オアシスのワールドツアーで日本だけが許されたオリジナルグッズは、こうして生まれた①
2025.12.26


スマートフォン向けロールプレイングゲーム『Fate/Grand Order』(以下、FGO)のリアルイベント『Fate/Grand Order Fes.』(以下、FGO Fes.)。2016年にスタートし、今年はサービス開始10周年を記念して、幕張メッセにて2日間に渡り開催された。
『FGO』のパブリッシャーであるアニプレックス(以下、ANX)とANXの完全子会社であり、ディライトワークスから『FGO』のゲーム事業を継承して、開発、運営を手がけるラセングル(以下、LSG)、イベントの制作、運営を行なうソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)が手がける本イベントは、どのような歩みを辿り、『FGO』ファンに愛されてきたのか。
後編では、『FGO Fes.』において企画や運営、会場施工などを行なう、ANXとSMSの運営制作チームのメンバーに話を聞いた。
目次

金沢利幸
Kanazawa Toshiyuki
アニプレックス

竹内大博
Takeuchi Masahiro
ソニー・ミュージックソリューションズ

木村貴子
Kimura Takako
ソニー・ミュージックソリューションズ

佐藤紘士
Sato Koji
ソニー・ミュージックソリューションズ
記事の前編はこちら:『FGO』10周年――ファンの声とともに創る『FGO Fes.』の企画制作チームの裏側
――『FGO Fes.』の企画、運営を担当するANXとSMSの皆さんとともに、イベントの歩みを振り返りたいと思います。まずは皆さんの『FGO』および『FGO Fes.』での担当を教えてください。
金沢:私は、宣伝プロデューサーとして、『FGO』と『FGO Fes.』に携わっています。
『FGO』にはタイトル発表のタイミングから関わっており、当時はディライトワークスにいた石倉(正啓)さん(現、SPIARS)とふたりで宣伝周りを担当してきました。
また、『FGO Fes.』については、収支面を含めた全体管理を行ないつつ、毎回、来場された方が最初に訪れるウェルカムゲートも担当しています。あとは、オープニングステージをはじめ、いくつかのステージイベントの司会進行役を務めさせていただきました。
――金沢さんは、今年もステージに出ずっぱりでしたね。
金沢:今年は例年以上にステージイベントが企画されていたため、ステージに上がらせていただく機会が多かったのではと感じています(苦笑)。
木村:私はSMSのスペースプロデュースオフィスという部門に在籍しています。私たちの部門はイベントなど空間の設計施工を業務としています。私は『FGO Fes.』には、2017年から携わっていて、今年もイベント全体の空間設計と施工を担当しました。
佐藤:自分はSMSのイベント事業部に在籍していて、『FGO Fes.』をはじめ、『AnimeJapan』や『アニメイトガールズフェスティバル』といった出展型の大型イベントにも携わっています。なかでも『FGO Fes.』は、1年を通して業務の軸になるイベントで、2019年から携わらせてもらっています。
竹内:僕も同じくイベント事業部に在籍し、『FGO Fes.』では主にイベント制作を中心とした業務を行なっています。2016年にSMSに入社後すぐ、2017年に初めて幕張メッセで開催した『FGO』2周年のイベントがありまして。SMSとしてもそれが初めて『FGO』に関わった企画となり、それ以来、毎年『FGO Fes.』に携わっています。
――『FGO Fes.』はどのような経緯で始まったのでしょうか。
金沢:そもそもは、2016年7月に『FGO』のサービス開始1周年を記念した『FGO夏祭り2016 秋葉原 1st Anniversary』というイベントを、秋葉原UDXで開催したことが始まりで。ゲームとしてはまだ第1部の完結前ではあったのですが、皆さんに何か恩返しをしたいと考えてイベントを企画したんです。
ただ、当時は、こういったリアルイベントにどのくらいの方が来てくださるのか予測できず、また、『FGO』単体のイベントなので、そこまでの人が集まるとは、想定していなかったのですが、これが完全に我々の読み違いで(苦笑)。ありがたいことに、会場は長蛇の列ができるほどの盛況となりました。この1回目の経験が反省となって、2017年からは幕張メッセに会場を移すことになったんです。
