TrySail結成10周年──三者三様だから続けてこられた10年の航海
2025.09.06


2025年にデビュー10周年を迎えた声優ユニット・TrySail。麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜と、三者三様のキャラクターと歌の個性が放つ化学反応は、どんなアニソンフェスでも観客を熱狂させるイリュージョンを巻き起こす。
結成から10年――順風満帆な音楽活動のなかにも紆余曲折を経験してきた3人に、この10年の振り返りと、TrySailの現在地を聞いた。
目次
TrySail トライセイル
(写真左より)夏川椎菜、麻倉もも、雨宮天。2011年に開催された『第2回ミュージックレインスーパー声優オーディション』で合格したミュージックレイン所属声優3人によるユニット。2015年にシングル「Youthful Dreamer」にてユニットデビュー。2025年にデビュー10周年を迎えた。9月からは10周年を記念したライブツアー『LAWSON presents TrySail 10th Anniversary Tour 2025 “BestSail”』を開催する。
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それぞれ声優活動でも高い評価を受けつつ、アニソンシーンではパワフルな実力派ユニットとして幅広いファンを獲得するTrySail。2015年5月にシングル「Youthful Dreamer」で颯爽とデビューを飾り、これまで『ハイスクール・フリート』『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』シリーズなど、数々のアニメやゲーム主題歌を担当してきた。
デビュー10周年の今年は、音楽活動もアニバーサリーにフォーカス。8月27日には初のベストアルバム『TrySail 10th Anniversary Best Album「BestSail」』をリリースし、9月~10月にかけては千葉・幕張メッセ イベントホール2days公演を筆頭に、全国各地を回る10周年記念ツアー『LAWSON presents TrySail 10th Anniversary Tour 2025 “BestSail”』を開催する。そんな“10周年”を彼女たちはどう受け止めているのだろうか。
「10年も経っているんだという実感は、正直湧いてないんですけど(苦笑)、こうしてインタビューをしていただいたり、自分たちで自分たちを振り返ったりする機会が、やっぱり今年は多いんです。
それで昔の映像を見ると、自分たちの姿や歌い方、歌っている楽曲も今とは違っていて歴史を感じるんですね。『あっ、10年経つってこういうことなんだな』という実感が、ようやくちょっとずつ出てきた感じです」(夏川)
「私もそうです。ベストアルバムには全シングルの表題曲と、自分たちが好きな曲を選んで収録しているのですが、タイトルを並べてみたら、すごい曲数があって。『そっか、こんなにたくさんの曲を出してきたんだ!』と思いますし、1曲1曲を聞くたびに当時のことを思い出しました。本当に濃密な10年で、いろいろなことをやってきたんだなと思うと、10年の重みみたいなものを感じます」(麻倉)
「自分では10周年をあまり意識したことがなかったのですが、こうしてお話をさせていただくことで実感するというか。年代ごとのできごとを聞かれたり、そういう機会でもないと自分で昔のことを細かく掘り下げることもないですしね。ようやく実感してきたなと。ここからまた10周年の活動をしていくなかで、思いが深まる気がしています」(雨宮)
お互いの発言に「そう、そうなんだよね!」と笑顔で同意しながら、楽しそうに言葉を重ねていく3人。息の合ったトークにも既に“10周年”らしい阿吽の呼吸を感じるが、“現実としての重みと実感が湧いてくるのはここから!”というのが素直な心境だという。
「ベストアルバムのリリース後ですよね。本格的にファンの皆さんに私たちの10周年の活動が届いて、お手紙とかメッセージをいただけると思うので……そうなると今とはまた違う気持ちになるんじゃないかなって思います」(夏川)
