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アニメづくりへの情熱

アニメ『デリコズ・ナーサリー』の制作関係者に聞く――映像で魅せる『TRUMPシリーズ』の新たな美①

2024.11.27

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2009年に上演され、演劇、戯曲集、短篇小説集、コミカライズ、劇中歌コンサートなどを展開し、耽美な世界観で人気を集める『TRUMPシリーズ』。その初のアニメ化作品として制作されたのがTRUMPシリーズTVアニメ『デリコズ・ナーサリー』だ。

11月27日(水)に最終回を迎える本作について、舞台『TRUMPシリーズ』を担当するワタナベエンターテインメントの加藤美秋氏と、アニメ『デリコズ・ナーサリー』チーフプロデューサーであるJ.C.STAFF松倉友二氏に、アニメ化の経緯と『TRUMPシリーズ』の魅力を聞いた。

  • 加藤美秋プロフィール写真

    加藤美秋氏

    kato Miaki

    ワタナベエンターテインメント
    『TRUMPシリーズ』原作担当

  • 松倉友二プロフィール写真

    松倉友二氏

    Matsukura Yuji

    J.C.STAFF
    アニメ『デリコズ・ナーサリー』チーフプロデューサー

アニメ『デリコズ・ナーサリー』とは?

アニメ『デリコズ・ナーサリー』キービジュアル

“永遠の命”を持つとされる伝説の吸血種“TRUMP”の不死伝説をめぐるエピソードを描く、オリジナル演劇作品『TRUMP』(2009年初演)。その『TRUMP』を起点とする演劇シリーズより生まれた最新作『デリコズ・ナーサリー』は、吸血鬼の特級貴族家系であるデリコ家の当主ダリ・デリコが、我が子の育児に奮闘するアニメオリジナルエピソード。末満健一による脚本を、錦織博監督とアニメスタジオJ.C.STAFFが制作を手がける。「血と誇りにかけて、任務と育児の両立──成し遂げてみせようではないか!」

記事の後編はこちら:アニメ『デリコズ・ナーサリー』の制作関係者に聞く――映像で魅せる『TRUMPシリーズ』の新たな美②

大阪の小劇場で生まれた『TRUMPシリーズ』が広まった経緯

――『TRUMPシリーズ』は2009年から始まった末満健一さんによる演劇シリーズ作品。吸血鬼と始まりの吸血種“TRUE OF VAMP=TRUMP”をめぐる壮大な歴史が、これまで何作もの舞台で紡がれてきました。その『TRUMPシリーズ』の新作である『デリコズ・ナーサリー』がアニメで描かれましたが、改めてその経緯を教えてください。

加藤:『グランギニョル』(2017年)という作品を公演したころから、映像化や漫画化ができたらいいねと、原作者で演出家の末満さんと話していました。その翌年、2018年にアニプレックス(以下、ANX)のプロデューサーの方から“『TRUMPシリーズ』の新作をアニメで作りませんか”とお話をいただいたことがきっかけですね。

シリーズ作のアニメ化のお話はそれまでにもいただいたことはあったのですが、“新作をアニメで作る”というご提案は初めてで。面白い取り組みだと思い、末満さんもぜひ前向きに進めていきたいということで、そこから何度も打ち合わせを重ねていきました。

松倉:J.C.STAFFに話が来たのは、そこから少し経った2020年ごろだったと思います。当時の自分は不勉強でして、末満さんを脚本家として存じ上げていても、手がけられている『TRUMPシリーズ』は見たことがなかったんです。それでまずは舞台の映像を見て、勉強をするところから始めました。

身振り手振りで話す松倉友二

――ワタナベエンターテインメントや加藤さんご自身は、『TRUMPシリーズ』にいつごろから関わっているのでしょうか。

加藤:ワタナベエンターテインメントは、2013年の『TRUMP』という作品から関わっています。その公演は、当時“D2”という名前で活動していたワタナベエンターテインメントの俳優集団が総出演する舞台企画として上演されたものでした。

その後、ハロー!プロジェクトの「演劇女子プロジェクト」による「演劇女子部 ミュージカル『LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-』」(2014年)が公演されたり、ワタナベエンターテインメントでは関西の事業部に所属する劇団Patchによる『SPECTER』(2015年/2019年に再演)が上演されました。

私自身としては、ピースピット2017年本公演『グランギニョル』から参加しています。そのときは、末満さんが最初の『TRUMP』を産みだした演劇ユニット・ピースピットの名前を冠しました。

身振り手振りで話す加藤美秋

――『TRUMPシリーズ』は毎年公演を行なっていて、とても精力的なシリーズです。どのようなコンセプトでシリーズを展開しているのでしょうか。

加藤:『TRUMPシリーズ』はもともと、ピースピットという末満さんご自身の演劇ユニットで作られてきたもので、大阪の小劇場で生まれたシリーズなんです。

とはいっても、末満さんが2009年に『TRUMP』を上演した際は、シリーズ化するとは考えてもいなかったそうなのですが、あまりの反響に、すぐに再演をすることになり、さらには女性キャストによる別バージョンも上演されていました。

