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名古屋文化に精通するライターが『コメダ珈琲店』の魅力を説く【連載第17回】

2018.10.4

Interview

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コメダ珈琲店

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2018年は、ソニーミュージックグループが生まれて50年という節目の年。本連載「50年の歩み ~meets the 50th Anniversary~」は、同じく50年という歴史を歩んだ企業、商品、サービスを取り上げ、その歴史を紐解くことで、「時代」を浮き彫りにするという特別企画だ。

『コメダ珈琲店』の歴史やさまざまなエピソードを紹介してきたシリーズ5。

第3回目は、「名古屋めし」に精通するライターの大竹敏之氏に、名古屋の喫茶文化から『コメダ』の見どころまで、おすすめメニューの試食レポとともに紹介していく。

名古屋の喫茶店文化は尾張の殿様が育てた

フリーライターの大竹敏之氏

フリーライターの大竹敏之氏

──大竹さんは、名古屋文化に精通し、ライター業をされていますが、普段はどのような活動をされているのでしょうか?

大竹:“名古屋カルチャー”を専門分野とするフリーライターとして、雑誌や新聞、Webを通じて、名古屋の面白さや喫茶店文化の魅力を発信しています。

──どうして名古屋は「喫茶店の街」と言われるほど、喫茶文化が根付いているのでしょうか?

大竹:一番の理由はその数の多さ。都道府県別では、喫茶店数第1位の大阪に次ぐ、2番目にランクインしています。

喫茶店が多い理由としては、都市部にしては土地代が比較的安かったことと、ロースター(焙煎屋)の協力により喫茶店を開きやすかったという点が挙げられるでしょう。

喫茶店の出店ラッシュが起こっているのは、1960~70年代。脱サラして喫茶店のマスターになりたいという人が全国に多くいました。

そのなかでも名古屋は、人口が密集する都市部でありながら個人で出店しやすかったんです。さらに、中堅のロースターがひしめき合い、彼らが未経験の人たちに喫茶店の経営指南をしていたことも追い風になりました。

また、応接間を持たずに近くの喫茶店で商談を行なうという、名古屋の企業のスタイルにも合致したんでしょうね。

──「喫茶店の街」になる潜在的な要因が存在していたんですね。

大竹:その上で、私は“茶の湯の文化”が背景にある説も唱えています。名古屋が位置する尾張の殿様は、織田信長をはじめ、代々茶道に熱心だったため、その習慣は武士や町人にも広まったと言われています。

また、江戸時代の尾張藩には大きな木曽三川(木曽川・長良川・揖斐川)があり、濃尾平野の土壌は豊かで、気候は温暖という恵まれた土地でした。

そのため町人の間でも、お茶で一服できるほど暮らしにゆとりがありました。また、戦前までは農家には必ず野点(のだて)の道具があったとも言われています。人々は野原でお茶を淹れて、農作業の間に一服するなどしていたそうです。その後、農業から製造業へと時代が変わっていくなかでも一服する文化は残り、喫茶店を愛好する文化が生まれました。

単に合理的な理由だけではなく、庶民のなかで一服する場を求める気質や意識があったからこそ、ここまで増えたのでしょう。そう思うと、喫茶店は中世の「サロン」のような場としても考えられますよね。

──まさか、江戸時代までさかのぼるとは思いませんでした(笑)。ちなみに、そんな名古屋の飲食業界は、今、どのようになっているのでしょうか?

大竹:近年は、大定番・台湾ラーメンの上にのっている辛いミンチ肉を使った、味の濃い台湾まぜそばが人気です。一般的に皆さんに知られている「名古屋めし」というのは、基本的に足し算文化なんです。

とんかつに味噌を加えた味噌カツや、うなぎに薬味やお茶をかけたひつまぶしなどでわかるように、味が濃い料理に、さらにインパクトがあるものを加える。でも、ベースの味が濃いから全体のバランスが崩れないんです。

──それから、名古屋の喫茶店と言えば「モーニング(名古屋式モーニング)」と言われるほど、関東などでも認識されるようになりましたが、そもそも「モーニング」とは一体なんですか?

大竹:「モーニング」は名古屋の喫茶店の多くで採用されていますね。これは、朝の時間帯にドリンクを注文すると、無料でトーストとゆで卵がおまけとしてついてくるというモーニングサービスのことです。あくまでサービスなので、支払うのはドリンク代のみ。名古屋の喫茶店だと400円前後が主流ですね。

──「モーニング」は名古屋発祥の文化なのでしょうか?

大竹:発祥は昭和30年代あたりと言われていて、愛知県一宮市発祥説と、愛知県豊橋市発祥説などさまざまです。当時の一宮市は、繊維で栄えていて、名古屋の「長者町繊維問屋街」という日本3大繊維問屋街のひとつに多くの人が働きに来ていました。そこで、一宮で提供されていたモーニングサービスが伝わり、名古屋に広まったのだと言われています。

コメダ初心者はまずこれを食せ!

