『FGO』10周年――『FGO Fes.』の歩みを支えた、運営制作チームの挑戦の裏側
2025.11.18


スマートフォン向けロールプレイングゲーム『Fate/Grand Order』(以下、FGO)のリアルイベント『Fate/Grand Order Fes.』(以下、FGO Fes.)。2017年にスタートし、今年はサービス開始10周年を記念して、幕張メッセにて2日間に渡り開催された。
『FGO』のパブリッシャーであるアニプレックス(以下、ANX)とANXの完全子会社であり、ディライトワークスから『FGO』のゲーム事業を継承して、開発、運営を手がけるラセングル(以下、LSG)、イベントの制作、運営を行なうソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)が手がける本イベントは、どのような歩みを辿り『FGO』ファンに愛されてきたのか。
前編では、『FGO Fes.』においてステージやアトラクションなどの企画制作を行なう、ANXとLSGのメンバーに話を聞いた。
目次

O.S.
アニプレックス

M.M.
ラセングル

K.S.
ラセングル

O.T.
ラセングル
記事の後編はこちら:『FGO』10周年――『FGO Fes.』の歩みを支えた、運営制作チームの挑戦の裏側
――『FGO Fes.』は今年で8回目の開催(2021年のオンライン開催を含む)となりましたが、まずは皆さんの『FGO』および『FGO Fes.』における役割を教えてください。
O.S.:ANXで主にゲームの宣伝を担当しています。2017年2月に現在の部署に異動し、『FGO Fes.』の2周年イベントの直前からプロジェクトに参加しました。
それ以来、『FGO Fes.』においては毎年、イベントの運営に携わっていて、メインで担当しているのはステージやアトラクションの制作。朗読劇やライブステージなど、さまざまなコンテンツのボイスディレクションなども行ないました。また今年は、一部のステージイベントで司会も担当させていただきました。
M.M.:LSGは主にゲームの開発、運営を行なう会社なのですが、そのなかで私は宣伝チームに所属し、『FGO』の宣伝業務全般を担当しています。私が入社したのは2017年なので、それ以来、8~9年ほど『FGO』に携わっていますね。
『FGO Fes.』においてはLSGとしてのゲーム情報の管理やコンセプトの検討、描き下ろしイラストの制作などを行ないました。そのほかにメインエリアの企画や、コスプレイヤー、着ぐるみの演出企画なども担当しました。メインは、「『Fate/Grand Order』スタッフトーク」というステージイベント。こちらはFGO開発、運営スタッフを迎えて、FGOの裏話をお届けするというトークコーナーとなっています。
K.S.:私は2018年6月にディライトワークスに入社し、『FGO Fes.』の3周年直前からプロジェクトに参加しています。そこから『FGO』の宣伝に携わるようになり、普段は主に、ほぼ毎月実施している配信番組「Fate/Grand Order カルデア放送局」で、ゲーム情報を発表するパートを担当しています。
今年の『FGO Fes.』では、サーヴァントの新たな描き下ろしのイラストが113騎と、これまでで最大のボリュームになったので、作家さんへの発注や進行管理などのやり取りを担当しました。
O.T.:私は2020年に新卒でディライトワークスに入社し、2年目で『FGO』の宣伝チームに配属となりました。最初は右も左もわからないところから始まったのですが、現在は、YouTubeやTikTok、XなどのSNS運用、ラジオ番組の制作、リアルイベントの映像編集などの業務を担当しています。