ちなみに、このときのイベントの内容としては、クー・フーリン(キャスター)の宝具・ウィッカーマンのモニュメントを作ったり、来場者に抽選でノベルティをプレゼントしたり、来場者向けにスタンプラリーを実施したり、今の『FGO Fes.』の原型となるイベントを開催しました。
――2017年からSMSがイベントの制作、運営に参加することになったということですが、このときの経緯も教えてください。
竹内:SMSとしては2016年の12月くらいに、金沢さんから2回目のイベントを2017年7月に実施したいという相談を受けました。
でも、そのころのSMSは、ひとつのIPでここまで大きなイベントの企画、運営をしたことがなかったんです。なので、プロジェクトが走り出した当初は、どういう座組で進めていくのがいいのか結構悩みましたね。
ただ、有り難いことに、イベント総合プロダクションサービスを手がけるシミズオクトの皆さんなどと、『AnimeJapan』という大型のイベントを行なっていた経験もあり、このメンバーなら何とかやれそうかな? という手応えを得ることができました。『FGO Fes.』は、毎回参加メンバーが増えていきながら、現在のかたちに至るという状況です。
――2017年以降、夏の大型イベントとして定着した『FGO Fes.』ですが、イベントを開催するうえで大切にしていることは何でしょうか。
金沢:『FGO』という作品単体の興行として開催する以上は、原作に対する熱量や思いが、ファンの方々にしっかり伝わらなければ意味がないと考えています。だから、物語や作品の世界観、キャラクターたちの個性を踏まえたうえで、ファンの皆さんに喜んでいただけるイベントにしたかったんです。
なので、単純に“楽しいことをやりましょう”とか“面白いアイデアだからやってみましょう”というのでなく、イベントの隅から隅まで、しっかりと『FGO』の世界観に寄せて、『FGO Fes.』というイベントの魅力を最大化することをミッションとして掲げました。
その視点で、企画、設計、施工、運営に関してパートナーを選ぶなら、同じソニーミュージックグループで、しかも、エンタテインメントに特化したソリューションビジネスを手がけるSMSにお願いするのがベストだろうという判断から、竹内さんたちにお声がけしたんです。
――毎年、どのようなやり取りをしながら、『FGO Fes.』を企画しているのでしょうか。
竹内:まずは、金沢さんたちに、その年のテーマややりたいことを決めてもらって、そこから打ち合わせがスタートします。その時点で、方向性はある程度決まっているので、我々SMSとしては、提示されたテーマや金沢さんたちがイメージしていることをいかに具現化し、イベントに落とし込むか、という流れで進んでいきます。
金沢:毎年、新しいことに挑戦したいという思いがあるので、例えば、“昨年より大きいLEDモニターを用意できませんか?”とか“2階建ての構造物を作ってください”と無邪気に提案をさせてもらって(笑)。竹内さんたちは、私たちの知らないテクノロジーや設計、施工に関する専門的な知見があるので、そこに全幅の信頼を寄せて、まずはブレスト的にあれこれ提案させてもらっています。
木村:そう言えば、2017年、2018年はテーマがなかったんですよね。2019年からテーマができました。
竹内:そうですね。2019年に“テーマパーク”を意味する“カルデアパーク”というサブタイトルをつけました。“テーマパーク”らしさを追求するために、国内のさまざまなテーマパークにも視察に行って、企画の参考にさせていただきました。
金沢:毎年テーマを考えるのが、一番時間がかかるんです。特に10周年のテーマ“Avalon Grandium”は決まるまでに時間がかかりましたね。例年は前年のうちにテーマが決まることが多いんですけど、今年は年明けまでかかってしまいました。
――『FGO Fes.』に携わるようになって、SMSとしてはどんなプラスなことがありましたか?
佐藤:『FGO Fes.』の制作、運営を経験すると、ほかのイベントは“だいぶ楽だな”と感じるようになります。
金沢:そうなんですか?
