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ザ・プロデューサーズ~感動を作る方程式

映画『国宝』から始まる新たな実写作品への挑戦――ミリアゴンスタジオが描く未来②

2025.06.06

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歌舞伎役者の壮大な一代記を描いた吉田修一の原作小説を、李相日監督が映像化。吉沢亮、横浜流星の鬼気迫る演技が既に話題を呼んでいる映画『国宝』。映像化は困難と言われた本作は、どのようにして生まれたのか。

後編では、映画『国宝』の企画が立ち上がった経緯や作品の見どころを、製作幹事を務めたミリアゴンスタジオの村田千恵子に聞いた。

  • ミリアゴンスタジオ村田千恵子プロフィール写真

    村田千恵子

    Murata Chieko

    ミリアゴンスタジオ

映画『国宝』とは?

映画『国宝』キービジュアル

任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げる、主人公・喜久雄の50年を描いた壮大な一代記。吉田修一による小説『国宝』の映像化作品。監督は『フラガール』で第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞し、吉田修一原作作品『悪人』『怒り』の李相日。脚本は『お引越し』『サマーウォーズ』などを手がけた奥寺佐渡子。撮影は、『アデル、ブルーは熱い色』のソフィアン・エル・ファニ。四代目中村鴈治郎が歌舞伎指導を担当する。稀代の女形・立花喜久雄を演じるのは吉沢亮、喜久雄のライバルとなる歌舞伎名門の御曹司・大垣俊介を演じるのは横浜流星。高畑充希、寺島しのぶ、田中泯、森七菜、見上愛、永瀬正敏、宮澤エマ、黒川想矢、越山敬達、三浦貴大、嶋田久作、渡辺謙らが名を連ねる。

記事の前編はこちら:映画『国宝』から始まる新たな実写作品への挑戦――ミリアゴンスタジオが描く未来①

『国宝』の映像化が困難と言われた訳

――李相日監督は、映画化の企画に向けて2020年に主演の吉沢亮さんにご自身でオファーをされたと聞きました。

2010年ごろに、李監督から歌舞伎の女形をテーマにした映画を撮りたいと言われたことがありました。そのときはハードルが高すぎて成立しなかったのですが、監督のなかでその思いは消えていなくて、『悪人』『怒り』でご一緒された吉田修一さんがその後『国宝』を連載されたので、(※『国宝』は2017年より『朝日新聞』に連載。2018年に単行本化)「『国宝』は李さんがいつか映画化するんだろうな」と思っていました。

そこからまたしばらく経った2019年に、李監督から、「『キングダム』を見たが、吉沢亮さんなら喜久雄ができるかもしれない」と言われたんです。そのときも、まさか自分が『国宝』に関わるとは思っていなかったので、「吉沢さん、素晴らしいですよね、いいじゃないですか」みたいな感じで、他人事のようにお返事したのを覚えています。

微笑みながら話す村田

――李監督と村田さんは映画『国宝』以前から交流があったのでしょうか。

李監督とは、同じ師匠筋みたいなところのご縁で18年程前から知り合いでした。ある作品を、私は当時アシスタントプロデューサーのような立場で一緒に作ろうとしたこともありましたが、残念ながら実現しませんでした。それ以来、たまに会って近況報告などをしていましたが、とても大変な監督なので(笑)、自分がプロデュースすると考えたことはありませんでした。

『国宝』については、原作小説が本当に素晴らしいだけに、映画化のハードルが非常に高く、企画を実現するのはかなり難しいと考えていました。

――『国宝』のどのようなところに映画化の難しさを感じていたのでしょうか。

ひとつは脚本です。原作が上下巻の長さでキャラクターも多いので、そのままでは2時間という映画の尺には収まりません。

もうひとつは、ビジネス面での難しさです。この作品は制作費がとても大きな規模になることが予測されたので、それに見合うようにビジネス面でも収支がとれるような商業的な作品にする必要がありました。尺の長さと内容も含めて、劇場映画として成立させるために、監督とプロデューサーがともに納得できる脚本ができなければ、映画化のグリーンライトは出ないだろうと、監督ともお話していました。

映画『国宝』場面写真

――そういった事情がありながらも、村田さんが『国宝』の映画化に取り組むことになったのは、どういった背景があったのでしょうか。

まずは、会社が「面白い企画だからチャレンジしてみては」と後押しをしてくれたことでした。

そして、吉沢亮さんの存在です。吉沢さんとは、私がソニー・ピクチャーズ エンタテインメントに在籍していたときに、『斉木楠雄のΨ難』(2017年)、『キングダム』(2019年)という作品でご一緒させていただいたのですが、お芝居が圧倒的に上手いということだけではなく、“本当にお芝居が好きなんだな”と感じた瞬間が何度かあり、とても信頼のおける俳優でした。

商業的に成功させることが必須となる作品だったので、監督がこの人でなければいけないというクリエイティブと、ビジネス面でのスター性との両方を兼ね備えた主演俳優が決定しているということは大きな決め手となりました。

映画『国宝』吉沢亮、横浜流星場面写真

――課題である脚本は、企画を立ち上げてから検討していったということでしょうか。

そうです。まずは、監督と相談をして、奥寺佐渡子さんに脚本をお願いすることを決めました。原作小説の映画化オプション権を獲得してから3カ月後くらいだったと思います。奥寺さんは、さらにそこから約2年の歳月をかけて素晴らしい脚本を執筆してくださいました。

大規模な映画製作を進めるための体制づくり

――“歌舞伎”という伝統芸能を題材にすることについては、どのように考えていましたか?