そもそもTrySailが歩みをともにすることになったきっかけは、2011年に開催された『第2回ミュージックレインスーパー声優オーディション』。その合格者として声優の第一歩を踏み出した麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜が、声優活動をしながら一緒にレッスンを受け、ラジオなどでともに活動をするようになって3年半ほどが過ぎたころだったという。
「ある日突然マネージャーさんから『この日、事務所(ミュージックレイン)に来てください』って言われて3人で行ったら、会議室にマネージャーさんと当時の社長がいらして。すっごい重々しい空気のなかで『この3人でユニットを組むことになりました』と告げられたのが最初でした」(夏川)
「私はそのときのことをあまり覚えてないんですけど、その前に事務所のスタッフさんから『先輩のスフィアはユニットをやっているけど、あなたたちは多分やりません』と言われたことがあったんです。だから、いきなりユニットを組むと言われて、『え? やるんだ!?』とびっくりした記憶があります」(麻倉)
予想だにしていなかった新たな提案に驚いた夏川椎菜と麻倉もも。だがその横で雨宮天だけは、ふたりとはまた違う想いでその場にいたという。
「私のなかでのユニット結成の記憶って、その会議室じゃなくて、もっと前の電車のなかの光景なんです。当時のマネージャーさんとふたりで現場移動しているときに、3人でユニットをやることになったと聞かされたんですけど……私は『嫌です!』って答えていて(笑)。自分が人前で歌ったり踊ったりするのは無理だと思っていたから、そのときはもう、“宣告”として受け止めていた気がします(苦笑)」(雨宮)
「だから私もすごく意外だったんですよ。レッスン中から天さん(雨宮天)が『ユニットはちょっとね……』ってずっと言ってるのを知っていたから、事務所に呼ばれたときも天さんが暴れ出すんじゃないかと思って!(笑)
でも天さんの方をチラッと見たら、もう昭和の映画に登場する女の人みたいに“覚悟しました”と目が据わった顔でいたので、『もしかして先に知ってたのかな?』って思ったのを覚えてますね」(夏川)
そんなTrySailの船出だったからこそ、10周年という節目を迎えられたことに、3人の感慨はなおのこと深まっている。
「せっかく結成したんだから3年は頑張らないとな! というのは自分のなかにありましたけど、何年続けられるんだろう? というのは、まったく見えていなかったんです、当時は。だから……まさか10年続くとは! ですよね(笑)」(夏川)
意外な結成秘話からスタートしたTrySailの航路。荒天時に使用する帆の航海用語“trysail”と、3=tri、挑戦=tryをかけ合わせて、“どんなことにもトライしながら前に進む”という想いを込めて、雨宮天が命名したというユニット名の通り、TrySailはTVアニメの主題歌をメインにフレッシュなヒット曲を送り出し、今ではユニットの魅力を一番に感じさせるライブ活動にも、精力的に取り組んでいった。
デビュー直後には早くもパシフィコ横浜・国立大ホールでのワンマンライブ『LAWSON presents TrySail First Live 2015 “Sail Out!!!”』を開催し、その後も全国ホールツアーを経て、2018年には横浜アリーナ、神戸ワールド記念ホールといったアリーナクラスでのワンマンも成功させる。
まさに順風満帆と思われたころ、彼女たちが本当の意味で“TrySailは自分たちのユニットだ!”と自覚する転機が訪れた。2018年の2ndツアー『The Travels of TrySail』前のできごとだ。
「それまではセットリストも全部スタッフさんが決めてくれていたのですが……何度かライブを積み重ねていくうちに、歌う側だから作れる流れや、繋ぎ方があるんじゃないかなと。それで、ライブの構成を自分たちで考えたいなと思うようになったんです」(麻倉)
「なので、3人で“ちょっと1回話し合わない?”と、ラジオの収録終わりにご飯屋さんに集まって、スタッフさんに決めてもらっていたセトリを見て、自分たちで曲を聴き直しながら、“ここはこっちの曲がいい”“いや、あっちのほうがいい”みたいな打ち合わせを、そのお店の閉店ギリギリまでやったのが……自我の目覚め?(笑)」(雨宮)
突然、始まりを告げられたユニット活動だったからこそ、そこで3人の“ともに音楽活動をする仲間”としての絆が強まった。自分たちでセットリストを組むこと自体も、自分たちでTrySailをこうしたい! とちゃんと口に出してスタッフに伝えたのも、それが初めて。そこから3人が“TrySailとしてどうしたいのか”という意見を、スタッフにもしっかりと伝えられるようになったそうだ。