佐藤:いや、『FGO Fes.』は本当に大変なんですよ(笑)。会場に入ったお客さんの動線をパズルのピースをはめるように考えるのも大変ですからね、複雑すぎて。
金沢:そう言われると、朝イチの入場のお客さんが詰まらないように、いろいろな動線の案を何日間にもわたって検討しましたよね。
佐藤:それを毎年やって、毎回アップデートして、さらに前回を超えていかないといけない。そういう意味で、今年の10周年は……もうちょっと規格外でしたね(笑)。
竹内:でも、本当にその通りで。『FGO Fes.』で経験値を積ませてもらったからこそ、我々SMS内に大型イベントの運営ノウハウや、作品としての魅せ方のアイデア、さらにはグッズの展開など、さまざまな知見を深めることができ、結果、それがほかのビジネスにもいかされていきました。
大変なことも多いですが、毎年、それを乗り越えた先に喜びと成長があるので、『FGO Fes.』に携われているのは、SMSとしてありがたい限りですね。
――毎回、大きなモニュメントや建築物を、会場のシンボルとして制作しているのも、『FGO Fes.』の見どころです。
金沢:1回目の『FGO夏祭り2016 秋葉原 1st Anniversary』で展示したウィッカーマンが8mくらいの大きさだったんです。そこから、幕張メッセの壁を使ったプロジェクションマッピングを実施したり、2018年にはゲーム中に登場する“空想樹”をモチーフにした“Grand Tower”を建てたりしました。
木村:“空想樹”は高さ14mぐらいでしたよね。あまりにも大きい円柱造作への映像演出だったので、幕張メッセで組み立てる前に、貸し倉庫でいったん仮組をして、いろいろなことを検証したんですよ。
竹内:そうそう。ひとまわり小さい“空想樹”を立てて、映像の見え方や演出を事前に確認したんです。
木村:今年は7体のサーヴァントのクラスカードを立体造形展示として制作しましたが、1体が1m80cmくらいの大きさで、さらに、台座に乗っているのでかなり大きくなりました。
金沢:そうですね。人の目線よりも高い展示物はやはり迫力がありますし、多くの人の目に留まって、イベントのアイコンとなればいいなと思って企画しました。
――会場の規模も毎年大きくなっています。
金沢:有り難いことにプレイヤー数が、年々増えていったので、それに比例するかたちで来場者数も増えていき、会場規模も大きくなっていきました。
竹内:規模が大きくなっているということでいうと、SMSとしては『FGO Fes.』に関わるメンバーが最初は5人くらいだったのに、今では20人くらいの大所帯になりましたからね。『FGO』という多くの人に愛されているIPを扱うからには、皆さんに納得してもらえるかたちでイベントを提供していかなくてはならないので、そこは常に気を引き締めて取り組んでいます。
金沢:ステージにしてもアトラクションにしても、毎年アップデートしていかなければ飽きられてしまうので、とにかく“同じことを繰り返さない”“毎回、新しいことに挑戦する”ということを心がけています。
前の年にやったことから、翌年はプラスアルファをしていくというのを皆さんにもお願いしていますし、SMSにも“前年はこれをやったので、来年は別のことをしたい”という話をしながら、常にアップデートすることを重ねてきて。なんとか10周年まで辿り着くことができたのかなと思います。
――『FGO Fes.』に携わっていて、最高にうれしい瞬間はどんなときですか?
金沢:やっぱり、イベント中の会場を見て回っているときですね。会場でお客さまが楽しそうに写真を撮ったり、会話をしたりしているのを見ると、とてもうれしくなります。ときには、挨拶をしてくださるお客さまもいて。皆さんと一緒に楽しめる、あのひとときが自分にとって一番うれしい時間です。
木村:私がうれしいのは、オープンの瞬間ですね。お客さまを最初にお出迎えするウェルカムゲートで皆さんが喜んでくださっているのを見ると、本当にやりがいを感じます。毎回、驚いてもらえるかな? 楽しんでくれるかな? テーマや世界観は伝わっているかな? とドキドキする瞬間ではありますが、今年もファンの皆さんがたくさんの喜びの声をSNSにアップしてくださっていたので、やって良かったなと思いましたし、次も頑張ろうと思いました。
佐藤:自分は、ファンの方々の反応を見るのに加えて、関係者やご招待した方々の反応を見るのも、すごくうれしいですね。このイベントに携わってくださる、協力会社の皆さんから“今年も大盛況だね”“お客さまに喜んでもらえて良かったね”という反応をいただくと、みんなで夏の思い出を作っているような気分になります。
竹内:やって良かったと思うことはたくさんあって。毎回、イベント中にそれを実感しています。
特に、4周年のときは幕張メッセの天井部にある関係者専用のキャットウォークに登って、イベントの最後のステージ『「Fate/Grand Order」カルデア放送局 4周年SP』をうえから見たんです。
ステージが最高潮に盛り上がった瞬間を俯瞰で見ることができて、これだけの人が、これだけ熱狂するイベントに携われて幸せだなと感じましたし、あのときの光景は今でも鮮明に覚えています。
――『FGO Fes.』には海外のファンの方も多く来場されています。『FGO』の人気の秘訣はどこにあると思いますか?
