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連載Cocotame Series

Room X

植松伸夫×ローレン・オルレッド:『FINAL FANTASY VII REBIRTH』のテーマソングに込められたメッセージとは?【後編】

2024.04.03

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異職の者同士が出会うことで生じる化学反応。そこから生まれる新たな作品やカルチャーについて、当事者たちが語らう対談連載「Room X」。

今回は、2月29日に待望のリリースとなったゲーム『FINAL FANTASY VII REBIRTH』(以下、FFVII REBIRTH)のテーマソング「No Promises to Keep」を手がけた作曲家・植松伸夫と、それを歌うローレン・オルレッドの対談をお届けする。

植松伸夫は「FINAL FANTASY」(以下、FF)シリーズの音楽の生みの親。『FFVII REBIRTH』は全3部作からなる「FINAL FANTASY VII リメイクプロジェクト」(以下、FFVII リメイクプロジェクト)の2作目にあたるが、前作『FINAL FANTASY VII REMAKE』(以下、FFVII REMAKE)につづき、テーマソングを担当している。

いっぽうのローレン・オルレッドは、映画「グレイテスト・ショーマン」でレベッカ・ファーガソン演じるオペラ歌手が歌う「Never Enough」の歌唱を担当。オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」では決勝で同曲を披露して話題を呼んだ。

後編では、ふたりの音楽的ルーツから、植松伸夫のゲーム音楽制作における信条、そして今後の展望まで、幅広く語ってもらった。

  • 植松伸夫プロフィール写真

    植松伸夫氏

    Uematsu Nobuo

    1959年生まれ、高知県高知市出身。これまでに全世界で1億本以上を売り上げたRPGの金字塔「FF」シリーズをはじめ数多くのゲーム音楽を手がける。フェイ・ウォンに楽曲提供をした「Eyes On Me」は1999年度 第14回日本ゴールドディスク大賞の「ソング・オブ・ザ・イヤー(洋楽部門)」を受賞。「植松伸夫 conTIKI」は植松伸夫がキーボード奏者を務めるバンドで、フランス、ベルギー、ノルウェーなどワールドツアーも行ない、好評を博す。

  • ローレン・オルレッドプロフィール写真

    ローレン・オルレッド

    Loren Allred

    1989年生まれ、アメリカ・ペンシルバニア州出身。オスカー賞ノミネート、グラミー賞受賞の映画「グレイテスト・ショーマン」のサウンドトラック、マルチ・プラチナ・ソング「Never Enough」の驚異的なボーカルパフォーマンスで賞賛を得たシンガーソングライター。2022年4月、「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出演、「Never Enough」を披露しゴールデン・ブザーを獲得。マイケル・ブーブレとのコラボレーションのほか、アンドレア・ボチェッリとデイヴィッド・フォスターのワールドツアーにも参加。

ルーツにあるのはロックの実験精神

──(前編からつづく)ローレンさんは、バラードだけでなくさまざまな曲を豊かな表現力で歌われていて、本当にすばらしいダイナミクスの幅をお持ちですね。

ローレン:ありがとう。私は、歌は自己満足ではなく解釈だと思っています。歌詞をどう解釈して、ストーリーを皆さんにどう伝えるかを大切にしています。

──ローレンさんは、どのような音楽的ルーツを辿ってこられたのでしょう?

ローレン:両親はふたりともクラシックの音楽家で、家ではいつもクラシック音楽が流れていました。あるとき私は、いわゆる“ディーバ(歌姫)”と呼ばれるアーティストたちの音楽を発見して「これだ!」と思い、彼女たちの楽曲を学ぶように。

そのあとは、大学でミュージカルシアターを1年間学んで、バークリー音楽大学に移ってからはコンテンポラリーポップを勉強して……そうやって体験して学んできたすべてを使って歌っています。

椅子に座りインタビューに答えるローレン・オルレッド

──これまでに得た多様な音楽経験が、ローレンさんの表現力につながっているのですね。植松さんは“プログレ博士”を自認されるほどプログレッシブ・ロックがお好きとのことですが、今改めて、ご自分の音楽的ルーツを問われたらどのような答えになりますか?

