「カワイイ」の魔法は世代を超えて。元祖インフルエンサー・水森亜土が魅せるガーリィな世界②
2025.06.20


1960年代から1970年代に女児や女性層を中心に爆発的な人気を誇り、「カワイイ」文化の先駆けとして世代を超えて愛されているアーティスト「水森亜土(ADO MIZUMORI)」に関するソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)の取り組みをフィーチャー。
2024年1月にマスターライセンスを獲得してから、SCPでは「ADO MIZUMORI WORLD」というコンセプトを掲げ、「ADO MIZUMORIミニギャラリー展」や「亜土ちゃんマーケット」などさまざまな取り組みを開始。水森亜土のガーリィな世界観を改めて世に広めるためのプロジェクトを進めている。
本プロジェクトに携わる、SCPの担当チームに「ADO MIZUMORI WORLD」発足の経緯から現在の取り組みについて話を聞いた。
目次

横関悦子
Yokozeki Etsuko
ソニー・クリエイティブプロダクツ

徳永祥子
Tokunaga Sachiko
ソニー・クリエイティブプロダクツ

上村亜依子
Uemura Aiko
ソニー・クリエイティブプロダクツ

永野 苺
Nagano Mai
ソニー・クリエイティブプロダクツ
東京・日本橋生まれ。高校卒業後、ハワイに遊学。アクリルボードに両手で絵を描きながら歌を歌うという印象的なパフォーマンスで注目され、イラストレーター、画家、女優、ジャズ歌手など多分野においてめまぐるしく活躍。さまざまな分野で発信する「カワイイ」のカルチャーは、見る人を魅了し、世代を超えて今も多くの人に愛されている。
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──2024年1月、SCPは「水森亜土(ADO MIZUMORI)」のマスターライセンスを獲得しました。その経緯を教えてください。
横関:SCPでは、過去にライセンシー(権利元が保有するIPを用いてグッズなどを製造する企業)として水森亜土さんのグッズを手がけたことがあり、当時から手帳カレンダーなどグッズの売れ行きが良く、もしチャンスがあればまたご一緒したいと思っていました。SCPが権利をお預かりすることで、また違うステージに行けるのではないかという思いもあり、本格的にアプローチさせていただきました。
その結果、亜土さんのアートを使った商品化やサービスなどのライセンスを行なうマスターライセンス権を獲得することになりました。現在は、時代を超えた水森亜土の世界「ADO MIZUMORI WORLD」というコンセプトで、商品化やポップアップショップの展開などを広げる活動を行なっています。なお、亜土さんのマネジメントや絵画の販売などは、引き続き所属事務所の亜土工房が担当されています。
──皆さんは、このプロジェクトにどのような形で関わっているのでしょうか。
横関:私はクリエイティブチームの責任者をしています。『水森亜土』のほか、『ピーナッツ』などに関するマーケティングやクリエイティブも担当しています。
徳永:SCPで扱うIPについて、プロモーションの統括をしています。『水森亜土』に関しては、PRのほかにブランドマーケティング全般に携わっています。
上村:クリエイティブ担当として、SNSやWeb、告知に関する管理を行なっています。また、商品の監修やイベントのプロジェクトマネジメントも担当しています。
永野:私もクリエイティブを担当していて、主に商品の監修、亜土さんのアートの管理などを行なっています。
──皆さんと水森亜土さんの出会いについて、教えてください。水森亜土さん本人やそのアートについて、どのような印象を持っていましたか?
横関:亜土さんが「カワイイ」ブームを作ったころ、親にお願いして、ハンカチを買ってもらった記憶があります。とても大切な宝物にしていました。
2000年代前半には、ライセンシーとして亜土さんのグッズを企画させていただいたこともあります。アートの組み合わせや色合いによっていろいろな表情を作ることができますし、どのアートもとにかくかわいいので選ぶのが楽しくて。亜土さんが「SCPのデザインが好き」と言ってくださったという思い出もあり、いい関係が築けていたと思います。
