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中国を拠点に若者からの絶⼤な⼈気があるbilibiliとアニプレックス(以下、ANX)が初のタッグを組んで世界同時配信が実現した、完全オリジナルアニメーション『TO BE HERO X』。日本人アーティストが手がける音楽や作品の魅力、制作の裏側をANXのプロデュースチーム3名が語る。
後編では、日本と中国のアフレコ事情の違いやオリジナルアニメの世界同時配信について聞く。
目次

中山信宏
Nakayama Nobuhiro
アニプレックス

高階 誠
Takashina Makoto
アニプレックス

孫宗楨
Son Sotei
アニプレックス
記事の前編はこちら:アニメ『TO BE HERO X』プロデューサーインタビュー――bilibili×アニプレックスが手がけるオリジナルアニメの裏側①
――bilibili×ANXでの共同制作は初の試み。音楽制作で苦労したことも多かったと思います。
中山:そうですね。やはりbilibili側のアニメ制作と弊社の音楽制作が同時進行だというのは大きかったです。そのプロセスについては、孫さんが中国語にも堪能で現地とのリレーションを担ってくれています。
孫:はい。音楽制作は、ANXの音楽制作を担うチーム“SSチーム”のプロデューサーである山内さんとも連携しながら行ないました。
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まずはリ・ハオリン監督から、シナリオが上がったヒーローエピソードから順に音楽の発注をいただいたのですが、通常の日本のアニメ音楽の発注とは形式がまったく違っていましたね。
――日本のTVアニメでは、アニメ監督や音響監督がメニュー表を作り、キャラクターのテーマ曲、戦闘シーンに使う曲、日常シーンやキャラクターの心情表現に使いたい曲といったように、曲調を決めて汎用性の高い楽曲をセレクトしてオファーするという話をよく聞きます。
孫:そうですね。日本の劇伴作家さんにとってはそういう形式のほうがやり慣れていると思いますが、リ・ハオリン監督からいただいたのは、曲のイメージがシナリオに沿って文章で書かれたものでした。“ここからここまでのシーンは、悲しげに”といったような。
それを一度、日本語に翻訳し、音楽プロデューサーの山内さんが、使用する楽器の編成や曲調に落とし込んだ、作家さんにお渡しする用のメニュー表に作り直して、それを中国語に再翻訳してリ・ハオリン監督に確認を取るという作業がありました。その確認が取れてから、再び作家さんと打ち合わせをして、制作に取りかかってもらうというプロセスでした。
高階:その翻訳がまた大変だったんですよね。
孫:そうですね。山内さんは、作家さんに分かりやすいように専門的な音楽用語を使ってメニュー表を作るので、僕も音楽用語にずいぶん詳しくなったと思います(笑)。
中山:メニュー表での発注というやり方でなかったのは、おそらく中国のアニメ音楽の制作が、映画と同じようにフィルムスコア(映像を見ながら、そのシーンに合わせてフレーム単位で音楽の長さや展開を調整して作曲していく方法)で行なわれているからだと思います。日本でも劇場版アニメはフィルムスコアで作られることが多いのですが、複数話にまたがるTVシリーズでそういった例は稀ですね。
孫:なので、キャラクターが変わるたびに音楽もガラッと変わるんです。リ・ハオリン監督の発注もキャラクターごとに大分テイストが違いましたので、作曲家を複数人体制にしたことが逆に良い結果につながりました。
――通常のTVアニメだと劇伴は多くても5~60曲程度だと聞きますが、エピソードごとに異なる作家による異なる劇伴が用意されたということは、総楽曲数も相当だったのではないですか?
