仕事も恋もすべてここにつながった――電子コミック化される国生さゆり渾身の小説①
2025.01.08


俳優、タレントの国生さゆりが『小説家になろう』に投稿した小説『国守の愛』が電子コミック化。後編では、原作に込めた思いや書きたかった気持ちとともに、今後の目標を聞く。
目次

国生さゆり
Kokusho Sayuri
鹿児島県生まれ。血液型A型。1985年に放送開始したバラエティ番組『夕やけニャンニャン』から誕生したアイドル、おニャン子クラブのメンバーとして一躍人気となる。1986年2月、シングル「バレンタイン・キッス」でレコードデビュー。1987年におニャン子クラブを卒業後は俳優業を中心に幅広く活動。
記事の前編はこちら:仕事も恋もすべてここにつながった――電子コミック化される国生さゆり渾身の小説①
経済界を牽引するグローバル企業・盾石グループ会長のひとり娘で、液体デバイスの開発研究者であるヒロインの盾石富士子は、国生さゆり自身と重なる部分もあるそう。
「私が仕事に邁進して、キャリアを組み立てることに躍起になっていたころの閉塞感に近いです。すごく狭い世界にいて、知ってる人としか触れ合わない環境に置かれてる女の人。でも、好きなことに対しては寝食を忘れて取り組むっていう。
富士子がいつもハイヒールを履けているのは、移動車があるからなんですよね。荷物を持ってないのも車があるからで、何か必要になったら買えばいいと思っている。
それって、若いときの、おニャン子から卒業するかしないかぐらいのころに、自分が置かれてた環境と似てますね。タクシー移動ばかりで、電車に乗ったことがなかったとか。私はお嬢様ではなかったけど(笑)」
弱みを人に見せることが苦手で、感情を抑えて生きている富士子は、“何のために生きているのだろうか?”と自問自答する。
また、若いころに母親を失っている彼女の身の回りの世話をする浮子は高齢となったことで断捨離を始め、“私はひとりで生きられるのだろうか”と思い悩む。女性の登場人物たちは皆“どう生きるか”について思いを馳せるが、それも国生さゆり自身の内心の表われなのだろうか。
「家族同士って一緒に暮らしていながらも遠慮するし、正直なことを言わなかったりするじゃないですか。浮子は、物忘れがひどくなって、家事全般がちゃんとできなくなっていく自分が盾石家にとって必要なのかと思っている。
うちの両親ももう80歳過ぎて自由にならないことが多くなってきたし、私自身も独り身なので、この先、どうなるのかはわからない。書いたのがコロナ禍初期のころだったこともあって、その思いが表われたのかもしれないですね。
人って、あんまり自分の本当の思いを他人に知られたくないと思うんですよ。恥ずかしいとか、駄目な人間だと思われたくないとか、迷惑かけちゃうんじゃないかとか、優しくないんじゃないかとか、いろんな理由で。それが自分のなかにもあって、浮子やヒロインに言わせてるんだと思います。
私……ずっと考えてきたんですよね。なぜ、アイドルのときにもっと頑張って実績を積んでこなかったんだろうとか、なぜあのときにあんな恋愛しちゃったんだろうかとか、なぜあのときにあの人の言うことを聞けなかったんだろうとか。……自分の至らなさっていうか、考えなかったこと、思いを汲み取れなかったことへの後悔がある。
そんなことを誰かに話したとしても、『それはさゆりが選んだことだよね?』って言われたら、もう何も言えないじゃないですか。だから、心の奥の奥のほうに沸々とあった後悔や不安、悲しみや切なさを自分で吐露するより、誰かに言ってもらったほうがいい気がして、それで書いたんだと思うんです。
友達に話すと気持ちが楽になったりするように、口に出して言えないことをキャラクターに託したんだと思います。たまに自分でも『よくここまで書いたね!』って思うことがあるから」
物語の後半では、過酷な経験によって心を閉ざした富士子の代わりに、別人格である“ブルー”という名の5歳の女の子と猫が登場する。
「うちの猫の名前なんです。ちょっとスピリチュアルな話になっちゃうけど、私が折り返さなきゃいけないようなときに、必ず“もういいよ”って右肩を叩いてくれる人たちがいるんですよ。
そうすると、今まで夢中になってたことや尽くしてたこと、ものすごく愛したことが、その瞬間に目から鱗が落ちるように剥がれ落ちて、何の感情もなくなるんです。だから、さよならできるし、お別れすることができたんですね。
私が芸能界で40年も仕事ができたのは、その人たちがちゃんと見ててくれたからだと思う。仕事ができなくなるくらい、潰れてしまいそうなこともたくさんあったので。
そんなときにその人たちが肩を叩いてくれてなかったら、今、私はここにいないと思います。そういう存在が富士子や、彼女の父親の国男にとっての“ブルー”なんです」
彼女は“スピリチュアル”と表現するが、現実を俯瞰的に見ることのできる“もうひとりの自分”とも解釈できるそれを持っていることは、作家として大事な素養のひとつだろう。
国生さゆりが2021年7月に投稿した『国守の愛』は、現在、第3章まで発表されていて、富士子視点の第1章が全92話、1日時間軸をずらした、要の世界を描いた第2章が全78話、さらに第3章が現在までに42話掲載。今回、電子コミック化されるのは第2章「イェーガー・群青の人」編だ。
「第2章を電子コミック化したいというのが最初からの要望でした。なので、電子コミックでは富士子の心情はあまり描かれずに、特殊部隊の諜報や工作活動を中心とした話になりますね。