徳永:私も幼いころから『水森亜土』のグッズが家にありました。テレビ番組で拝見することもあり、“アクリル板に絵を描く元気なお姉さん”という印象でしたね。そのころは、比較的動物をモチーフとしたキャラクターが多かったので、女の子のキャラが新鮮でかわいいなと思いました。
2000年代は、SCPとして亜土さんのグッズを営業していて、当時から“レトロ”をキーワードに、多くのファンに受け入れられていたのを覚えています。久しぶりにお仕事でご一緒させていただけて、とてもうれしいです。
上村:私の幼少期は、亜土さんのグッズを売っているお店が近くになく、どちらかと言うと、アイテムよりも“テレビで観るお絵かきお姉さん”という印象が強かったですね。あとは、関根勤さんが亜土さんのモノマネをしているのをよく見かけました(笑)。
レトロブームを背景に、若い世代にも亜土さんの世界を広めていけたらと思って活動していますが、亜土さんのアートは懐かしいだけでなく、新しさもあるんですよね。今は癒しやかわいさを強調したキャラクターが多いですが、亜土さんが描く作品にはセクシーでカワイイお姉さんや昭和感あふれるアートもあって、とても新鮮です。こうした幅広い作風の魅力を伝えようと、日々商品化やプロモーションを進めています。
永野:私の場合、親が亜土さんど真ん中世代でした。あと、友人の親御さんが亜土さんファンだったこともありその子もグッズを持っていたんですよね。それを見て“この女の子、かわいい!”と影響を受け、私も亜土ちゃんグッズを持っていました。
逆に、亜土さんがテレビ番組でお絵かきをしたり、歌手や俳優、画家としてご活躍されたりしていることは知らなかったんです。“小さい女の子のアート=亜土ちゃん”という概念だと思っていたので、SCPで亜土さんのアートを取り扱うことになって、改めてそのご活躍を知りました。
──マスターライセンスを獲得してから約1年が経過しましたが、その間に印象的だった取り組みを教えてください。
徳永:マスターライセンスを獲得した当初は、『水森亜土』のグッズが市場から枯渇していました。そこで、まずはパートナーづくりからと、2024年3月にグッズ制作会社の関係者をお招きしたミニギャラリー商談会を開催。貴重な原画をはじめ、昭和時代の商品、描いていただいた直筆のメッセージも展示し、“水森亜土の世界観”を体感していただきました。
来場した約100名の皆さんは、過去にも亜土さんのアートを商品化されていた方々が多く、気持ちが掘り起こされ、熱量が戻ったように感じて。実際、この会場で多くのメーカーの皆様がグッズ制作に名乗りを上げてくださいましたね。
そこから、10月のキデイランド 原宿店、大阪梅田店でのポップアップストア「亜土ちゃんマーケット」のオープンに向けて動き始めました。実際に商品を作るとなると、監修ルールの策定から始める必要があり、どうしても時間がかかります。ミニギャラリー商談会から約半年というタイトなスケジュールのなか、メーカーの皆様にご尽力いただいて実現することができました。
その結果、10月18日~31日に開催した「亜土ちゃんマーケット」は大盛況。グッズのバリエーションは約60点とそこまで多くなかったものの、売り上げ目標を大幅に上回る驚きの記録を達成しました。初日はファンの方々が行列を作り、土日は、“レトロかわいいが大集合”というキャッチフレーズに興味を持った、Z世代の方も多数来店してくださいました。
また、意外なことにインバウンドのお客様も多く来店してくださり、日本でしか購入できないトラディショナルなアートのグッズとして手に取っていただけました。
この成功を受けて、当初は10社だったライセンシー企業も現在、約40社に増えています。2025年に入ってからは、全国約130店舗で展開する「one'sterrace(ワンズテラス)」で「亜土ちゃんフェア」を実施したり、全国の百貨店やTSUTAYAなどでのコーナー展開、ブランドコラボ展開など販路も広がっていきました。
──「亜土ちゃんマーケット」の成功が、プロジェクトに弾みをつけたようですね。このときのキービジュアルでは、水森亜土さんの世界観が見事に表現されています。
