ゴスペラーズ・北山陽一&安岡優インタビュー:活動30年でグループが得た強み①
2024.12.17


12月21日にメジャーデビュー30周年を迎えるゴスペラーズから、メンバーの北山陽一と安岡優へのインタビュー。長く続くライブツアーや新作『Pearl』の裏側、そして今後の夢について語る。
目次
ゴスペラーズ The Gospellers
(写真左から)北山陽一、村上てつや、安岡 優、黒沢 薫、酒井雄二。1994年12月21日、シングル「Promise」でメジャーデビュー。2000年、シングル「永遠(とわ)に」、2001年、シングル「ひとり」の大ヒットで、唯一無二のボーカルグループとしてその名が世に知れ渡る。以降、メンバーそれぞれがソロプロジェクトや他アーティストへの楽曲提供、プロデュースなども手がけ、幅広い活動を展開している。30周年記念EP『Pearl』発売中。12月18日、カップリングコレクションBOX『G30 -Beautiful Harmony 2-』をリリース。
記事の前編はこちら:ゴスペラーズ・北山陽一&安岡優インタビュー:活動30年でグループが得た強み①
――ゴスペラーズがずっと続けているライブツアーには、“坂ツアー”と“橋ツアー”があります。前者がレギュラーのライブなのに対し、後者は東日本大震災の復興支援を目的に2013年から始まったゴスペラーズ+DJのコンパクトなスタイルで回るツアー。“橋ツアー”を回ることによって変化はありましたか?
安岡:“橋ツアー”が始まったのは、僕らが15周年から20周年へと向かう最中でした。そのころの僕は、より良いゴスペラーズになるため、ひとりのミュージシャンとしても自分を究めなければと、ソロ活動を始めていました。
だからこそ余計に、東日本大震災からしばらくして“橋ツアー”でいろんなところに歌いに行ったとき、「ああ、みんなの心のなかにあるゴスペラーズだけは壊してはいけないんだ」と思ったんです。こればっかりは新しいもので補うことはできない。守れるのは僕らしかいないんだと痛感しました。
ひとりの良いミュージシャンであるための努力は続けなければいけないけど、同時に誰かにとっての大切なゴスペラーズがあること、それを存続させる意義みたいなものもすごく感じました。
北山:“橋ツアー”を回っていくなかで、本当に“橋がかかった”と実感する場面がありました。その“橋”というのは、我々と客席との間にかかっただけではなく、集まった人たち同士にも、そしていつしか、集まった人たちが“この思いを届けてね”と、次に僕たちが訪ねていく街に向かってもかかるようになっていったんです。
もちろん、その場のめくるめく感覚にお客さんが没入する楽曲もありますけど、例えば、「約束の季節」や「星屑の街」を歌ったときには、何かその場の時空を超えて橋を往来する人たちが見える。それは“橋ツアー”だからこそ感じ得たものだったかもしれません。
――素敵なお話です。
北山:現在“橋ツアー”は、“坂ツアー”では行けない小規模の会場を回るものにもなっています。しかしそれは、最初のコンセプトを外れたわけではなくて、どこに行っても結局“橋”をかけることが大事で、その“橋”の往来が増えれば増えるほど、“歌の価値”というものが増していくと思ってのこと。
歌手として生きている者は、何か災害があるたびに、“自分たちにどんな価値があるんだ?”と自問自答します。その本質に迫る答えを用意しておきたいという欲求は常にあるので、“橋ツアー”は大いに意義があるなと思っています。
――11月13日に30周年記念のEP『Pearl』がリリースされました。メンバーが共作している楽曲が多いですね。
安岡:今回は、まず我々メンバーが書いた曲で勝負しないわけにはいかないだろうと。ただ、5曲入りEPだからといって、それぞれが1曲ずつ持ち寄るのでは面白くないので、懐かしの作曲合宿をしているかのようにコライトをしようと臨んだわけです。
北山:30周年記念だから、まぁ重たい作曲ではある。なので、その重荷を分け合ったほうがいいんじゃないかと思って、こっそりリーダー(村上てつや)に「コライトさせてほしい」と連絡しました。そしたらリーダーも「そのつもりだ」と。
僕のなかのコライトって、テンポ、調、コード進行、言葉、メロディに至るまで、みんなでアイデアを出し合って揉んでいく、かつて「星屑の街」を作ったときのようなイメージだったんです。そしたら黒沢(薫)さんが「聴いてほしい曲があるんだよね」と、2曲目の「パール」の原型となる曲を突然持ってきて(笑)。
――「パール」のクレジットは、作詩作曲:黒沢薫、北山陽一、安岡優になっています。
ゴスペラーズ 「パール」Music Video
北山:黒沢さんが言ったそのままを言うと、「これではイマイチだから、カッコ良くしてほしいんだよね」と。後輩としては、「わかりました。精いっぱい頑張ります」みたいなところから始まりました(笑)。
安岡:コライトのいいところって、みんなが口出しできるところ。10%くらいしか見えてない状態で、好きに意見を言って肉づけしたり、やっぱり違うねとやり直したりできるのが魅力だと思います。100点としてできあがっているものは、意見を言うほうも言われるほうも、ものすごいカロリーを使いますから。
だからまず、「パール」に関しては、最初の輝きを残しつつ削ぎ落としていくという作業をしました。