金沢:『FGO』がここまでワールドワイドで多くの方に楽しんでいただけている理由は、根底に奈須きのこさんと、武内崇さんが生み出した、壮大なスケールの世界観やキャラクターたちがあるからだと考えています。
このおふたりが20年にも渡って、作品を届け続けてくださっていて、そのうえで「Fate」シリーズという、スピンオフ作品を含めたひとつの大きな物語が構築されている。どんどん新しいクリエイティブが生まることで、さまざまな切り口で「Fate」シリーズが楽しめますし、常に期待感があるからこそ『FGO』はここまで大きく成長したのだと思います。
木村:ゲームの世界観は今もなお更新されていて、それがゲームだけでなく、リアルイベントやグッズなど、さまざまなかたちで展開できているという強みもあると思います。
『FGO』のゲーム中に新しいサーヴァントが登場したら、『FGO Fes.』で等身大のスタンディパネルが立ち、そこで新しいボイスを聞くことができる。そうやってゲームとリアルイベントが連動した取り組みが展開されることによって、ファンの皆さんも実際に『FGO Fes.』に足を運びたいと思ってくれるのではないでしょうか。
佐藤:僕は『FGO Fes.』に携わる前から、アニメ「Fate」シリーズを見ていたのですが、改めて『FGO』をプレイすると、そのシナリオや設定の奥深さに驚いてしまうんですよね。できれば、すべてのシナリオをアニメ化してほしいと願っています。
それと、プレイヤーのゲーム体験をすごく大切にしているのも素晴らしいと感じていて。例えば、東京と大阪で開催した『Fate/Grand Order Servant Art Chronicle -最終再臨展-』では、ゲーム内でサーヴァントを最終再臨まで育成した際にのみ見ることができるイラストが展示されました。
これらのイラストは、これまでネタバレを避けるために意図的に公開を控えてきたものであり、作品の世界観を守るための配慮がなされてきました。そうした姿勢が、プレイヤーの皆さんの体験や喜びにつながっているのだと思います。
――最後に、『FGO Fes.』の今後の展望を教えてください。
竹内:10年『FGO Fes.』を手がけてきたことで、SMSの社内にしっかりとしたノウハウが蓄積しているなかで、今後は、さらにそれをいかして『FGO』のイベントの幅を広げていければと考えています。
そのうえで、最近、改めて感じるのは、『FGO』のように大型イベントを開催できるIPは、そう多くないということ。だからこそ、とても貴重な機会だと思っていますし、『FGO』という作品をより大切にしながら、魅力を伝えるイベントになるよう工夫を続けていきたいと思っています。
金沢:ゲームのメインシナリオは、いよいよ第2部の終章に突入していくなか、『FGO Fes.』は来年以降も続けていきたいと考えています。お客さまに新鮮で楽しく面白いと感じていただけるものをこれからも作っていきたいですね。
『FGO Fes.』で培ってきた経験やつながりをいかして、“ANXが手がけるイベントは面白い”と感じていただけたらうれしいです。さまざまな展開を作れるような取り組みを、今後も続けていきたいと思っています。
記事の前編はこちら:『FGO』10周年――ファンの声とともに創る『FGO Fes.』の企画制作チームの裏側
文・取材:志田英邦
撮影:干川 修
©TYPE-MOON / FGO PROJECT

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