シンディ・ローパーについて知っておきたい12のこと①
2025.04.22


ソニー・ミュージックジャパンインターナショナルで長年ボブ・ディランを担当する白木哲也が、ボブ・ディランについて知っておきたい基礎知識を解説。
後編では、ボブ・ディランの影響力や歌詞の力などについて語る。
目次

白木哲也
Shiroki Tetsuya
ソニー・ミュージックレーベルズ
記事の前編はこちら:ボブ・ディランについて知っておきたい12のこと①
──ボブ・ディランは多くのアーティストにも影響を与えています。
まずはザ・ビートルズですよね。逆に、ディランも彼らから影響を受けていて、ロックに転換していったことの大きな要因のひとつだと思います。ビートルズは、ディランに会ったあとジョン・レノンが作った「悲しみはぶっとばせ」では、歌い方、曲調、歌詞にもろに影響が出ていますよね。あと、ザ・ローリング・ストーンズも含めて、イギリスのアーティストはある時期、ボブ・ディランから強力なインパクトを与えられたんだと思います。
それはやっぱり、圧倒的に彼の詩の力がすごかったから。それまでのポップソングは男女の恋愛ソングが多かったけど、もっと違うことを言えるんだよっていうのをディランが実証したんですよね。そこに、大勢のアーティストが刺激されたわけです。
オアシス、ベック、アデル、エド・シーランとか、今、活躍してるアーティストにもディランから何らかの影響を受けていると語る人はいっぱいいます。こだわりのある歌詞を書く人で彼の影響を受けてない人はいないんじゃないですかね。
特にロックになってからは、韻を踏んだ歌詞をリズムに乗せて歌うのがすごく上手い。言葉を詰め込んで歌う「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」は、最初のラップミュージックなんて言われ方もしています。
──ボブ・ディランの楽曲をカバーしてるアーティストも多いですね。
そうなんですよ。こういう言い方は失礼かもしれないですけど、ディランの曲はカバーされると本当に素晴らしい曲になっちゃうんです(笑)。原曲も、もちろん素晴らしいんですけど、しっかりアレンジしたというよりは、そのときにディランがやりたいようにやったものが多い。
例えば「天国への扉」なんか圧倒的にシンプル。でもガンズ・アンド・ローゼズやエリック・クラプトンがやったのを聴くと、まったく異なるアレンジで見事に生まれ変わっている。カバーされて原曲の良さがわかるっていうのも、ディランの曲の特徴かもしれません。
Bob Dylan - Knockin' on Heaven's Door | 天国への扉 (日本語字幕ver)
Guns N’ Roses -Knockin' On Heaven's Door
一番わかりやすいのが「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」だと思います。これはディランが作った曲なんですが、最初に音源として発表したのはビリー・ジョエルです(1997年8月発売『ビリー・ザ・ベスト3』収録)。ビリーがディランに提供してもらった曲なんですね。ディランが自分の曲としてリリースしたのは、その1カ月後でした(1997年9月発売『タイム・アウト・オブ・マインド』収録)。
Billy Joel - To Make You Feel My Love (Official Video)
「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」物語 (日本語字幕ver)
そこからいろんな人がカバーしていって、アデルが1stアルバム『19』(2008年)で歌ってます。そのアデルの「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」が、本当に素晴らしい。ボブ・ディランのもいいんですが、ほかのアーティストが歌ったものを聴くと曲の印象がまったく変わりますね。
──「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」は450組以上のアーティストにカバーされて、今や21世紀のスタンダードと呼ばれるまでの曲になりました。これだけカバーするアーティストが多いというのは、言葉の部分だけじゃなく、彼が優れたメロディメイカーであるという証明でもあるんでしょうか。
そうだと思います。実は美しいメロディだったっていうのが、ほかのアーティストのカバーでわかるかもしれませんね(笑)。ディランの近年のダミ声を僕は好きですけど、違う声やアレンジで歌われると、曲の素晴らしさ、美しさが際立って、改めて気づく人が多いのかもしれません。なので、入口としてカバーからディランの曲を知るっていうのもアリだと思います。
──ボブ・ディランは、1962年のデビューからずっと、今も現役でライブ活動を行なっていますね。
ディランは今年84歳になりますが、いまだに『ネバー・エンディング・ツアー』という形でライブを続けてます。近年のライブでも「風に吹かれて」をやるんですけど、もはや原型がわからないぐらいに変えちゃってます。どの曲も演奏スタイル、メロディ、アレンジもオリジナルとはまったく変えて、現在進行形の姿をライブで見せてくれているって感じですね。
それはそれですごく新鮮ではあるんですけど、ファンとしては少し困惑するところでもあり、本当に何の曲を歌ってるかわからない場合もある。崩しすぎちゃって(笑)。
あと、近年はギターを弾かずにピアノやキーボードだけガムシャラに弾くことがひとつの演奏スタイルになりました。あれも今の気分なんでしょうね。弾き方がすごいんですよ。単音のリフみたいなフレーズを“タララン、タララン”って執拗に繰り返す(笑)。でも、ほんのたま~にギターを弾いたりするから、これまた謎です。
