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連載Cocotame Series

デビュー35周年!TM NETWORK×映像

TMN終了ライブの映像ディレクターが語る"ライブ秘話"――あの日起こっていたこと

2019.04.18

  • ソニー・ミュージックダイレクト
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TM NETWORK(以下、TM)デビュー35周年。4月21日にライヴ・フィルム『TMN final live LAST GROOVE 1994』が全国14都市34カ所の映画館で1日限定プレミアム上映されるなど盛り上がりをみせるなか、CocotameではTM×映像を大特集!

特集第6回では、同作品の当時の映像ディレクターを務め、今回のレストアでは、映像プロデューサーを務める川崎幹雄氏が登場。TMN終了ライブの秘話から、今回の上映会の見どころを聞いた。

  • 川崎幹雄

    Mikio Kawasaki

    1987年、EPICソニー入社、坂西伊作氏に師事。大江千里、PUFFY、JUDY AND MARYほか多数のアーティストに関わる。今回の「TMN final live LAST GROOVE」では、同作のレストア作業に携わる。

TMスタッフの映像へのあくなきこだわり

──チェック用の「TMN final live LAST GROOVE 1994」0号試写を見終わって、「当時、死にそうなぐらい大変だったけど、頑張って良かったよね」と川崎さんがおっしゃっていたのが印象的でした。

川崎:当時の、EPICの映像制作チームは、本当に良いチームだったんです。私の師匠に、坂西伊作さん(TM初期のアーティスト担当)がいまして……伊作さんが亡くなってもう10年になりますね。

──EPICは、当時普通のレコード会社と何か違う雰囲気を醸し出していました。

川崎:映像を内製するレーベルは多分、EPICが最初だったと思います。映像制作は、発表する場も自分たちで作るという発想から、丸山茂雄さん(EPICの創始者)のリーダーシップで始めたようです。スタッフはもちろんTMのことは好きなんですが、伊作さんのTMへのこだわりが強くて、撮影となると、だいたい3日間ぐらい完徹になるほどでした。働き方改革が叫ばれるいまでは考えられませんよね。

──EPICの映像チームの制作が手がけていた音楽テレビ番組「eZ」(テレビ東京系)もそうでしたが、映像にはこだわりが?

川崎:当時、テレビ番組もレコード会社のライブ映像もビデオカメラで撮るのが普通でしたが、伊作さんのこだわりでEPICはフィルムで撮影することになっていました。35mmフィルムをメインに制作された番組は「eZ」ぐらいじゃなかったでしょうか。撮影が大変なこともあって、カメラマンやカメラアシスタントのリストがたまって、EPICのリストは日本一のリストだと言われるほどでした。

小室哲哉がプロデュースした「終了」エンタテインメント

──フィルムですとコストがかかって、10分ごとにフィルムを装填しないといけないから大変だったと聞きました。

川崎:そうですね。東京ドームの「TMN final live LAST GROOVE」も16ミリフィルムで撮影していました。伊作さんの熱意ですね。この時初めて、伊作さんに現場から編集までディレクションの全てを任されたんです。当時、いろんなアーティストのライブビデオを担当していたものの、それまであり得ないようなことだったのでプレッシャーが大きかったですね。

──伊作さんから川崎さんへの継承ですね。

川崎:そうなると、自分も若かったので「伊作さんがやらなかったような演出をやりたいな」となるんです。体力もあったのでドキュメンタリーをずっと回したり。今ではスカイカム(高所にワイヤーを張りレールとして遠隔撮影)やドローン空撮などもありますが、「TMN final live LAST GROOVE」では当時アメリカで発売されたばかりのアキラ・クレーンを使いました。

──めちゃくちゃでかいヤツですね。

川崎:本当は、お客さんの頭上を舐めていく(撮っていく)予定だったのですが、消防署からNGを出されてしまい。まだまだいろんなことが確立されていなかった時代ですね……。あと、アキラ・クレーンは重りをたくさん使うんです。その重りとしてフィットネスクラブにあるようなバーベルの重りが何十個も必要になり、当時のアシスタントに走り回ってもらってなんとか間に合わせました。彼は、一晩にしてムキムキになっていましたね(笑)。

──ステージ上にメンバーも多いですし、セットも変わっていたので撮影も大変だったのでは?

