アニメ『mono』プロデューサーインタビュー——原作から滲み出る優しさや温もり、そして生々しさを伝えたい②
2025.06.21


アニメ『mono』は、『ゆるキャン△』でキャンプブームを盛り上げた、あfろ氏が描く、芳文社『まんがタイムきららキャラット』で連載中の人気4コマ漫画が原作。写真部と映画研究部が合体した「シネフォト部」に所属する女子高生たちを中心に描く“今週末の楽しみ方漫画”だ。
『ひだまりスケッチ』や『ぼっち・ざ・ろっく!』など、さまざまな作品をアニメとして送り出した芳文社とアニプレックス(以下、ANX)のタッグに、新進気鋭のアニメーションスタジオ・ソワネが加わり映像化が実現した本作。制作の舞台裏や作品に込められた想い、“日常系”における可能性について、ANXのプロデューサーに話を聞いた。
目次

石川達也
Ishikawa Tatsuya
アニプレックス

田中 瑛
Tanaka Akira
アニプレックス
記事の後編はこちら:アニメ『mono』プロデューサーインタビュー——原作から滲み出る優しさや温もり、そして生々しさを伝えたい②
――アニメ『mono』は、芳文社の『まんがタイムきららキャラット』で連載中の人気4コマ漫画が原作です。まずは、今回のアニメ化に至った経緯を教えてください。
石川:原作元の芳文社が自社の作品をアニメ化するようになったのは、2007年にANXが制作した『ひだまりスケッチ』がスタートなんです。それ以降、ANXは15年以上にわたって、芳文社の皆さんと一緒に、さまざまな漫画作品のアニメ化を行なってきました。
『ブレンド・S』や『スロウスタート』、僕が担当した『ぼっち・ざ・ろっく!』も芳文社が原作元となる作品です。そういった両社の関係性のなかで、あfろ先生(原作者)の作品『mono』の映像化の話が挙がり、ANXからアニメ化のご提案をさせていただきました。アニメ化のお話を進めていたときに、田中さんが打ち合わせに参加してくれて。そこからより具体的な内容の話し合いを進めていきました。
――あfろ先生が描く『mono』という作品の魅力、そしてそのアニメ化における可能性についてはどのように感じていましたか?
石川:原作者のあfろ先生は、これまでに『ゆるキャン△』という人気シリーズも手がけられた方なのですが、『ゆるキャン△』も『mono』も、作品にリアリティがあって、なおかつ、親しみやすさがあるんですよね。
日常のなかにそっと寄り添うような優しさと、温かさを感じさせる独特の世界観が魅力的な作品だと思うので、その繊細な原作の空気感というのは、アニメ化をするにあたってリスペクトを持って表現したいポイントでした。
また、“きらら系”と呼ばれている、いわゆる日常生活を描く“日常系作品”でありながら、聖地巡礼の要素や、キャラクターの描写に生々しさがあるところも、この作品の魅力だと感じます。今回のアニメ化で、『ゆるキャン△』のファンも含め多くの方に、この作品を届けることができたらと思っていました。
田中:近年のアニメにおける海外市場では、“バトルアクション”や“異世界転生もの”が特に注目を集めていますが、日常系の作品は“Slice of life”と呼ばれ、伸びしろがあるジャンルだと思っています。
“日常系作品”にも世界的な市場価値がありますし、国内での日常系の人気はそもそもとても高い。ですが、“日常系作品”が昔に比べると少なくなっている印象があったので、僕としては、そこにも可能性があるなと思いましたし、今、そういったアニメ作品を作ることにも意味があると感じていました。
――この作品は、高校の写真部員・雨宮さつきが霧山アン、元映画研究部の敷島桜子とともに「シネフォト研究部」を結成して、さまざまな活動をしていく姿が描かれます。写真や動画といった題材にはどのような印象がありましたか?
石川:この作品に出てくるガジェットは作品のひとつの柱だと思いつつも、ガジェットそのものを描くだけでなく、個人的には、ガジェットを通した、“人と人のコミュニケーション”が魅力だなと思っています。
『mono』のキャッチコピーは、原作でも使われている通り“今週末、何して過ごす?”。皆さん、週末の予定を考えるのは大変じゃないですか。どこに行こう、何をしようと、結構迷ってしまうと思うんです。そういうなかでの、ひとつの提案やきっかけになる作品になればいいなと思っていました。ちなみに田中さんはカメラ好きです。
田中:カメラは好きですね、詳しいわけではないですけど(笑)。僕はもともとアニメ宣伝に携わっていたので、より作品の魅力が伝わりやすく、宣伝の幅が広がる要素があるといいなと思っていました。
その視点で考えると『mono』はすごくたくさんのフックがある作品。カメラ、ドローンだけでなく、車、山梨県の聖地巡礼などいろいろな要素があって、見た方に興味を持ってもらいやすいポイントがたくさんあります。“日常系”というジャンルでありながら、登場人物たちに多様な動きを盛り込むことができるんです。
――『mono』の舞台は山梨県。さまざまな観光名所が劇中に登場します。作品を見たファンがロケーションをめぐる、いわゆる“聖地巡礼”について、アニメ『mono』での取り組みを教えてください。
