特集

アニメ×音楽の常識を変えたTM NETWORKと「シティーハンター」のコラボ<後編>【特集第2回】

TM NETWORK(以下、TM)デビュー35周年。4月21日にはライヴ・フィルム『TMN final live LAST GROOVE』が全国14都市34カ所の映画館で1日限定プレミアム上映されるなど、盛り上がりをみせるなか、CocotameではTM×映像を大特集!

特集第2回では、前編に引き続きアニメ映画『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』(以下、『劇場版シティーハンター』)のプロデューサー若林豪と宣伝を担当した淀明子(ともにアニプレックス)、そして、現在TMのカタログ作品などを手がける福田良昭(ソニー・ミュージックダイレクト)へのインタビュー後編をお届けする。

写真左から、淀明子(アニプレックス)、若林豪(アニプレックス)、福田良昭(ソニー・ミュージックダイレクト)

写真左から、淀明子(アニプレックス)、若林豪(アニプレックス)、福田良昭(ソニー・ミュージックダイレクト)

*インタビュー前編はこちら

「Get Wild」誕生秘話

──映画『劇場版シティーハンター』のヒットの要因に音楽が挙げられると思います。映画を通じて音楽を聴くと、物語の感動も共有できるので、さらに思い入れが増しますよね。

若林:そうですね。ただ、それはテレビアニメの「シティーハンター」からやっていることで、物語がエンディングに近くなると「Get Wild」のイントロがかかって、最後に主人公の冴羽獠がかっこ良いセリフを言うじゃないですか。

──あのイントロの入り方に感情を高揚させられ、そこにメッセージ性の強いセリフが突き刺さってくるのが印象的でした。

若林:物語、セリフとリンクすることで「Get Wild」もよりかっこ良く聴こえてくる。それが、物語×音楽の相乗効果ですよね。

──ちなみに「Get Wild」のことで、小室(哲哉)さんから聞いた話ですが、「スネアの音は時代を表わす」とおっしゃっていて。「Get Wild」は、四つ打ちビートで展開していて、スネアのサウンドを無くしたことが、時代を超えて古くならない理由のひとつだと自己分析されていました。

若林:僕も「Get Wild」誕生秘話については知りたかったので、当時の状況を知る読売テレビのプロデューサー諏訪道彦さんに聞いたんですけど、発注時に“疾走感”というキーワードがあったらしいんです。珍しいですよね?普通、アニメのエンディングってわりと静かに終わることが多いので。

淀:“疾走感”は、オープニング曲の発注時に出がちな言葉ですからね。

若林:それも「シティーハンター」だからこそですよね。おそらく「高速道路を車のヘッドライトが群れをなして流れていく」みたいな都会的なイメージがあって。それを小室さんが音楽的に変換していくときに、スネアを抜くという発想に至ったのかなと。

──当時、1987年代の音楽シーンはビートロック全盛期に突入するタイミングなんですよ。そこで、スネアが入っていないというのは、チャレンジングだったと思います。ちなみに「Get Wild」のミュージックビデオは完全に80年代のファッションだったので、5〜10年前ぐらいだとけっこう違和感があったんですよ。木根さんも以前、「Get Wild」のミュージックビデオは、ファッション的に恥ずかしいと話していたこともありました。でも、時代が巡って、今見ると大きめなジャケットやサングラスの違和感が薄まっている。ああ、時代って巡るんだなと。

淀:今の原宿にもありそうな雰囲気ですよね。

オリジナル「Get Wild」のギターは誰!?

──そういうめぐり合わせのタイミングも、今回の『劇場版シティーハンター』ヒットの要因かもしれないですね。

若林:そう言えば、「Get Wild」で質問なんですけど、オリジナルのギターを弾いているのはどなたなんですか? B’zの松本(孝弘)さんのお名前がよく出るんですけど、レコーディングのときは窪田晴男さんだという話もあって。

福田:窪田さんですね。

若林:これがけっこう不明だったんです。

淀:都市伝説になっていますよね。

若林:松本さんは、TMのライブにサポートメンバーとして入っていたので、そのイメージが強いのでしょうか。「Get Wild」を弾かれている映像がありますよね?

