オアシスのワールドツアーで日本だけが許されたオリジナルグッズは、こうして生まれた②
2025.12.26


2025.12.26
16年ぶりに再始動し、ワールドツアー『Oasis Live '25』で日本にも熱狂の渦を巻き起こしたオアシス。その来日公演に先駆けて、渋谷のMIYASHITA PARKに期間限定でオープンしたポップアップストアと、日本公式オンラインストアで販売した日本限定オリジナルグッズのラインナップが大きな話題を呼んだ。
ライブを待ち焦がれるファンの期待感を高め、熱狂を後押しした個性的なグッズはどのようにして生まれたのか? “奇跡の再始動”の裏側で展開されたマーチャンダイジング(以下、MD)について担当スタッフたちに聞いた。
目次

石毛克利
Ishige Katsutoshi
ソニー・ミュージックパブリッシング

井本泰稀
Imoto Taiki
ソニー・ミュージックパブリッシング

金澤拓也
Kanazawa Takuya
ソニー・ミュージックソリューションズ
(写真左より)リアム・ギャラガー(Vo.)、ノエル・ギャラガー(Gt./Vo.)。ノエルとリアムのギャラガー兄弟を擁する、英国・マンチェスター出身のロックバンド。1991年結成。1994年、1stアルバム『オアシス』(原題:Definitely Maybe)を発表し、一躍人気となる。「リヴ・フォーエヴァー」「ホワットエヴァー」「ワンダーウォール」「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」などのヒット曲を世に放つも、たびたび兄弟の不仲が報じられ、2009年に活動を停止。その後、15年の長きにわたりバンドは休眠状態となるが、奇跡的に兄弟の和解が成立し、2024年8月にバンドの再始動を発表。2025年7月4日に行なわれたカーディフ(ウェールズ)を皮切りに、16年ぶりのワールドツアー『Oasis Live '25』を開催し、世界を熱狂させた。
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――まずは、オアシスの東京ドーム公演を終えて、率直な感想をお願いします。10月25日、26日の2日間で延べ10万人超を動員。再始動したオアシスを包む熱気は、会場周辺も含めてかつてないほどでした。
井本:僕は20代後半なのでオアシスのリアルタイム世代ではないんですが、2024年11月に六本木ミュージアムで開催した『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』の運営に携わることになり、そこで初めて仕事として深くオアシスに触れました。
『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』に来場されたお客様は、僕と同じ20~30代の人が驚くほど多くて。自分と同世代で、こんなに熱心にオアシスを聴いている人たちがいるんだという事実に衝撃を受けました。
その体験を通じて、僕自身もオアシスの音楽への愛情が深まっていって。それまでは洋楽の教養として聴いていた部分があったのですが、完全に自分の好みとして、ファン目線で聴くようになったのがこの時期です。
そして今回、オアシスの再始動ライブを体験して、会場の圧倒的な熱量、そしてUKロックという文化が日本の土壌にこれほど深く根づいていることに感動しました。何より、ノエルとリアムのふたりが、今の年齢であれほどカッコいいパフォーマンスを見せてくれるとは……。
僕の親世代に近いバンドですが、会場には若い人たちも多く、彼らを単なるミュージシャンとしてだけでなく、ファッションアイコンやロールモデルとして見ているのを感じました。
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金澤:僕は現在30代後半なので、世代的には少し後追いになります。中学生のころ、MTVを見て洋楽に興味を持ち始めた時期に、たまたまテレビでイベントに出演しているオアシスを見たんです。何の予備知識もなかったのですが、なんだこの人たちは、カッコ良すぎると直感的に惹かれました。
リアムが後ろで手を組んで、微動だにせず堂々と歌い上げる姿。その横で、ノエルがデカい音でギターを鳴らしながら、キャッチーなメロディを紡いでいく。その佇まいに痺れて、そこから洋楽の世界へとのめり込んでいきました。だから僕にとってオアシスは、音楽の扉を開けてくれた恩人なんです。
仕事の視点でお話しすると、ここ数年は世界的に見てもロックバンドの勢いが少し落ち着いていて、MDの現場でもアニメやK-POPの勢いに押され気味でした。オアシスの再始動なんてあり得ないと誰もが思っていたなかで、まさかの復活劇。ロックが苦戦している状況下で、ロックンロールの復権というか、新しい希望を見せてくれた救世主のような存在だと感じています。
石毛:僕は2005年の『サマーソニック』でヘッドライナーを務めたオアシスを観ているのですが、実は単独公演を観るのは今回のワールドツアーが初めてでした。20年近く前の記憶と比較してもまったく遜色ない、むしろ現在進行形の凄みを感じましたね。リアムも断酒をして、走り込んで身体を作ってきていた。今回の再始動にかける並々ならぬ思いが伝わってきましたね。
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――『Oasis Live '25』日本公演におけるMDの取り組みについて、皆さんの役割を教えてください。
石毛:『Oasis Live '25』におけるビジネス的な座組は少し特殊です。まず、今回のワールドツアーでグッズ販売などを展開する権利は、日本を除く全世界でワーナー・ミュージック・グループが獲得しています。しかし、日本においては、“デッカロゴ”と呼ばれる有名なオアシスのロゴの国内ライセンス権を持つソニー・ミュージックパブリッシング(以下、SMP)が、マネジメントと直接契約する形で『Oasis Live '25』ツアーグッズの日本テリトリーの権利を獲得し、独自展開を行ないました。
また、一部を除いてアパレルや飲料系のメーカーなどで展開された関連グッズやキャンペーンについても、SMPからライセンスアウト(使用許諾)をさせていただくかたちで、来日公演を盛り上げていただきました。
