ロケーションとIPをシンクロさせた先に生まれる、体験型エンタメビジネスの新たなカタチ①
2026.06.30


1960年代から1970年代に女児や女性層を中心に爆発的な人気を誇り、「カワイイ」文化の先駆けとして世代を超えて愛されているアーティスト「水森亜土(ADO MIZUMORI)」に関するソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)の取り組みをフィーチャー。
後編では、「ADO MIZUMORI WORLD」プロジェクトにかける想い、そして今後の展望について担当スタッフ4人に話を聞いた。
目次

横関悦子
Yokozeki Etsuko
ソニー・クリエイティブプロダクツ

徳永祥子
Tokunaga Sachiko
ソニー・クリエイティブプロダクツ

上村亜依子
Uemura Aiko
ソニー・クリエイティブプロダクツ

永野 苺
Nagano Mai
ソニー・クリエイティブプロダクツ
記事の前編はこちら:「カワイイ」の魔法は世代を超えて。元祖インフルエンサー・水森亜土が魅せるガーリィな世界①
──「ADO MIZUMORI WORLD」をグッズや売り場などで表現するうえで、皆さんが心がけていることはありますか?
横関:特に30代以下の方は、時代の垣根なく音楽やアートを楽しんでいるように感じています。1970~1980年代のシティポップが流行っているのもそうですが、レトロなものにエモさや新鮮みを感じて、時代を意識せずに素直なフィーリングで楽しんでいると思うんですね。
だからこそ、1970年代に描かれた亜土さんの作品も、きっと今の若い方々に刺さるはずだと考えました。公式サイトでは、“「カワイイ」の魔法は時代を超えて。”というメッセージを添えていますが、懐かしさだけでなく新しさも出しながら、幅広い世代に愛される商品を作っていきたいです。
また、亜土さんや権利元からは、「それぞれの作品の魅力を尊重したデザインにしてほしい」と言われています。その想いを大切して、亜土さんの世界観を大事にしつつ、新鮮みのあるエッセンスで味つけしていけたらと思います。商品や売り場の演出にとどまらず、PR用キーアートや、SNSでの多彩な表現などで魅力を膨らませられるよう、努力を重ねていきたいです。
──上村さんは、まさに売り場の演出やSNSでの発信に携わっています。水森亜土さんの世界観を形にするうえで、大切にしていることはありますか?
上村:SCPが扱っているのは、亜土さんの“キャラクター”ではなく“アート作品”です。伝え方が難しい部分もあるのですが、「ADO MIZUMORI WORLD」という概念を意識してディレクションするよう心がけています。
亜土さんのアートはとても多彩で、画材も水彩やペンなどさまざまなものを使っています。なかには、絵のなかの女の子の頬を、ご自身のメイク道具のなかからチークで色をつけて表現したり、貼り絵のようなコラージュ作品もあるほどです。こうした原画のタッチ、雰囲気をいかすよう、イラストを切り抜く際には髪の毛1本まできちんと残すようにしています。
──“扱っているのはキャラクターではない”というのが、SCPが扱うほかのIPとは大きく違う点ですね。商品や売り場を通して、水森亜土さんの世界観を丸ごと表現するということでしょうか。
上村:そうですね。原画の雰囲気を大事にしながら、亜土さんの幅広い画風をお伝えすることが私たちの役割です。亜土さんは、イラストレーター、画家、舞台女優、歌手などマルチに活躍されているタレント性の高い方。言わば、元祖インフルエンサーのような存在なんです。そういったご本人の魅力も含め、“水森亜土の世界観”をお伝えできたらと思っています。
横関:亜土さんは幅広い作風ですが、ひと目で亜土さんの作品だとわかる個性、オリジナリティあふれるガーリィな世界観がありますよね。この世界観を丸ごと「ADO MIZUMORI WORLD」として場に応じて切り出し、拡張していきたいと考えています。上村さんが言うように、まさに『水森亜土』という概念を広めたいんですよね。
徳永:亜土さんというアーティストがいて、彼女の生み出すアートが「ADO MIZUMORI WORLD」。絵を描き、演技をし、歌い、テレビにも出演、360度で活躍してきた亜土さんが生んだ昭和の「カワイイ」文化が今なお受け継がれ、ブランドとして認知されている。その亜土さんの奥行きある世界をクリエイティブに、その先の施策、展開に盛り込むことを意識しています。
