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アンジェラ・アキが語る、ミュージカル音楽作家になったわけ【前編】

2024.05.14

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シンガーソングライターとして第一線で活躍していたアンジェラ・アキが無期限活動停止を発表してから10年。このほど、ミュージカル音楽作家として本格始動し、全楽曲を担当した舞台が幕開けした。

そんな彼女に、2014年にすべてを止めて渡米したころの気持ちから、自身が手がけた初の日本語でのミュージカルが上演された現在の心境まで、アメリカとのリモートインタビューで聞いた。

アンジェラ・アキ プロフィール画像

アンジェラ・アキ Angela Aki

徳島県出身。日本人の父親とイタリア系アメリカ人の母親を持つ。2005年にシングル「HOME」でメジャーデビュー。同曲のほか、『第75回NHK全国学校音楽コンクール 中学生の部』の課題曲となった「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」など、多数の代表曲を持つ。2014年、ミュージカル音楽作家を目指して留学するため、無期限活動停止を発表。2023年11月、ミュージカル『この世界の片隅に』の音楽担当として日本での活動再開を発表。2024年2月、同作から自身で歌唱した「この世界のあちこちに」のリアレンジバージョンを配信リリース。同曲を収録するアルバム『アンジェラ・アキsings「この世界の片隅に」』が発売中。ミュージカル『この世界の片隅に』は5月30日まで東京都・日生劇場で上演後、北海道、岩手県、新潟県、愛知県、長野県、茨城県、大阪府、広島県を回り、7月28日までつづく。

記事の後編はこちら:アンジェラ・アキが語る、ミュージカル音楽作家になったわけ【後編】

すべてを止めてアメリカへ――その裏にあった揺るぎない信念

2014年8月、日本武道館で迎えた全国ツアー『アンジェラ・アキ Concert Tour 2014 TAPESTRY OF SONGS -THE BEST OF ANGELA AKI』のファイナル公演をもって、シンガーソングライターとしての無期限活動停止に入ったアンジェラ・アキは、ミュージカル音楽作家を目指して渡米し、南カリフォルニア大学に入学した。

アンジェラ・アキ武道館2014 トレーラー映像

彼女が渡米を決断するきっかけは、友人であるカナダ生まれの作家、アンドリュー・デイビッドソンが2008年に出版し、世界中で翻訳されたベストセラー小説『ガーゴイル 転生する炎の愛』にあった。

「アーティスト活動を停止する2年前くらいに、彼がこの作品を一緒にミュージカル化しようって声をかけてくれて。2年くらいかけて作ってたんですけど、ことごとく壁にぶち当たって。自分の今の技量では成し遂げられないなっていうのを痛感しました。

才能があるとか、ないとかそういうことじゃない、単純にスキルの問題だったんですね。だから、これはまず、しっかりとした教育を受けるためにも音大に入らないといけないなと思って。

そこで、日本で活動しながら、日本の音大に入ろうかなというのも考えたんですけど、自分が教室にいることによって、場の空気がおかしくなってしまったら、せっかく一生懸命に頑張ろうとしている人たちにも迷惑だし、これは自分のことを誰も知らないところに行って、一から学び直すしかないなと思ったんです。

たまたま知り合いだったアメリカ人のプロデューサーが、ロサンゼルスの大学を勧めてくれて、そこで学ぶことを決心しました。自分がやりたかったミュージカルの音楽作家になるためには、いったんすべてを止めて、学生になるしかなかったんですよね」

アンジェラ・アキ「HOME」Music Video

日本人の父とイタリア系アメリカ人の母の間に生まれたアンジェラ・アキは、2005年9月に、幼少期を過ごした徳島への思いを込めた1stシングル「HOME」でメジャーデビュー。翌年には日本武道館で史上初となるピアノ弾き語りによる単独ライブを開催し、同年の末には『NHK紅白歌合戦』にも出場した。

2007年に働きながら歌手を目指していたアメリカ・ワシントンD.C.での青春時代の思いを詰め込んだ5枚目のシングル「サクラ色」がヒットし、2008年には『NHK全国学校音楽コンクール 中学の部』の課題曲として書き下ろした8枚目のシングル「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」がロングセールスを記録。今でも歌い継がれる合唱の定番曲となった。

アンジェラ・アキ 『手紙 ~拝啓 十五の君へ~ 2014』

そんな順風満帆な音楽活動のすべてをいったん止めることに迷いはなかったのだろうか。

「いろんな葛藤がありました。自分のスタッフたちもいたし、音楽を通して同じ目線でつながってるリスナーもたくさんいた。でも、自分の心情を話したら、みんなが自分の強い思いをわかってくれて、背中を押してくれたんですね。それに、自分のなかでは、ミュージカル音楽作家にならないといけないっていうか、私はこれをやるために生まれてきたのかもしれないというぐらいの強い信念があったんです。

