仕事も恋もすべてここにつながった――電子コミック化される国生さゆり渾身の小説➁
2025.01.09


小説投稿サイト『小説家になろう』に投稿された小説『国守の愛』の作者、“國生さゆり”が、おニャン子クラブ出身の俳優・国生さゆりであることがわかり、話題となったのが2022年の5月。
その作品がこのほど、電子コミック化される。改めて、彼女が小説を書くに至った経緯からここまでの道のりを振り返りつつ、原作者としての国生さゆりが見据える未来について語る。
目次

国生さゆり
Kokusho Sayuri
鹿児島県生まれ。血液型A型。1985年に放送開始したバラエティ番組『夕やけニャンニャン』から誕生したアイドル、おニャン子クラブのメンバーとして一躍人気となる。1986年2月、シングル「バレンタイン・キッス」でレコードデビュー。1987年におニャン子クラブを卒業後は俳優業を中心に幅広く活動。
本名の國生さゆり名義で、小説投稿サイト『小説家になろう』に投稿された小説を原作とする、縦読み電子コミック。原作は恋愛要素を盛り込んだミリタリーアクションで、第1~3章からなる、全212話(+エピローグ連載中)。そのなかから、第2章『群青の人・イエーガー』が電子コミック化された。2025年1月8日よりLINEマンガにて先行配信。その他Webコミックサイトにて順次配信。
記事の後編はこちら:仕事も恋もすべてここにつながった――電子コミック化される国生さゆり渾身の小説②
国生さゆりと言えば、俳優であり、歌手であり、“おニャン子クラブ”の元メンバーであり、何かと人前に立って表現をしている、華やかなイメージが思い浮かぶ。その、我々が知っている国生さゆりが、実は人知れず小説投稿サイト『小説家になろう』に自作の小説を投稿していたと知って、驚く人も多いはずだ。
彼女が初めて執筆した作品を読むと、さらに驚かされる。ジャンルで言うならミリタリーアクション。『国守の愛』と題されたその小説は、全212話にもおよぶ一大巨編で、この度、そのなかから第2章の『群青の人・イエーガー』が電子コミック化された。
「自分が書いたものが電子コミックになるというのはすごくうれしいですね。でも、電子コミック化にあたっては、編集者さん、脚本家さん、漫画家さんとチームでやっていかないといけないので、責任感も強く感じているし、ふわふわしていられないと気合を入れました。
それに、誤解を恐れずに言うと、私としては電子コミック化することがゴールではなく、通過点にしないといけないと思っています。ちゃんと結果を出したうえで、アニメ化や実写化にまでつなげていきたいという気持ちです」
1985年におニャン子クラブのメンバーとしてデビューし、翌年にリリースしたソロデビュー曲「バレンタイン・キッス」が大ヒット。以降、俳優や歌手、タレントとして活動の場を広げ、デビュー40周年の節目となる2025年に“原作者”という肩書を増やした。
だが、18歳のときに芸能界入りした彼女は、学生時代はまったく本を読んでいなかったという。
「学生時代は学力をスポーツ力でカバーしてましたね(笑)。陸上の短距離走選手として特待生で進学してきたので、勉強もそんなにしてこなかったんです。だから、読書なんてまったくしてこなかった。小説は、半ページどころか、3行読んだだけで嫌になっちゃうくらい。
でも、18歳のときにドラマ『春の砂漠』で共演した名取裕子さんに『どうしたらお芝居が上手くなりますか?』って聞いたら、『本を読みなさい』って言っていただいて。小説を読みながらそこに描かれている景色をイメージしていって、誰でもいいから自分が共感できる人物を頭のなかで動かしてみなさい、って教えていただいたんです」
俳優の大先輩、名取裕子の言葉がきっかけで読書をするようになった国生さゆりが、最初に衝撃を受けたのは馳星周の『不夜城』。「言葉はすべて、自分の正直な心を話してるものだと思っていたので、人の気持ちを動かすために言葉を使う人がいることを知ってびっくりした」と言う。
そして、自身も小説を書き始めたのは、コロナ禍真っただなかで、多くのことが規制され始めていた2020年5月。国生さゆりにとっては、デビュー35周年を迎えるアニバーサリーイヤーでもあった。
「皆さんも同じだと思うんですけど、自分の身の回りのことすべてが止まってしまうというのは初めてのことじゃないですか。お仕事ができないし、人に会うこともできないという不安に駆られるなかで自分に向き合うしかなかったんですよね。
私は18歳から仕事をしてきましたが、35年目を迎えたタイミングで、“国生さゆりさん”というタレントに対して何もしてあげられていないなと思ったんです。仕事の面で何も貢献してあげてないし、逆に、プライベートでは“国生さゆり”の名誉やキャリアを傷つけるようなことをしてしまったこともあった。
そんなことを考えていたときに、頭のなかに、女の子が階段を上っているうしろ姿がパッと浮かんで……。当時は、パソコンを使ってなかったので、スマホに自分にしかわからない暗号データみたいな感じで、頭に浮かんだイメージをバーっと書いたんです」
そうやって、言語化されたストーリーを、当初はシナリオとして残すつもりだったそうだ。
「私の文体だと心惹かれないと思うので、あくまで原案として、本職の方に書き直してもらいたいと思っていました。それで、マネージャーさんに『脚本にしたいストーリーがあるんだけど』って相談したら、『まずは箇条書きでもいいので文章を書いてください』って言われたんです。だから、最初は誰かにお預けするつもりで書き始めました。