ワタナベエンターテインメントとしても末満さんとしても、初めてシリーズ化を意識して作った作品が『グランギニョル』だったのですが、それが大変多くの方に喜んでいただけたんですね。

それ以降は、定期的に新作をやっていけたらいいよね、という共通認識のもと、ひとつの作品が終わったら次はどの物語を舞台にしようかという企画が積み重なって、大きなシリーズ展開の流れができてきたと思います。

そのうえで、末満さんの頭のなかにある世界を、可能な限り私たちスタッフもアイデアを出しながら実現に向けて取り組むというのが、現在の『TRUMPシリーズ』のスタイルになっています。

舞台『グランギニョル』キービジュアル

――コロナ禍もあって、演劇業界はここ数年、活動を制限されていました。『TRUMPシリーズ』はどのように乗り切ってきたのでしょうか。

加藤:そうですね。演劇界にとってコロナ禍はとても大きなできごとでした。従来通りの公演を行なうのはとても難しく、『TRUMPシリーズ』も大きな影響を受けましたね。

2020年には、『TRUMPシリーズ』で予定していた作品を急遽変更し、ソーシャルディスタンスを保つかたちの朗読劇にしたこともあります。そのときに実施した公演がオムニバスの音楽朗読劇『黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』という作品です。

『TRUMPシリーズ』朗読劇画像

音楽朗読劇『黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』より

準備期間もあまりなく、急遽立ち上がった企画だったのですが、末満さんが「この機会を逆手にとって、これまでシリーズでやってこなかったことをやろう」とおっしゃって。それと常々「自分ではない人が描く『TRUMPシリーズ』も見てみたい」と言っていたこともあり、いろいろな作家さんに『TRUMPシリーズ』の短編を書いていただいて、それを朗読することにしたんです。

末満さんは劇団の主宰者であり、制作としての経験もお持ちなので、プロデューサー的な発想もすごく働く方なんです。時間もないなかでの企画で、キャストやスタッフの方々には本当に大変な思いをさせてしまいましたが、皆様のお力あったからこそ、お客様にも受け入れていただけて、結果的には『TRUMPシリーズ』の可能性を広げた公演になりました。

このこともきっかけになったのか、末満さんがメンバーを募って永遠書簡というライティングチームが立ち上がったり(TRUMPシリーズ短篇小説集『BLOSSOMS-ブロッサム-』、TRUMPシリーズ短篇小説集『デリコズ・ナーサリー -Innocent Waltz-』を刊行/星海社刊)、コミカライズ連載もスタートしたりと会社の外にもたくさんの仲間を得て展開が広がりました。今回のアニメ化もアニメスタッフの皆さんのお力で、『TRUMPシリーズ』の可能性を広げていただけるものになったと思っています。

パンフレットを見ながら話す加藤美秋

アニメだからできる『TRUMPシリーズ』の新たな表現

――多角的な展開のなかに、アニメ化もあったわけですね。『TRUMPシリーズ』の制作チームの皆さんは、アニメというジャンルにどんな魅力を感じているのでしょうか。

加藤:末満さんは、子どものころは漫画家になりたかったそうで、もともとゲームやアニメに関してもすごく興味を持っていました。私自身も昔からアニメは好きだったのですが、エンタメ業界的にも最近はアニメからたくさんのヒットが生まれているので、こだわりが詰まっていながらも決してコアなジャンルではなく、とても裾野が広いジャンルであるというところに魅力を感じています。

――『デリコズ・ナーサリー』はアニメ化にあわせて物語を考えられたのでしょうか。

加藤:『デリコズ・ナーサリー』というエピソードの構想は、2019年に上演した『COCOON 月の翳り星ひとつ』のパンフレットに収録したシリーズ時系列年表のなかに既に記されていたんです。

というのが、末満さんは『グランギニョル』の公演を終えたあたりから、ダリとゲルハルトの子育てのエピソードを描きたいということを考えられていました。でも、舞台上に小さな子どもを上げるには大きなハードルがあって。

ANXから“『TRUMPシリーズ』の新作をアニメ化しませんか”というお話をいただいたときに、それならばこの“ダリとゲルハルトの子育て”はアニメだからこそできることでもあるし、面白いのではないか、と末満さんがすぐにプロットを書き上げてくれました。それをANXの皆さんも「面白い」と言ってくださり、一気にアニメ化に動いていきました。

アニメ『デリコズ・ナーサリー』場面写真

松倉:『TRUMPシリーズ』のアニメ化と聞いて最初は“吸血種もの”を作るのかなと思っていたんです。ところが、末満さんから“子育て部分”をたくさん盛り込んだプロットがあがってきまして。“吸血種が赤ちゃんたちを育てる”ことで吸血種と赤ちゃんというギャップを強調した作品になるのかなと、改めて考え直しました。