――曲のデザインを、みんなでオープンに考えていくわけですね。
安岡:はい。実務の細かいところ、例えばハーモニーは北山さんが得意だから考えてもらうし、歌い回しをどうするってなったら、そこが得意な黒ぽん(黒沢)に「ちょっと歌ってみて」となるし、で、僕はその横でせっせと文字数に合う言葉を書く。
北山:黒沢さんも、一度まな板の上に乗っけたからには、僕らが好きにいじっていくのを見守ってくれて。
――そういうコライトができるのが、今のゴスペラーズなんですね。
北山:この話には続きがあって、実は1曲目の「F.R.I.」も「聴いてほしい曲があるんだ」と黒沢さんが持ってきたんです(笑)。
安岡:そうなんだ! 作業してるスタジオが違うから知らなかった。
北山:「マニピュレーターと一緒にカッコいいトラックを作ったんだ。メロディも歌詞もないんだけどノリがいいんだよね」って。で、僕がコード進行を作って、メロディの半分以上は酒井さんが作りました。
――「F.R.I.」のクレジットは、作詞作曲:黒沢薫、酒井雄二、北山陽一となっています。
ゴスペラーズ 『F.R.I.』Music Video
安岡:誰と誰が組むかで、コライトの主導権やバランスが違ってくるところも、ゴスペラーズの面白さです。
北山:「パール」のときは、ヤスが「この言葉を入れたいから、メロディはもう少し強いほうがいい」と言って、揉むうちにそういうメロディになっていったところもあるし。
安岡:そうだね。「この一番いいところに『パール』という言葉を入れたいから、メロディは絶対上から降りてきてほしい」って言ったりもしたし。
北山:そういう行ったり来たりができるのが、コライトの面白さなんです。
――ソングライターが5人揃っているのはやっぱり最強。現在進行形のゴスペラーズを垣間見ることができました。最後に、30周年の先に見ている夢を聞かせてください。
北山:個人的には、ひとりの音楽家として、自分の見たい景色とか、どこまでできるのかという境界線をハッキリさせたいというのがあります。一人ひとりがちゃんと自分の歌を持っていないと、歌を重ねるグループとしての響きは良くならないと思うので、ソロとか、教育的な活動とか、無理のない範囲でしっかりやっていきたいなと思っています。
グループとしては、やっぱり僕は20周年記念ライブで奏でた「カーテンコール」(作詩:安岡優、作曲:北山陽一のアカペラ曲)が忘れられないんですよ。2001年のリリース当時には求めても全然鳴らなかった倍音が、あの舞台上では求めていた以上のサウンドとして実現した。
僕らは特に「カーテンコール」を鳴らすために頑張ってきたわけじゃないんですけど、たくさんの課題を日々クリアしていくうちに、知らず知らずに次のレベルにいけてたんです。
それと同じようなことが、この30周年でも起こるかもしれない。もっと言えば、40周年、50周年と、どこまで行けるかはわからないですけど、そこで何が見えるか、すごく楽しみです。
安岡:グループとしては、やっぱり1日でも長く続けること。そこに尽きるんだろうなと思います。それによってしか、僕らの音楽を愛してくれた人たちへの恩返しもできないし、メンバーそれぞれが持っている小さな夢もかなわないと思うんです。
じゃあ、そのためにどんな努力をすべきかというと、もちろん、体のこと、喉のこともそうなんですけど、一番大事なのは、自分たちのキャパシティのなかで必要なもの、必要のないものを選り分けて、どこまでなら収まるかをきちんと見極めることだと思います。じゃないと、器のほうが壊れちゃう。20代のころは壊しながら器を大きくしていくことができたけど、今はね(笑)。
もちろん、毎年作品のリリース、ライブ、レギュラー企画の続編などができていることは本当に幸せです。でも、それらのタイミングを整えていく努力も、これからの数年間ではしなきゃいけない。今までは欲張る努力をしてきたけど、勇気を持って欲張らない努力をすることもこれからは大事かなと思っています。
――音楽活動を続けるための人生設計ですね。
北山:それこそワークライフバランスですよね。
安岡:これまでは人生全部をゴスペラーズに突っ込んでましたからね(笑)。そのなかでそれぞれがソロも頑張ってきたから、1.2人分くらいの人生を送ってきた。でもここからは、削ぎ落として、それぞれがきれいな“1”を見つける努力をしないと、お互いに長く向き合うことができなくなる気がします。逆に言うと、それさえできていれば、長く続けるという夢もかなうんじゃないかな。
北山:本当に大事ですよね。僕らの上の世代の人たちは本当に休まないから(笑)。ただ、“休みすぎるとなかなか戻って来れない”という話も耳にします。だから、グループとしては無理をせず、歌手としてはそれぞれがちゃんとスタンバイできている状態にしておけるかたちを、これからメンバーみんなで模索していこうと思っています。
記事の前編はこちら:ゴスペラーズ・北山陽一&安岡優インタビュー:活動30年でグループが得た強み①
文・取材:藤井美保

2026.07.11
2026.06.30
2026.07.04
2026.07.03

2026.07.02
2026.07.01
ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!