アニメ『LAZARUS ラザロ』渡辺信一郎監督インタビュー――迫力のアクションと緻密なドラマの誕生秘話②
2025.04.20


現在放送中のアニメ『LAZARUS ラザロ』。副作用がない“奇跡の薬”と呼ばれる鎮痛剤・ハプナが広まった近未来が舞台となり、そこに仕掛けられた罠と陰謀に抗うため、世界中から集められた5人のエージェントチーム「ラザロ」が活躍する近未来SFアクション作品だ。
スリリングなアクションと緻密なストーリー展開が楽しめる本作。アニメ『LAZARUS ラザロ』の魅力や制作秘話、本作にかける思いを渡辺信一郎監督が語る。
目次

渡辺信一郎
Watanabe Shinichiro
アニメーション監督 演出家
代表作『マクロスプラス』『カウボーイビバップ』『サムライチャンプルー』『坂道のアポロン』『スペース☆ダンディ』など。
アニメ『カウボーイビバップ』で世界的な人気を誇る、渡辺信一郎監督の最新作で、“世界の命運をかけたアクション大作”。西暦2052年――副作用のない鎮痛剤・ハプナが開発され、人類は苦痛から解放された。しかし、開発から3年後、ハプナは服用者を死に至らしめる、恐ろしい死の薬であったことが明らかになる。世界中のハプナ服用者が発症するまで、あと30日。世界中から集められた5人のエージェントチーム「ラザロ」は、ハプナの開発者であるスキナー博士が持つというワクチンを追う。キャラクターデザインを林明美(『BANANA FISH』)、アクション監修をチャド・スタエルスキ(『ジョン・ウィック』)が務め、音楽制作はKamasi Washington/Bonobo/Floating Points、アニメーション制作はMAPPA(『呪術廻戦』『チェンソーマン』)が手がける。国内外のトップクリエイターが描く、アクロバティックなアクションと、スリリングなドラマが幕を開ける。
記事の後編はこちら:アニメ『LAZARUS ラザロ』渡辺信一郎監督インタビュー――迫力のアクションと緻密なドラマの誕生秘話②
――渡辺監督の7作目となるTVシリーズアニメ作品『LAZARUS ラザロ』が、現在放送中です。本作は海外からのオファーがきっかけで制作を始められたそうですね。
そもそもの発端は、アメリカのアニメーション専門チャンネル・CARTOON NETWORKのAdult Swimから“SFアクションを作ってほしい”というオファーが来たことですね。
ちょうどこちらも、SFとかアクションとかをやりたいなというモードだったんで、タイミングが良かった。オリジナルアニメって作るのも大変で時間もかかるから、モチベーションが大事なんです。
――CARTOON NETWORKやAdult Swimと渡辺監督は、どのような関係なのでしょうか。
CARTOON NETWORKはもともと子ども向けのアニメ作品を中心に放送をしているチャンネルなんです。そこが2001年ごろに、自分の『カウボーイビバップ』(1998年)を放送するために、Adult Swimという大人向けの放送枠を作ったらしい。てことは、自分が産みの親みたいなもんかもしれない(笑)。
Adult Swimは、その後も『カウボーイビバップ』や『サムライチャンプルー』(2004年)を20年以上ずっと再放送してて、そのおかげですごく若い世代まで作品を知ってるんです。日本ではめったに再放送しないから、アメリカの方が有名という逆転現象が起きちゃって。複雑な気分です(笑)。
――では、『LAZARUS ラザロ』の具体的な制作について聞かせてください。制作のスタ-トはいつごろだったのでしょうか。
企画自体は、『キャロル&チューズデイ』(2019年)よりも前なんで、2018年ぐらいかな。制作に入ったのは、2021年ぐらいだと思います。
――となると企画の立ち上げはコロナ禍の前ですね。『LAZARUS ラザロ』のストーリーでは、人類を救うワクチンを追い求める展開が描かれています。このヒリヒリとした空気感はコロナ禍の影響を受けているのではないかと思ったのですが……。
違いますね。フィクションとして考えてたら現実に追いつかれた感じかな。『キャロル&チューズデイ』のときも、AIがヒット曲を作るのが当たり前の時代、っていう設定をフィクションとして描いたんだけど、ここ数年であっという間にAIによる作曲は現実化してしまった。現実のスピードが早すぎて、フィクションを作りにくい時代になりました。
――この作品はアニメーションならではのアクションシーンが魅力のひとつです。渡辺監督はこれまでも『カウボーイビバップ』や『サムライチャンプルー』などのアクション作品を手がけられていますが、今回のアクションシーンはどのようなコンセプトで作っていかれたのでしょうか。
まず現実的な問題として、過去にアクションものをやったときは時間もスタッフも足りないと思ったんです。だから今回は、それなりに予算と時間が確保できそうだったんで、やれるかなと。
――アクションとはやはり膨大なコストがかかるものなんですね。
コストだけじゃなくて、アクションが描けるアニメーターを集めないといけないし、いま作品数が多すぎてアニメーター不足の業界でそれをやるには時間が必要なんです。それに、いわゆるアクションデザインというか、動きを考える人を入れたいなと。コンテ段階でそれを全部やるのは物量が多すぎて、手が回らないので。
――アクションには、いわゆる銃を使った“ガンアクション”や殴り合いを描く“格闘アクション”など、さまざまなジャンルがあります。今回はどんなアクションを描こうとお考えでしたか?