福田:ええ。それでみなさん、松本さんを想像してしまうんですよね。

──ちょうど坂本龍一のアルバム『未来派野郎』のギターを1986年に窪田さんが弾いていたので、注目していたんでしょうか。小室さんが窪田さんにオファーしたんだと思います。窪田さんのギターは空間的でエフェクティブというか、松本さんだったらまた違ったテイストになっていたかもしれませんね。

アルバム収録曲からタイアップが生まれた理由……

若林:もうひとつ聞きたかったことがあります。「STILL LOVE HER(失われた風景)」はもともとTMのアルバム『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』の収録曲で、タイアップは想定していなかったと思うんです。でも、「シティーハンター2」のエンディングに抜擢された。その理由を知りたくて。

TM『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』

淀:「Get Wild」の作詞を担当された小室みつ子さんにお話を伺ったときに、「STILL LOVE HER(失われた風景)」のお話も出たんですが、あの曲は木根さんと小室哲哉さんの共作なんですよね。ロンドンでのレコーディングだったそうですが、「ロンドンの空気感が、あの曲には入っている」というお話でした。「シティーハンター」のために書かれた曲ではなかったんですね。

若林:タイアップを想定しない曲を起用するというやり方も当時としては珍しかったと思うんです。

福田:そこは、僕も知らないというか、記憶がないので、分からないです。どなたがチョイスされたのか?やっぱり諏訪さんなんでしょうか。

若林:諏訪さんが関わっているのは間違いないんですけど、諏訪さんがなぜアルバムから曲を選んだのか経緯が分からなくて。

福田:たしかに、それまでの決まり方の流れとちょっと違いますね。『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』のアルバムが発売されて、それをたぶん、聴かれてチョイスされたんでしょうね。

若林:「STILL LOVE HER(失われた風景)」が、「シティーハンター2」のエンディングテーマに起用されたというのが画期的だったと思うんです。タイアップを想定していないのに、世界観は通じるものがある。アニソン主題歌起用の進化の過程を感じます。今度諏訪さんに詳しく聞いてみようっと。

後日諏訪氏談が届いた!

「Get Wild」が大ヒットし、「次もTMで行こう!」となっていたものの、番組延長が決定したころ、TMサイドのスケジュールが合わず、新曲をあきらめて『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』の中から選ぶことに。イントロが良かった「STILL LOVE HER(失われた風景)」を選んだとのこと

 

淀:いろいろと逸話がありますが、今回の音響監督は以前EPIC・ソニーに在籍していた長崎行男さんという方です。福田さんは、当時EPIC・ソニーで、長崎さんとは同僚だったのですよね?

福田:そうです、そうです。

淀:当時はレーベルのスタッフだった方が、いろんな経緯を経て音響監督になられるってすごいなと思いました。

若林:今回の音楽面、挿入歌やかつてのBGMを起用するにあたって、音と映像のハマりの良さは長崎さんの「シティーハンター」愛やEPIC・ソニー愛が大きい。かつての同僚たちが作った曲を大事にしたかったって言ってましたね。これも本当に奇跡で。自分で作った楽曲を、その何十年後に音響監督として自分で使うって「こんな展開ある?」って。

──ちなみに「STILL LOVE HER(失われた風景)」の歌詞は、小室哲哉さんが書いていますが、めずらしくシンガーソングライター的な視点で個人的な想いがこもった歌詞なんですよね。そういう歌詞の世界観がイコール「シティーハンター」としてファンに記憶されている状況もおもしろいですよね。この曲をピックアップされたセンスがすばらしいと思います。

若林:まったく「シティーハンター」を意識せずに作った曲が、見事に世界観にハマったんですね。

世界でヒットする作品「シティーハンター」

──今回の『劇場版シティーハンター』では続編がありそうなラストで今後も楽しみですが、日本でのヒットを受けて台湾での公開も決まりました。

若林:決まりましたね。これから世界へ向けて公開されていきます。

──当初から世界展開は予定していたんですか?

