由

──(前編からつづく)マネスキンは、昨年12月のワールドツアーの一環となる来日公演を挟んで、11月29日から12月11日までの13日間にも及ぶ日本滞在が実現しました。テレビ出演や各種取材など、精力的にプロモーション活動を行なっていたのも印象的です。最近の洋楽シーンとしては、珍しい例ではないでしょうか?

奥平:はい。昔に比べると、海外アーティストが日本でプロモーション稼働してくれる機会も、本当に減っています。

――今回の長期にわたるプロモーション活動が実現したのは、どういった理由が大きかったのでしょうか。

佐藤:まず「SUMMER SONIC」で初来日した2022年に、アーティスト本人とマネジメントを含む本国のチームと、私たち日本のチームがしっかりと信頼関係を築けたことは大きかったと思います。日本のファンやメディアの皆さんのマネスキンに対する熱量の高さを肌で感じてもらえたことで、彼ら自身が日本をさらに好きになってくれました。その後のやり取りもすごくスムーズになり、日本のマーケットに対してとても協力的でした。

黒い服を着て語る佐藤里沙

奥平:実際、スケジュールを組むにあたって「このプロモーションは日本において重要です」という案を固めて、熱意を持って打診したことが良かったのだと思います。本国チームも日本というマーケットの重要性は十分に感じてくれていましたから。やはり、こういう提案は人と人との信頼関係で決まるものなので、我々の仕事を先方も高く評価してくれたのだと思います。

テレビ生出演と「THE FIRST TAKE」収録

――日本滞在のなかで、特に印象的だった出来事は?

奥平:やはりお茶の間へのインパクトという意味では、有明アリーナ公演直前の12月1日放送の「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)と、帰国日だった12月11日朝のワイドショー「DayDay.」(日本テレビ系)という2番組への生出演は、かなりの反響でしたね。

風岡:「ミュージックステーション」では「HONEY(ARE U COMING?)」を披露したのですが、出演後にはサブスクリプションサービスの楽曲再生数も急上昇しましたし、X(旧Twitter)でも“マネスキン”がトレンドの日本総合3位に入りました。注目度の高まりを実感しましたね。

佐藤:番組出演前の楽屋でもメンバーはみんなリラックスしていて、いつも通りワイワイ楽しそうにしていました。とても良いパフォーマンスができたと思います。

奥平:弊社スタッフの話では、「ミュージックステーション」のスタッフの方は「SUMMER SONIC」のマネスキンのステージに衝撃を受けていたそうで、それがきっかけで出演につながったのかもしれません。人の縁とタイミングが合致したのでしょうね。日本の音楽番組は何度もリハーサルを重ねるので、海外とはかなり勝手が違うのですが、その点においてもマネスキンのマネジメントは協力的で。日本のマーケットに対して真摯に向き合ってくれていました。

カーキ色の服を着て語る奥平裕紀

――音楽専門番組ではない「DayDay.」への生出演にも驚きました。

奥平:そうですね。そちらでも「HONEY(ARE U COMING?)」をパフォーマンスしたのですが、楽曲披露だけでなく、番組MCの皆さんとの軽いトークもあり、彼らの人柄も伝えられたのではないかと思います。合計で20分ぐらいの時間を割いていただき、初めてマネスキンを見た方にもインパクトを与えられたのではないかと。

面白かったのが、番組でマネスキンの紹介をする際、ローマで路上ライブをやっていた駆け出しのころの画像が出てきて、バックヤードでそれを見ていたメンバー4人が、すごく恥ずかしそうな顔をしていたことです(笑)。

佐藤:そういうところもまた、かわいらしいんですよね(笑)。

――ほかにも今回の来日中には、あらゆるメディアに登場していましたね。

奥平:新しい試みとして、「THE FIRST TAKE」にも挑戦してもらいました。「I WANNA BE YOUR SLAVE」と「HONEY(ARE U COMING?)」の2曲をアコースティックセットでパフォーマンスしたのですが、収録の前々日に神戸でライブがあって、その楽屋でずっと練習していたんですよ。彼らの音楽に対する生真面目さを、とても感じました。

MÅNESKIN - HONEY (ARE U COMING?) / THE FIRST TAKE

――海外アーティストがバンドで「THE FIRST TAKE」に出演するのもレアケースではありますね。

奥平:そうですね。おかげさまでどちらも再生数はミリオンを超えていますし、普段のバンドセットではない、アコースティックアレンジの魅力を伝えられたことも、次につながる試みになったと思います。

ファンの熱量をチームワークで次につなげたい

――もともと世界的に注目度の高いマネスキンですが、昨年のアリーナクラスでのジャパンツアーとそれに付随した長いプロモーション活動を経て、どんな成果を実感しましたか?