──4月25日~5月25日の期間限定で、キディランド 新宿店、大阪梅田店、名古屋パルコ店で「亜土ちゃんマーケット」を3店舗同時開催しました。こちらはどのようなお店になったのでしょうか。
上村:昨年10月に実施したキデイランド 原宿店、大阪梅田店のポップアップストアが、さらにパワーアップしました。今年の4月に新たにオープンしたキデイランド 新宿店では、1階のイベントスペース「K-SPOT」のこけら落としとして、水森亜土さんのミニギャラリーを開催することに。とても広いスペースで、なおかつ来店された方が必ず通るため、3階のグッズ売り場のPRにも効果的な場所になりました。
ミニギャラリーでは、普段なかなか観ることのできない複製原画を壁一面に飾り、かつてのレトログッズも展示しました。亜土さんが描いた動物や女の子のアートでスペースを埋め尽くし、どこを撮っても映えるフォトスポットに。亜土さんを知らないインバウンドの方々も思わず足を止めてしまうような、“The カワイイ”空間になったと思います。
永野:展示作品のなかには、商品に使用されたアートの複製原画もありました。かなり前に描かれた作品もあり、紙の焼け具合から時代を感じていただけたと思います。ホワイトで修正された跡もみることができ、漫画の原画展のように楽しめる展示となりました。
あとは、展示されたアートがどうやって商品に落とし込まれたのか、実際に売り場で確認できるのも新しい楽しみ方になりましたね。1階のギャラリーを観てから3階の売り場に行き、“さっき見たアートだ”と感じていただくような連動性を展開することができました。
徳永:キデイランドは、私たちの業界においてとても影響力の強いキャラクターショップです。新宿に大型の新店舗をオープンされて、その1階のギャラリーを『水森亜土』で埋め尽くせるというのは、大変光栄なこと。
これを機に、『水森亜土』の売り場を全国に展開していきたいというキデイランドの皆様の決断には、感謝しかありません。こうしたお力添えが「ADO MIZUMORI WORLD」の拡大につながっていると思います。
──キデイランドでの「亜土ちゃんマーケット」と同じ4月25日~5月25日の期間限定で、ルミネエスト新宿では「亜土ちゃんパーラー」もオープンしました。こちらは、どのような経緯で企画されたのでしょうか。
徳永:『水森亜土』のマスターライセンス獲得時から、市場規模拡大の策を練るなかで、トレンドを牽引するZ世代、グッズ好きの20~30代を取り込む戦略は必須でした。
今、昭和のレトロ喫茶が注目を集めるなかで、亜土さんのイラストには食に関するものも多く、世界観とも親和性があり、きっと若い世代にもリーチするはずだと考えました。そこで私たちの夢を詰め込んだ「亜土ちゃんパーラー」の企画を立案、提案を重ねたところ、キデイランドでの展開にあわせてルミネエスト新宿にて実現することができました。
上村:メニューも、昭和の喫茶店を意識したナポリタン、ピザトースト、メロンソーダなどに加え、プリンアラモードといったパーラーらしいフルーツを使ったデザートを提供しました。ドリンクとデザートには、フルカラーで亜土さんのアートをプリントした、もなかの皮と旗つき。
ほかにも、昔懐かしいルーレットおみくじの亜土さんオリジナルバージョンも用意しました。壁面には亜土さんのアートを飾り、レトロな空間で映える写真も撮れるので、亜土さんファンはもちろん、亜土さんを知らない世代にとっても楽しめる空間になったと思います。
──昨年のポップアップストア、今年4月からの「亜土ちゃんマーケット」や「亜土ちゃんパーラー」と、思い描いた企画を次々実現しています。順調な滑り出しですね。
徳永:「ADO MIZUMORI WORLD」を広げるうえでも、まず1年目は商品を作り、流通させることに力を入れてきました。おかげさまで商品を販売する市場は整ってきましたので、今期はロケーションビジネスにも力を入れていきます。
カフェやイベントなどで体験できる“コト”で気持ちを盛り上げ、カワイイ商品などの“モノ”でさらに“楽しい”という熱量を提供していくことで、IPをもっと好きになってもらう。そのようなステージに立ちたいと考えています。その第1弾が念願のパーラーでした。違う業態のカフェ、常設の店舗も視野に入れて、今後の展開を考えていきたいですね。
──SCPでは『スヌーピーミュージアム』をはじめとするロケーションベースエンタテインメントにも力を入れています。こうしたスキームが、IPの成長にいかされているのではないかと思います。『水森亜土』というIPに、SCPが関わることの意義についてどのように考えていますか。