なので、第三者が見てもわかるように、登場人物が着ている洋服の質感や色、部屋の広さや家具の配置、動作や仕草、表情、目線まで、しつこくしつこく書いて。できるだけ細かくお伝えしたほうがいいかなと思って書いた文章で、ただただ、自分が書きたいことをわかってほしいという気持ちがすごく強かったです」
全92話からなる大ボリュームの第1章を書き終えた彼女は、まず、自ら出版社へ持ち込んだ。
「そこでは、しっかりと読んでいただいたうえで、『ウチでは無理かもしれません』とお断りされて、泣きながら帰りました。
でも、そこで終わらせるのはもったいないと思ったし、なにしろスマホのメモ機能で書いていたので、このデータが消えてしまったらどうしようと思って。それで、どこか置いておける場所を探して検索したら、『小説家になろう』のサイトが出てきて。
私、最初は『小説家になろう』ってクラウドだと思ってたんですよ(笑)。“公開する”っていうボタンを押さないと公開されないと勘違いしてて。でも、とにかく“なろう”にアップして、何度も直しつつ、さらに続きを書き込んでいたら、のちのち、誰でも読めたっていうことを知って(笑)。今思えば、心配性で、自分のスマホじゃないところに残しておこうと思ったのが良かったです」
2022年5月には國生さゆり名義で“なろう作家”デビューしていたことが明らかになり、Webニュースなどで報じられた。
「最初は、もう大変なことになったなと思ったんですよ。Twitter(当時)で『国生さん“なろう”に書いてます? 国の字が違いますけど』ってメッセージがきたときに、“あれをみんな読んじゃってるの?”って気づいて。あの文章で大丈夫か? って心配で震えましたよね。
でも、とにかく『つたない文章なのですが、本名の“國”を使って國生さゆりで書いております』と正直にお伝えしました。その後、ファンの方が『国生さゆりさんが書いた小説がこちら! まさかまさかの、なろう作家デビューされていたとは…!』とツイートしてくれたので、『ありがとうございます。私です』ってお答えしました」
国生さゆりが小説を書いたと聞くと、私小説や、もしくは芸能界のことを描いたような作品を想像する人が多いかもしれない。しかし、彼女が執筆した『国守の愛』は、液体デバイスの開発研究者である富士子と彼女を警護する陸上自衛隊の特殊部隊リーダーである要のラブロマンスを含むミリタリーアクションとなっている。彼女自身、「私と一番遠いイメージですもんね」と笑う。
「私が小説を書きましたって言うと、皆さん、『国生さゆりは波乱万丈だから、きっと私小説を書いたんだろうな』って想像すると思ったんですよ。私だってそう思う(笑)。
でも、そういうできごとは私のなかにしまっておこうと思ってるし、今後、それを書くことはないですね。私もそのときは、なんて自分に優しくないことをしちゃったんだろうって思ってたけど、今では、そういったできごとは私の宝物になっていて。
しなくていいこと、見なくていいこと、やらなくていいこと、行かなくていいところ……いろんなことに遭遇したけど、今となってはすべての人に感謝しています。
綺麗ごとに聞こえるかもしれないけど、それがなかったら今、私、こういうふうに小説を書いて、それが電子コミック化されるなんてお話をいただいてないと思います。なので、これまでの体験は自分だけの宝物として心にしまっておいて、私小説としては書かないと思うんです。
でも、私が今、書いているキャラクターは“いない人”を書いてるのではなく、あくまでも“いる人”を書いてるから、まったく自分と無関係というわけではないです。
自分のまわりのいろんな人を合体させて書いています。もともと私は、海外のミリタリーものや特殊部隊ものがすごく好きだったというのも背景にあります」
ミリタリーものと言えば、国生さゆりの父親は海上自衛官。「制服フェチで駆動するものが好き」という彼女は、キャラクターの設定やストーリー展開には苦労しなかったという。
「昔から空想したり妄想したりすることが、すごく好きなんです。マンガもものすごく読んでるし、映画もたくさん見てる。私が演技の仕事を始めてすぐのころ、『好きな女優さんのお芝居を真似しなさい』って教わったんですね。私はお芝居の勉強をしてたわけではないし、なんの下地もなかったので、誰かを真似するしかなかったんです。
模倣から創造するために、映画も1回だけじゃなくて、同じ作品を何百回も見ました。そういうことが好きだったし、イメージを作るのは長けているほうなんだと思います。だから、筋立てにはあまり苦労しなかったんだけど、頭のなかで想像してる画に言葉が追いつかない苛立ちはありました。
例えば、ヒロインが要を見る目つきは頭に浮かんでいるんだけど、それを文章化するときに、自分のイメージに的確な言葉が見つからなくて、それがものすごく悔しかったです。ああ、勉強しとけばよかったって思いながら、できるだけ言葉を探して書いていきました。
キャラクターにも最初からイメージがありました。お芝居をするうえで、脚本をもらったときに今回の役はどんな自分なのかって妄想するんですね。それでちょっと慣れてたのかなって思います。
例えば、登場人物それぞれにテーマカラーがあるんだけど、台本を読むときも無意識にそういうことを考えてるんですよね。真っ黒なお洋服なんだけど、赤いマフラーをしてるとか、口紅は塗ってないなとか。
自然と頭のなかでそういうイメージづくりをしてきたので、演技の仕事をしてなかったら、多分、電子コミック化されるような原作を書くことはできなかったかなって思います」
後編では、原作の内容とそこに投影された自身の思いや、今後の目標地点について聞く。
文・取材:永堀アツオ

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