映画のなかで“歌舞伎をどう描くのか”は監督の仕事であり、私の役割は“監督が作りたい映画を作れるように環境を整える”ことだと理解しています。

そもそも歌舞伎の歴史と伝統を受け継ぎ、歌舞伎公演の企画、制作、運営を担っておられるのは松竹株式会社なのですが、歌舞伎を映画で扱うために、どのような許諾を、誰から、いつ、どうやっていただければ映画を作ることができるのかを見つける、ということが私の重要なミッションでした。

今回、本当に有り難かったのは、原作者の吉田修一さんが『国宝』執筆時にご協力を仰がれていた四代目中村鴈治郎さんの存在です。鴈治郎さんは、映画の歌舞伎指導のみならず、出演もしてくださっているのですが、この大切なご縁がなければ、この映画は実現しませんでした。

真剣な表情で話す村田

映画の価値を上げるための施策

――企画の立ち上げから約5年、クランクインから1年、ようやく公開日を迎えます。ここまでで最も大変だったことは何ですか?

大変なことだらけでしたが、一番大変だったことは、監督がクリエイティブで到達したい目標とプロデューサー陣が商業的な目線で到達すべき目標との間の調整だったのではないかと思います。

プロデューサーの松橋真三さんとは『キングダム』でもご一緒させていただいたのですが、商業的な目線をきちんと持っておられるだけではなく、経験値が豊富で私なんかよりずっと上手に、クリエイティブ面での意見を伝えることができるプロデューサーなので、今回も多くのインプットを与えてくださいました。

編集のときなど、私がひとりで「これだとカンヌに行けない」など言ってしまうのですが、たぶん誰一人、何を言っているのかよくわからなかったと思います。しかも、私の意見を反映したからといってカンヌに行ける保証はないわけで、本当に答えが見えないなかで調整していくことが大変でした。

――映画『国宝』は、第78回カンヌ国際映画祭 監督週間部門に正式招待されました。村田さんにとってカンヌとはどんな場所なのでしょうか。

ヨーロッパ、そのなかでもフランスは、映画を芸術として評価している地域だと理解しています。本来点数がつけられるものではない芸術を評価するのは難しいのですが、カンヌ国際映画祭で賞をとること、その手前でカンヌ国際映画祭に選ばれること自体が、それだけで評価されたということになります。そして、その評価によって、芸術に価値が生まれます。

例えば、絵画を評価する人がいて、その評価によって著名なアートギャラリーに展示されるとします。それによって、その絵画に値段がつけられ、アートとしての商業的価値が生まれます。

映画業界においてカンヌという場所は、まさにギャラリーだと私は思っています。毎年約100作品が選ばれますが、カンヌの素晴らしい点は、著名な監督の作品だけではなく、新人監督の作品も同じ土俵に並ぶことです。新人であっても、カンヌに選ばれた監督の作品は、その後、商業的にも高い価値がつきます。それゆえに、『国宝』という作品にとって“カンヌ国際映画祭”が目標のひとつとして大切だと考えていて、カンヌに出品したいと思っていました。

――映画『国宝』を製作するなかで、村田さんがプロデューサーとして“震えた”瞬間はどんなときですか。

これはいい意味で“震える”ということですよね?(笑)。

例えば、作品づくりを漆器づくりに例えると、私の仕事は輪島塗を作ることができる“工房を準備する”ことです。輪島塗の漆器を作るのは職人さん、映画では監督やスタッフの皆さんの仕事です。その工房から、予想以上に素晴らしい、美しい輪島塗の漆器ができあがったとき一番感動するのかな、と思います。

『国宝』では、吉沢亮さんをはじめとするキャストの皆さんが想像をはるかに超える素晴らしいお芝居をされているのを見ることができたとき、カメラや美術、音や音楽、細部に至るまでのそれぞれが想像を超えた映像となっていたのを見ることができたとき、その瞬間が一番震えました。

映画『国宝』渡辺謙場面写真

映画『国宝』高畑充希場面写真

――映画『国宝』が完成して、改めてどのようなことがカギになったと考えますか?

作品を作るということはものすごく大変なことだし、リスクも大きいことです。私自身も「この条件が揃わないのであれば、この作品は作らない……というか作れない」とハードルを設けていましたが、結果がわからないビジネスだからこそ、「作らないほうがいい」と言う人も沢山いました。それでも「やってみよう」という会社の姿勢でしょうか、ものづくりを根本から理解している会社だからこそ、この映画を作ることができたと思います。

映画『国宝』カンヌ国際映画祭

©Kazuko Wakayama

記事の前編はこちら:映画『国宝』から始まる新たな実写作品への挑戦――ミリアゴンスタジオが描く未来①

文・取材:志田英邦
撮影:干川 修

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025 映画「国宝」製作委員会

映画『国宝』作品概要

原作:「国宝」吉田修一著(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
脚本:奥寺佐渡子
監督:李相日
出演:吉沢亮
横浜流星/高畑充希 寺島しのぶ
森七菜 三浦貴大 見上愛 黒川想矢 越山敬達
永瀬正敏
嶋田久作 宮澤エマ 中村鴈治郎/田中泯
渡辺謙

製作幹事:MYRIAGON STUDIO
制作プロダクション:クレデウス
配給:東宝

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