ジャンルというより、スケール感というか、長尺で見応えのあるアクションをやりたかった。ひとつのアクションが始まって一連の動きがあってすぐ終わる、というんじゃなくて、ひとつのシチュエーションにいろいろなアクションが入っていて、どんどんとシーンが展開していくような流れのあるもの。
――広い空間を使ったアクションがひとつのポイントなんですね。
空間をうまく使うことが大事で、高低差であったり、段差であったり、横の広がりであったり、立体的な空間を上手く使うことができれば、アクションが映画的になる。空間を飛び越えるアクションはやっぱり気持ちがいいというのは、映画で学んだことです。
――アクションの気持ち良さを追求したいということですね。
そうですね。最近の映画のアクションって、リアルさを追及するあまり、残酷すぎると思うことが多い。例えば今の銃の威力は殺傷力が強くなっているので、撃つと相手の頭が吹き飛んだりして。そういうゴア描写とかグロテスクなビジュアルをやりたいんじゃなくて、見てて爽快感のあるものにしたかった。
――『LAZARUS ラザロ』では、アクション映画『ジョン・ウィック』シリーズの監督である、チャド・スタエルスキ氏がアクション監修として参加されていますね。
『ジョン・ウィック』のアクションはすごくアイデアも豊富だし、リアルでもあるけど、それだけじゃなくて、ちゃんとデフォルメされてて華もある。良いバランスで作られていて素晴らしいなと思ってたんで、思い切ってオファーしてみました。
――チャドさんは、時期的におそらく『ジョン・ウィック:コンセクエンス』の撮影中に『LAZARUS ラザロ』の制作に関わられていたのではないでしょうか?
そうです。ちょうど撮影の真っただ中のすごく忙しい時期で、本来はほかの作品なんか手伝ってるヒマはないはずなんです。それを「飛行機の移動中に編集したよ」とか言って、なんとか時間を捻出して『LAZARUS ラザロ』をやってくれたんですね。ホント感謝です。
――チャドさんとは、どのようにアクションシーンを作っていったのでしょうか。
脚本がある場合はそれを送って、まだ脚本ができてない話数は自分がリモート打ち合わせで、シーンとかキャラクターの説明をする。そしたら、アクションを実際のスタントマンが演じて撮影、編集までしたムービーが送られてくるんです。実演できないような動きの場合は、簡単なCGとか、手描きの絵コンテにして送ってくれましたね。
『LAZARUS ラザロ』Main Trailer
チャドさんのチームには『カウボーイビバップ』『サムライチャンプルー』のファンも多くて、モチベーションも高かったみたいです。
――アニメーターさんと作画の打ち合わせをするときは、このチャドさんの作られた動画を見ながら行なうのですか?
そうです。でも、チャドさんの動画があるなら、アニメーターは誰でもいい、誰でも描けると思ったら大間違いで。やっぱりその動画をどうアニメに落とし込むか、という部分で、うまいアニメーターが必要なんです。
あと後半に、チャドさんが自分の映画の追い込みで忙しく、動画が作れなかった話数もあるので、そこはアニメーターの山下明彦さんが絵コンテ段階で素晴らしいアクションを考えて描いてくれましたね。ホント感謝です。
――『LAZARUS ラザロ』のふわっとした空中移動や、アクロバティックな動きは、アニメーターの皆さんの作画の力を感じるアクション描写ですね。
第1話の脱獄シーンは関弘光さん、パルクールのシーンは小田剛生さんが、実写でいうアクションデザイン、スタントコーディネーターをやってる感じです。素晴らしかったです。
『LAZARUS ラザロ』Axel アクションムービー|"LAZARUS" Axel Action Trailer
後編では、劇伴やテーマソングを含む音楽制作やキャスティングについて語る。
文・取材:志田英邦
撮影:干川 修
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