開発エンジニア:音楽ライブ×テクノロジーの可能性を追求するエンジニアがエンタメ業界で叶えたいこと
2025.07.25


さまざまなエンタテインメントビジネスを手がけるソニーミュージックグループで、専門的な知識とスキルを持って働く技術者(エンジニア)に話を聞く連載企画。
第18回は、ソニーミュージックグループで使用する業務アプリの開発から運用、そして改修までを担うシステムエンジニアの竹之内祐哉に話を聞いた。
目次

竹之内祐哉
Takenouchi Yuya
ソニー・ミュージックエンタテインメント
──竹之内さんが、現在担当している業務について教えてください。
ソニーミュージックグループでは、音楽、アニメ、キャラクターなどさまざまなエンタテインメントに関する事業を手がけているので、それぞれの事業に即した社内アプリを活用しています。こうしたアプリを社外のベンダー企業の方々とともに開発し、運用や改修を行なうのが私の役割です。
そのなかでも、私が手がけているのが“原盤印税”という音楽ビジネスの印税を扱うシステムです。これは主に、SMEの知的財産管理部門や経理部門のスタッフが使っているシステムになります。
──“原盤印税”とは、どういうものでしょうか。
原盤とは、レコードやCDの形で発売されることを前提に制作された音源を収録した録音データやディスクのことです。CDや配信は、その原盤を使用して販売しています。原盤には原盤権という録音したものを他者に使用されないようにする権利があるので、使うときには使用料を支払わなければなりません。それが“原盤印税”です。
契約内容によって印税率や契約期間が異なるため、アプリを使って“原盤印税”を計算できるようにしています。
──知的財産や経理の知識も、求められるのでしょうか。
経理の知識は必要です。なので私も昨年から、簿記の勉強を始めました。“原盤印税”システムのチームに入って間もないころ、上司から「このアプリを担当するなら、ITよりも簿記の知識があるといいよ」と言われたんです。まさかと思いましたが、確かにシステムを開発するのは外部のベンダー企業の方々で、私は経理のスタッフと会話することも多いです。経理部の要望を正しく理解するためにも、経理や簿記の知識はある程度必要だと実感しました。
──竹之内さんは新卒で入社したのでしょうか。
はい、2023年に入社し、ずっと同じ部署で働いています。
──入社当初から、エンジニアを志望していたのでしょうか。
そうですね。就職活動ではIT系の職種に絞って入社試験を受けました。
ただ、同じIT系でも自分が興味のある分野のほうが、やりがいが大きいだろうと思って。大学時代にITエンジニアの方から聞いた「ITは手段にすぎない。ITと何かをかけ合わせないと、オンリーワンの人材になれない」というお話が印象に残っていて。“IT×好きなこと”を考えたうえで、就職活動をしていました。
──ソニーミュージックグループのなかでは、どの分野に興味があったのでしょう。
高校時代、軽音楽部に所属していたくらい音楽が好きだったのと、この先も音楽はずっと好きでいるだろうと思い、ソニーミュージックグループを志望しました。
──大学では、情報系の学部に在籍していたのでしょうか。
理工学部で、数学をメインに勉強していました。情報系、数学系、物理系が集まった学科だったので、情報系の授業も受けていましたね。
専攻は数理科学で、なかでも計算流体力学について研究していました。コロナ禍でよく実験されていた飛沫の飛散シミュレーションなど、空気や熱の運動を数値解析していました。このシミュレーションにはプログラミングの知識も必要なので、自然と学ぶことになりました。
──学生時代に“これは学んでおいたほうがいい”ということはありますか?
自分の今の仕事では、実際にコードを書いてプログラミングする機会は多くありません。ですが、プログラミングを学んでいたことで、システム処理の基本的な考え方が理解できるといったメリットはありました。もちろん、同じ部署には未経験で入ったスタッフもいて、入社後にスキルを磨くこともできますが、ある程度わかっておくと比較的スムーズに仕事を覚えられると思います。
もし学生時代に戻れるなら、個人的には課題解決力を養いたいですね。大学時代は“このプログラミング言語を使い、こういうプログラムを作ってください”と与えられた課題をこなしてきましたが、今の仕事は“こういうことがしたいのですが、どうすればいいですか?”と相談されるケースが多いんです。
どういうツールを使い、どうやって実現するのか検討するので、“こういう困りごとを解決するにはどうすればいいのか”という考え方を学び、より広い視野で柔軟に物事を考える力を養っておくと役に立つと思います。
──これまで関わったなかで、特に印象に残っているプロジェクトは?
