山田健登インタビュー:帝国劇場が導いてくれたミュージカル『レ・ミゼラブル』マリウス役にかける思い➁
2024.12.13


演技派エンタテインメント集団「10神ACTOR(テンジンアクター)」での活動をきっかけにキャリアをスタート。その後、ミュージカル『新テニスの王子様』、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズンの手塚国光役で一躍脚光を浴び、歌って踊れる俳優として注目を集めてきた山田健登。
そんな山田健登がこの冬、挑戦するのは、今年12月から東京・帝国劇場で上演されるグランドミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役だ。ミュージカル界の超名作、しかも、現・帝国劇場のクロージング公演となる大作に、彼はどう挑むのか? これまでの山田健登を振り返りつつ、『レ・ミゼラブル』への意気込みを聞いた。
前編では、これまでの活動や芝居に対する思いを語る。
目次
山田健登 Yamada Kent
1999 年5月29日生まれ。長崎県出身。血液型B型。身長176㎝。2014年、福岡放送とソニー・ミュージックエンタテインメントが共同で行なったリアリティ・オーディション番組『10神アクター』オーディションに合格。福岡市を拠点にエンタテインメントグループ「10神ACTOR」メンバーとして活動。「10神ACTOR」としての活動を終えてからは、東京に拠点を移し、ミュージカル『新テニスの王子様』、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズンで手塚国光役を務め、注目を集める。12月20日開幕のミュージカル『レ・ミゼラブル』にマリウス役として出演予定。
原作は、フランス文学の巨匠ヴィクトル・ユゴーが自身の体験を基に、19世紀初頭のフランスの動乱期を舞台に当時の社会情勢や民衆の生活を克明に描いた大河小説。原作が持つ、“無知と貧困”“愛と信念”“革命と正義”“誇りと尊厳”といったエッセンスを余すことなく注ぎ込んだミュージカル作品で、1985年のロンドン初演を皮切りに、日本では1987年6月に帝国劇場で初演を迎え、以来熱狂的な支持を得ながら東宝演劇史上最多の3,459回という上演回数を積み上げてきた。全世界での総観劇者数は1億3,000万人を突破し、長い歴史を誇る現・帝国劇場のクロージング公演として12月20日より開幕する。
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“歌って踊れる新進気鋭の舞台俳優”として知られるようになった山田健登は、長崎県佐世保市出身。幼いころから“テレビに出たい”という夢を持っていた彼は、ダンスを習い始め、歌うことも好きな子どもだったという。
そんな山田健登が芸能活動を本格的にスタートしたのは2014年、福岡放送とソニー・ミュージックエンタテインメントが共同で行なったリアリティ・オーディション番組『10神アクター』オーディションに合格したところから。
歌とダンス、芝居を軸に、多方面での芸能活動を行なっていたエンタテインメントグループ「10神ACTOR」メンバーとして、九州地方のテレビやラジオ番組にも出演。『志ノ塾、未来攻防戦!』シリーズなどのオリジナル舞台でも活躍し、2019年には劇団番町ボーイズ☆×10神ACTORコラボ公演、舞台『クローズZERO』にも出演するなど、次第に才能を開花させていった。
「お芝居を始めたのは、『10神ACTOR』での活動を始めてからです。小さいころから芸能活動にとても興味があって、子役オーディションなども受けていたんですが、10代のころに一番やりたかったのは実は歌だったんです。九州でグループ活動をしていたころも、内心では音楽が一番やりたくて。むしろ演技には苦手意識がありました」
役者としての活動が続いている今では、「演技が苦手」という言葉に驚かされるが?
