システムエンジニア:煩雑な作業をITの力で効率化! 転職を経て知った、自分らしく働ける喜び
2025.02.25


2025.01.24
さまざまなエンタテインメントビジネスを手がけるソニーミュージックグループで、専門的な知識とスキルを持って働く技術者(エンジニア)に話を聞く連載企画。
第13回は、本取材で一風変わった肩書き、“システムエンタテイナー”を自称することになった関根佑輔が登場。ECサイトやファンクラブサイトの開設、改修、新機能の追加など、グループ内各社から持ち込まれる課題を、テクノロジーでサポートする彼のエンジニアとしての信条とは。
目次

関根佑輔
Sekine Yusuke
ソニー・ミュージックソリューションズ
──関根さんが所属するソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)のIT部門では、どんな業務を行なっているのでしょうか。
ソニーミュージックグループの各社、各部門から“こんなITサービスを始めたい”や“ECサイトにこんな機能を追加したい”という相談を受けた際、チームを編成し、外部のITベンダー企業の方々とともに開発や改修を行なっています。
──関根さんは、現在どのような業務に携わっていますか?
SMSが独自に開発したWebサイト制作・管理システムの開発ディレクションです。
この独自プラットフォームにはECサイトやファンクラブサイトなどの決済、ユーザー管理、商品管理といったさまざまな機能が備わっていて、社内管理サイトの一部もこのプラットフォームが活用されています。
独自プラットフォームを活用すれば、新しくECサイトを立ち上げるときに、一からシステムを構築せずに済みますし、加えてそれぞれの雰囲気に合わせたサイトを作ることもできます。
ただ、独自プラットフォームに搭載された既存の機能ではできないこともあって。そんなときは持ち込まれた相談を別のチームがヒアリングし、“これは新規開発が必要だな”“この依頼を実現するにはこんな機能が追加で必要だな”となると、私たちのチームの出番となります。
とはいえ、我々がプログラムを組むことはほとんどなく、日々持ち込まれるさまざまな開発、改修依頼について、それぞれ作業スケジュールを策定し、ベンダー企業の選定から依頼、工程管理といった橋渡し的な業務がメインとなります。
──学生時代はどういったことを学んでいましたか?
私の学歴はちょっと特殊なんです。大学1年次は文系で、2年次は社会学コースを選択したかったのですが、選考に漏れてしまって……。この先どうしようと思っていたところ、3年次に理系コースに転向できるとわかり、理系の観光科学科に進むことにしました。
そこで学んだ統計学がすごく面白くて。データ分析にも興味が湧き、4年次にはふるさと納税のサイトからデータを抽出して、どんな返礼品に寄付金が集まりやすいのかを分析して、卒論を書きました。
──面白いことを研究していたんですね。就職活動では、どういった業種を志望しましたか?
Web広告企業などにアプローチしようと思ったんですが、大学時代の教授から「最初からやりたいことをベースに就職先を考えるより、まずは土台をしっかり作って自分の武器を磨いたほうがいいんじゃない?」と言われて。そこで、まずはデータ分析会社でマーケティングや統計、データサイエンスのスキルを磨こうと思いました。
──新卒入社時から転職も視野に入れていたということですね。
本格的に転職を考えるようになったのは、就職して2年ほど経ったころです。前職では高度なデータ分析を行なうこともあったんですが、Excelを使えばできる難度の低い業務も結構あって、そこに物足りなさを感じるようになったんです。
また、データ分析の仕事は、依頼に対して“この商品はこれくらい売れるでしょう”と需要予測を立てたら終わりで、結果にまでコミットすることができませんでした。そういう役割なので、当たり前ではあるものの、自分としてはもっとダイレクトにリアクションが感じられる仕事をしたいと思うようになったんです。
──転職先は、どういった基準で検討したのでしょう。
データ分析を仕事にするなら、難易度の高い業界かつ小さいころから好きだったエンタテインメントにしようと思い立ったのがきっかけです。過去のデータ分析では、医療や金融、製造にいたるまで、幅広い業界のデータが見れて、それはそれで楽しかったのですが、エンタテインメントという突発性や不確実性の高い領域にチャレンジしたいと思いました。
また、趣味で「M-1グランプリ」に出場するくらいお笑いが大好きで、そのほかのエンタテインメント全般も好きだったので、エンタメ業界は自分に合っているんじゃないかと思い、中途採用試験を受けました。
──「M-1」って漫才コンクールの「M-1グランプリ」ですか!?