『FGO Fes.』では、2022年の7周年イベントから携わっていて、今年はひとつのエリアをプロデュースさせていただきました。アトラクション用のサーヴァントのセリフ作成やイベント内映像のシナリオの制作のほか、LINEのスタンプラリー、さらには現地で取材を行なって会場の様子をSNSで発信していました。
――『FGO Fes.』は毎年夏に開催されるイベントとしてファンの皆さんに親しまれていますが、10年続けてきたなかで、印象に残っているできごとを教えてください。
O.S.:『FGO Fes.』が幕張メッセで開催されるようになったのは2017年からなのですが、当時は、ひとつのゲームやIPをテーマに大規模なホールイベントを行なったという例があまりなかったんです。なので、リアルイベントとしての『FGO Fes.』は、すべてが手探りのゼロベースからスタートしたこともあり、当時のことはとても印象に残っています。
やはり、さまざまな作品が集まるアニメイベントでは、多くのIPが出展しているので、来場者の属性も多岐に渡り、動き方もそれぞれ。ですが、『FGO Fes.』は来場者の皆さんがほぼ全員『FGO』のファンですし、動線が一定のパターンに集約される傾向があり、どうしても会場の目玉コンテンツに人が集中してしまうんですね。運営するにあたり、動線設計やコンテンツの配置は、特に気を配らなくてはいけないと考えていました。
そのあたりも含めて、宣伝の石倉(正啓)さん(当時はディライトワークス所属)やANX金沢(利幸)さんなど、チームで一丸となって何を作っていくかを考えて……。なので『Fate/Grand Order Fes. 2017 ~2nd Anniversary~』が、10周年につながる礎になっているという意味で、非常に印象に残っています。
M.M.:私も印象に強く残っているのは、2017年のイベントです。開幕の前日になって会場内の各エリアにBGMを流すべきじゃないかという話が出たんですね。“今更ですが、確かにその通りだ!”となったんですが、現場のスタッフ全員が手いっぱいで……。
当時の上司にお願いして、明け方までかけて『FGO』の曲のストックから選曲してもらい、当日、ギリギリになって会場で流す曲が決まる……という(笑)。本当に全部が手探りで、ずっとマラソンをしているような感覚がありましたね。
O.S.:そうでしたね(笑)。あとは2017年に、初めて朗読劇(「FGOメモリアルステージ」)を披露したのも印象的でした。作品の世界観をしっかりと作り込むために、ステージで流れる映像を制作することになり、この日のためだけに登場するキャラクターのボイスを新録したのですが、物量が多くて(苦笑)。ANXの制作も宣伝も収録の立ち合いを手伝って、まさに全員野球で『FGO Fes.』を作っていった記憶があります。
K.S.:私が初めて参加した2018年の3周年フェスでは、2017年から多くのアップデートが行なわれ、会場やコンテンツも増えていましたが、前年に皆さんが試行錯誤して取り組んだ結果なんだというのが伝わってきますね。
O.S.:確かに会場となる幕張メッセ国際展示場のホールも、2017年では9、10ホールだったのですが、2018年では9、10、11ホールになって。ホールがひとつ増えたんですよ。
■関連記事
『FGO Fes. 2018』はこうしてできた! 主催×運営事務局インタビュー<前編>
『FGO Fes. 2018』はこうしてできた! 主催×運営事務局インタビュー<後編>
――横(会場面積)にも縦(時間軸)にも幅が広がっていったというのも、この10年の歩みの特徴ですよね。では、近年で印象的だったイベントや企画はありますか?