川崎:ステージの図面を見ながら構成を考えるんですが、前面にレールを2本敷いたのかな? 行ったり来たりして。ステージの下手に小室哲哉狙いのリモートのカメラを置いたり。あれはけっこう画期的でした。映像にも写っていますが、これまで不可能だった角度から小室さんの手元の演奏シーンが撮れています。

あと、僕はこのときのTMの3人の衣装が大好きで、非日常的な照明もすばらしかった。当時はプロジェクションマッピングなんてなかったので、いかに照明で世界観を表現するかが大事でした。

──確かにそうですね。準備時間もあまりなかったと聞きました。

川崎:そうですね。小室さんもたくさんのアイデアが湧き出していた時期で、クリエイティブの発想がすごくて、とんでもないことを言ってくることがあったんです。ライブ当日に構成の変更もあったり。あと、もちろんポジティブな見方では、奇跡的に生まれた映像だとも思います。ある種、解散コンサートがビジネスになっていく流れは、TMが作り出したとも言えますしね。

──小室さんはそれを“終了”というキーワードで完全にエンタテインメントとしてプロデュースしていましたね。

川崎:TMN終了ライブの前に、『DECADE (TM NETWORK 1984-1994)』というビデオ作品を出しているんです。1994年4月21日のオールナイトニッポンでのスタジオの模様を中心に編集したドキュメンタリー作品で、こちらも大変でしたね。

──(笑)。丁寧な編集でアーティストのヒストリーを味わえる大好きな作品です。

川崎:そうそう、ある種「TMN final live LAST GROOVE」とつながっていますよね。

──こういった手法は他のアーティストも参考にしていて、解散ライブ映像の手法を発明しましたよね。

川崎:そういう作品の走りだったかもしれないですね。

目玉シーンは「GET WILD’89」「YOU CAN DANCE

──今回、25年前の映像がレストア(修復)されていますが、どのようなところを意識されましたか?

川崎:当時VHSからスタートしてレーザーディスク、DVD、そしてBlu-rayとフォーマットがデジタルの進化にともなって変わっていますが、いわゆる今の技術で、昔の素材をアップコンバートするんです。今回に関していうと、一番はカラコレという色調整です。色味が独特のライブだったので、「とにかく派手にしてくれ」と。そこを強調するとおもしろくなるだろうなと思いました。

劇場やBlu-ray(「TMN final live LAST GROOVE」などが収録されているBlu-rayボックスが5/22発売)で観るとDVDよりビビッドに楽しめると思います。アメコミの実写版のような。もちろん、元素材の問題でどうしても修復できない部分はあるのですが、以前より狂気が増した世界観になっていると思います。音響もおもしろい作り方で、臨場感がすごくある。DVD版より、オーディエンスの音を抑えて曲の鳴りを重視されているのもポイントかと。

──あと、今作で注目は「GET WILD’89」や「YOU CAN DANCE」は未収録シーンが追加、編集されています。

川崎:カメラ台数は多かったですから、一度素材を観てみようとなって、残っていた映像で、今回再編集できたのは奇跡ですね。ようやく完成したような、ほんとうにうれしいことですね。

──また、今だからこそですが、宇都宮さんの「COME ON EVERYBODY」での歌詞間違いシーンのエディットは大変だったのではないですか?

川崎:そうですね。1番の途中からギターの音まで無くなっているので。エディットしたことで、ファンの方に抗議の電話を会社にたくさんいただきました。「なんで編集するんだ!」と。もちろん気持ちは分かるんです。でも、作品としてちゃんと残したかったという思いですね。ウツ(宇都宮隆)さんにしても、一回限りのライブで36曲やることもあり相当な負担だったと思います。よくやりきりましたよね。

小室哲哉は、その後「文化に名を残した」

──川崎さんは、改めてTMの魅力をどのように感じましたか?

川崎:「TMN final live LAST GROOVE」後の小室さんの活動はすごかったじゃないですか? それこそTMN終了ライブのMCで最後に本人が話していたように「文化に名が残った」んですよね。それは、本当にすごいことだと思いました。すばらしい才能の持ち主ですよね。ウツさんもパフォーマンスがかっこ良すぎて。木根さんはこの映像を観ても、彼がいなかったらTMは成立しないと思います。見どころはたくさんありますよね。

──「TMN final live LAST GROOVE」で、どのシーンが思い入れ強いですか?

川崎:両日の1曲目が始まる直前、ドキュメントから会場シーンへカット変わりするオープニングシーンが好きですね。あとは「GET WILD’89」がすごいですね。あのカット割りは今では大変すぎる作業ですから。当時の編集システムだからできたことだと思っています。今のノンリニア編集というか、PCでやる作業では無理かもしれません。

──改めて観ると、カット割りもかっこ良いですね。

川崎:当時、何をやりたかったかというと、それまでTMの撮影を担当していた伊作さんは、カメラを動かさないで長まわしだったんです。それが伊作スタイルで。僕が担当することになり、(良い意味で)反発するようになって、あり得ないぐらいカットを細かくするようになりました。僕はライブ映像を観ながら踊ることが好きだったのですが、他のアーティストのライブ映像を観ていて気がついたんですけど、ライブ映像って踊りづらいんです。

──カットポイントがシンクロしていないから?

