アニメ『mono』プロデューサーインタビュー——原作から滲み出る優しさや温もり、そして生々しさを伝えたい①
2025.06.21


現在放送中のアニメ『LAZARUS ラザロ』。副作用がない“奇跡の薬”と呼ばれる鎮痛剤・ハプナが広まった近未来が舞台となり、そこに仕掛けられた罠と陰謀に抗うため、世界中から集められた5人のエージェントチーム「ラザロ」が活躍する近未来SFアクション作品だ。
後編では、渡辺信一郎監督に作品の音楽制作やアフレコ、キャスティングについて聞く。
目次

渡辺信一郎
Watanabe Shinichiro
アニメーション監督 演出家
代表作『マクロスプラス』『カウボーイビバップ』『サムライチャンプルー』『坂道のアポロン』『スペース☆ダンディ』など。
記事の前編はこちら:アニメ『LAZARUS ラザロ』渡辺監督インタビュー―――迫力のアクションと緻密なドラマの誕生秘話①
――『LAZARUS ラザロ』の魅力のひとつは劇中に流れる音楽です。今回はKamasi Washington、Bonobo、Floating Pointsが劇伴、エンディングテーマはThe Boo Radleysが手がけました。とても豪華なメンバーが参加されています。
自分の監督作の音楽は基本的に、自分で音楽のプロデュースもしています。このメンバーも自分で選びました。
Opening Sequence feat. "VORTEX" by Kamasi Washington | Lazarus | adult swim
Lazarus End Credits | adult swim
――アーティストを決めるうえでポイントになったことはなんですか?
これはちょっと説明しがたいんですよ。“この感じだな”とビビッとくると言いますか。まあ、なんとも言えない感覚なんですけど(笑)。
――アーティストの皆さんとは、どのようなやり取りをして劇伴を作っていくのでしょうか。
彼らには、「サウンドトラックだからといって、遠慮したりかしこまったりしないでほしい」「サウンドトラックっぽい楽曲は作らなくていい」と伝えてます。具体的には、“ノー・ハリウッド、ノー・ハンス・ジマーでよろしく”とか言って(笑)。こちらとしては、彼らの個性が全開の音楽が欲しいんです。だから、「自分のアルバムの楽曲を作るような感じで」と伝えています。
もちろんそういうふうに作ると、本編でうまく使えるかどうか、って問題が出てくるんだけど、そこは自分が一番自信があるところなんで、遠慮はいらないぞと。結果的に3人とも、すごくいい曲を作ってくれましたね。
――劇伴においても、すごく力作揃いというわけですね。そういった劇伴と映像をマッチングしていくところはまさに渡辺監督の腕の見せどころと言えそうです。
アーティストの皆さんに仕上げてもらった楽曲を映像につけていく作業は、一番やりがいのある作業です。音楽と効果音、台詞があわさることで、一気に作品が息づいていくんで。あとアフレコは、やっぱりキャラクターに命が吹き込まれる瞬間ですから、いつも楽しい。つまりアニメ制作においては、音響作業が一番楽しいってことですね。それまでの苦労が長いんで。
――キャスティングについてもお聞きします。主役のアクセル役は宮野真守さんが務めていますが、宮野さんに主人公役をお願いした理由を教えてください。
基本的にはオーディションで決めました。でも実は、宮野くんは『キャロル&チューズデイ』(2019年)のときに脇役で出てもらってて、そのときから“次は宮野くんかなぁ”と思ってました。すごく華があるし、人を惹きつけるものがあるなと。
――宮野さんに念願の主役オファーだったんですね。
そういうことってあるんですよ。『坂道のアポロン』(2012年)のときは、諏訪部順一さんに脇役で出てもらったけど、密かに“次は諏訪部さんかなぁ”と思ってました。
――諏訪部さんは渡辺監督作品『スペース☆ダンディ』(2014年)で主役のダンディ役を務めていらっしゃいます。
やっぱり、主役を務める役者には単なる演技力とかいい声だけじゃなくて、人を惹きつける何かが必要だと思うんです。
『LAZARUS ラザロ』では、ダグ役の古川慎さんは、その芯のある声の存在感が良かった。クリス役の内田真礼さんは、自然体の演技をしたときの独特のナチュラル感が面白い。リーランド役の内田雄馬くんはキャラにすごくあっているし、芝居カンがいいなと。エレイナ役の石見舞菜香さんは、役にもピッタリだけど芝居もしっかりしてて、ナチュラルな芝居もやれる。メインキャラのなかで、一番NGが少なかったのが石見さんじゃないかな(笑)。
――渡辺監督作品でおなじみの方々も参加されています。
自分は基本的に、主役級のキャストで同じ人を2回使うことはないんです。やっぱり自分のなかにその特定のキャラでインプットされてるから、別のキャラに聞こえなくて(笑)。
でも最近は、20年も経ったら時効だろうと思い直して(笑)。
あと脇役で、以前と違うタイプの役柄とか声質だったらいいんじゃないかなと思って、今回は山寺宏一さん(スキナー役)や林原めぐみさん(ハーシュ役)に出てもらってます。『カウボーイビバップ』(山寺さんは主人公スパイク役、林原さんはヒロイン・フェイ役)から27年が経って、ふたりとも当時とは声質にも渋みが加わり、演技も進化してる。素晴らしかったですね。
――渡辺監督としては『LAZARUS ラザロ』にどんな手応えを感じていますか?
今回、ズシリとした重い手応えがありますね。いい作品になったんじゃないでしょうか。もし大ヒットしたら続きが作られる可能性もあるかもなんで、ぜひ皆さま応援してほしいです!
――今回、渡辺監督のキャリアにとっては、海外のスタッフとの連携や海外資本での作品づくりなど、新しい挑戦もされた作品になりましたね。
前から海外のスタッフと仕事をすることはあったけど、今回特に多かったですね。アニメーターとしても世界中から参加してる人たちがいるし、美術デザインはフランス人チームだし。音楽の3人とチャドさんのチームの話はさっきしましたけど、あと音響効果のFormosa Groupと仕事ができたのもいい経験だった。
Formosa Groupは映画『デューン』シリーズや『トップガン マーヴェリック』、TVドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』にも参加している、ハリウッドでも最高クラスの音響チームなんです。細かく言えば日本のやり方とか音の付け方の違いもあったけど、基本的には音っていうのは世界共通言語なんで、問題なくやれましたね。
――この作品をファンの方々にどのように楽しんでほしいと思いますか。
なんか『カウボーイビバップ』に似てるとか言われてるらしいんだけど、ビバップのときも最初はやたら『ルパン三世』に似てるとかさんざん言われたんです。でも話数が進むにつれ言われなくなっていった。だから、今回も話数が進むにつれ、“ラザロはラザロ”ってことがわかって、言われなくなるんじゃないかと思ってます(笑)。
まあ、同じ人間が作ってるんで、似てるとこは自然に出てきちゃうと思うけど、あそこが似てる、ここが似てないとかそういう感じで見ると純粋に楽しめないので、いったんビとかバとかいう作品のことは忘れて、無心に見てほしいですね。できれば、なるべく大きな画面、スクリーンと良い音響設備で楽しんでもらえたらいいな。
記事の前編はこちら:アニメ『LAZARUS ラザロ』渡辺監督インタビュー―――迫力のアクションと緻密なドラマの誕生秘話①
文・取材:志田英邦
撮影:干川 修
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