例えば、日本でのファンクラブをキープしながら、1年に1回ライブをするために帰国して、日本での活動をなんとなく継続しながら勉強するっていう、経済的に安全な道もあったんだけど、そうじゃなくて、一回すべてを手放すしかないと思ったんです。すごく迷いましたけど、最後は潔く、中途半端にやるくらいならやらないほうが良いし、やるなら全部で飛び込もう、と」

刺激と充実感に満ちたアメリカでの音大生の日々を振り返る

アメリカの大学には2014 年秋から2年間通い、その後の3年間は別の大学でもオンラインで受講。計5年間を勉強に費やしたが、音大生としての日々を振り返る彼女の目はキラキラと輝いていて、満面の笑みを湛えている。

「すっごく充実してましたね。日本で自分が何をやってたかを誰にもひと言も言わずにいたんですけど、本当に楽しくて。20歳年下の子たちとテスト勉強を一緒にしたりとか、仲良くなっていろんな話をしたり。みんなでご飯に行くと、『あ、みんなはまだ未成年だからビールは飲めないんだ』っていうような違和感はところどころであったんだけど(笑)。

“私は音楽家になるんだ”っていう、とってもピュアでフレッシュなエネルギーに囲まれて、自分自身も遜色のない真っ直ぐなエネルギーとマッチしたんですね。ものすごく波長があったし、みんなと同じバイブレーションのなかで2年間過ごしてきた感じがあった。本当に才能のある素晴らしい人たちにも出会えたし、とっても刺激的な2年間でしたね」

2016年には、東京ディズニーシーの新ミュージカルショウ『アウト・オブ・シャドウランド』の楽曲の作詞を依頼され、ブロードウェイミュージカル『ファン・ホーム』でトニー賞5部門を受賞し、ほかの作品でもグラミー賞、ピューリッツァー賞を受賞している作曲家、ジェニーン・テソーリとの制作に挑んだ。

「アメリカで勉強しているときにお話をいただいたんですけど、ジェニーンはブロードウェイミュージカル界の作曲家のなかでトップ3に入るくらいすごい人なんですよ。今でもあり得ないなと思うくらい、信じられないオファーで。

彼女とミュージカルを作ることによって、彼女の脳みそのなかを1年間、ほじくり回せました(笑)。本当に、作品に関係ない質問もいっぱいしたし、彼女が当時まだ製作中だった『ファン・ホーム』のオープニングナイトにも行ったし、その打ち上げでも彼女たちと一緒に過ごさせてもらって。ブロードウェイのレベルを身近で知ることができた、本当に貴重な体験でした」

日本での音楽活動再開には不安があった

音楽大学の学生として、刺激にあふれた日々を過ごすなかで、シンガーソングライターのアンジェラ・アキとして人気を博した日本での日々を思い起こすことはなかったようだ。

「逆に、普通の人になろうと思ってたから、必要以上にニュースなども見ずに、日本の楽曲にもほとんどふれずにいました。昨年、日本での活動を再開しようってなったときも、自分をもらってくれるレコード会社、どこかあるかな……って。10年も日本から離れてて、もう誰も自分の音楽を知らんし、みたいな。

たまに田舎の親戚から、『うちの子どもが卒業式で“手紙”歌ったよ』って連絡がくるんですよ。でも、それは徳島だから歌ってくれてるのかな、徳島最高って思ってました(笑)。本当に、謙遜とかじゃなくて、全然知らなかったんです。

アンジェラ・アキ - 手紙 ~拝啓 十五の君へ~ / THE FIRST TAKE

今年、『THE FIRST TAKE』を撮りにいったときに、スタッフの方々に、新曲だけでなく、今15歳の中学生の子たちと『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』もやってくださいって言われたんです。でも、『今の中学生は“手紙”を絶対知らんでしょ』って言って。そこで初めて知ったんですよ。いやいや、今の中学生も歌ってるんですよ、これを、みたいな。

だって『手紙~拝啓 十五の君へ~』をリリースしたときに生まれた人たちじゃないですか。『今でも歌ってくれてるの?』って。この1年でいろんな発見がありましたね」

後編では、ミュージカル音楽作家としての第一歩を踏み出した喜びを語る。

後編につづく

文・取材:永堀アツオ

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