植松:やっぱりロックじゃないでしょうか。僕は音楽について専門的な勉強もしてこなかったし、楽器も習っていなかったけど、とにかく音楽を聴くのが好きでした。レコード屋さんの店員とか、どんな職種でも良いから音楽関係の仕事に就きたいと思っていましたね。

ただ、曲を作るにしたって、クラシック音楽の交響曲とか、そんなの自分には書けるわけないって気づくわけです。でもロックならコードを3つ覚えただけで音楽が作れちゃうってことを知って、「これなら自分にもできそうだ!」と始めて、今に至るという。

ローレン:ああ、だから植松さんはいつもポニーテールなんですね(笑)。

植松:いや、この髪型はロックミュージシャンを気取ってるわけじゃなくて、単に床屋さんに行くのが嫌いなだけ(笑)。例えば『FFVII』の「片翼の天使」という曲がありますが、あれはロックだと思います。オーケストラでロックをやるとどうなるのか? という実験でした。毎朝会社に行って、思いついたフレーズを2小節ぐらい作る。3週間ほどそれを繰り返して、溜め込んだフレーズを組み合わせていきました。そうしてでき上がったのが「片翼の天使」です。この“実験”というプロセスが、まさにロックでしょう。

自身の髪型について笑顔で話す植松伸夫

──当時、ゲームから人間の声がするというのは衝撃でした。ゲーム機の容量が足りなくて、それこそ実験的な工夫をされたのですよね。

植松:スタジオで録ったコーラスをものすごく圧縮して、切ってつないだものを、内蔵音源として取り込みました。だから、厳密に言うと音質はすごく悪い。でも、ラストバトルで混声合唱が聞こえてきたらびっくりするでしょう?

──今回、『FFVII REBIRTH』の「No Promises to Keep」においても、何か実験的な試みをされましたか?

植松:実験っていうほどではないけど、オーケストラバージョンとは別に、バンドバージョンを作ってみました。チェロを入れたりして、これまでやったことのない楽器編成を試してみたり。理由は“やってみたかったから”っていう、単純にそれだけだね。

──現在は、ゲーム音楽で合唱やオーケストラの音が聞こえることも当たり前になりましたが、植松さんはそういった状況についてどう感じていますか?

植松:ゲーム音楽を作りやすくなったのは事実でしょう。ゲーム機がどんどん進化していって、スタジオで録音した音をそのまま鳴らせる時代になりましたが、以前はゲーム機の容量や機能の制約がいっぱいあって、やりたいことができませんでした。

でもね、やりたいことが思うようにできないほうが、面白いことができる。制約があればあるほど、人って絶対、頭を働かせるんです。どうやったら面白いことができるか、知恵を使う。だから、今は何でもできる環境なのに、みんな同じような音楽しかつくれないという、不思議な現象が起きていますよね。もっと自由な音づくりができるはずなのに。

真剣な表情で語る植松伸夫

──では、ローレンさんとのリモート録音も、制約があったからこそ良いものがつくれたと。

植松:制約だらけだったね。

ローレン:そうね、とてもクリエイティブな環境だったと思います(笑)。

日本語でも歌ってみたい

──「FF」シリーズは日本のみならず世界中で愛されていますが、ローレンさんの歌声も同じようにファンの耳に届いているのではないでしょうか。

植松:「Distant Worlds: music from FINAL FANTASY」という「FF」シリーズのオーケストラコンサートがあって、ずっとワールドツアーをつづけています。もう15年以上、世界各地で公演しているってすごいですよね。今回の『FFVII REBIRTH』もワールドツアーが発表されています。

もしかしたら、それらで「No Promises to Keep」をフィーチャーできるかもしれません。僕自身は、最近はあまりツアーに参加できていませんでしたが、ローレンさんが出てくれるんだったら、ひさびさに出ちゃおうかな。

ローレン:それが実現したら私の夢も叶います!

微笑みながら語るローレン・オルレッド

──共演と言えば、今回のローレンさんの来日では、YouTubeチャンネルの「THE FIRST TAKE」の収録で「No Promises to Keep」を共演されたそうですね。

ローレン:はい、植松さんがキーボードを弾いてくださいました。日本にもまたぜひ戻ってきて、植松さんと一緒に何かできたらうれしいです。

植松:ぜひやりましょう!

