高木正勝が読み解く「スタジオ地図」の作品と音楽――5人の女性アーティストと紡ぎ出した奇跡の音①
2025.07.04


2024年にメジャーデビューし、注目度が上がる離婚伝説。精力的に行なうライブや、彼らのテーマと抱負について、ボーカルの松田歩と、ギターの別府純に聞く。
目次
離婚伝説 RIKON
(写真左より)別府 純(G)、松田 歩(Vo)。2022年結成。2022年8月に発表した1stシングル「愛が一層メロウ」で注目され、2024年にメジャーデビュー。最新曲「しばらく」が配信中。11月1日より全国のZeppほかにてワンマンツアーを開催。
記事の前編はこちら:離婚伝説はどこから来たのか? ぬるっと始まったふたりの音楽づくり
離婚伝説の勢いと注目度は上がり続け、2024年7月には自身初となる東名阪ワンマンツアー『渚のランデブー』を開催。追加公演として、同ツアーで2度目のLIQUID ROOM公演を開催し、『SUMMER SONIC 2024』をはじめとする全国のフェスやライブイベントにも多数出演。同年10月6日に台湾・台南安平で開催されたフェス『浪人祭~Vagabond Fest.2024』にも招待され、メインステージに立った。
「台湾でのフェスは、たくさんの人たちが観にきてくれてびっくりしましたね。口ずさんでくれてる方もいたんですよ。海外への影響はしっかりと感じる機会があまりなかったので、実際に初めて行ってみて、こんなに聴いてくれている人がいたんだっていう喜びがあったし、もっとほかの国や地域にも広げていけたらなと思いました。
昨年は、初海外公演だけじゃなくて、ファーストアルバム、ファーストワンマン、ファーストツアー……。いろいろと初めての経験をさせていただいて、挑戦の1年だったのではないかなと思います。
本当に忙しい日々を過ごさせていただいていたんですけど、目の前の一つひとつと大事に向き合えたのかなと思います。あっという間だったし、積み重ねてきたすべてが思い出に残ってるくらい、すごく楽しかったですね」(松田)
「今、言われるまで忘れてたこともあったくらい、いろんなことを思ったな……。でも、すべてのことがまだ処理し切れていなくて。すみません、また何年後かに聞いていただけたら(笑)」(別府)
2024年を振り返ってもらうと、遠い目をして笑顔を見せるふたり。怒涛の1年間を突っ走ってきた彼らにとって今は、コロナ禍にバンドを結成したときに思い描いた通りの未来になっているのだろうか。
「いや、まったくそんなことないですよ」(別府)
「バンドを始めてから思った通りのことなんて一度もなかったです。でも、それが楽しいですよね。人生、なにがあるかわかんないなって」(松田)
「この1年で強く思ったのは……もちろん、すべてオファーをいただいてのことなんですけど、“音楽ってこんなところまで連れてきてくれるんだ”ってことですよね。俺たちは本当に何もできない人間なのに、音楽が好きで表現することで、全国各地や海外にまで行ける。
それはやっぱり、自分たちがどうこうよりも、作品が連れていってくれたっていう感覚があって。音楽って、やっぱりそういう力があるんだなってことを実感した1年でしたね」(別府)
「僕も同じように感じてます。ひとつのできごとが終わったら、すぐに次のできごとが起こるので、本当に夢だったんじゃないかなと感じながら過ごしていて。本当はもっと噛みしめたいなって思うんですけど、この忙しく音楽と向き合ってる時間が、あとになって振り返ったときに、きっと大切なものになってるんじゃないかなとつくづく思うし、今後もそういう日々を送れたらいいなと思います」(松田)
さらに同年10月から11月にかけては全国6都市をめぐるライブツアー『2024 ONEMAN TOUR-そっと強く抱きしめて-』を開催し、全公演ソールドアウトを達成。2025年11月に行なうワンマンツアーでは、Zeppを中心に全国8公演を回ることも発表されている。そして、これまでの東京公演だけを見ても、Zepp Shinjuku (TOKYO)後に、LIQUID ROOM、EX THEATER ROPPONGI、Zepp DiverCity (TOKYO)と会場のキャパシティは右肩上がりで拡大。彼らにとってライブとは表現活動においてどんな場になっているのだろうか。