孫:まさにそうです。総楽曲数でいうと、160曲ぐらいになりますね。その管理も大変でしたし、常に作家さんと打ち合わせをして常にレコーディングしている状況が続いていましたね。
高階:レコーディングなど実際の音楽制作は、山内さん率いるSSチームが総員体制で臨みました。
孫:そのぶん素晴らしく、作家陣の個性があふれ、バラエティに富んだ音楽が『TO BE HERO X』で聴けるので、ぜひ各エピソードを楽しみにしてほしいですね。また、各ヒーローのメインテーマとなる劇中歌はアニメ本編のオンエアタイミングで随時、先行配信をしていくので、そちらも併せて聴き込んでいただけたらうれしいです。
――そして国内の作業でいうと吹き替え版の制作もあります。メインヒーローのボイスを担う声優陣も、劇伴同様に豪華なメンバーになりました。キャスティングはどのように行なったのでしょうか?
高階:キャスティングは社内メンバー全員で話し合って決めました。メインヒーロー10名全員が主人公なので、こちらでキャラクターのイメージに合った理想の人選を考えながらオファーをさせていただいたところ、奇跡的に皆さまに引き受けていただけたんです。この超多忙なキャストの方々に出演していただけたのは、オムニバス形式だからこそ実現できたことでもあります。普段はヒーローごとに別々の収録になることが多かったのですが、なかにはほぼ全員揃って収録した日もありまして。あれは壮観でしたね。
――こちらも音楽制作と同じく、通常の海外アニメのアフレコとは違う苦労があったかと思いますが?
高階:通常のローカライズは、外画の吹き替えなどと同じく、既にすべてが完成した映像に合わせて、翻訳台本をもとに声優さんに演じていただくのですが、『TO BE HERO X』は世界同時展開ということもあり、スケジュールをやりくりして中国での本編制作と同時並行で行ないました。
中国語の中間素材を何段階かに分けながら受け取っていき、その過程で翻訳を進めて日本語版を録っていくスタイルですね。そういった手法も初めての試みでした。
孫:なぜ音声素材が先にあったかというと、中国のアニメ制作は、映像に合わせて声を録るアフレコではなく、先に声を収録して映像にダビングしていくプレスコ方式が一般的だと聞きます。
日本の場合は、完成形ではない場合でも絵コンテなどを繋いだ映像に合わせて、声優さんがスタジオに集まって掛け合いをするのが一般的です。今回、YouTubeのアニプレックスチャンネルでも公開している「【TO BE HERO X】ティザーメイキングPV」にも登場しますが、この作品においては、声優さんの音声収録も、一人ひとりが別録りで行なっているんです。
【TO BE HERO X】ティザーメイキングPV | 25年フジテレビにて放送!絶賛制作中!
――中国と日本の制作スタイルが、そこでも違うんですね。
中山:それもありますし、純粋に世界同時展開をするためには、このやり方がベストだったという理由もあります。なので、アフレコをするための素材の状況も、普通の吹き替え版とは違うので、声優さんも戸惑われたかと思いますが、皆さん実力のある方ばかりなので、想像以上の素晴らしい演技で応えてくださいました。
――音声収録のもとになるシナリオの翻訳作業はいかがでしたか?
高階:翻訳はハオリン監督作の『天官賜福』でもお世話になった本多由枝さんに担当していただきました。本多さんに上げていただいた台本を、日本語版音響監督の横田知加子さんと我々で、作品により合うようにブラッシュアップしていったという感じです。
――翻訳が難しい台詞というのもあったのではないでしょうか。
孫:そうですね。これは『TO BE HERO X』に限らないのですが、中国にも“含みのある言い方”というのがありまして。中国語なら1文字で済んでしまう表現も、日本語に直すと仮名にして5、6文字にはなってしま。それをいかに尺に収めるかは難しかったですね。同じニュアンスだけど違う表現、日本語的にはこういう言い回しをするよね、というのはスタジオに入ってからも、何度もやり取りをしました。
高階:また、一般的なニュアンスはもちろんですが、このヒーロー、このキャラクターだったらどういう言い回しをするだろう? というのもありますね。まずこの人の一人称は何だろう? というところから考えていく。この感覚は主観によるので正解がないんです。
翻訳に関しては、まず自分が作品を最も理解したうえで、どうすれば最善のかたちになるのか? というのを考え続ける作業です。難しいですが、楽しいところでもありますね。