「それも含めて、徐々にTrySailに対する意識が高まってきていた感じが、私のなかにはありました。セトリを自分たちで決めたからガラッと変わったというより、その当時“やっぱりTrySailといえばライブだよね!”みたいな認識が、ファンの皆さんにもできあがっていって、そこからもっと高いところに、今、上っていっている感じがします」(麻倉)
「ライブに対する責任感も、そこから変わりました。『せっかく自分たちで組んだセットリストは盛り上げないと!』と思うようになったし、周りにも『変えただけのことはある』と思わせないと、次また組ませてもらえないかもしれない。
心持ちが変わったし、楽曲的にも賑やかで元気な『adrenaline!!!』(2017年リリース)がライブの定番曲になっていた時期で、そういう曲でファンの皆さんを盛り上げるのは得意だし、自分たちもそういうライブが好き。TrySailはそういうライブをやっていくんだ! という進むべき道が、あの曲で確立できた気がします」(夏川)
“TrySailといえばライブだよね!”というユニットの存在意義と、ファンからもらった熱い手応えを武器に、さらなる飛躍にトライした2019年は、TrySail史上最大規模となる全国20公演のライブツアー『LAWSON presents TrySail Live Tour 2019 “The TrySail Odyssey”』へと乗り出した。
サブタイトルにつけられた“長い冒険”を意味する“Odyssey”の名の通り、2019年2月に千葉・幕張メッセイベントホール2days公演からスタートしたこのホールツアーが、追加公演を含むファイナルを迎えたのは8月のこと。声優業の合間を縫いながら、たっぷりとTrySailの音楽に向き合ったこの半年間は、3人にとってまさに“冒険”をした“試練”のツアーだったと振り返る。
「それまでのライブは、『adrenaline!!!』と、2016年に出した『High Free Spirits』が盛り上げの代表曲で、まさに“TrySailといえば!”の曲だったんですけど、その2曲を毎回フルでは歌わないライブに挑戦してみようと思ったんです。盛り上げ曲が定番になってしまうと、もうそれがTrySailのすべて! みたいな感覚になってしまうなと。
私たちには、ほかにもいい曲があるんだぞ! と示したくて、ツアー序盤はどちらかの曲をメドレーのなかの1曲として歌いました。……でも途中から、やっぱりファンの方は代表曲を求めてくれるし、すごく喜んでくれる。
人気のある曲は、何回でも歌っていいんだ! という学びがあって、結果、ツアーの途中からその2曲をフルサイズで披露するセットリストに変更したんです。ライブの作り方をかなり試行錯誤した20公演でした」(麻倉)
長期ツアーだけに体調管理にもかなり気を使う。しかも公演数が多いと、ファンに与える驚きや新鮮さも薄れる。そんな状況で、いかにライブを盛り上げたらいいか。取材中も3人は顔を見合わせながら「試練のツアーだったよね……」と当時を思い出す。
「特に私は人前に出るのが苦手なので、『週末にはライブ本番が来る!』と思うと不安で、あの20公演は大変でした。個人的には、その前の年、2018年の『The Travels of TrySail』ツアーも試練でしたね。
ソロアルバムの制作もあり、声優業も忙しいときに声帯炎になってしまって。終盤の新潟公演では、歌も歌えず、私ができることはダンスなどのパフォーマンスだけ。もちさん(麻倉もも)とナンちゃん(夏川椎菜)が私のパートまで歌ってくれて……みんなに申し訳なくて、苦しかった。でも、人はそういう辛い試練があるからこそ強くなれる!」(雨宮)
「ほんとにそうなんですよね。史上ワーストを経験すると、ほかに辛いことがあっても、あのときよりマシ! まだやれる! って頑張れる。こうして今は笑って話せるし、『むしろこの10年間のTrySailに試練があって良かった!』くらいに思ってます(笑)」(夏川)
後編では、ソロ活動との違いや3人の関係性について話を聞いた。
文・取材:阿部美香
撮影:干川 修
『LAWSON presents TrySail 10th Anniversary Tour 2025 “BestSail”』
 
 
 
 
 

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