Loren Allred × 植松伸夫 conTIKI - No Promises to Keep / THE FIRST TAKE

ローレン:実はもうひとつ……「No Promises to Keep」を日本語で歌いたいという夢もあって。私は英語以外の言語でも歌っていて、フィリピンのタガログ語で歌ったり、アンドレア・ボチェッリとはイタリア語で共演しました。ですから、この歌も日本語で歌えたらと。

植松:それはすごい! 「No Promises to Keep」の原詞は『FFVII REBIRTH』のストーリー&シナリオを担当した野島(一成)くんが書いたのですが、実は、そのまま日本語で歌えるんです。初めから英訳することが決まっていたから、すぐ翻訳に回しちゃったんですけど、ある日偶然、野島くんの書いた原詞でこのメロディを歌えることに気がついて。それを彼に言ったら「そのように書きました」と。

ローレン:まあ! さっそく日本語で練習しなくちゃ。

次世代へと受け継がれる植松伸夫の音楽

──「FFVII リメイクプロジェクト」では、植松さんはテーマソングの作曲のみを担当されていますが、ゲーム内のBGMなどでは、ご自身が作曲した曲がリメイクされているわけですよね。それについてはどう思われていますか?

植松:原作の『FFVII』で作った曲はいろいろアレンジして使ってもらってるけど、僕もそれら全部を聴いているわけではないんですよ。27年前に生まれた『FFVII』の時点で、「僕は今、こう思ってる」ということを曲として発信したわけじゃないですか。あとはそれを、みんなが着せ替え人形にしてくれるわけです。だから僕は「立派になったなあ」って、子どもの成長を喜ぶ親みたいな気分になっちゃうんだよね(笑)。

ローレン:それって、とても美しい考えですよね。次の世代にオープンな気持ちで任せてしまう。彼らとあえて競争しようとは思わないところが、本当に素敵だと思います。

──それでは最後に、おふたりから『FFVII REBIRTH』をプレイする皆さんへメッセージをお願いします。

植松:楽しんでもらいたいっていうのが一番。僕は1曲だけの参加だけど、非常に満足できる作品ができたと思うので、ローレンさんの歌声とともに楽しんでいただきたいです。世界中に「No Promises to Keep」と『FFVII REBIRTH』が広がっていくと良いですね。

ローレン:とにかくわくわくしています。“エアリスが歌う!”ということを知って、皆さんもきっとわくわくしてくれているんじゃないかな。私も『FFVII REBIRTH』を多くの人に体験してほしい。今回コラボレーションできて、本当に光栄です。

植松伸夫×ローレン・オルレッド2ショット写真

文・取材:加藤綾子
撮影:干川 修
通訳:松田京子

リリース情報

『No Promises to Keep (FINAL FANTASY VII REBIRTH THEME SONG)』ジャケット写真
<シングル>
「No Promises to Keep (FINAL FANTASY VII REBIRTH THEME SONG) 」
[SA-CD Multi Hybrid Single]
発売日:4月3日(水)
※同日より通常配信、ハイレゾ配信に加え、360 Reality Audio、Dolby Atmosによる立体音響での配信を開始(立体音響は01と02のみを配信)
価格:2,750円

「No Promises to Keep (FINAL FANTASY VII REBIRTH THEME SONG)」アナログ盤ジャケット写真
<アナログ>
「No Promises to Keep (FINAL FANTASY VII REBIRTH THEME SONG)」
[12inch Vinyl Single]
発売日:7月10日(水)
価格:3,850円

【収録内容】

  1. 01.No Promises to Keep (FINAL FANTASY VII REBIRTH THEME SONG)/ LOREN ALLRED
  2. 02.No Promises to Keep [Band ver.] / LOREN ALLRED & NOBUO UEMATSU conTIKI
  3. 03.No Promises to Keep 【Instrumental / Off Vocal】
  4. 04.No Promises to Keep [Band ver.] 【Instrumental / Off Vocal】

 
※スクウェア・エニックスより4月10日に発売予定の『FINAL FANTASY VII REBIRTH Original Soundtrack ~Special edit version~』『FINAL FANTASY VII REBIRTH Original Soundtrack』に収録される「No Promises to Keep LOVELESS Ver.」とは別バージョン

(P) 2024 SQUARE ENIX CO., LTD.
(P) 2024 Sony Music Labels Inc.
(C) SOLID / SQUARE ENIX
(C) SQUARE ENIX
CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA / ROBERTO FERRARI

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