――その創意工夫が、吹き替え版の演技にも反映されているのですね。
中山:そうですね。そこに関しても音響監督の横田さんが、とても丁寧に僕らの意見を聞きながら取り組んでくださったのが大きいです。また、音響制作の本作の担当者に中国人の方がいらっしゃったので、原音の細かいニュアンスについてもアドバイスをいただきました。
実際、シナリオの翻訳段階で日本語との親和性をかなりブラッシュアップしたつもりでも、実際に声優さんに演技していただくと、音としての聞こえ方がちょっと違うところも出てくるんです。なので、現場では横田さんのディレクションで、さらに微調整を加えていただきました。アフレコ現場も、まさに総力戦でしたね。
――とてもチャレンジングなクリエイティブに初挑戦された皆さんですが、『TO BE HERO X』は放送枠も日曜日の朝9時30分から。ANX作品としては、こちらも初の試みですね。
中山:はい。ANXのアニメは、深夜枠での放送が多いのですが、この枠をいただけた大きな理由は、作品のテーマが“ヒーロー”だったことです。もともとは、フジテレビと協力して日曜朝にオリジナルアニメを放送しようという企画から生まれた放送枠でした。そこにヒーロー物というのは普遍的な題材で、幅広くさまざまな世代の方に見ていただきたい新しいアニメとして『TO BE HERO X』を送り出せたらと考えました。
高階:日曜日の朝というと、他局でもヒーロー物が定番となっていますが、『TO BE HERO X』は決して子ども向けというわけではなく、幅広い年齢層の方に楽しんでいただける作品なので、新機軸のヒーロー物として共存できたらなと思っています。もちろん各種サイトでも配信がありますので、より多くの方に楽しんで見ていただきたいです。
――そして『TO BE HERO X』の配信といえば、世界同時配信も注目すべきポイントです。
高階:グローバルでの同時展開はハオリン監督たってのリクエストということもあり、ANXも全力でバックアップしています。ANXは日本に加えて欧米エリアでの展開も担当しているんです。
中国と日本の共同制作作品を全世界に向けて同時配信するというのも完全に新しいチャレンジで、中国、日本、欧米ほか様々な地域で、日本時刻の日曜日、朝9時30分の同じタイミングで配信をスタートします。
――世界中で話題になりそうですね。
高階:そうですね。ハオリン監督作品は世界的に評価が高いですし、ヒーロー物というジャンルなので北米での人気獲得も期待しています。
中山:オンエアに先駆けてブラジルのコンベンションで上映会を開催したり、欧米のアニメ、コミックイベントからも興味を持っていただけていますので、いろいろなところに露出していきたいです。中国に関しても、毎年bilibiliが主催する大規模なオフラインイベント『Bilibili World』は大盛況なので、オンエア開始後もさまざまな展開が作れるのではないかと思います。
――日本のアニメファンの方にも、ぜひご覧いただきたいですね。
高階:はい。国内でも、メインキャスト勢揃いで開催したジャパンプレミアや、世界観、キャラクター、音楽の魅力にフォーカスした様々なプロモーション映像を公開して反響がありました。
「TO BE HERO X」キャラクターストーリームービー《X編》 | フジテレビにて25年4月日曜朝9時30分放送開始!
オンエアが始まるとまた、この作品の中身の魅力が見えてくると思います。主人公のヒーローたちはとても強くてカッコいいのですが、凡人でもあるというのがこの作品のポイントです。
それぞれが道に迷ったり弱い部分があったり、しっかりと人間らしい部分も描かれます。そのなかで “信頼”というエネルギーが、ヒーローたちにどう作用していくか。そこにぜひ、注目していただきたいです。
孫:リ・ハオリン監督は、音楽周りも大変こだわられています。楽曲も多彩なので、ぜひ映像とともに音楽も存分に楽しんでいただけるとうれしいです。
記事の前編はこちら:アニメ『TO BE HERO X』プロデューサーインタビュー――bilibili×アニプレックスが手がけるオリジナルアニメの裏側①
文・取材:阿部美香
撮影:干川 修
©bilibili/BeDream, Aniplex

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