K.S.:私は2024年の9周年イベントで担当した“ぐだぐだパビリオン”エリアが特に印象に残っていますね。“ぐだぐだレイドバトル”というデジタルアトラクションを企画して、エネミーを踏んで倒すという体験型のコンテンツをSMSの制作チームと一緒に考えて作りました。
『FGO』におけるレイドバトルの面白さを、身体で味わえるものにしようと取り組んだものだったので、体験してくださった皆さまに喜んでいただけたのは、その思いが伝わったのだとうれしくなりました。限られた時間でも満足度の高い体験をご提供できるよう、ユーザー目線にこだわって取り組んできました。
――2019年から拡大していったコロナ禍では、どのような対応が行なわれたのでしょうか。
O.S.:コロナ禍の2020年は、5周年記念として、東京ドームでの開催を予定していました。しかし、それがコロナ禍の影響で中止となり、急遽、配信番組に切り替えることになったんです。
さらに2021年は規制が緩和されたとはいえ、やはり万単位の人が集まるイベントは難しいとなって。だったら6周年にちなんで、連続6日間配信イベントをやろうという、けっこう無茶なことも実施したんですよね(笑)。
1日目に約100分の朗読劇『FGO THE DRAMALOGUE Flashback Lostbelt No.1-No.5 -マシュ・キリエライト-』、最終日の6日目には感染対策を行なったうえで数百人の来場者を招いて、イベント(FGOカルデア放送局 6周年SP)を開催。2022年の7周年でようやくリアルイベントが復活しました。
――O.T.さんは入社後、コロナ禍が直撃した世代ですね。
O.T.:私は2019年に当時のディライトワークスに内定していたので、その年に開催された4周年のイベントには見学で参加したんです。もともと『FGO』が大好きで学生のころからプレイしていたのですが、実際に4周年イベントの会場に訪れたら、ものすごい規模で。なによりファンの皆さんの熱量の高さに驚きました。
その後はコロナ禍になり、リアルイベントがしばらく開催できなくなってしまいましたが、ようやくリアルで実施できた2022年の7周年イベントでは、その熱量の高さを改めて感じました。特に、最後のプログラムとして実施された「FGOカルデア放送局 7周年SP」の反響はものすごかったのを覚えています。
――やはり『FGO Fes.』で特に盛り上がるのは、ゲームの最新情報が発表される最後のステージイベントなんですね。
O.T.:最後のステージの反響は毎回すごいですね。当時は客席で声出しが制限されていた時期だったのですが、周年サーヴァントのアーキタイプ:アースが発表されたときに、声にならない声というか……地鳴りのような反響があって。
やはり、ファンの皆さんの『FGO』愛はすごいなと。毎年思うことですが、ひとつのゲームがとんでもないエネルギーを生み出しているんだと感じて、自分自身も携わっていくにあたり、毎回気が引き締まる思いです。
――今回の『FGO Fes.』は、10周年記念という節目のイベントとなりました。皆さんにとっても印象深いイベントになったのはないでしょうか。
O.S.:そうですね。今回、ステージで司会を務めさせていただいて、改めて感じたのですが、本当にお客さまの目がキラキラしていて、純粋にイベントやステージを楽しんでいる様子が伝わってきました。
また、最新情報を発表すると大歓声が起き、キャストの皆さんがお話ししているときは真剣に耳を傾けてくださる。イベントが終わったあとは自然と、次ももっと頑張ろうという気持ちになっています。
O.T.:私は今回、“チャレンジクエスト ~コロシアム・マウンテン~”というゲーム大会の企画、運営を担当しました。自分も『FGO』のプレイをやり込んでいるので、それをいかしてルールの設計を担当したり、大会のレギュレーションを決めたり。
今回は3部門制を初めて導入して、事前にルールをかなり細かく作っていたのですが、初日の決勝の出場選手を決めるときに、こちらが想定できていなかったことが起きてしまって。結局、選手の皆さんが相談してくださって、調整していただいたんです。
熱心な『FGO』プレイヤーの方々から直接ご意見をいただくことで、2日目からはスムーズに進行することができました。皆さんと直接会話をして、ご意見をいただけるのはとても貴重な機会ですし、「楽しかった」と言ってくださるのは、本当にうれしかったです。
M.M.:私は、シナリオライターの方の監修を受けることを前提に、アトラクションで登場するサーヴァントの選定をはじめ、アトラクション中のセリフなどの制作にも携わらせていただいたのですが、ファンの皆さんが、そのアトラクションを体験して、SNSなどで感想や細かい考察を書いてくださるんですね。