若林:僕はプロデューサーをやる以前、海外赴任をしていて、フランスに4年住んでいたんです。「シティーハンター」は、もともとフランスで人気があるんですよ。冴羽獠がニッキー・ラルソンという外国人の設定になっていて。当時もフランス語の吹き替えで放送されていました。

僕が赴任していたのは2000年代後半ですけど、「シティーハンター」はフランスでは誰もが知っている作品なんです。世界でヒットする作品なんだなという実感があって、当時から「シティーハンター」みたいな作品に仕事で携わられたらなと思ってました。

──今、「シティーハンター」のフランス版実写映画が公開されているそうですね。その名も『NICKY LARSON ET LE PARFUM DE CUPIDON(ニッキー・ラルソンとキューピッドの香水)』という。

若林:じつは大ヒットしていて、観客動員数がフランス国内で100万人を超えているんですよ。冷静に考えるとフランスって人口が6,700万人ぐらいなので、すごいことなんです。

淀:冴羽獠役の方が、国民的コメディスターなんですよね。

若林:フィリップ・ラショーさんといって、イケメンで、主演兼監督、そして脚本も書かれていて。

淀:「シティーハンター」原作の大ファンで北条司先生に自らお手紙をしたためられて、原作許諾をお取りになったと聞いています。とても熱いファンなんですよね。

──しかも、エンディングは「Get Wild」を起用されているそうですね。

若林:そうなんですよ。当時の音楽を使えばあの時の「シティーハンター」らしさが出るという話をしましたが、誰もが、「シティーハンター」をやるとなったら、やっぱり「Get Wild」だよなってなるんでしょうね。すごいことですよね。

──『劇場版シティーハンター』もオリジナル楽曲ですし、感慨深いものがありますね。

福田: TMのデビュー35周年をお祝いする、良いタイミングでのリバイバルになりましたね。

若林:たくさんの関係者の方々の協力をいただいて当時のオリジナル楽曲ですべて完結する形になって。

淀:原作の北条先生もオリジナルの「Get Wild」を使わないとなったら、その時は自分が言わないとと思われていたようなのですが、「みんなそう言ってくれたので、安心しました」というコメントもいただいたり。結果的に、いい形になって、本当に良かったです。

取材・文=ふくりゅう(音楽コンシェルジュ) 鼎談撮影=山本佳代子

特集第3回では、1994年5月18・19日の2日間にわたって開催されたTMNの終了ライブの制作を担当した立岡正樹氏の証言をお届けする。



◼アニメ映画『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』
大ヒット公開中!
https://cityhunter-movie.com/theater/
※ゲストの登壇はありません。
※詳しくはご覧になられる劇場までお問い合わせください。



■「TM NETWORKデビュー35周年記念祭!ライヴ・フィルム『TMN final live LAST GROOVE 1994』(5.1ch HDリマスター版)一日限定プレミアム上映 #110107eiga」
日時:4月21日(日)開映15:30
※開場時間は、映画館によって異なります
http://www.110107.com/tmn_lastgroove

■TM NETWORK完全生産限定Blu-rayボックス
『TM NETWORK THE VIDEOS 1984-1994』 
2019年5月22日発売/(Blu-ray BOX)32,400円/ソニー・ミュージックダイレクト 
※1994年5月18、19日に行われた東京ドーム公演の映像作品『TMN final live LAST GROOVE』のほか、1985年に行われた「Dragon The Festival Tour featuring TM NETWORK」の東京・日本青年館公演や1980年代のライブ映像などを収録 
http://www.110107.com/tm_network_the_videos

(C)北条司/NSP・「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会

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