──茶目っ気もある人なんですね。
そうなんですよ。いろんな功績から、どうしてもボブ・ディランって小難しく感じる人が多いと思うんです。神様って呼ばれたりもしていて。でも、『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』でも描かれていますが、実は女性に対してヒドい男だったりもするし……。
──影響を受けた最愛の女性がいるにもかかわらず、ジョーン・バエズと出会って浮気してましたね(笑)。
“恋をしながら賢くなんてなれやしない”(「いつもの朝に」/1964年」)と歌ってもいますし、女性関係についてはルーズなところがずっとあるみたいで(笑)。ただ、良い言い方をするとしたら、人間くさい部分も非常に多い人なんですよね。
ニューヨークに出てきてボブ・ディランと名乗るようになり、その前の自分のこと、本名のロバート・アレン・ジマーマンのときのことは誰にも明かさなかった。今でこそ、自伝本で明かされたり周りの人が語っていたりして、どんな様子だったかわかるようになりましたが、当時は本人が積極的にジマーマン時代を語ることはなかったことは映画でも描かれていましたね。
ある意味、彼自身がボブ・ディランを演じていたんじゃないでしょうか。もちろん本心もあるでしょうけど、“ボブ・ディランならどう書くか”みたいに曲を作ってたところはあったと思います。それが想像以上にひとり歩きしちゃって、いろんな人たちに崇めたて祀られちゃった。それに対して反発するということの繰り返しだったのかもしれないです。
──2016年には、ミュージシャンで唯一、ノーベル文学賞を受賞しました。
ディランの言葉の紡ぎ方は本当に素晴らしいし、そこに関しては天才的だというのは紛れもないと思います。メッセージをある種文学的にして歌で伝えるってことを発明した人、と言ってもいいんじゃないでしょうか。
アメリカ人にとってのボブ・ディランは、一冊の本を読んで受ける感銘を一曲に詰め込んでくれる人という存在なのではないかなと。いろんな人の人生に影響を与えてるっていうのは、誰でも思い当たるようなことをうまく言葉にしてるってことだと思うんです。そのどれもが突き刺さるし、想像力を掻き立てられるものになってる。だからボブ・ディランの歌詞にはすごく強さがあるんですよね。
なので、ぜひボブ・ディランのかっこいい言葉のフレーズや、ちょっとひっかかるメロディとか、その辺りを入口にして彼の楽曲を聴いてみてほしいですね。
──ボブ・ディランが作品を通じて教えてくれたものというのは、日々の生活でもいきてきますか?
例えば人生に迷ったときに、「雨のバケツ」の“やらなきゃならないことをやるだけさ/だからうまくできるのさ”という言葉に励まされたりすることもある。あと、誰かを送別する言葉として、「ゴーイング・ゴーイング・ゴーン」の“あなたの心に従ってゆきなさい/そうすれば最後はきっとうまくいく” というフレーズとか。
彼の言葉を糧に日々を頑張ったり、悩みを解決する糸口を見つけたりとか、ディランの言葉を受け取った人がその人なりの何かを掴んでいけばいいのかなと思います。
「風に吹かれて」(1963年『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』収録)
どれだけ大砲の弾が撃たれれば
もう二度と撃たれないよう禁止されることになるのだろう?
どれだけ長く生き続ければ
虐げられた人たちは晴れて自由の身になれるのだろう?
どれだけ人は顔をそむけ続けられるのだろう?
何も見なかったふりをして
その答は、友よ、風に吹かれている
その答は風の中に舞っている
「いつもの朝に」(1964年『時代は変る』収録)
きみの立場からすれば きみは正しい
ぼくの立場からすれば ぼくは正しい
「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ、ベイビー・ブルー」(1965年『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』収録)
行くんだよ、いるものを持って
長持ちすると思うものを
とにかく取っておきたいものは
さっさとつかんじまえ
「ライク・ア・ローリング・ストーン」(1965年『追憶のハイウェイ61』収録)
どんな気がする?誰にも知られないってことは。
転がる石のように・・・
「我が道を行く」(1966年『ブロンド・オン・ブロンド』収録)
時が教えてくれるだろう
誰かが倒れ 誰が残されたか
君は君の俺は俺の道を行くとき
「フランキー・リーとジュダス・プリーストのバラッド」(1967年『ジョン・ウェズリー・ハーディング』収録)
人は自分の属さないところへ行ってはいけない・・・
道の向こうの家を天国と間違えるな
「アイ・スリュー・イット・オール・アウェイ」(1969年『ナッシュヴィル・スカイライン』収録)
愛しかない、それが世界を動かしている、それなしではなにもできない
だから全ての愛を与えてくれる人がいたら、心して受け取り
逃がしてはならない
「ゴーイング・ゴーイング・ゴーン」(1974年『プラネット・ウェイヴス』収録)
あなたの心に従ってゆきなさい
そうすれば最後はきっとうまくいく
「雨のバケツ」(1975年『血の轍』収録)
やらなきゃならないことをやるだけさ
だからうまくできるのさ
記事の前編はこちら:ボブ・ディランについて知っておきたい12のこと①
文・取材:土屋恵介

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