ねぐせ。:「ずっと好きだから」つづくバンド原点――思い出の地から見えてくる4人の姿②
2024.08.07
今年6月に結成わずか3年10カ月で初の日本武道館単独公演をソールドアウト、大成功させた4人組ロックバンド“ねぐせ。”。
彼らの原点であり、ホームである名古屋新栄のライブハウス「RAD SEVEN」(ラッド セブン)と、音楽スタジオ「studio VETIX」(スタジオ べティックス)での、現在につながる思い出のエピソードを語る。
ねぐせ。 neguse.
(写真左から)しょうと(Ba.)、りょたち(Vo./Gt.)、なおと(Dr.)、なおや(Gt.)からなる名古屋で結成された笑顔がモットーの4ピースバンド。2020年8月27日に結成され、10月から活動を開始、11月に初の有観客ライブに出演した。2022年にリリースされた「グッドな音楽を」はTikTokでの総再生回数9億超え、10週連続チャートインを果たした。2024年6月には初の日本武道館単独公演を開催しチケットはソールドアウト。8月7日リリースの1st EP「愛と哀のファイト!」収録の楽曲「ずっと好きだから」は、“2024 夏の高校野球応援ソング”/『熱闘甲子園』のテーマソングに起用されている。
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――6月に開催された日本武道館公演。そのMCでとても印象的だったのが、日本武道館のステージセットのエピソードです。セットの床を市松模様にカラーリングしたのは、ねぐせ。が育った“始まり”のライブハウス、名古屋・新栄「RAD SEVEN」と同じにしたかったから。どんなライブでも、必ず「from新栄RAD SEVEN、ねぐせ。です」というフレーズで自己紹介されていますよね。
りょたち:はい。「RAD SEVEN」こそ僕たちのホームだから、そのホームの感覚で武道館にも立ちたかったんです。武道館ワンマンが決まった当初から、そうしたいと考えていました。本物の「RAD SEVEN」の床は、あんなに綺麗じゃないんですけど(笑)。
なおと:ねぐせ。を結成した2020年はコロナ禍だったので、ずっと配信でしかライブができなかったんですけど、お客さんの前で一番最初にちゃんとライブをした場所が「RAD SEVEN」だったんです。
――まさに“始まりの場所”ですね。最初のステージのことは、覚えていますか?
りょたち:はい、めっちゃ覚えてます。今でも僕たちのことを気にかけてくださっている「RAD SEVEN」の店長・長尾(健太郎)さんという方がいらっしゃるんですけど、ライブが終わって長尾さんに、「どうでしたか?」って聞いたら、「何がしたいかわからんわ」って言われたんです。
なおや:僕はそのとき、まだねぐせ。には加入してなかったんですけど、そのイベントに、たまたま友達が出演していたので、観に行ってたんですよ。そうしたら、なんかノリで集まったバンドが、間違って出ちゃったのかな? って思うようなステージで。まだライブハウスで声を出しちゃいけない時期なのに、「みんな元気ないんじゃない? ちょっと元気出してイェーイ! ってやってみよか!」みたいなことを言ってて、僕でもほんとに大丈夫か? このバンドって思いましたから(苦笑)。
しょうと:ライブハウスって何したら良いか、自分たちもわかってなかったんよ(笑)。
なおと:しかも、あのとき、一緒にやろうと誘ってくれた同い年のバンドが、めちゃくちゃ良い、強いバンドだったんです。だからこそ必死だったし、なおさら長尾さんに言われて、喰らうものがありましたね。
しょうと:僕たちは、ちゃんと良いライブにしようと思って立ったステージだったから。
なおや:たぶん、お客さんは全員友達だったんだろうけど、客席にいた僕からすると、初ライブなのにこんなにいっぱいお客さん呼べるバンドいたんだ! っていう驚きはありましたね。
なおと:チケットの取り置きだけで、30~40人いたからね。「RAD SEVEN」ですごい話題になっていました(笑)。
――逆に、自分たちとしては一生懸命にやった初ライブに厳しいダメ出しをされたことが、その後のねぐせ。の成長にも繋がっていったのではないでしょうか?
