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技術者たち ~エンタメ業界が求めるエンジニアの力~

システムエンジニア:若手エンジニアがシステム開発を通して知ったエンタメビジネスの奥深さ

2025.04.25

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さまざまなエンタテインメントビジネスを手がけるソニーミュージックグループで、専門的な知識とスキルを持って働く技術者(エンジニア)に話を聞く連載企画。

第16回は、ソニーミュージックグループ内で使用する業務アプリの開発、運用を手がける、システムエンジニアの末吉里帆に話を聞いた。

  • 末吉里帆プロフィール画像

    末吉里帆

    Sueyoshi Riho

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

キャラクタービジネスの基幹システムを開発、運用

──末吉さんは、システムエンジニアとしてソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)に在籍しています。まずは、日々の業務内容を教えてください。

ソニーミュージックグループのスタッフが業務で使用する社内アプリケーションの開発、保守、運用を行なっています。私が所属する部門では、音楽やアニメ、キャラクターなどグループ内各社の事業に即したアプリを手がけています。

──末吉さんは、そのなかでもどのグループ会社のアプリを担当しているのでしょうか。

ソニーミュージックグループには、『ピーナッツ』や『セサミストリート』、『きかんしゃトーマス』などのキャラクタービジネスを手がけるソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)という会社があります。

SCPには、自社開発のIPもありますが、複数の海外IPがビジネスの柱になっていて、権利元からIPをお預かりし、SCPがエージェントとしてライセンシーの皆さんとグッズ化やキャラクターを活用するビジネスを展開しています。

私は、こうしたSCPの契約管理、印税計算などを行なうアプリの開発、運用を担当しています。SCPがビジネスを行なうための下支えをするシステムと言うとイメージしやすいでしょうか。

笑顔で話す末吉里帆

──こうしたシステムを開発するには、経理や知的財産権の知識も必要になりそうですね。

私も勉強していますが、グループ内には著作権、契約、法務を専門的に扱う部門や経理部門があるので、そういった皆さんに確認を取りながら開発を進めています。開発が進んでからミスに気づくと時間的にも予算的にも大きなロスになってしまうので、システム開発のフローでも“今のタイミングで関係各所に確認しましょう”と誘導するようにしています。

──この連載の過去回で、末吉さんと同じ部門の方の回でも話に挙がりましたが、アプリの開発自体は、外部のITベンダー企業に依頼しているのでしょうか。

そうですね。ここまでのビジネスの基幹を担うシステムを内製するのは難しいので、ITベンダー企業の方たちに併走していただいて、プロジェクトの管理を行なっています。なので、実際にプログラムを書くことは少ないです。

大切にしている上司からのアドバイス「行き詰まったら現場に行け」

──末吉さんのこれまでの経歴を教えてください。入社以来、ずっと今の部署に在籍しているのでしょうか。

新卒で入社したときから同じ部署で働いています。ただ、初めからSCPの業務アプリを担当していたわけではなく、入社から3年ほどはグループの全スタッフが使うシステムを手がけていました。

──大学時代からエンジニア職に興味があったのですか?

大学では情報系学部を専攻していましたが、システム開発に特化していたわけではなく、より学術的なことを学んでいました。もちろんデータベース構築や簡単なプログラミングは経験していましたが、専門的な知識は入社してから業務を通して身につけていきました。

──ソニーミュージックグループを志望したのはなぜでしょうか。

やっぱり音楽が好きで、学生時代は好きなアイドルのリリースイベントに通うなど、ファン活動も楽しんでいました。しかも、私が就活をしていた2020年ごろには、既にオーディション番組が流行っていて。「Nizi Project」をはじめ、私もいろいろな番組を見ていましたし、アーティストになるまでの過程、それぞれの苦労といった裏側のドラマに面白さを感じていました。それもあって、アーティストを支えるソニーミュージックグループの仕事にも興味が湧きました。

──入社後は、どのようにして仕事を覚えていきましたか?