そうなんです。大学卒業後に友人と出場しました。まぁ、素人なのでひとウケもせず、1回戦敗退でしたけど(笑)。その後、2022年11月にSMSに中途入社しました。
──いいネタを持ってますね(笑)。さて、前職とは異なり、SMSではWebアプリケーションの開発業務に携わっています。プログラミングやシステムに関するスキルは、入社後に習得したのでしょうか。
はい。そのときは、かなりスパルタで教え込まれました(笑)。私が担当している独自プラットフォームは、クラウドサービス上で動いているのですが、ミドルウェアのサービス更新が迫っていたのでアップデートすることになったんですね。
スマホなどの場合、OSは自動的にアップデートされますが、そのように簡単にはできない仕様で。しかも、バージョンアップ後にすべての機能が正常に動くか、動作検証もしなければいけません。そのマイグレーションといわれる作業を任されることになりました。
──システムに関する実務経験がないなか、どうやって乗り越えたんですか?
ミーティングでとにかくわからないことをメモし、いろいろな人に“助けてください”と泣きつきました(笑)。
でも、この経験を通して、サイトの立ち上げ方や、独自プラットフォームに備わっている機能など、システムの知識を体系的、網羅的に学べたので良かったです。また、上長や同僚とたくさんコミュニケーションを取ることで、“この人はこういう分野のスペシャリストなのか”と理解が深まりました。まぁ、そうなることを見越しての指名だったのだと、今になってわかるわけですけどね。
面白いことに、つい先日も次のバージョンアップがあったんです。私はアドバイザー的な立ち位置で参加しましたが、“2年でアドバイザーになれたか”としみじみしました(笑)。メインの担当は別のスタッフでしたが、手厚いフォローを心がけたつもりです。
──ほかに印象的なプロジェクトはありますか?
ある著名なクリエイターの方のファンクラブサイトと、そのサイト内に設けられたECに関するプロジェクトが、強く残っていますね。“クリエイターのイラスト作品のなかから、お客様が好きなものを選んでTシャツに配置できる、カスタマイズTシャツをサイトで販売したい”という依頼を受け、4~5カ月で機能を実装することになりました。
開発にあたっては、依頼者やITベンダー企業はもちろん、カスタマイズTシャツの製造会社、そして配送を行なうSMS内の物流チームとも密に連携を取りました。
──配送も関わってくるんですね。
お客様に間違った商品が届かないようにするためです。Tシャツの製造会社や物流チームにお客様と商品を紐づけるデータが、正確に渡るようにシステムを設計する必要がありました。
また、お客様からの問い合わせはサイト上に届くので、万が一お客様に間違った商品が届いてしまったときのために、“このお客様はどのイラストをどのように配置して作ったのか”というデータを把握しておく必要があります。そのうえで、どこにどういうデータを保存するか、どの値をどこに渡すのかを考え、丁寧に話し合いを重ねながら開発しました。
このプロジェクトは、最終的に大きな問題もなく無事にリリースすることができましたし、お客様からも好評をいただくことになりました。SNSでは、ひとりで10枚以上購入された方、大喜びで画像を投稿している方もいました。ファンのニーズを満たせたんだなと思うと、本当にやって良かったなと思います。
──前職では、データ分析したその先が見えないことに物足りなさを感じていたということですが、今の仕事だとエンドユーザーの反応まで見えますね。
エンドユーザーに直結する仕事ですし、お客様に喜んでいただけるWebサービスを提供できれば売り上げにも結びつくので、そういう意味でも手応えを感じています。
また、こうしたシステム開発業務のほかに、データ分析に関する部署も兼務しているので、今後は、データ分析による需要予測も組み合わせられたらいいなと考えています。
カスタマイズTシャツは受注販売でしたが、通常のTシャツはどれくらい売れるのか予想して商品を用意します。最適な在庫数を予測できれば、余剰リスクが減り、廃棄ロスも減らせるはず。過去の売上データやSNSのデータなどに基づき、AIで予測できないかトライしていきたいと思っています。
──仕事をするうえで達成感や、やりがいを感じるのはどんなときですか?