石川:今回は、主に映画やドラマの撮影場所の誘致や撮影支援をする、山梨フィルムコミッションという団体の皆さんにご協力いただいていて、ロケ地の許可取りやロケハンのアテンドなどを一手に請け負ってくださいました。
アニメのみならず、さまざまな作品に関わっていらっしゃることもあり、豊富な知識や人脈をお持ちなので、通常であれば取材するのがなかなか難しいようなところも提案してくださいました。宣伝面でもかなり協力してくださっているので、とても有り難いです。
田中:オープニング曲のミュージックビデオを制作したのですが、メインキャストの3名が、山梨県のいろいろな場所をめぐって撮影しているんです。作品のファンの方も山梨県の各地に聖地巡礼をしてもらえるような、好循環を作りたいと思っています。
【MV】シネフォト部「メニメリ・メモリーズ!」|TVアニメ「mono」オープニングテーマ
石川:あfろ先生が手がける『ゆるキャン△』でも、作中に出てくるキャンプ地を聖地としてめぐる熱があったので、そこに敬意を払いつつも、『ゆるキャン△』を好きな方も含めて、本作の舞台をめぐって楽しんでもらえたらと思っています。週末、山梨県にちょっと行ってみるか! と、ひとりでも多くの人に思ってもらえたらうれしいですね。
あとは、聖地巡礼をされる方が増えると、もちろんその地域の活性化につながるのですが、あくまでも現地の方々、関係者の方々にご迷惑をかけないように、ルールとマナーはしっかりと守っていただけますようにお願いします。
――主人公の雨宮さつき役に三川華月さん、霧山アン役に古賀葵さん、敷島桜子役に遠野ひかるさん、秋山春乃役に上田麗奈さん、駒田華子役に河瀬茉希さんを迎えています。キャスティングについてはどのように進めていったのでしょうか。
田中:スタジオオーディションはかけ合いの演技をしていただいたので、複数のキャストさんと一緒にオーディションを行なったんです。そのときに雨宮さつき役の三川華月さんは最初の組だったんですよ。
石川:僕は、スタジオオーディションで、最初に声を聞いたときから“さつきだ!”と思っていたので、たぶんほかの皆さんも同じ気持ちだったと思います。
田中:さつき以外のキャストの方々も、キャラクターのイメージにとても合っていて、かなりすんなりとキャスティングが決まったという感じです。
――オーディション時のエピソードなども教えてください。
田中:実はオーディションの形式をちょっとだけ特殊にしていたんです。通常のオーディションでは、まずテープオーディション(テープに収録した演技を審査する)をしたあとに、スタジオオーディション(スタジオでキャストが対面で演技をしたものを審査する)を実施するのですが、今回は、スタジオオーディションでキャストの皆さんに演技だけでなく、インタビューもさせていただきました。
昨今は、キャストの皆さんにラジオやイベントに出演していただく機会も多いので、日常系の作品においては、キャストの方の人となりを知っておくことも大事なのではないかと思い、無理を言ってその時間を設けていただきました。
石川:10年前のオーディションでは、そういった時間を設けることはなかったと思いますが、最近はキャストさんのパーソナリティに比重を置いたオーディションも少しずつ増えてきました。
アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』のときは、“楽器が弾けるか”という質問をしたことはありましたが、今回のような形式でのオーディションは、ANXではあまり行なってこなかったので、すごく新鮮でしたね。
田中:オーディション結果の発表をするときも、すぐにその場で結論を出さずに、再オーディションとして改めてスタジオに来ていただいたんです。キャストの皆さんには何も言っていなかったので“3次オーディションがあるのかな?”と思った方もいたと思うのですが、サプライズで決定をお伝えしました。
そのとき、スタジオに360度カメラを仕込んで、合格発表の瞬間を撮影しておいたんです。そうやってアニメ本編以外の表に出ないところもエンタテインメントにしてみました。
――昨今、オーディション番組が人気を集めているように、作品の声優オーディションもエンタテインメントのひとつに昇華させる試みだったわけですね。
田中:そうですね。キャストの皆さんにとっても、こういったちょっと変わった試みは、ラジオや媒体の取材などで話すネタになると思うんです。いろいろなエピソードをアニメ本編以外でも作ることで、作品がより面白く、興味を持ってもらえるものになるのではないかと。シナリオや絵コンテ、作画はもちろんですが、チーム全体での作品づくりがアニメを面白くする材料として、とても重要なのではないかと思っています。
後編では、アニメーション制作を手がけるスタジオやクリエイター陣、音楽面について語る。
文・取材:志田英邦
©あfろ/芳文社・アニプレックス・ソワネ

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