特に考察については、私たちの想像を大きく上回るほど詳細で、小石を投げたつもりなのに、巨石が放り込まれたのかというぐらいの反響がありました。たったひと言のセリフで、皆さんが、こんなにもイメージを膨らませて『FGO』の世界観を拡げてくださるのが、本当にうれしくて。それもこれもファンの皆さんが、それぞれのサーヴァントと過ごしてきた大切な時間があるからなんだと、改めて実感しています。
――今回は『FGO Fes.』のなかでも最大規模のイベントとなりましたが、実際にはどのようなチャレンジをしていたのでしょうか。
O.S.:9周年の時点で、“10周年はすごいことになるぞ”という期待の声がSNSで多くありました。私はステージイベントを主に担当しましたが、今回は朗読劇とライブを同じフェス内で別々のステージに開催するという新しい試みがあって。
朗読劇では、多くの方が感動して涙を流しているのが見えて、拍手の大きさにその手応えを実感しました。また、ライブステージでは、さまざまなアーティストの皆さんにご参加いただき、ラストステージの前に会場の熱量を最大限に高めることができたのではないかと思います。
【FGO Fes. 2025】FGO Fes. 2025 LIVE SHOW
実はイベント初日の最後の朗読劇の直前で、LEDの一部が不具合を起こしてしまうというトラブルが発生しまして。ステージとステージの間の時間は限られているので、そのままでいくという選択肢もあったのですが、演出的にも映像がかなり重要なステージだったので、即判断して交換したんです。
もしかすると、作業時間が最大30分くらいかかるかもしれないとのことだったのですが、施工スタッフの皆さんが頑張ってくださって、なんとか間に合わせることができました。
――ギリギリの時間のなかでも、世界観を第一に考えた判断だったというわけですね。
O.S.:はい。やはり、『FGO』の朗読劇はしっかりと世界観へ没入してもらいたいので、映像を万全の状態で観ていただきたいという思いがありました。また、スタッフの皆さんもずっと一緒にやってきたメンバーなので、作品に対するファンの方々の熱量がどれほどのものか共有できていて、そのアクシデントが世界観に影響するものであれば、“やらなければいけないですよね?”と考えてくださるのが心強いです。
――では最後に、皆さんの『FGO Fes.』での今後の目標を教えてください。
O.S.:『FGO Fes.』は、ステージイベントの配信を実施していない時期から、コロナ禍を経たことで配信を意識したイベントに切り替わっていったという経緯があります。
過去にさまざまな経験をしたことで、アトラクションの密度も高くなりましたし、精度を上げることもできたのだと思います。実際に会場に来られた方も配信をご覧の方も、皆さんが楽しめるイベントを開催できるように、これからも引き続き、尽力していきたいと思います。
M.M.:『FGO Fes.』は技術面でも進化していると感じます。昔は物理的な展示や演出が中心だったのですが、近年では、“ミステリアス・フォレスト”のようなエリアを作ることで、映像や香りを使ったより没入感のある演出や世界観を楽しんでいただけたと思っています。
『FGO』はキャラクターの魅力が大事なIPなので、そのままでも十分魅力的ですが、新しい技術や流行、配信映えする見せ方などを意識することで、さらに表現の幅が広がっています。配信での見え方や、写真を撮ったときの見え方を考えつつ、そのときどきのトレンドやほかの事例も参考にしながら、新しい技術を上手く使って『FGO』の良さを広げていく。これからも新しい挑戦を続けていきたいと思っています。
O.T.:私は新入社員のときから『FGO』や『FGO Fes.』に関わってきたので、自分の社会人生活は『FGO』と『FGO Fes.』とともにあるんですよね(笑)。
企画を立てたり、番組制作やSNS配信、海外イベントに同行したりと、さまざまな経験を積むことができる環境に身を置かせてもらえているので、自分自身も成長できたのだと思います。
また、『FGO』というタイトルを通じて、お客さまと接することができることはとても貴重な機会だと思いますので、これからもっと撮影や編集のスキルを磨いて、さまざまな場所で得たものを『FGO』にいかせるように、今後も頑張っていきたいと思っています。
K.S.:『FGO』がアップデートを重ねてコンテンツが増えていくように、周りのスタッフもどんどん増えていって、ANX、SMSの皆さんとも密にやりとりができるようになりましたし、スタッフ間のコミュニケーションも年々強固になっていると感じます。
これからも、皆さんに楽しんでもらえる『FGO Fes.』であり続けるために、私たちも努力を続けていきたいと思っています。
後編では、運営企画チームに、開催経緯や今後の展望を聞いた。
文・取材:志田英邦
撮影:干川 修
©TYPE-MOON / FGO PROJECT
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