「最初にも言ったんですけど、僕ら一気にドンって何かが起こったということはなくて、ありがたいこと徐々に、ステージが大きくなっていったんですよね。急に“でっかくなった!”みたいな感覚やタイミングがなくやってきているので、次のツアーもより自然にやっていきたいと思ってます。
離婚伝説にとってのライブは……ミュージックビデオも音源もすごく好きですし、大事ですけど、やっぱ音楽の最初の鳴らし方は、元をたどればライブしかなかったわけですよね。だから、俺はライブが一番、直接的に音楽を届けられるものだと思っていて。
ほかのアーティストのライブを観に行くのも好きだし、今のところはすごく大事な場所だと思ってます。ザ・ビートルズみたいに、いつか変わってくるかもしれないですけど」(別府)
「自分は、聴いてくれている方々との対話なのかなって思いますね。皆さんからいただいている“愛”を返す場所だと思ってます」(松田)
そして、年が明け、2025年の第1弾として、1月15日には配信限定シングル「しばらく」がリリースされた。それぞれが作ったオリジナル曲をお互いに聴かせあっていた当時のやりとりが垣間見られる楽曲となっている。
「活動を始めた当初ぐらいから温め続けていた曲です。そのときはなかなか詰め切ることができずにいったん制作を止めていたんですけど、そこから3年経って、改めて作ってみようかってことで詰め始めて、何とか完成まで持っていけた作品です。過去を悔やんでもいい、未来を案じてもいい。どうか今を生きることを諦めないでほしい。という思いを持って制作しました」(松田)
離婚伝説の音楽にジャンルのカテゴライズはあまり似合わない。松田歩の甘くメロウなハイトーンボイスや、別府純の心地いいカッティングを含む縦横無尽なギタープレイというのは彼らを表わす一部分に過ぎない。
ノスタルジックやレトロスペクティブ、エモーショナルやセクシー、ヒーリングもそう。“愛の伝道師”と称されたマーヴィン・ゲイのアルバムタイトルを看板に掲げていることからもわかる通り、彼らの音楽の根底には“愛”が通奏低音のように流れている。
「しばらく」はそっと手を差し伸べるように寄り添う“愛”を歌った楽曲となっているが、離婚伝説の楽曲をラベリングするとしたならば、それだけが共通のテーマだと言えるのではないだろうか。
「ふたりでバンドのコンセプトやテーマ、ジャンルについて話し合ったことが一回もないんですよね。ただ、最初から“あくまでポップミュージックでありたい”という思いは同じだし、最初から自然と“愛”をテーマにしているってことは貫いてますね」(松田)
「愛がすべてですね。それは、人としても大事なことなので」(別府)
真正面から「愛しかない」と言い切る彼らのまなざしには迷いがない。そんな彼らが掲げる抱負と、更にその先に見ている将来像はどんなものなのだろうか。
「音楽的にはやっぱり、いいものを作りたいです」(松田)
「そうだね。自分たちが気に入ったものをできるだけ作っていきたいっていうだけかな。あとは、音楽だけじゃなくて、経験として、やったことがないことをいろいろやってみたいという思いもある。
ずっとスカイダイビングをしてみたいって言ってます。生まれたからには、やったことがないことをいろいろできればとは思うし、行ったことがない国や地域にも行きたい」(別府)
「俺は、個人的にはカップラーメンをあんまり食べないことが目標かな」(松田)
「歯医者にちゃんと通う、とかね。よく目標を聞かれるけど、そんな答えになっちゃうんですよ」(別府)
「一番は健康でいることですね。体調を崩さないこと」(松田)
「健康じゃなきゃ音楽なんてもってのほかだからね。みんなそれなりの健康とそれなりの生活があって、ようやく手に入るものだから。それがなきゃ、元も子もないので、自分たちも気をつけて、聴いてくれるみんなもね、世界中のみんなも少しでも健康であればと思います」(別府)
「大きな夢としては、ふたりとも犬や猫が好きなので、犬と猫が来れるフェスをやりたいです。そして、いつか教科書に載るような曲を作りたいです」(松田)
ぬるっと始まったという離婚伝説というバンド。彼らの歩幅のまま進んでいく先で、ひょんなことから、その夢が形になっているのかもしれない。
記事の前編はこちら:離婚伝説はどこから来たのか? ぬるっと始まったふたりの音楽づくり
文・取材:永堀アツオ
撮影:大塚秀美

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