植松伸夫×ローレン・オルレッド:『FINAL FANTASY VII REBIRTH』のテーマソングに込められたメッセージとは?【後編】
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異職の者同士が出会うことで生じる化学反応。そこから生まれる新たな作品やカルチャーについて、当事者たちが語らう対談連載「Room X」。
今回は、2月29日に待望のリリースとなったゲーム『FINAL FANTASY VII REBIRTH』(以下、FFVII REBIRTH)のテーマソング「No Promises to Keep」を手がけた作曲家・植松伸夫と、それを歌うローレン・オルレッドの対談をお届けする。
植松伸夫は「FINAL FANTASY」(以下、FF)シリーズの音楽の生みの親。『FFVII REBIRTH』は全3部作からなる「FINAL FANTASY VII リメイクプロジェクト」の2作目にあたるが、前作『FINAL FANTASY VII REMAKE』(以下、FFVII REMAKE)につづき、テーマソングを担当している。
いっぽうのローレン・オルレッドは、映画「グレイテスト・ショーマン」でレベッカ・ファーガソン演じるオペラ歌手が歌う「Never Enough」の歌唱を担当。オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」では決勝で同曲を披露して話題を呼んだ。
前編では、「No Promises to Keep」をローレン・オルレッドが歌うことになった経緯や、レコーディングの様子について語ってもらった。
植松伸夫氏
Uematsu Nobuo
1959年生まれ、高知県高知市出身。これまでに全世界で1億本以上を売り上げたRPGの金字塔「FF」シリーズをはじめ数多くのゲーム音楽を手がける。フェイ・ウォンに楽曲提供をした「Eyes On Me」は1999年度 第14回日本ゴールドディスク大賞の「ソング・オブ・ザ・イヤー(洋楽部門)」を受賞。「植松伸夫 conTIKI」は植松伸夫がキーボード奏者を務めるバンドで、フランス、ベルギー、ノルウェーなどワールドツアーも行ない、好評を博す。
ローレン・オルレッド
Loren Allred
1989年生まれ、アメリカ・ペンシルバニア州出身。オスカー賞ノミネート、グラミー賞受賞の映画「グレイテスト・ショーマン」のサウンドトラック、マルチ・プラチナ・ソング「Never Enough」の驚異的なボーカルパフォーマンスで賞賛を得たシンガーソングライター。2022年4月、「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出演、「Never Enough」を披露しゴールデン・ブザーを獲得。マイケル・ブーブレとのコラボレーションのほか、アンドレア・ボチェッリとデイヴィッド・フォスターのワールドツアーにも参加。
1997年に発売されたRPG『FINAL FANTASY VII』(以下、FFVII)を全3部作でリメイクするリメイクプロジェクトの2作目。原作の『FFVII』は、CGとイラストレーションが融合した描写や、植松伸夫による音楽、衝撃的なストーリー展開、魅力あふれるキャラクターといった要素で高く評価され、大ヒットを記録。2020年にリメイク1作目の『FFVII REMAKE』が発売された。
(C) SQUARE ENIX
CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA / ROBERTO FERRARI
──「No Promises to Keep」は『FFVII REBIRTH』のテーマソングであり、ゲームの主要な登場人物であるエアリスが歌う劇中歌でもあります。今回、この歌をローレンさんが歌うことになった経緯を教えていただけますか。
植松:「FF」シリーズのテーマソングは毎回、企画会議で歌うアーティストを決めているのですが、今作では最初の会議で野村(哲也)※くんが「この人はどうだろう?」って聴かせてくれたのが、ローレンさんの声でした。
※野村哲也氏
『FFVII REBIRTH』のクリエイティブディレクター。『FFVII REMAKE』ではディレクターとして参加。原作の『FFVII』ではキャラクターデザインを担当した。
──野村さんはなぜローレンさんを紹介したのでしょう?
植松:シンプルにローレンさんの声が気に入って、作品の世界観に合うと感じたんじゃないかな。野村くんの美意識は、昔から僕らもわかってて。彼が気になるものって、だいたい僕らの感覚にもマッチするんですよ。
ローレンさんと実際にレコーディングしたのが2年前のことだから、会議自体はもう、今から3年ぐらい前……もしかしたらもっと前かもしれません。いずれにせよ会議のときには既にエアリスが歌う歌ということは決まっていました。
──ローレンさんは、「No Promises to Keep」のデモ音源を聴いたときどんな印象を持ちましたか?
ローレン:まずはメロディに惚れ込みましたね。初めて聴いたときから、あの「エアリスのテーマ」※が思い出されて……。歌詞も美しくて、とてもわくわくしました。高校時代にお付き合いしていた人が「FF」シリーズをよくプレイしていたから、ゲームの世界観は彼を通じて少し知っていたんです。
※「エアリスのテーマ」
原作の『FFVII』において重要なシーンで流れるエアリスのテーマ曲。
──その後、ローレンさんとの制作はどのように進んでいったのでしょうか。
植松:普通だったら、ローレンさんに日本に来てもらうか、僕がアメリカに行くかのどちらかですけど、今回は日本とアメリカをネットワークでつないで、リモートでレコーディングすることになりました。だから、実はローレンさんと対面するのは今日が初めてなんですよ。
──そうだったんですね! では、デモ音源や録音データのやり取りを何度か繰り返して、少しずつ完成されたのでしょうか。
植松:いや、レコーディングは1日だけでした。日本とアメリカは時差があるから、レコーディングが終わったころには、もう向こうは午前2時だったそうで(笑)。
ローレン:アメリカでは通常、曲をいくつかのパートに分けてレコーディングしていくのですが、今回は曲全体を何度か通して録る方法をリクエストされました。ただ、「No Promises to Keep」は難しい曲で、何度も通して歌うと喉が疲れてしまうのと、通信環境が安定せずスムーズにいかなかったこともあって……まずはいつも通り、パートごとに録ってつないだ音源を植松さんに送りました。
植松:そうでしたね。でも日本でも、普通はパートごとに分けて録っていきますよ。初めに全部を通して録ってもらったのは、ローレンさんがどんな起伏をつけていくのかを把握したくて。そのうえで、少しずつ録っていこうと考えていました。
ローレン:ああ、OK! 実は当時「10回も通して歌うのは厳しいよ!」と思っていたのですが、今やっと誤解が解けました(笑)。てっきり、これが“Work Hard”な日本流のレコーディングなのかと……。
──植松さんからローレンさんには、どんなリクエストをされましたか?