担当している“原盤印税”のシステム改修プロジェクトです。知的財産部門、経理部門のスタッフとのミーティングで、新しい機能についての要望が出て、計算機能の改修が必要という結論に至ったのですが、あまりスケジュールに余裕がなくて……。そんなプロジェクトの統括を担当することになりました。
それまでは先輩の指示を受けて仕事をすることが多かったのですが、このプロジェクトではスケジュールを組むところから、開発会社や知的財産部門、経理部門とのやりとりまで、私がメインで行なうことになって。大変でしたが、改修を予定通りに完遂できたのは大きな自信になりました。
──これまでの経験がいかされたんですね。
そうですね。これまでは先輩の背中を見ながら、いろいろ教わってきました。一つひとつの案件に対し、“こういうときはこうしたほうがいいよ”と実地で教わったり、先輩がベンダー企業の方と話しているのを聞いたりしながら、仕事を覚えてきたんです。
ですが、少し前にその先輩が別チームに異動することが決まって、担当を引き継ぐことになりました。まだまだ未熟ですが、いち早く先輩のように仕事ができるようになりたいです。
──仕事で達成感や、やりがいを感じるのはどんなときですか?
社内システムの開発業務というのは、エンタメビジネスに直接関わる仕事ではありません。でも、この仕事はソニーミュージックグループの事業を支える重要な役割を担っていることには違いありません。自分はそこにやりがいを感じています。
それに、私自身もCDを買ったり、配信で音楽を聴いたりするので、原盤印税システムで扱うデータというのは、実は身近なものであるとも言えます。その身近さが面白いなと感じますし、エンタメ業界のエンジニア特有の喜びを感じますね。
また、エンタメ業界には流行があります。例えば、以前はCDが主流だったけど、今はストリーミングなど音楽を楽しむ手段が増えましたよね。そういう動きを受けて、“原盤印税”のシステムも改修や新規開発が必要になります。今後エンタメ業界がどういう方向に進むのか、それによってどんなシステムが必要になっていくのか。最先端を知ることができるのもワクワクします。
──エンタメ業界のエンジニアに向いているのは、どんな人でしょう。
エンタメ業界のエンジニアという視点で言うと、やっぱりエンタテインメントが好きな人が向いていると思います。私の周りも好きな人が多いですね。
また、この業界に限った話ではありませんが、コミュニケーション能力は高いほうがいいです。この仕事はシステムを使うユーザーの要望を聞き、ベンダーに橋渡しをすることが多いので、話す力と聞く力、どちらも大事だなと思います。
──コミュニケーション能力と聞くと、話す力のイメージが大きいと思うのですが、聞く力も重要なんですね。
私はむしろ聞く力のほうが大事だと思っています。自分のなかで勝手に翻訳せず、相手の考えや思いをちゃんと聞き取り、理解する。そういう力が重要だと思います。とは言いつつ、私は話すのが得意ではないので、入社以降はしっかり相手の話を聞くことをより強く意識するようになりました。
──2023年に新卒入社とのことですが、同期入社の人たちとコミュニケーションする機会はありますか。
同期は音楽、アニメ、キャラクターなどさまざまな会社に配属されていますが、業務内容もバラバラなので、一緒にプロジェクトを行なうことは正直少ないです。でも、グループの全社スタッフが集まるミーティングやイベントもあり、グループ会社であるという意識は強いですね。
──竹之内さんが業務に取り組む姿勢として大事にしていることはありますか?
仕事に対する積極性とか能動性ですね。実際のシステム開発はベンダー企業の方々にお願いするので、社内で求められたことを、そのまま依頼するだけでも仕事は成り立ちます。だからこそ自分なりのプラスアルファを加えることが重要だと考えています。
また、最近は地力を鍛えるために、原盤印税システムに加えて、新規プロジェクトにも自発的に参加するようにしています。現在は新たなシステムを後輩とふたりで開発中なのですが、後輩と組むのも初めてなので、とても勉強になっています。
また、ソニーミュージックグループの場合、ヘッドクォーターであるSMEにシステム関連の部門が複数存在するのですが、会社を正常に稼働させるためにシステム部門も人事や経理、総務と同様に重視しているというメッセージだと感じて、エンジニアとしてモチベーションにもつながっています。
──今後チャレンジしたいことはありますか?
直接売り上げに貢献できたり、ビジネス戦略に結びついたりするシステムに携わることができたら、さらにやりがいを感じられるのではないかと思っています。
──会社のインフラを担うのも重要なことですが、竹之内さんはより直接的に会社の利益に貢献したいと?
そうですね。音楽やアニメなどと違い、社内向けシステム部門は直接ヒットを生み出すことがありません。もちろん、エンタメ事業をシステムで支えることにやりがいを感じていますが、もっと直接的に貢献したいという気持ちもあります。
──そういう意味では、異動してエンジニア以外の仕事を志望することもできると思いますが、そういうことも視野に入れていますか?
いつか、ほかの仕事もやってみたいと思うときがくるかもしれませんが、今はともかくシステムを使って貢献していきたいですね。やっぱり私は、ITと自分が好きなエンタテインメントをかけ合わせたところで仕事がしたいんです。ITやシステムから完全に離れてしまうと、私ではなくなってしまうような気がするので(笑)、しばらくは、ここで頑張っていこうと思っています。
文・取材:野本由起
撮影:干川 修
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