やっぱりユーザーの反応が見えたときに、やりがいを感じますね。自分が手がけた新機能で、お客様に喜んでもらえるのが一番の喜びです。
──関根さんは異業種からエンタメ業界に転職しましたが、エンタメ業界でエンジニアとして働く楽しさをどんなときに感じますか?
どんな業界でも、ITエンジニアの職に就いたのならスキルは身につきます。ですが、人を楽しませたり、喜ばせたりする開発に携われて、ダイレクトにその反応を感じられるのは、エンタメ業界ならではだと思いましたね。
新卒でソニーミュージックグループを志望するのは、“音楽を作りたい”“アーティストを支えたい”“アニメを作りたい”という人が多く、ITエンジニアを目指す人は少数派だと思います。でも、ITエンジニアならグループ会社のどこに行っても活躍できるはず。エンタメ業界でしか得られない経験も、エンジニアとしての汎用的なスキルも、両方得られるのがいいところだなと自分は感じています。
──SMSのIT部門では、どんな人材を求めていますか?
人とのコミュニケーションが好きで、なおかつ相手の立場に立って物ごとを考えられる人が望ましいですね。エンジニア同士なら“こういうプログラムでいけるよね”と共通のプログラミング言語で意思の疎通ができますが、エンジニア以外の方にはそうはいきません。
営業部目線で“この開発でどのくらい売り上げがあがるのだろう”、クライアント目線で“どういうサイト構成にしたら適切に魅力が伝わるのだろう”、ユーザー目線で“このUX、UIは本当に使いやすいのか”と広く考えられると、仕事のスキルも質も徐々に向上すると思います。
──学生時代に学んでおいたほうがいいと思うことはありますか?
絶対に必要となるプログラミング言語や資格はありません。ただ、いろいろなITサービスに触れ、自分なりの感想や解釈を持つようにするのは、トレーニングになると思います。
例えば、大手ECサイトを利用して“なぜこのサイトは買い物をしやすいのか”、人気のアプリを試して“なぜこのアプリは流行ったのか”と考え、自分なりにでも言語化してみる。“なんか面白い”“なんか使いやすい”をいかに言語化できるかが、ITサービスを開発するうえでは大切だと思います。
──やはり、SE(システムエンジニア)にはコミュニケーション力と言語化力が求められるんですね。
そうだと思います。ところで、ITエンジニア職でエンタメ業界に入ってから思っていることなんですけど……そのSEという呼び方がどうかなと思っているんですよね。一括りにSEと言われますけど、IT業界では正しく理解されても、エンタメ業界で“SE”と言うと「で、結局何している人? プログラマー?」とか言われますし。
なんかもっとみんながイメージしやすい、いい肩書がないかなと思っているんですよね。
──例えば、どんな肩書がいいんですか?
肩書というか……個人的には、“エンジニア”より“エンタテイナー”を名乗りたいんですよね。
──(爆笑)じゃあ、“システムエンジニア”ではなくて、“システムエンタテイナー=SE”でいいじゃないですか。M-1グランプリへの出場経験がある関根さんらしい肩書きですよ。
システムエンタテイナー! いいですね! それ! 今度からそう名乗ります。
──本当に原稿に書きますからね(笑)。さて、最後に関根さんが、今後実現したいことを教えてください。
まず、M-1グランプリ2回戦進出という夢を諦めないことがひとつです(真剣)。ちなみに、今はコンビなので、もうひとりメンバーを募集して次はトリオでの出場も画策しています(真剣)。もし、この記事を読んで「自分のことかな?」と感じた方は、何かしらの方法で連絡ください!(笑)
それとソニーミュージックグループには、SMS以外にもさまざまな事業会社があるので、各社でいろいろな経験を積みたいですね。あと、ソニーグループにも興味があるので、もしソニーグループのどこかの会社と交換留学的なことができたら、ぜひ手を挙げたいです。ソニーグループにも私みたいなSE(システムエンタテイナー)がいたら楽しそうですよね。何だったら、私がSE(システムエンタテイナー)仲間を作ります(笑)。
──話を聞いていると、関根さんはエンジニア職にもそこまでこだわりはなく、いろいろなことに挑戦したいタイプのようですね。
そうですね。今はたまたまシステムやITテクノロジーを扱っていますが、本職はエンタテイナーですから(笑)。常に人を楽しませることを仕事にしていきたいです。
文・取材:野本由起
撮影:干川 修

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