風岡:2022年の初来日の時点で既にコアなファンがついてくれていましたが、今回はファンの規模の面でも熱心さの面でも、さらなるブレイクスルーを果たしたことを実感しました。

奥平:海外アーティストのプロモーションで難しいところは、来日と来日の間の期間に、生の情報がどうしても途切れがちになってしまうことなんですね。リリースや新情報が毎月のようにあるわけでもないですし、やはり“体験”がないとファンのテンションもつづきにくい。

幸い、マネスキンの場合は既にコアファンも多くいて、2022年の初来日から1年以上のブランクはあったものの、我々のなかでは次の来日も見えていました。そこに合わせて、より規模感の大きなスケジューリングができたからこそ、さらに熱狂的なファンを増やすことができたのではないかと思います。

ステージに寝転びパフォーマンスするマネスキン

©︎Fabio Germinario

佐藤:ライブ会場で改めて実感したことは、最初にお話ししたように、彼らのアイドル的な人気が我々の想像以上に強いということでした。ロックのライブではあまりないことかもしれませんが、若い女性ファンが皆さん、すごくオシャレをしていて、目立つ方も多かったんですよ。

――ライブに気合いを入れてオシャレして行くと。

風岡:それは私も感じました。個人的に興味深いと思うのが、マネスキンのライブがファンにとっても自己表現の場になっていることですね。ほかのアーティストには珍しいマネスキンの特徴だと思います。

ボーダーの服を着て微笑みながら語る風岡涼太

奥平:日本のファンは若年層も多いと言いましたが、それはつまり、話題性を追って観に来てくれているグレーゾーンのお客様が多いということにもつながるんですね。そうなると今後は、これまでグレーゾーンだった人たちを、いかにコアファンへと導いていけるか。昨年の来日で盛り上がったファンの熱を、これからも冷まさないようにするのが自分たちの課題だと思っています。

――そのためには、どういう展開を考えていらっしゃいますか?

奥平:マネスキンは去年アルバムを発表したばかりですし、またしばらくリリースベースの展開は作りにくい状況にありますが、できるだけライブの機会を持ちたいですし、日本のファンに還元できるチャンスを多く作っていきたいです。本人たちはとても日本のファンのことを大事に思っていますし、マネジメントの皆さんの意識も高いので。

マネスキンのライブの様子

©︎Fabio Germinario

佐藤:去年の来日プロモーション時のエピソードなのですが、タワーレコード渋谷店でアルバム購入者特典の写真撮影会を100名のファンと行なったんです。その際、アーティストに接近しすぎないよう、ファンの方々には椅子に座っていただいて、その後ろにメンバーが立つ予定でいました。

ですが、マネジメント側から「それはマネスキンのスタイルではない。メンバーの間にファンに入ってもらって撮影したい」と言われました。それぐらいファンとのコミュニケーションを大事にしているバンドなんです。なので、その想いを大切に、これからもファンと近しい距離で何ができるかを考えて、ファンダムを大きくしていきたいと思いました。

風岡:それはマネスキンに限らず、洋楽アーティスト全般に言えることだと思うんです。今、多くの人にとって洋楽はもはやポップミュージックとして機能しておらず、ある種の特殊で高尚な趣味のように見られてしまっている。邦楽やK-POPとははっきりと一線を画されているような印象があります。ただ、マネスキンのようなアーティストには、価値観や背景のストーリーを丁寧に提示していくことで、その垣根を越えられるポテンシャルがあるとも感じています。

奥平:とは言え新しい突破口を開くためには、マネスキン1組だけでは難しい。洋楽全体の底上げも必要ですし、メディアの皆さんの協力も必要です。マネスキンの人気を一過性のブームに終わらせないよう、音楽面、ロックアイコンとしての存在面、あらゆる角度からアピールをつづけていきたいと思います。

文・取材:阿部美香
撮影:冨田 望

リリース情報

マネスキン『ラッシュ!』ジャケット画像

『ラッシュ!』
発売中
価格:2,640円
収録曲はこちら(新しいタブで開く)

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