──名古屋の喫茶店の代表と言えば『コメダ珈琲店』。そこでコメダ初心者に、『コメダ珈琲店』に来たらまずこれを食べるべき! というメニューを教えてください。

大竹:やはり、定番の「モーニング」と人気の「ミックスサンド」ですね。コーヒーを注文するだけで、ゆでたまごなどがついてくる「モーニング」は、『コメダ珈琲店』に来たなら一度は味わうべきメニューです。ただし、「モーニング」は午前11時までなので注意してください。

コメダ 「A定番 ゆで玉子」

「A定番 ゆで玉子」

「B手作り たまごペースト」

「B手作り たまごペースト」

「C名古屋名物 おぐらあん」

「C名古屋名物 おぐらあん」

ハムやたまご、野菜などを挟んだ「ミックスサンド」は、サンドイッチのなかでは一番人気です。パンの耳がそのまま使われていますが、薄くて柔らかいのでおいしく食べられます。

ただし、気を付けたいのが、その量です。メニューで見ると、そんなに大きく感じませんが、実際はかなりボリューミーです。

コメダ ミックスサンド/620円

ミックスサンド/620円

──本当だ、大きい!(笑)これはなかなかの量ですね。

大竹:軽食として頼んだはずが、がっつり食べることになります。そしてパンの両サイドから具がはみ出ないように食べるのが難しい……。でもこれくらい入っている方が、期待度を上回ってうれしいんですよね。

コメダ ミックスサンド/620円

ちなみに、パンがおいしいというのも、名古屋の喫茶店の特長なんです。愛知県は業務用の製パンメーカーが多く、その主要な卸先が喫茶店なので、“喫茶店で食べるおいしいパン”が研究開発されてきました。そんななか『コメダ』は自前で製パン工場を持つなど、頭ひとつリードしています。

──なるほど。それでは、サンドイッチ以外のメニューも大きいのでしょうか? ハンバーガーも注文してみましょう。

大竹:ドミグラスバーガーが来ました。大きいですねー(笑)。

ドミグラスバーガー/560円

ドミグラスバーガー/560円

──これは男性にとっても大きいサイズ! 肉厚なハンバーグに特製のドミグラスソース(デミグラスソース)がマッチしています。

大竹:食の細い方なら2~3人で分けて食べるのがおすすめですね。“『コメダ』のフードメニューはとにかくデカい”というのも特徴のひとつですが、注文時にカットをお願いすれば対応してくれるので安心です。

──お得感がありますね。ところで、『コメダ珈琲店』には、姉妹店の『おかげ庵』もあると伺いました。コメダと何が違うのでしょうか?

コメダ和(なごみ)喫茶 おかげ庵 あざみ野ガーデンズ店

コメダ和(なごみ)喫茶 おかげ庵 あざみ野ガーデンズ店

大竹:『おかげ庵』は現在、愛知県に7店舗、神奈川県に1店舗を展開する和の甘味喫茶です。「名古屋めし」の“鉄板ナポリタン”や、自分専用の焼き台で団子を焼いて楽しめます。

ドリンクは、抹茶やほうじ茶のほか、『コメダ珈琲店』と同じブレンドコーヒーも味わえます。喫茶店はいま以上に中高年の憩いの場になるでしょう。そこで『おかげ庵』のような和の喫茶店は絶対に有効だと思いますね。

――最後に、名古屋の人にとって、『コメダ珈琲店』とはどのような存在なのでしょうか?

大竹:“日々の生活に溶け込んでいる存在”ですね。特別ではなく、気づいたら『コメダ』に入っているような。名古屋で生活する人にとってはあまりに自然で、“名古屋人も歩けば必ず『コメダ』にあたる”ほど、生活の隣にあります。

ひょっとしたら10年、20年後には、東京や北海道の人たちの日常にも当たり前に存在しているかもしれませんね。「喫茶店の街」名古屋で、トップを走り続ける『コメダ珈琲店』には、そのポテンシャルは大いにあると期待しています。

次回は、「みんなが知ってる“コメダ”のみんなが知らないこと」<後編>をお届けする。

掲載されている価格(税込)は、名古屋本店のものです。
価格は店舗によって異なります。
詳しくはコメダ珈琲店公式Webサイトをご確認ください。

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取材/文:中川美紗(ゴーズ)
撮影:増田慶

大竹敏之(おおたけとしゆき)プロフィール

名古屋在住フリーライター。Yahoo!ニュースにて連載中の『大竹敏之のでら名古屋通信』など、名古屋文化をテーマにさまざまな情報を研究・発信。最新著作『なごやじまん』のほか、『名古屋めし』『名古屋の喫茶店』『名古屋の居酒屋』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』など、さまざまな“名古屋ネタ”本を執筆している。

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