上村:テーマカラーのピンクをベースにしつつ、クールなお姉さんや面白いポーズをした猫のアートなど「カワイイ」だけじゃないエッセンスも散りばめ、おもちゃ箱のようなワクワク感、レトロ感、にぎやかさを表現しました。
実は、商品を作る際は、テイストが違う多彩なアートを同居させるのはNGなんです。ですが、商品ではなくキービジュアルだからこそ、こうした亜土さんの魅力が詰まった表現ができました。
──「亜土ちゃんマーケット」で、特に人気があった商品は?
永野:ぬいぐるみが一番人気でした。亜土さんが描いた女の子や男の子のぬいぐるみは過去にもありましたが、実は動物のぬいぐるみはなかったんです。今回、ナカジマコーポレーションの企画チームが提案してくださり、亜土さん監修のもとで商品化しました。特に反響が高かったのがキディランド 大阪梅田店で、オープンから約1時間で完売したそうです。
上村:通常、窓口になっている監修担当者がグッズの最終確認をしますが、立体物は亜土さんの思い入れやこだわりが強いため、ご本人が直接ご覧になったそうです。その分、完成度も高く、ファンの心を捉えたのかもしれません。
──ファンの方は、かつての水森亜土さんを知っている世代が多いのでしょうか。
徳永:40代以上のコアファンは大切にしつつも、雑誌「リンネル」とのコラボレーション企画、ティーン向けのファッション誌「Popteen」のインフルエンサーを起用したプロモーションなどにより、新規のお客様にもリーチしてきました。
2024年7月には「ADO MIZUMORI WORLD」公式Instagramを立ち上げ、現在フォロワーは約2.4万人。ファンの皆さんはもちろん、Z世代にもトレンドを感じてもらえるような投稿を心がけ、積極的にアプローチしていきたいですね。
──既に根強いファンを持つ水森亜土さんですが、SCPではどのような施策を打ち、どうやってファン層を広げていこうと考えていますか?
横関:SCPがマスターライセンスを獲得したころから、亜土さんの世界をさらに拡張しようという目標を掲げてきました。アナログレコードで例えるなら、従来のコアファンをターゲットにしたアプローチがA面。今度は、B面としてZ世代に向けたアプローチを強化しようと考えました。
今、趣味や嗜好が多様化していますが、亜土さんの多彩なアートのなかからはどんな人にもフィットするデザインを見つけることができます。それをライセンシーの皆さまにお伝えするために、亜土さんのアートを“VINTAGE GIRLY”“RETRO GIRLY”“SIMPLE GIRLY”の3つのカテゴリで示しました。世界観やアートの切り取り方、編集の仕方によっていろいろな魅力を発信できるとお伝えし、亜土さんの世界をより多くの方々に届けることが目的です。
永野:例えば、昨年キデイランドで実施した「亜土ちゃんマーケット」では、“RETRO GIRLY”のイメージで商品化や売り場作りを行ないました。ライセンシー各社にもイメージをお伝えし、パキッとした原色の商品、カラフルで楽しいアイテムで連動性を出して“THE レトロ”な雰囲気を打ち出しました。
上村:前回のキデイランドは“RETRO GIRLY”でしたが、今後、例えばファッションアイテムやコスメの売り場で展開するとしたら、ロマンチックな“VINTAGE GIRLY”で統一感を出すとしっくりきそうです。
こういった施策により“RETRO GIRLY”“VINTAGE GIRLY”がより多くの方に認知され、亜土さんの世界観が浸透すれば、よりシンプルな“SIMPLE GIRLY”でも「あ、水森亜土だ。かわいいよね」と思っていただけるのではないかと思います。
徳永:SCPが扱うIPのクリエイティブの施策として、年ごとにテーマアートを設定したり、売り場の統一感を意識したスタイルガイドなどを制作します。「ADO MIZUMORI WORLD」に関しては、3つのカテゴリを用意し、売り場に即したデザインを打ち出していますが、長期的には多角的なスタイルガイドを作っていくことになると思います。
後編では、「ADO MIZUMORI WORLD」プロジェクトにかける想い、そして今後の展望について語る。
文・取材:野本由起
撮影:干川 修
©ADO MIZUMORI

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