藤沢文翁インタビュー:『TAIL to TALE ~Story from 義経千本桜~』の世界観を紐解きながら演劇人としての覚悟を語る①
2025.05.16


グランドミュージカル『フランケンシュタイン』で、アンリ・デュプレ/怪物役を務める俳優・島太星へのインタビュー。
後編では、共演する3名のキャストや役づくり、今後の展望についても語る。
目次
島 太星 Shima Taisei
1998 年1月29日生まれ。北海道出身。血液型A型。身長177cm。2015年、CREATIVE OFFICE CUEとソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)による北海道在住者限定オーディション番組『アオタガイ学園』で優秀賞を受賞。さまざまなエンタテインメントに挑戦するボーイズグループ・NORD(ノール)の一員として2016年デビュー。グループだけでなく、ソロアーティストとしても活動の場を広げ、ミュージカル「ルーザーヴィル」「聲の形」「GIRLFRIEND」に出演するなど高い歌唱力が評価されている。4月10日開幕のミュージカル『フランケンシュタイン』にアンリ・デュプレ/怪物役として出演。
原作は、ゴシックロマンの名著「フランケンシュタイン」。人類の“生命創造への飽くなき探求”と“愛と友情”をテーマに、大胆なストーリー解釈と流麗かつメロディアスな音楽で描かれたミュージカル。2017年に日本で初演され、メインキャスト全員がひとり2役を演じるというトリッキーな演劇的作劇に加え、壮大でスピード感あふれる衝撃の物語が大反響を呼び、2020年に再演。その後も熱狂的な支持を受け、2025年に再々演を果たす。4月10日開幕となる東京公演を皮切りに、愛知、茨城、兵庫と全国4カ所をめぐる。
【あらすじ】
物語の舞台は19世紀のヨーロッパ。科学者のビクター・フランケンシュタインが戦場でアンリ・デュプレの命を救ったことで、ふたりは固い友情で結ばれる。“生命創造”に挑むビクターに感銘を受けたアンリは、彼の研究を手伝っていたが、殺人事件に巻き込まれるというアクシデントが勃発。ビクターへの友情と愛の狭間にいたアンリは、ビクターを救うために無実の罪で命を落としてしまう。そしてビクターはアンリを生き返らせようとして、亡き骸に自らの研究の成果を注ぎ込むが、誕生したのはアンリの記憶を失った“怪物”だった。“怪物”は自らのおぞましい姿を恨み、ビクターに復讐を誓うのだが――。
記事の前編はこちら:島太星インタビュー:ミュージカル『フランケンシュタイン』舞台成功に必要なのは、役への“飽くなき探求心”①
ミュージカル『フランケンシュタイン』は、島太星が初めて共演するキャストに囲まれたカンパニー。しかもビクター役、アンリ・デュプレ/怪物役がWキャストだというのもプレッシャーだ。ビクター役に名を連ねたのは、ミュージカル俳優としての長いキャリアと人気を誇る中川晃教と、2.5次元舞台やミュージカルの若手ホープとして注目を集める小林亮太。
そして、島太星と同じアンリ・デュプレ/怪物役を担うのは、大作ミュージカルへの出演も多数経験している俳優の加藤和樹。中川晃教と加藤和樹は、『フランケンシュタイン』の日本初演から同じ役を演じ続けている、本作を最も良く知る俳優たちと言える。
「皆さんのお名前はよく存じ上げていたんですけど、同じ舞台に立つのはこれが初めてなので、それにも舞い上がっちゃいました。
特に中川さんの歌と音楽が以前から大好きなので、製作発表で生の歌を聴かせていただいたときは、オーラを浴びすぎて本当にヤバかったです! ビクターが中川さん、アンリが僕という組み合わせを想像すると、アンリがビクターを尊敬しているという劇中のお話の通りになり過ぎてしまって、ちゃんとお芝居ができるかどうかも心配なくらい(苦笑)。
あの中川さんのオーラがどこから来ているのか、稽古場でできる限り盗んでいきたいし、共演者としておんぶに抱っこにならないように、自分のお芝居をちゃんとぶつけられるよう、頑張らなくてはと思ってます」
同じ役を演じる加藤和樹とは、舞台上での共演は叶わないが、「和樹さんのお芝居を真似するのではなく、役の本質をつかみとりたい。役についても、たくさん教えてもらいたいことがあります」と意欲を燃やす。さらに加藤からは、人としての器の大きさも学んだと語る。
