『ギャップ・ザ・シリーズ』を皮切りに女性同士の関係性を描くドラマを展開する「aLiL」が目指すところ①
2024.09.12
アニプレックス(以下、ANX)の新プロジェクトとして、『ギャップ・ザ・シリーズ』を皮切りに女性同士の関係性を描くドラマの日本語版を提供するブランド、「aLiL」を立ち上げた制作プロデューサーに話を聞く。後編では日本語吹替版のこだわりやブランドの今後を語る。
太田今日子
Ota Kyoko
アニプレックス
記事の前編はこちら:『ギャップ・ザ・シリーズ』を皮切りに女性同士の関係性を描くドラマを展開する「aLiL」が目指すところ①
――『ギャップ・ザ・シリーズ』の吹替版は、メインキャラクターふたりの役に雨宮天さんと羊宮妃那さんを起用しています。アニメ作品でも人気の声優をキャスティングしたのはどういった狙いでしょうか。
せっかくANXでやるのであれば、洋画の吹き替えのスペシャリストというよりは、アニメ作品を中心にお仕事されている声優の方にお願いしたいと思いました。
雨宮さんとは以前ご一緒したこともあり、すごく信頼できる役者さんですし、羊宮さんは、私はご一緒するのは初めてですが、若手で実力のある声優さんなのでお声がけしました。羊宮さんは吹き替えのお仕事はほとんど初めてとのことで、そんなフレッシュさもキャラクター性にはまったと思います。
また、タイドラマでは、BL(ボーイズラブ)でもGL(ガールズラブ)でも、出演者によるイベントや取材などがよく行なわれるのですが、日本語吹替版の展開でもそういった“フック”を作れたらと思っていて。なので、声質やお芝居ももちろんなんですが、おふたり自身のキャリア差など、劇中のキャラクターとイメージが重なる部分があると良いなと思ってキャスティングしました。
――アニメ作品で培ってきたANXの強みがいきたキャスティングですね。
メインのふたり以外の、脇を固めるキャラクターも個性的なので、キーになるキャラクターには石川由依さんや七海ひろきさん、石川界人さんといった方々にお願いしました。普段、あまり海外ドラマを見ない方に対して、「こんな声優さんが吹き替えを担当しているんだ」というのも、「aLiL」というシリーズを見る“フック”になってくれたらと思っています。
――海外ドラマは字幕版のみが制作されることも多いですが、吹替版ならではの魅力はどんなところにあると思われますか?
日本人的な感覚ではなかなか馴染みにくいような人物も、吹替版で視聴者にとっての母語でしゃべっているのを聞くと、親しみをもって見てもらうことができるのではないかと思います。
音声収録の際も、既に映像があるので、アニメのアフレコとは違って、例えば、口を開けるときの唇から出るリップ音や、言葉を発する前の息を吸い込む音だとか、役者さんのお芝居から発せられる音も細かいところまで再現されているんです。そういった音からも臨場感を感じてもらえるのではないでしょうか。
――「aLiL」の立ち上げには、ANXとして新しいジャンルの開拓という意味合いもあるのでしょうか?
ANXにはプロジェクトグループがいくつかあって、私が所属しているのは、『魔道祖師』など中国アニメの輸入展開でも実績を残している部署で、海外とのビジネスに対して知見やノウハウを持っているんですね。なので、おそらく私が別の部署に所属していたら「aLiL」のブランドは立ち上がっていなかったと思います。
――『ギャップ・ザ・シリーズ』の日本語版制作においても、背中を押された感じでしょうか。
そうですね。もちろん自分でも、ANXでやるメリットというものをすごく考えました。数字としてどこまで結果を出せるのか、という点も当然検証しましたし。ただ、自分も宣伝として携わった『魔道祖師』の成功が大きかったと思います。中国のアニメ作品の輸入展開としてはひとつ突き抜けた結果が出ていたので、この実績が『ギャップ・ザ・シリーズ』の日本語版制作の実現につながったとも言えると思います。
『魔道祖師』に関わらせてもらったときに、自分自身改めて日本語吹替版の素晴らしさに気づくこともできたんです。ANXでこの作品を手がけることになったとき、最初は中国語の原音で本編を見たのですが、日本語吹替版の収録を行なって、初めてキャラクターが日本語でしゃべるさまを聞いたときに、一気に親近感が増して、キャラクターの気持ちがダイレクトに伝わってきたように感じたんですね。単純に母語で聞くことができたということもあると思いますし、日本の声優さんの技術とパワーを感じた体験でした。
――『ギャップ・ザ・シリーズ』を皮切りに、女性同士の関係性を描くブランド「aLiL」の躍進が期待されます。改めて、このブランド名に込めた思いを教えてください。
“LOVE is LOVE”という、同性でも異性でも、それ以外でも、“どんな形の愛でも愛だよね”という言葉があって、それがとても良いフレーズだなと思って。その頭文字を取ったものが「LiL」です。
あと、それを読んだときの“リル”という響きが、英語の“Little”のスラングなので、人の心に芽生える小さな思いをイメージして、愛情なり友情なり、小さいけれどたったひとつの、個人的な感情を大事にしたいという思いを込めて名づけました。
――今後はどういった作品を届けていきたいですか?