「なんか恥ずかしかったんです(笑)。もともと人前に出る活動を始めたきっかけが音楽だったので、同じステージでも歌やダンスを披露するライブやイベントは全然平気だったんですけど、演技する自分にはちょっと違和感がありました。『10神ACTOR』の舞台は、僕のキャラクターに寄せて、名前も本人をもじった役が多かったので、そのせいもあったんですかね(苦笑)。
なので、最初は、舞台で演技する楽しさに気づけていない時期がありました。でも活動を続けるうちに……歌もお芝居も、自分が何かを表現することには変わりない。一緒なんだなということがわかったんです。そこからは、歌っている自分も、お芝居をしている自分も受け入れられるようになっていきました」
その後、「10神ACTOR」としての活動を終えた山田健登は、東京に拠点を移し、改めて芸能活動をスタートさせる。上京のきっかけは、ミュージカル『新テニスの王子様』のオーディション合格だ。彼は当時の自分を振り返りながら「『テニスの王子様』に連れてきてもらった」と謙虚に語る。
「いつか東京に行って……という気持ちがなかったわけではないんですけど、もし『新テニスの王子様』に受かっていなければ、九州を出ることはなかったかもしれないです。グループ活動があったから、ほかのオーディションを受けたこともなかったですし、受かるとも思っていなかったんです。
そんなとき、事務所のスタッフさんから“『新テニスの王子様』のオーディションに応募したからね”と言われて。驚きもあったんですけど、せっかくのチャンスをいただけたのだから、ここで掴まないと! と気合いが入りました。絶対に受かるつもりで会場に向かいましたね」
“絶対受かる!”という覚悟で臨んだオーディションだったが、彼が役を射止めた手塚国光と自分自身のキャラクターには、当初はギャップを感じていたという。
「手塚国光は、冷静で懐が広いクールな青学(青春学園)のキャプテン。グループ活動時代の僕は最年少だったこともあって、今では自分でも想像できないくらい、元気ではっちゃけたキャラクターだったんです。でも、手塚は背も高い見た目だから、内心では正直、難しいかも? と思ってもいたんですが……頑張れました!」
その『新テニスの王子様』の舞台からは、多くのことを学んだ。
「歌うのは好きでしたし、舞台で演技もしていましたが、それまでミュージカルというものには触れてこなかったんです。オーディションも、正直、ストレートプレイの舞台だったら、受けるのをやめていたかもしれないです。
でも、2020年の『ミュージカル「新テニスの王子様」The First Stage』から始まって、今年の春の「ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン」(以下、テニミュ)まで手塚を演じさせていただいて、ミュージカルの面白さ、楽しさを知ることができました。ロングラン公演なので、同じ歌を歌い、同じ演技をしていても、その日のテンションだったり、そのときの感情で、毎日が違う舞台になる。それがほかでは味わえなかった面白さでしたね」
ロングラン公演を東京のみならず全国で上演するミュージカル作品ゆえの楽しさ、そこで築かれる仲間との絆にも助けられたという。
「テニミュは歴史もありますし、キャストが代替わりで続いている作品。手塚国光も、僕で11代目になるんです。だから出演者のみんなの作品愛が強いし、過去に出演されていた先輩と共演する機会もいただけて、すごく勉強になりました。なかでも大先輩の中河内雅貴さんには、本当に可愛がってもらっていて。今でもご飯に連れて行ってもらっています。
それと、僕はずっと学校が共学だったので、男同士がくだらないことでワイワイできる男子校に行きたい願望がずっとあって(笑)。稽古場も楽屋も男子校の部活みたいですごく楽しかったですね。学生時代から芸能活動をしていたので、学生らしい思い出をそんなに多く作れなかったんですが、テニミュでそれも叶えてもらえたし、青春をやり直せたみたいで、本当に毎日が充実してました」
もちろん、初めてのミュージカルに挑む難しさもあった。
「最初に苦労したのは、ラケットを使った独特のアクションでした。手塚国光は左利きだけど僕は右利きなので、振りもほかの人と違うんです。ダンスも僕が得意なのはストリートダンスなんですが、ミュージカルはジャズダンスが基本です。“俺、ダンスやってたよな?”と思うくらい勝手が違いました。
それと役柄が笑わないキャラクターだったのにも、難しさを感じました。普段はクールだけど、実はお笑い番組を見るのが好きな手塚だから、もしも笑ったとしても口角を上げるだけで、たぶん爆笑してるんだろうな……とか、いろいろと想像しながら役づくりをしていましたね。
僕は、グループ時代は最年少でしたけど、あのカンパニーでは年が上のほうで。手塚部長役の自分が、裏でもみんなをまとめていく部長的な立場になっていたので、それが一番のプレッシャーだったかもしれないです(笑)」
自分ではない役になりきり、その役の人生を生きるのが役者の本懐。では、山田健登自身はどういう人間なのか? というのも気になる。こうしてインタビューをしていても、微笑みを絶やさず、常に穏やかな口調で答えてくれる姿は、25歳の若者とは思えないくらいに落ち着いている。
「基本マイペースですね。仲間からはおじいちゃんみたいだね、とはよく言われます。感情の起伏も、心のなかではいろいろあるんですけど、ほとんど表に出てくることがないみたいです(苦笑)」
もしかするとその落ち着きや、感情が表情に出ない性質は、ミュージカル『新テニスの王子様』で落ち着いた役柄を長く演じてきたことも影響しているのだろうか?
「あっ……それは、あるかもしれないです。4年間、手塚国光という役を演じていたから、彼の雰囲気が体に染みついちゃっているのかもしれない。たまに、表情が怖く見えるって言われることもあって。東京に出てきてからは個人のアーティスト活動もやらせてもらっているんですけど、歌っているときに“もうちょっと楽しそうにしなよ”って言われたりして。“ヤバい、これは染みついてるな!”とドキッとすることがありますね」
と言いつつも、ときには若者らしい素顔を覗かせる。
「僕、お酒を飲むのが好きなんですけど、そういう席では、結構はっちゃけますね。馬鹿騒ぎをするわけじゃないですけど、お酒が入ると、なんかハッピーになって、ずっと笑ってます。でもそういうとき、笑いすぎて目元がしわしわになっちゃうから、そこだけは気をつけて! って言われます(笑)」
後編では、帝国劇場のクロージング公演として開幕するミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役への意気込みを語る。
文・取材:阿部美香
撮影:冨田 望
ヘアメイク:望月 光

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