なおと:はい、そうですね。
りょたち:ライブのやり方については、近場のバンドを見て、良いところを真似していきました。
しょうと:あと、まずはしっかりとスタジオで、ライブを良くするための練習をめちゃくちゃしようと。
なおと:そうそう。必ず、壁に鏡がある部屋を取って、ひたすら鏡の前で、自分たちがどういう演奏をしているのかをチェックしましたね。
――あとは、それをどうお客さんに見せれば良いかですよね。
なおと:そうなんです。なので、とにかく練習して、ライブにもたくさん出ようと、めちゃめちゃ営業しました。正直、結成してすぐのバンドが、ほかのバンドのライブに誘ってもらえるほど甘くないので、サーキットライブの主催に直接会いに行って、僕らも出たいです! と意思を伝えて。
まだ音源も出してないし、ライブも観てもらってはいないけど、僕らなら入場規制をかけられます! とか、思いっきり大口を叩いて出してもらったら、本当にちゃんと規制がかかったんですよ。それがきっかけで、いろんなサーキットに呼んでもらえるようになりました。
――なおやさんが加入されたのは、そのころですか?
なおや:はい。2021年の春からサポートをやっていて、正式メンバーになったのは2021年の8月です。
しょうと:いろんなライブに呼んでもらえるようになったのも、ねぐせ。のライブがめっちゃ変わったからで。それは、なおやが入ってくれたことも大きかったんですよ。なおやはバンド歴も長かったから、パフォーマンスもカッコ良いんですよ。なおやがカッコ良いから、自分たちもカッコ良くならんと! という気持ちになれたんですよね。まぁ、今はなおやより、僕のほうが断然カッコ良いですけど!(笑)
一同:(笑)
愛知県名古屋市・新栄にある、RAD CREATION系列の店舗として2016年4月にオープンしたライブハウス。フロアの最大収容人数は180人で、ロック、ポップス、アコースティック系を中心に、地元バンドからツアーバンドまで熱気あふれるライブが開催されている。
――皆さんが練習に励んでいたという名古屋の音楽スタジオ「studio VETIX」も、ねぐせ。の“始まりの場所”と言えますね。
なおと:はい。「studio VETIX」は僕の父親がやっているスタジオで、2店舗あるうちの鶴舞店で結成当時からずっと練習していたんです。インディーズ時代にミニアルバムを3枚出しているんですが、2021年の1st「ハッピーな暮らし」も2nd「スペースシャトルで君の家まで」もレコーディングは「studio VETIX」でした。ただ、スタジオが入っていたテナントが老朽化(耐震工事)で、鶴舞店自体は今年3月で閉店してしまったので、もう思い出のスタジオそのものは残っていないんですけどね。
りょたち:ねぐせ。は、そういうところもすごく恵まれていたと思います。練習場所が確保できるのは、本当にありがたかったですし。
なおと:でも一応、父親には最初に言っていました。息子としてじゃなく、ひとつのバンドとして接してくれって。
――最初にスタジオに入ったときのことは、覚えていますか?
なおと:本当の最初は、りょたちと僕と初代のギターだけで。コピーをやることは決めていたんですけど、オリジナル曲もあったら良いなと思って、1週間前にりょたちに電話して、“1週間でなんかオリジナル作れない?”って言って、持ってきてくれたのが「恋夜」でした。僕はワンフレーズ、せいぜい1番だけできれば良いかな? と思っていたら、フルコーラス作ってきてくれたので、それをひたすら練習したよね。
あとは……中学、高校の後輩で、今はラッパーとカメラマンをやってる子がいるんですけど、その子に頼んでアー写を撮ってもらいました(笑)。
りょたち:鶴舞店の前のベンチでね(笑)。それが本当に最初の最初です。
――そこから、しょうとさん、なおやさんがねぐせ。に合流することになったんですね。
しょうと:僕が「studio VETIX」に最初に通っていたのは烏森店で、ねぐせ。になる前の高校時代に、なおととバンドをやっていたときでした。
なおと:でも、そのバンドが解散してからも、僕がスタジオでバイトをしていたので、しょうとは毎日のように、楽器を弾くわけでもなく通ってくるんですよ。ただただゲームの『荒野行動』をやってる(笑)。