座学の研修ではイメージがしづらいからか、十分に理解できない部分も多かったので、実際に業務を進めながら徐々に仕事を覚えていきました。慣れるまでは、疑問が生じるたびに上長やほかのスタッフに質問していましたね。入社してすぐに実務を任されるので、担当する仕事の範囲は広いように感じました。

真剣な表情で語る末吉里帆

また、ITベンダー企業では、エンジニアと営業担当者の職域がはっきり分かれていることが多いですが、SMEではエンジニアでも予算やスケジュールの話をします。決められた予算内に収めるにはどうすればいいかを、新人のころから任されるのが珍しいなと感じました。

──仕事について学ぶうえで、影響を受けた人はいますか?

上長から言われた「悩んだら現場に行くといいよ」というアドバイスは、今も大事にしています。私はコロナ禍に入社していて、そのころにオンラインミーティングのシステムが導入されていたので、今でも各所とのミーティングはオンラインがメインです。

また、複数のプロジェクトを並行して進めているので、不明点などが生じたときはメールやチャットで問い合わせることがほとんどなのですが、やっぱり大事なことは対面で話したほうがいいと思いますね。

以前、あるサイトの制作をサポートした際、私の環境では問題なく見えているのに、担当者のところでは色合いや動作などが違って表示されるという不具合が発生しました。その際は、実際にデバイスを持ち寄り、顔を突き合わせて説明して無事に問題が解決しました。ソニーミュージックグループは市ヶ谷や六本木など複数の拠点がありますが、困ったときには直接会いに行き、対面で話をするように心がけています。

業務知識を深めたうえで、潜在的なニーズを引き出す

──仕事を進めるうえでは、相手の話を引き出し、何に困っているのかを聞くことも重要になりそうですね。

プログラムの設計には論理的思考力が必要となりますが、私たちの業務には、グループ会社のスタッフの皆さんの要望や困りごとと対峙し、“こういう機能があったら便利ですよね”“この会社の事業には、こういった大変さがありますよね”と、いかにリクエストを汲み取れるかも重要になってきます。どうすればビジネスを効率化できるか、そのためにはどんな仕組みづくりができるのかを考えながら、仕事に向き合っています。

そのため、各社のビジネスを理解することも必要です。例えば、キャラクタービジネスなら、どのようにして企画が立ち上がり、消費者のどんな行動によって収益が生まれるのか。そして、SCPはキャラクター市場において、どのような特徴があるのか。

こうした業界知識を自分で学ばないと、SCPの担当者から相談を持ちかけられても表面的なニーズしかくみ取れません。実際に“この業務アプリにこんな機能があるとうれしい”という話を掘り下げると、裏側には担当者の熱い思いが隠れていることもあります。

外部の企業ではなく、同じグループに所属するエンジニアとして、業務知識を深めたうえで話を引き出すことが大事なポイントだと考えています。

──そういった業界知識は、どのように学んでいったのでしょうか。

システムを見るだけでもある程度の情報はわかりますが、一番大事なのはそのアプリを使うスタッフが、どんな環境、どんなスケジュール感で仕事をしているのかを知ること。そのために現場に行きますし、SCPの担当者との何気ない雑談から“こういうことを大事にして仕事をしているんだ”と気づかされることもたくさんあります。

例えば、同じようなキャラクタービジネスでもIPによって業務の進め方が違います。契約管理ひとつとってもIPの権利元によってルールや表記が異なるので、システムを統一化するのが困難です。それぞれルールが違うなかで、どうすれば効率化できるのか、現場の声を聞きいて、自分なりに考えるようにしています。

白いトップスを着た末吉里帆

オーディションのシステム開発で知った若年層の動向

──今まで携わったなかで、特に印象的なプロジェクトはありますか?

SCPの業務アプリとは別軸で、オーディションに特化したシステムの開発、運用も手がけています。ソニーミュージックグループでは、アーティストや俳優、クリエイターなどの新人発掘オーディションを多数行なっていますが、それらの情報を管理するシステムです。

ソニーミュージックグループに限らず、オーディションを受けるのは若年層がメインで、10代前半の方も多い。よく「若年層のメール離れ」と言いますが、10代の方はオーディションに応募するために必要なメールアドレスを持っていないこともあります。

私の世代では、メールアドレスは持っていて当然のものでしたが、新人発掘部門の担当者によると、最近は“メールアドレスがないんですけど、どうすればいいですか”という問い合わせも珍しくないそうです。会社では若手とされていますが、「そういう時代か……」と思いました(笑)。