植松:だいぶ前のことだから細かくは覚えてないんだけど、曲の最後の盛り上げ方にはこだわったかな。もともとの譜面より高い音を出してほしいとお願いしたと記憶してます。
ローレン:私が一番覚えているのは、植松さんが「アーティストとして自由に歌ってほしい」と言ってくださったこと。あの言葉は本当にうれしかった。
植松:だって自由に歌ってもらわないと、ローレンさんにお願いした意味がないですもんね。
──エアリスというキャラクターは、「エアリスのテーマ」の曲のイメージと同様に儚げな印象があります。また、苦悩する主人公・クラウドを受け入れ、導く、温かな人物でもありますね。今回の「No Promises to Keep」は、そんなエアリスの芯の強さを表現しているとのことですが、それはなぜでしょうか?
植松:いやあ、あの「エアリスのテーマ」……♪タンタンタン~、タンタンタン~♪っていうメロディに歌詞をつけたら、もうベタすぎるし、誰もそんなことは望んでないだろうと思ってね。「No Promises to Keep」でも、インストゥルメンタルのパートにはあのメロディを少し入れてますけど。
「No Promises to Keep」のあのキー、あの音の高さをエアリスがシャウトするってことは、よっぽど強い思いがあるからだと考えたんです。僕も作曲しながら、「エアリスがこの高さまで歌い切ったら、みんなびっくりするだろうな」「そんなに訴えかけたいことがあるんだって、みんなもわかってくれるんじゃないかな」と思いました。『FFVII』のファンもきっと、エアリスがあんなに力強く歌うとは思わないだろうなあって。
No Promises to Keep (FINAL FANTASY VII REBIRTH THEME SONG) Music Video/ローレン・オルレッド× 360 Reality Audio
──リメイク1作目の『FFVII REMAKE』のテーマソング「Hollow」との関係は意識されましたか?
植松:「Hollow」は、これまでの「FF」シリーズにはない雰囲気の歌を作ろうっていうのがみんなの意見だったので、ちょっとロックっぽい路線でやってみました。じゃあ今回は、“いわゆるバラード曲にしてみましょう”ということになって。得意なんですよ、バラード。僕はああいうの、悩まずにスラスラ書けちゃう(笑)。
ローレン:バラードがスラスラ書けるってすごいですね。私にはとても無理! 歌うのは良いんだけれど。
──ローレンさんは、映画『グレイテスト・ショーマン』でも登場人物のキャラクターを演じながら歌い、多くの人に感動を与えました。今回、「No Promises to Keep」を歌うときはどんなことを意識しましたか?
ローレン:まさに、“エアリスというキャラクターを演じること”を一番の使命だと考えていました。エアリスというキャラクターの性格、クラウドとの関係……彼女の感情には、いつも愛という要素が深く絡んでいて。こういった、キャラクターになりきれる仕事は大好きなので、とても楽しかった! とにかくエアリスになりきることを最優先で歌いました。
Loren Allred - Never Enough / THE FIRST TAKE
──ローレンさん自身は、エアリスをどういうキャラクターだと思いますか?
ローレン:自由で自立心があって、でも思いやりもあって、主人公のクラウドに落ち着きを与える……そういう役割を持っているんじゃないかしら。周りからとても愛されているキャラクターですよね。
植松:原作の『FFVII』のエアリスは、とにかく薄幸のイメージがあったんですよね。ディスク2枚目にして“ええ、メインキャラクターなのにこんな初期でいなくなっちゃうのかっ!”て、作った自分たちも思ってたなあ。今回の『FFVII REBIRTH』でどういう展開になるのかは当然伏せますが、この曲によって「FF」シリーズファンの皆さんも、エアリスというキャラクターに対する印象が変わるかもしれないですね。こんなにも強い一面を持った人物なんだって。
文・取材:加藤綾子
撮影:干川 修
通訳:松田京子
<シングル>
「No Promises to Keep (FINAL FANTASY VII REBIRTH THEME SONG) 」
[SA-CD Multi Hybrid Single]
発売日:4月3日(水)
※同日より通常配信、ハイレゾ配信に加え、360 Reality Audio、Dolby Atmosによる立体音響での配信を開始(立体音響は01と02のみを配信)
価格:2,750円
<アナログ>
「No Promises to Keep (FINAL FANTASY VII REBIRTH THEME SONG)」
[12inch Vinyl Single]
発売日:7月10日(水)
価格:3,850円
【収録内容】
※スクウェア・エニックスより4月10日に発売予定の『FINAL FANTASY VII REBIRTH Original Soundtrack ~Special edit version~』『FINAL FANTASY VII REBIRTH Original Soundtrack』に収録される「No Promises to Keep LOVELESS Ver.」とは別バージョン
(P) 2024 SQUARE ENIX CO., LTD.
(P) 2024 Sony Music Labels Inc.
(C) SOLID / SQUARE ENIX
(C) SQUARE ENIX
CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA / ROBERTO FERRARI
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