川崎:そう。僕の場合は、なるべく自分が踊りやすいようにカット割りを決めているので、リズムじゃなくてアクションで切っています。

興奮したバンドメンバーに宇都宮隆がしたこと……

──やはり全盛期と言っても過言でないTMのライブのすばらしさはもちろんですが、モノクロで入ってくるドキュメンタリーシーンはFANKS(TMファンの呼称)にとってツボかと。2日目は、本編ラストからの木根さんのリハーサルシーンが出てきて泣きから笑いへとワープする、そのコラージュ具合はTMらしい構成です。終了ライブとは言え、物悲しさだけではない、愛すべき空気感でいっぱいに満たされていますね

川崎:終了ライブですし、結構な修羅場になったりするのかなと思っていましたが、ステージのメンバーもみんな仲間だし、一を言うと十伝わる人たちで、すごくプロフェッショナルな現場でしたね。25年ぶりに通して観ると、こんな変なドキュメントいらないな、なんて思ったりもするんですけど(苦笑)。

──いやいやいや!!

川崎:当時、一生懸命やっていたんです。でも、小室さんのフェラーリのシーンとかいる? とか(苦笑)。

──フェラーリは、TMN時代のある種象徴でもありますから。意味性を持たせる持たせないのバランスは、ドキュメンタリーシーンのあり方として機能しているのが分かります。

川崎:バンドメンバーの話ですと、「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」で、右側にいるギターの北島健二さん(FENCE OF DEFENSE)が興奮しすぎて前に出てギターソロを弾きまくっていたシーンが印象的でしたね。ウツさんが笑って、なんとなく手を引いていて。その直後に特効……。

──出過ぎだぞと(笑)。北島さんのロックスターっぷりは、見どころですね。

NHK夜のニュースでとりあげられたバンドの解散

川崎:あとは、「TMN final live LAST GROOVE」の模様は、当時ライブ中にNHKの夜7時のニュースに取り上げられたんです。ドキュメンタリーシーンでそのときの記者会見のシーンが一部残っていますね。当時、バンドの解散がニュースになるなんてあり得ないことだったと思います。

──そのシーンのあと、2日目終了後、舞台裏のエレベーターへ移動する導線で3人がとてもにこやかに笑って話していて。そこまで記録しているのは、ファンの気持ちを捉えているチームだなと思います。

川崎:あそこまで追うつもりはなかったのですが、カメラマンのこだわりでした。ずっとTMについていた夏野大介カメラマンだったので、そこは信頼関係によるものですね。あの狭い通路を、他にもスチールのカメラマンもいて、ギュウギュウだったと思います。最後、会場を出て移動のバスに乗り込んだあとのシーンも残っているんですが、そこまで追っています。そのあと、バスのなかで、落ち着いたところで木根さんがトレードマークのサングラスを外したんです。最初、おもしろいと思って映像に入れていたんですが、伊作さんに怒られました(笑)。「冗談じゃない!」と。

──良い話じゃないですか(笑)。いわゆる、ライブ後のみんなの表情が「終了ライブ」後の顔じゃないんですよ。大事な仲間、友人へ向けられたライブを満喫した笑顔が記録されている。

川崎:その後、たくさんのバンドの解散ライブを撮影してきましたが、あんな和やかな雰囲気はTMぐらいでしょうね。こうして、価値のある作品をレストアして、次の時代につなげられるのは、今回改めて意義のあることだと思いました。携われたことを、とても感謝しています。

テキスト:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

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■「TM NETWORKデビュー35周年記念祭!ライヴ・フィルム『TMN final live LAST GROOVE 1994』(5.1ch HDリマスター版)一日限定プレミアム上映 #110107eiga」
日時:4月21日(日)開映15:30
※開場時間は、映画館によって異なります
http://www.110107.com/tmn_lastgroove(新しいタブで開く)

■TM NETWORK完全生産限定Blu-rayボックス
『TM NETWORK THE VIDEOS 1984-1994』
2019年5月22日発売/(Blu-ray BOX)32,400円/ソニー・ミュージックダイレクト
※1994年5月18、19日に行われた東京ドーム公演の映像作品『TMN final live LAST GROOVE』のほか、1985年に行われた「Dragon The Festival Tour featuring TM NETWORK」の東京・日本青年館公演や1980年代のライブ映像などを収録
http://www.110107.com/tm_network_the_videos(新しいタブで開く)

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