私としては、電子コミック化に関して譲れないことっていうのはまったくなくて。マッチョ好きなので、要のガタイにはこだわりましたけど(笑)、あとは全部お任せしました。
というのは、『“俺様”がいるとダメなんだよ』と、ある漫画家の方がおっしゃってたんですよね。俺が言った通りにやれば絶対に面白いっていう“俺様病”の人がいることが、ドラマ化や映画化で失敗する大きな要因になるって聞いたので、それだけは絶対にやらないって決めました。
おおまかなストーリーは必ず守りますっていうことは言ってもらえたので、あとは信頼したい。皆さん、『国守の愛』のどこかに惹かれてるわけだから、あとは情熱を持ってやってもらえたらと。とにかく、皆さまに読んでいただくこと、知ってもらうことが一番です」
2020年3月に箇条書きを始めてから2025年1月の電子コミック化まで、約5年という月日がかかったが、この道のりのすべては彼女自身が自力で作り、歩んできた道だ。そもそも『小説家になろう』にアップしたことを、当初は、所属事務所の誰も知らなかったのだから。
「言っても応援していただけないと思っていました。正直な言葉で言うと、私の小説なんか相手にしてもらえないだろうなと思って。勝手な思い込みですよね。今思えば、誰かに相談することもできたんだけど、本当にごくごく狭い視野のなかでやってたんだなって。自分で出版社に持っていったり、自分でクラウドだと思って上げてみたり。でも、それが、逆に良かったと思っています。
今は事務所のスタッフが手伝ってくれて、電子コミック化されて、こうして取材の機会も作ってくれてるわけだから。物ごとが起きるにはいいタイミングがあるし、最初から自分でやらずに、誰かの力を借りてたら、今、こんなに楽しく話せてなかったと思うんです。きっと、小説自体にも、これだけの熱量を注げなかったと思う。ここまで大変だったし、思う結果が得られなくて何度も泣いたけど、それも含めて良かったなって思います。
あんまり上手じゃない文章を書くということをコツコツやってきて、今、やっと少しだけ蕾が膨らみ始めてるのを自分で実感できるから、めっちゃうれしい! 最初から、“ちょっと書いてみたんでお願いします”ってマネージャーさんに託してたら、この感動はなかったと思う。私、今、すごく幸せなんですよね」
芸能活動40年目にして“原作者デビュー”を果たし、彼女の筆は一向に止まる気配がない。圧倒的な物量と書き込みの細かさだけでも驚異的な熱量を感じるので、ぜひ原作小説にも一度、触れてみてもらいたいところ。
現在は『国守の愛』の加筆、修正を続けながら、童話『ぬいぐるみ』、詩集『夢となれ』、コメディ『せいの一族』、短編『恋文』に『骨の髄まで』と、執筆の幅を広げている。
「正直な話をすると、芸能の仕事は誰かがいないと発生しないじゃないですか。いつお仕事が来るかわからない。不定期だし、いつも“待ち”なんですよね。流行だったり、時の運だったり、その人の実力だったり、誰かの気分だったり……。いろんなタイミングがあって、やっと“あなたにお願いします”って引き上げられる。そういうお仕事なんだと理解しているんです。だけど、待つことにちょっと疲れたんだと思う。
でも、今、小説を書くことによって、趣味もできて仕事にもなったので、自分のなかのひとつの柱になって、心がすごく楽になったんですよね。ずっと待ったり、ついすがってしまう仕事に疲れちゃって、心のなかに溜まっていた澱を出すタイミングが来たのが良かった。
まだ小説家や文筆家と名乗れるほどは勉強が足りてないんですが、まずは、自分の書いたものをひとつの作品として残すことができた。でも、最初に言ったように、これを通過点にしないといけないと思っていて。まずは皆さんに知っていただいて、結果を残したうえで、次の機会を作っていきたいと思っています」
「通過点」と繰り返す国生さゆりが、最終的に到達したいと考える目標地点とはどこなのだろうか。
「私、ソニー・ミュージックアーティスツに40年間在籍させてもらっていて、本当にお世話になっているんですよ。好き勝手をさせてもらってるし、たくさん迷惑をかけてきたので、恩返ししないとなと思っていて。少しでも貢献したいので、皆さんのお力をお借りしながら、ひとりでも多くの方に『国守の愛』を知ってほしい。
国生って、昔、ハチャメチャだったけど、60歳も迫って、大人になったんだなって思ってほしいし、いろんなコンテンツの原作になるような小説を書いてるんだってことを知ってもらうことが大切だと思っています。
今回、電子コミック化を果たしたので、次はアニメ化を狙ってます。2024年に『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』を見たんですけど、ものすごく斬新な色使いをしていて、びっくりしたんですね。あんなふうに、できればアニメ化させたい。
さらに、日本だとミリタリー物はちょっと難しいから、海外で実写化できたらいいですね。大きいこと言って恥ずかしいですが、夢は広がります。そして、のちのち振り返ったときに、原作者や小説家という肩書きがちゃんと自分のキャリアとして加わっていたらいいなと思います」
記事の前編はこちら:仕事も恋もすべてここにつながった――電子コミック化される国生さゆり渾身の小説①
文・取材:永堀アツオ

2026.07.11
2026.06.30
2026.07.04
2026.07.03

2026.07.02
2026.07.01
ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!