「和樹さんは、歌もお芝居ももちろん素敵なんですけど、人間性も本当に素晴らしいんです。去年の夏、韓国で上演されたミュージカル『フランケンシュタイン』を和樹さんと(小林)亮太くんと一緒に2日間観劇させていただいたんですけど、チケットを和樹さんが全て用意してくださったんです。
ありがたくて仕方なかったんですけど、和樹さんは『僕らも先輩方にそうしてもらったから、気にしないで』って……もう、本当に感動しました。食事までご馳走になってしまい、本当に神様のような方です。中川さんも和樹さんも、現実世界のビクターのよう。何から何まで大尊敬です!」
そんな話の途中、島太星が「そうだ! 尊敬するビクターが、この作品にはもうひとりいらっしゃいました!」と大きな声を上げる。そのもうひとりのビクターは、潤色/演出の板垣恭一氏だ。
「板さんとは、2023年のミュージカル『聲の形』でご一緒したんですが、そのときは僕の技術がまだ追いついていなかったので、一つひとつを本当に厳しく丁寧に教えていただいたご恩があるんです。
実は『フランケンシュタイン』製作発表会のときも、板さんからありがたい言葉をいただきまして。亮太くんとふたりで、ビクターとアンリの曲『ただ一つの未来』を事前のリハーサルで初めて板さんの前で歌ったら、和樹さんのアンリにすごく影響されていることにすぐ気づかれて、急に『太星、自分を信じてないね』と。『太星は自分の感情で芝居をしてくれる俳優だと思ってセレクトしたんだから、君は自分を信じてほしい』とおっしゃってくれたんです。
『確かにそうだ!』と思って、そこから僕の歌も変わりました。板さんは、僕にいつも“魔法の言葉”をくれる存在なんです!」
「ただ一つの未来」をデュエットした相手役であり、同世代でもある小林亮太にも、島太星は尊敬の念を抱いている。
「亮太くんとも初共演なんですけど、本当に素晴らしい俳優さんだと感じています。『フランケンシュタイン』の歌稽古も亮太くんと合わせる機会があったんですが、そのときに彼がすごく役のことを考えているのがわかったんです。
音楽の福井先生からの質問にも、しっかりと自分の言葉で自分のプランを明確に説明できる。演出の板さんに対しても、自分の思っていることを言えるんです。彼は自分では歌は得意じゃないと言ってましたけど、この1年でかなりレベルアップした努力家で、とても信頼できる相手役です。
でも、これで僕の1歳下なのか! と思ったら、同じ舞台に立つのがちょっと怖くて(苦笑)。こんな下手な相手と一緒にやりたくないと思われないように、もっともっと、僕は死ぬ気で頑張らないといけないと思っています」
オーディション合格後、1年かけて行なわれた『フランケンシュタイン』の歌稽古。歌唱力には定評のある島太星だが、ミュージカル音楽には彼が得意とするポップスの歌唱とは違うスキルが求められる。彼自身が長期間『フランケンシュタイン』楽曲と向き合ったことで「歌も成長しました」と語る。
「オーディションでは出なかった低音が、安定して深く出せるようになりました。高音は練習を重ねればすんなり出るようになるんですけど、低い音は練習するだけでは無理で、才能も関係してくるとよく言われますよね。
その能力の部分を、自分の限界値まで引き上げてくれているのが福井先生なんです。昔は、自分の限界すらよくわかっていなかったので、そこは成長した部分だと思いますし、ミュージカルに大切な言葉一つひとつの届かせ方も、変わってきたなと思います」
ミュージカル楽曲は特に、セリフと同じように歌でストーリーと人物の心情をしっかりと表現するスキルが重要だ。楽曲の解釈や楽曲に対する演技者としてのアプローチも、『フランケンシュタイン』のように複雑で繊細な心情表現が求められる作品では、重要なピースのひとつだ。
「何度も同じ曲を練習するからこそ、歌う度に考え方が変わるんです。何時間もかけてちょっとずつ変わったというよりは、僕の場合、歌った次の日に考え方がポンって変わってるんですよ。通し稽古が始まって、ほかの俳優の皆さんとかけ合っていくと、またその考え方や表現も変わっていくと思います。
それまでに自分のプランというものをつかんで固めておかないと、ブレブレになっちゃうと思っていて、歌稽古中は僕なりの正解を決めるまでに、ひたすら違うパターンや違う演技プランを試しています。たとえ僕がそこから出した正解だと思ったプランが、もし実際の演出的に違っていたとしても、とことん考えることに意味があると思うので」
そのためにも、これまで出演したミュージカルの反省もいかしながら、かなり早い段階から台本を読み込んできた。