“ラブ”という言葉には、恋愛だけでなく、友愛、情愛、いろんな意味が含まれていると思います。恋愛は恋愛で、もちろん素敵なんですけど、女性ふたりだけの物語に限らず、女性たちが連帯している姿を見るととても勇気づけられるので、そういった作品も多く届けていければと思っています。
日本の地上波で放送しているドラマでも女性同士の関係性を描いたものが増えてきていますし、女性が女性を励ますことによって勇気をもらって進んでいくというようなストーリーが、ますます求められているのではないかと思います。そういったことを発信するクリエイターも増えていますよね。
女性同士で楽しそうにすることって、なんというか、仲良さそうに見えても実はギスギスしているんだろうとか、裏では悪口を言ってるんじゃないかとか、嘲笑するような空気が昔はあったと思うんです。
でも、最近ではやっとその感覚が古いと言われるようになってきました。これからは女性同士のポジティブな関係性にももっと目が向けられたら良いなと思いますし、私のように女性同士の関係性から勇気をもらう人はたくさんいらっしゃると思っています。
――「aLiL」のタ―ゲット層としては、やはり女性のファンを多く取り込みたいと考えていますか?
2023年3月にタイで行なわれた『ギャップ・ザ・シリーズ』の主演おふたりのイベントに行った際に、集まったファンは大半が女性でした。「aLiL」もコアのターゲットは若い女性になってくると思っていますが、もちろんそれ以外の方にも見ていただきたいと思っています。女性同士の関係性が描かれているドラマを見て、エンパワーされる男性もいらっしゃると思うんですよね。なので、性別や年齢関係なく、幅広い層の方に見てもらえたらと考えています。
――『ギャップ・ザ・シリーズ』につづく、「aLiL」の第2弾作品についても既に発表されています。
第2弾作品は、『双鏡–Couple of Mirrors-』 という、2021年8月より中国のbilibili動画で配信されたドラマです。第二次世界大戦前の上海を舞台に、裕福な家庭で結婚生活を送る女性作家と写真館を営む孤独なスナイパーを描いた女性バディもので、『ギャップ・ザ・シリーズ』とは趣向の異なるサスペンスドラマです。
第1弾と第2弾を雰囲気の異なる作品にしたのには狙いもあって、最初の2作でベクトルを変えることで、「aLiL」がバラエティに富んだ作品を紹介していくブランドだということを打ち出していければと考えました。
今後も、今のところはアジア圏の作品を扱う予定ですが、エリアを限定しているというわけではないので、良いドラマであればどこの国や地域のものでも、どんどん展開していきたいと思っています。
――今後、「aLiL」をどんなブランドにしていきたいですか?
名作と言われる女性が活躍するドラマや映画は世にたくさんあります。そういった作品から元気をもらえるように、癒しや楽しみを求める方から信頼されるブランドになりたいです。
女性が活躍する、女性同士の関係性を描いた映像作品を見たいなら、「aLiL」の作品を見ておけば間違いなしと思ってもらえるブランドにしていきたいと思います。「女性がいきいきと描かれている世界って良いよね!」という気持ちを、よりたくさんの方と共有できるブランドを目指していきたいです。
記事の前編はこちら:『ギャップ・ザ・シリーズ』を皮切りに女性同士の関係性を描くドラマを展開する「aLiL」が目指すところ①
文・取材:入江奈々
撮影:古里裕美
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