しょうと:今日、なおといるな! って、昼くらいから閉店まで。「studio VETIX」は落ち着く、家みたいな場所でしたね。
なおと:4人が揃ってからも、もっとひどい話がありましたね。スタジオに置きっぱなしにしてる機材を、閉店後も取りに来られるようにしてあったんですけど……ある朝、僕が店を開けて入ろうとしたら、酔っ払ったなおやが、入口のとこで寝てるんですよ。自分の家みたいに思ってくれるのは良いけど、こんなとこで何やってんだ! って怒ってたら、奥から、りょたちがのんきに「おはよ~」とか言いながら出てきて。「おはよ~」じゃないだろ! って(笑)。
しょうと:2階があるんだから、寝るなら入口じゃなく、せめて人目につかない2階だよね(笑)。
鶴舞店は2024年3月に閉店。烏森店は、名古屋駅から車で5分、近鉄烏森駅改札から徒歩20秒のところにあるリハーサルスタジオ。店舗裏に11台の駐車場を完備。練習しながら上達できる音場コントロールを提供している。プロのPAエンジニアがプロデュースするこだわりの室内音響と機材セレクトにより全3部屋それぞれ異なる趣向で多様な練習スタイルに対応している。
――ライブハウスやスタジオで音楽活動をするなかで、周囲のバンドの皆さんとの交流も、ねぐせ。にとっては大事なことだったのではないでしょうか。
なおと:そう思います。名古屋のバンドは、みんなすごく温かい。
りょたち:ライブが終わると、そのままライブハウスで打ち上げをやる“箱打ち”のことが多いから、対バンをやると絶対に仲良くなれるんですよね。
――スタジオやライブハウスで仲良くなるバンドがいて、そこから輪が広がっていくんですね。
なおや:そうですね。僕が、ねぐせ。のサポートをやりたいって言ったのも、「RAD SEVEN」の“箱打ち”でした。
りょたち:そのときの景色、めっちゃ覚えてるもん。なおやがPA卓の段差のところに座ってたんだよね。
しょうと:メロンソーダ飲みながらね。
なおと:急にサポートしたいなんて話をしてくれたから、「もしかして酔っ払ってます?」って聞いたもん(笑)。それで、確か正式メンバーになるっていう話をしたのが「studio VETIX」じゃなかったっけ?
りょたち:「RAD SEVEN」かどっちかやなぁ。
なおと:僕らのエピソードって、基本どっちかやもんね(笑)。「RAD SEVEN」でライブして、「studio VETIX」で曲作って。両方で喧嘩してるし、両方で仲直りもしてる。ねぐせ。の思い出って、マジでそのふたつのどっちかで起きてるなと思います。だから「studio VETIX」の鶴舞店が閉店するときに、僕が2日間の入場無料の閉店イベントを主催して、シークレットでねぐせ。も出演させてもらったんです。
やっぱり僕たちにとっては特別な場所だったので、マネージャーさんにも、この日だけは「studio VETIX」でやらせてくださいってお願いして。あの2日間、鶴舞店で育ったたくさんのバンドがライブをやってくれて、ねぐせ。も出られて、「studio VETIX」で作った最初の曲を披露できて……ものすごい寂しかったですけど、開催できて本当に良かったです。
しょうと:めちゃくちゃ泣いてたよね。
なおと:マジで泣きましたね。小学校のときからずっと通っていたスタジオだから。武道館のときより泣いてたと思います(苦笑)。
りょたち:僕らももらい泣きしそうだったんですけど、あまりになおとが泣きすぎてて。
なおと:いや確かに。ひしひしと泣いてる人に誘われるのがもらい泣きだから、あんだけ大泣きしてる人いたら、泣けないわな! って自分でも思う(笑)。
しょうと:結成10周年、15周年とかになったら、あの日撮ったなおとの映像、みんなにも見てもらおうかな(笑)。
なおと:やめとけやめとけ!(笑)
後編では、6月に開催された日本武道館単独公演を振り返りながら、新曲「ずっと好きだから」に込めた想いと、バンド活動のこれからを語る。
文・取材:阿部美香
撮影:干川 修
1st EP「愛と哀のファイト!」
発売日:8月7日(水)
購入はこちら
『ねぐせ。 4th Annivesary ~名古屋’s ROCKS VIBES~』
日時:8月27日(火) 開場11:00 / 開演12:00
会場:名古屋DIAMOND HALL
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