実際に脚本を拝見すると、吸血種と赤ちゃんのギャップだけを描くわけではなくて、子育てをきっかけにそれぞれのキャラクターが深く掘り下げられていくところが面白いなと思いましたし、何より子どもたちがすごく楽しくて。

これは子育て経験のある監督が適任だろうと思い、錦織博監督にお願いすることにしました。

笑顔で話す松倉友二

――アニメ作品ということもあり、各キャラクターに声優さんをキャスティングしています。キャスティングについてはどのように進めていったのでしょうか。

松倉:今回のオーディションでは、皆さんにセリフを読んだテープを提出してもらったんですね。監督やスタッフがそのテープを聴いて、役柄ごとに候補になる方を決めていきました。

加藤:そのオーディション用のテープを、私たちにも共有していただいて、末満さんも聴いています。ダリやゲルハルトたちの、たくさんの方の解釈を聞かせていただいたような気持ちでした。

こちらから希望を出させていただいたキャラクターもあれば、監督からの意見を参考にしたキャラクターもありましたね。キャスティングやオーディションは演劇でも行なっているので、そこは舞台と変わらないなと思いましたし、どの役もぴったりのキャスティングで、実力のある方々を選んでいただいたと思います。

松倉:そうやってキャストを決めていきましたが、キャストの皆さんも、舞台で役者さんが一度演じている役柄を担当するわけですから、プレッシャーがあったと思います。

加藤:そうですよね。舞台でも登場してきた役は、既にお客様のイメージが固まっている部分もあるとは思ったのですが、アニメについては舞台や演者ありきということでなく、アニメというメディアでキャラクター性をきちんと表現してくださる方にお願いできればと思っていました。

また、キャストの皆さんのお芝居には何も不安はありませんでしたが、やはり新しくアニメのキャストを選出するということで、舞台から好きでいてくださるファンの方々の反応は気になっていて……。

でも実際にアフレコを見させてもらったとき、どのキャラクターもすごく魅力的で、なおかつぴったりで、「これは大丈夫だな!」と思いました。アフレコ初回には末満さんもスタジオに来て、キャストの方々からの質問に答えたり、作品の説明をしていましたね。

笑顔で話す加藤美秋

――今作では、オープニングテーマ「UNFAIR」を中島美嘉さん、エンディングテーマ「Prayer」をAnonymouz(アノニムーズ)さんが担当しています。

加藤:『TRUMPシリーズ』の作品をご覧になって、この作品のためだけに曲を書き下ろしてくださるというのは、とてもうれしいことでしたね。シリーズ全体の世界観にも合った楽曲を作ってくださったと思っています。

松倉:中島美嘉さんの名前が挙がってきたときは、僕らも驚きました。10数年前の中島さんの楽曲とはまったく違うイメージの楽曲で、新鮮さを感じましたね。また、Anonymouzさんの「Prayer」も楽曲の美しさで、よりアニメの世界観を盛り上げてくださっていると感じました。

中島美嘉 UNFAIR-MUSIC VIDEO

Anonymouz - Prayer | TRUMPシリーズTVアニメ『デリコズ・ナーサリー』コラボレーション Music Video

――改めておふたりから見た、『TRUMPシリーズ』の魅力を教えてください。

松倉:原作者の末満さんは確固たる世界観をお持ちで、自分の作品への愛情もすごく強い。その思いの強さが、作品の信念みたいなものになっているんだなと感じました。

また、作品に関わっていて感じたのは、“人や人の命”を丁寧に扱っているということ。そういうところも作品の特長だし、魅力なのだと改めて感じます。

加藤:作品を超えたところで伏線が張り巡らされていて、シリーズ作品同士のつながりがあるところだと思います。『TRUMPシリーズ』の年表や相関図を作ると、壮大なドラマが見えてきます。そこが面白いし、どれだけ掘り下げても尽きない。

どの作品から観るかで違った感想を抱けるし、新作を見るたびに、新しい真実に辿り着けるところが魅力だなと思いますね。そしてそのどれも根底に末満健一流の愛情が潜んでいる気がします。

それと、演劇には再演というものがあって、同じ作品でも上演するたびにキャストが変わることがあります。ひとつの役柄を複数の役者さんが演じることで、キャラクターの解釈や魅力が膨らむこともありますし、そういった演劇発のシリーズだからこそ、さまざまなメディアミックスで、ひとつのキャラクターに複数の役者や絵柄があることも違和感がないと思うんですよね。

今回のアニメ化では声優さんがキャラクターを膨らませてくれて、アニメの絵柄や演出、表現によってより世界観が広がっているのですが、展開が広がることで、世界観やキャラクターの背景は逆にソリッドに確立されていくというのも面白いなと感じています。

笑顔の松倉友二と加藤美秋

後編では、アニメ制作にかける思いと、15周年を迎えた『TRUMPシリーズ』の今後について語る。

後編に続く

文・取材:志田英邦
撮影:干川 修

©末満健一/デリコズ・ナーサリー製作委員会

連載アニメづくりへの情熱