横関:“モノ”や“コト”を作るだけでなく、それらをプロモーションで広げていけるのがSCPの強みだと考えています。このチームには長期にわたってプロモーションに携わっていた徳永さんもいますし、高い発信力でプロジェクトを進めることができます。例えば、雑誌「リンネル」とのノベルティの共同開発や、それを「one'sterrace」でプレゼントするといった取り組みもその一例と言えます。
また、「亜土ちゃんマーケット」と「亜土ちゃんパーラー」をつないで紹介するなど、点と点を線でつなぐためにメディアなども活用した展開が行なえるのもSCPの強みです。これまでさまざまなIPで複合的にプロデュースを行なってきたので、その経験値を『水森亜土』プロジェクトでもしっかりいかしていきたいです。
──『水森亜土』プロジェクトの今後の展開を教えてください。
上村:4月25日に、ソニー・ミュージックレーベルズから5枚組CDボックスセット『歌姫 ALL TIME BEST ~1970-1990~』が発売されました。そのパッケージに、水森亜土さんのイラストが使用されています。50代以降の女性層をターゲットとした商品ですし、バラードもポップスもある多彩なラインナップと亜土さんが描くさまざまな表情の女性がぴったりマッチしました。
しかも、このボックスセットがちょうど入るサイズのトートバッグとアクリルキーホルダーつき! ぜひ、CDとともに亜土さんのアートも楽しんでいただきたいです。
徳永:キデイランド 新宿店、大阪梅田店、名古屋パルコ店で開催した「亜土ちゃんマーケット」は、夏まで全国を巡回していきます。また、全国のTSUTAYAなどの書籍、雑貨流通でも売り場を展開しますので、こちらにもぜひ足を運んでいただけたらうれしいです。
──最後に、皆さんがこのプロジェクトに懸ける思い、水森亜土さんのファンの方々へのメッセージをお願いします。
横関:まずは、イベントをひとつずつ成功させていきたいと思っています。原画展も実現したいですね。亜土さんの原画は、その一つひとつが心を打つ素晴らしさなんです。
そんな原画をご覧いただきながら、「ADO MIZUMORI WORLD」のガーリーな世界感を体感したり、写真を撮りたくなるようなイマーシブな空間を通して、たくさんの人にファンになっていただけるような取り組みを行なっていきたいです。
徳永:横関さんが話した通り、原画展がひとつの山だと思っています。さまざまな施策でファンづくりの土壌を整えたところで、改めて原点である亜土さんの作品を丁寧に立体的に見せることが、直近の最大の目標。パートナー企業の皆様にお力添えいただき、2026年に実現したいと考えています。
プロモーションの観点から言うと、亜土さんの人生そのものもお伝えしていきたいです。『ピーナッツ』のチャールズ M.シュルツさん、『ピーターラビット™』のビアトリクス・ポターさんなど、原作者の奥行きある人生観を深堀りし、その魅力を伝えることもIPをお預かりする私たちの役目であると思っています。
明るく元気な印象の強い亜土さんですが、世間に認知されるまでには、多くの葛藤もあったはず。亜土さんの人生は、ドラマで描かれてもおかしくないと思うんです。社内外を問わず多くの方々を巻き込み、さまざまな側面から亜土さんの生き方、「ADO MIZUMORI WORLD」をお伝えしていきたいです。
上村:改めて亜土さんの著書を読むと、ご自身のキャラクターもとても魅力的なんです。私も、徳永さんと同じように“目指せドラマ化!”が夢ですね。そのためにも、より多くの方々に「ADO MIZUMORI WORLD」を広めて、亜土さんの人気をもっともっと広げていきたいです。
商品づくりに関しては、「カワイイ」以外のアートも使ってファッションアイテムやコスメ、大人が日常使いできるおしゃれなアイテムを増やしていきたいですね。それによって、Z世代をはじめ、幅広い層にファンを拡大したいです。
永野:このプロジェクトに携わるようになり、水森亜土さんのマルチな才能、その凄さを改めて実感しました。亜土さんの作品も、小さな女の子のイラストからきれいでセクシーなお姉さんの絵まで、ほんとうに幅広いんですね。そういった多面的な魅力を、商品やイベントを通して表現し、「ADO MIZUMORI WORLD」の広がりを感じていただけたらうれしいです。
記事の前編はこちら:「カワイイ」の魔法は世代を超えて。元祖インフルエンサー・水森亜土が魅せるガーリィな世界①
文・取材:野本由起
撮影:干川 修
©ADO MIZUMORI

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