そのうえで、音源周りのプロモーションはソニー・ミュージックジャパンインターナショナルが担当し、ソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)には、グッズの制作実務、ポップアップストアの施工、運営、ECサイトの構築など、立体的な具現化をお願いしました。
また、ソニーミュージックグループのヘッドクオーターであるソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)のコーポレートビジネスマーケティンググループは、プロジェクト全体の統括、SNSやWeb、TV露出などの宣伝施策を担ってもらっています。
今回は、「オアシス OP」という期間限定の社内アソシエーションが立ち上げられ、ソニーミュージックグループを横断するプロジェクトになったのですが、関係者全員の役割がいい意味で絡み合っていて、グループシナジーをいかしたプロジェクトになりました。ちなみに「オアシス OP」の“OP”は、“おかえりプロジェクト”の略称です(笑)。
金澤:僕たちSMSは、MDに関わる実務全般を担当しました。グッズのデザイン制作においては、イギリス本国のデザイン素材を使用するものもありましたが、今回は日本独自のオリジナルアイテムも数多く展開できたのが特徴です。
業務範囲は多岐にわたりました。グッズの企画、製造、ECサイトでの販売と物流、そして渋谷のMIYASHITA PARKでのポップアップストア「Oasis Live '25 Tokyo Fan Store」の運営や施設全体の装飾、SNS用の動画コンテンツ制作、デジタル整理券システムの運用まで、SMSが持つリソースを総動員しました。
井本:僕の役割は、SMPというライセンサーの立場で、グッズに関するあらゆる情報を集約するハブになることでした。“グッズのことは井本に聞けばわかる”という状態を作りつつ、各部門の間を走り回るのが役割でしたね。
特に注力したのは、SMSに構築してもらったオンラインストアの運営ディレクションと、SMEが主導したSNSやWebプロモーションで、グッズやショップ情報をまとめるSMPサイドの統括の役割です。どのタイミングでどの商品情報を出し、どうやってファンの皆さんの期待感を高めていくかという販促周りも担当しました。
――日本限定のオリジナルグッズも含めたMDは、どのように進行したのでしょうか。
石毛:まず、SMSの金澤さんたちに千本ノックのような形で大量のグッズのアイデアを出してもらいました。最終的に53アイテムを販売したのですが、そのうち26アイテムが日本オリジナルです。グッズの案としてはその倍以上の数を作成してもらって、本国に確認を出し、承認されて戻ってきたのが26アイテムだった、という結果ですね。
金澤:日本のマーケットは特殊で、単に輸入盤や本国でデザインされたものをコピーして売るだけでなく、日本独自の企画が求められます。そのために、長年、日本とオアシスの信頼関係を構築し続けてきた、SMEの小沢(暁子)さんや石毛さんたちが中心となって、向こうのマネジメントに対して、日本オリジナルグッズの制作許可を取りつけてくれたのですが、当然ながら“UKデザインのトンマナに揃えてほしい”など、リクエストはいろいろありました。
一番苦労したのは、本国側が何を作るかわからない状態で日本独自の企画を進めることになったことです。当然ですが、本国もツアーの詳細が決まってから動き出しているので、すぐにグッズのラインナップやデザインが決まるわけではありません。
しかし、決まるのを待っていたら、こちらの展開が間に合わなくなってしまうので、春ごろには100種類以上のラインナップ案をラフデザインまで仕上げて送りました。
井本:確かに100案以上ありましたね。そこから削られて半分以下になった形です。
石毛:グッズはノエルとリアムも確認しているので、時間がかかってしまうのは覚悟していました。その後、ようやく本国のラインナップが届き、重複を避けるために仕分けを行なって、アイテム構成をスリム化していきました。
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――そのなかで、葛飾北斎の浮世絵やカタカナロゴのTシャツ、キーホルダー、湯飲みといった日本らしいアイテムが生まれた背景を教えてください。
金澤:100以上の案を考えるなかで、日本で開催されるライブのために必要なものは何か? ファンの皆さんが記念として持っておきたいグッズは何か? にフォーカスして数を絞り、浮世絵やカタカナを使った日本でしか生まれないグッズをラインナップすることができました。
デザイン面では、“再始動した2025年のオアシス”を意識していて。過去のアーカイブを掘り起こすだけなら『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』でやり尽くしていましたし、復刻系のアイテムはほかのアパレルブランドからも発売される。だからこそ、SMSのクリエイティブディレクターと相談し、現在のトレンドも加味した新しいイメージづくりを目指しました。
また、葛飾北斎に関しては、著作権保護期間が満了したパブリックドメインであるため、グッズとして展開しやすいという利点もありました。さらに、これは完全に偶然なんですが北斎の描いた『神奈川沖浪裏』の色味が、オアシスのデビューアルバム『オアシス』(原題:Definitely Maybe)のアートワークの色味とリンクしていたんです。
井本:若い世代の視点から見ても、昨年の『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』のときから、オアシスのグッズを身に着けているのはイケてるという感覚があると感じていました。音楽とファッションの結びつきが非常に強いバンドなので、今回の新しいデザインテーマが、古くからのファンだけでなく、ファッション感度の高い若い層にも刺さったのではないかと思います。
会場では、ファッションとしてもグッズを楽しんでいる若者と、長年聴き込んできた大人のファンが混在していましたが、それが対立することなく、ひとつのカルチャーとして美しく混ざり合っていたのも印象的でした。
後編では、具体的なグッズの制作過程について、より詳しく話を聞いた。
文・取材:油納将志
撮影:干川 修
2026.07.06
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