「セリフはもう全部覚えました。でも、ひとりで台本を覚えても、やっぱり相手のセリフを聞いて実際にお芝居をする段階までいかないと、自分のものにならない気がして。
過去の経験でいうと、稽古の初日には、そこまで辿り着けていないことが多かったんです。今まではそれがすぐできなかったから、『フランケンシュタイン』はそういうことがないように、早くセリフを合わせて、なおかつ自分らしいアプローチができるようになりたいんですよね。
板さんにも成長した自分を見ていただきたいですし、『お前は何も考えてないな!』と言われないよう、本番では自己満足で終わらないお芝居と歌を、会場に足を運んでくださる皆さんにお見せできるようにしたいです!」
『フランケンシュタイン』の劇中で島太星が歌うのは8曲ほど。なかでも特に思い入れがある、好きな曲はあるかと聞いてみた。
「うわー、どれもいい曲だから選ぶなんて難しい!! 前は『ただ一つの未来』が好きだったんですけど、それも変わってきていて。
製作発表会で和樹さんが歌われた『俺は怪物』も素敵なんですけど、『フランケンシュタイン』の曲ってつらい曲が多いから……演じる側としては歌っていて苦しい気持ちになってしまうので、なかなか『好きだ!』とは言いづらいんですよね。
『君の夢の中で』という曲も、すごく素敵なメロディと歌詞で、ビクターへの感謝や愛情を歌いますが、それも歌っていて本当につらいです。演じる側ではなく、観ていて楽しいだろうなと思うのは、ビクターと酒場で酔っ払いながら歌う『1杯の酒に人生を込めて』ですね。
でも、『大好きか?』と言われると『うん!』とは言えない。なぜかというと……ジャズっぽくてめっちゃ歌うのがムズいからです!(笑)」
ミュージカル『フランケンシュタイン』は、ビクターやアンリ、ビクターと怪物との物語を通じて深いテーマが描かれ、人々にいろいろなことを考えさせるメッセージ性にあふれた作品。製作発表会で島太星は、好きなセリフに「ただ一つの未来」の歌詞の一節にある“殺すための科学じゃなく、生かすための科学”を挙げていた。
「僕にはすごく響く言葉でした。本当に人類が全員その考えを持っていたら、多分、みんな争いなんてしてないと思うんですよ。『フランケンシュタイン』の劇中でもつらい情景は出てきます。だからこそ、科学は人類を救うものであってほしいし、平和な世界を創る手段であってほしい。そうアンリも思っていたはずだし、僕も同意見です。その場面に限らず、このお話は見終えたあと、すごく重たいものが残ると思いますね」
おそらく島太星自身も、ほかのミュージカルとは違った趣があるこの『フランケンシュタイン』を演じきることで、歌い手として、俳優として、新しい何かをつかみ取るに違いない。今はこのミュージカルに全身全霊を傾けている彼だが、今後はどのような芸能活動をしていきたいのだろうか。
「正直に言うと、CMに出たいとかはあるんですけど(笑)、やっぱり僕の知名度がどんどん上がるとすれば、映像作品やバラエティといったメディアだと思うんですね。そこで注目していただけたものを、ミュージカルに持って帰って、たくさんの方がミュージカルを観に行こうと思ってくれるようになったらうれしいですよね。
逆に、ミュージカルファンの方に、島太星って結構いいなと思っていただければ、バラエティを観てもらえるかもしれない。そんな風に、全部が循環していくのが理想です。だから、僕ができることは全部やりたいし、やっていかないと! と思います」
そして、自分が東京で活躍することで、NORDの活動にも貢献したいと真摯に言葉を紡ぐ。
「NORDにとっても、僕が東京で活動することが、グループが大きくなる第一歩だと思うんです。僕がミュージカルに出演することで、NORDのほかのメンバーにも声がかかるようになればいいなと思うし、バラエティに出て『こいつ面白いな』と思ってくれる方が増えて、NORDのライブを北海道に観に来てもらえるようになったら最高です。
北海道にはグループで盛り上げてくれる仲間がいるから、俺は東京でもやってやる! という覚悟が持てたんです。メンバーもみんな応援してくれているので、僕が札幌に帰れない間にたくさんNORDのレギュラーを増やしてくれよ!(笑)」
記事の前編はこちら:島太星インタビュー:ミュージカル『フランケンシュタイン』舞台成功に必要なのは、役への“飽くなき探求心”①
文・取材:阿部美香
撮影:干川 修

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