──となると、そういった方々に向けて応募フォームなどもリニューアルする必要がありそうですね。

そうなんです。今後はメールアドレスなしで応募できるようにすることも検討しています。やはり応募のハードルは上げたくないので、どうすればいいか、工夫する必要があると考えています。

──末吉さんは、「入社前にオーディション番組をよく見ていた」と言っていました。その経験もいかされそうですね。

まさにそうです。オーディション番組をたくさん見てきたので、審査会場やその裏側もなんとなくイメージできますし、“応募者の情報は何人か同時に見比べられるように、こういう画面にしよう”など、具体的なシステムに落とし込むこともできます。視聴者として楽しんでいたことからも、得るものがあるんだなと実感しました。

希望次第でエンジニア以外にもキャリアが広がる

──仕事をするうえで、楽しさややりがい、達成感を覚えるのはどういうときでしょうか。

今の話にもつながりますが、自分がファンのひとりとして楽しんでいたことの裏側に携われるのはうれしいですね。あとは、エンタメビジネスの仕組みについて、システムを通じて知ることができるのが面白いです。現在はSCPの業務アプリを担当していますが、ソニーミュージックグループが行なっているアニメや音楽などの事業について俯瞰できるのは面白いです。

──そこに、エンタメ業界でエンジニアをする楽しさもありそうですね。

そうですね。エンジニアと言ってもITのことばかり考えているわけではありません。エンタメビジネスについて日々試行錯誤しながらシステム開発、運用を行なっているので、少なくともアニメ、音楽、ゲームなどエンタテインメントの分野で好きなことがある人なら楽しさを感じられると思います。

──末吉さんは現在SCPの業務アプリを担当していますが、次に挑戦したいビジネス領域は?

ソニーミュージックグループ内のスタッフが使用するアプリだけでなく、先ほどお話したオーディションのシステムのようなBtoCのシステムで、より多くの方々に感動や楽しさを届けられるようなシステム開発にも携われたらと思っています。例えばファンクラブサイトやECサイトの運営など実際のファン体験に関わるアプリ開発・運営にも、いつか携わってみたいですね。

楽しそうに話す末吉里帆

大切なのは人に興味を持つこと、興味があることを聞けること

──どんな人がソニーミュージックグループのエンジニアに向いていると思いますか?

私がいる部署は、業務アプリの開発や運用による業務改善が主な仕事です。そのため、エンタメ業界への理解や情熱がありつつ、人に対して興味がある方、興味があることをどんどん聞けるマインドのある方が向いていると思います。

例えば、オーディションのシステムなら「メールアドレスがなくても応募できるようにしたい」と言われたとき、「なぜそう思ったんですか?」と掘り下げる。それによって「若い人たちはメールアドレスを持っていないから」など、若年層の動向も見えてきますよね。相手が発したひと言に対し、「なぜそう思ったのかな」と興味を持って聞けるといいのではないかと思います。

──エンジニア職に就く前に、学んでおくべきことはありますか?

“絶対にこのスキルが必要”というものはありません。ただ、私たちの部門は、事業会社から「こういう困りごとがあります」と言われた際に、解決するためのアイデアを出すのが仕事です。そのためには、クラウドやデータベースなどITに関する基礎知識を仕入れ、引き出しを増やすことが大切ではないかと思います。

あとは、やっぱりエンタメ企業なので、いろいろなエンタテインメントを体感しておいてほしいですね。

白いライティングのなか、自分の目標について語る末吉里帆

──末吉さんが、今後ソニーミュージックグループで実現したいことはありますか?

エンタテインメントは、誰かの感情に訴えかけるものです。せっかくエンタメ企業に入社したので、人々のワクワクやドキドキに何かしらの形で携われたらうれしいです。

──最後に、ソニーミュージックグループのエンジニアを目指す人に向けてメッセージをお願いします。

情報工学を学んできた方のなかには、エンタメ企業に入社するイメージが持てないという方もいるかもしれません。ですが、人々に感動を届けるエンタメ企業には独自の面白さがありますし、自分が何のために働いているのか、目標もはっきりしています。やる気次第でITスキルも極められる環境なので、好きなことに携わりたい方にはぜひおすすめしたいです。

文・取材:野本由起
撮影:干川 修

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