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連載Cocotame Series

エンタメに効くアプリ

『スヌーピーえいご』の監修・NOBU先生に聞いた! “英語学習がエンタメになる”ってどういうこと?【前編】

2021.06.09

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エンタテインメントを活性化させるアプリをフィーチャーする連載企画「エンタメに効くアプリ」。

今回は、ソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)とソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)が、共同開発した英語学習スマートフォンアプリ『スヌーピーえいご』を取り上げる。

本アプリのコンセプトは、『ピーナッツ』の原作コミックを読んで、聞いて、英語を楽しく学ぶというもの。しかし、英語学習を“楽しむ”ことの難しさは、多くの人が体験済みではないだろうか。そこで今回は、『スヌーピーえいご』の監修を務めたバイリンガル英語講師のNOBU先生こと山田暢彦氏に、『スヌーピーえいご』を通じて英語学習をどうやって楽しめば良いのかを聞いていく。

前編では、NOBU先生が英語講師を志した理由と『スヌーピーえいご』の監修に関する基本コンセプトを語ってもらった。

  • NOBU先生/山田暢彦氏

    Yamada Nobuhiko

    NOBU English主宰。慶応義塾大学(SFC)卒。TOEIC®L&Rテスト連続満点、国連英検特A級、英検®1級。1980年生まれ。アメリカのニュージャージー州出身で、日本語と英語のバイリンガルとして、小学生からビジネスパーソン、英語講師、アクティブシニアまで、幅広い受講者に「世界に通用する英語」を指導。ネイティブの感覚を日本語でわかりやすく説明する指導に定評があり、教育界、出版界からも高い評価を得ている。監修した『中学英語をひとつひとつわかりやすく。』(学研)シリーズは、累計250万部を突破する大ベストセラーを記録。ほかにも英語学習関連の書籍30冊以上に携わっている。

英語学習スマートフォンアプリ『スヌーピーえいご』

 
1日5分で中学英語レベルから日常会話まで学べる、スヌーピーのスマートフォン向け英語学習アプリ。『ピーナッツ』のコミック誕生70周年を記念した取り組みのひとつとして、ソニーミュージックグループのSCPとSMEの2社が共同で開発し、4月28日にリリースされた。英語総監修・解説は、バイリンガル英語講師のNOBU先生こと山田暢彦氏。翻訳・解説は翻訳家の田中淳代氏が担当。コミックナレーションには、デジタル声優プロジェクト22/7(ナナブンノニジュウニ)のメンバーとしても活躍中の天城サリーと、アメリカ出身の役者・声優のライアン・ドリースが出演している。

日本の英語教育はアンバランス

──まずは、NOBU先生が英語講師になられた経緯を教えてください。

父の仕事の関係で、高校を卒業するまでアメリカのニュージャージー州で育ちました。その間も、3年に1度ぐらいは家族で日本を訪れていたのと、両親の教育方針で家庭内では日本語を使うというのが徹底されていたので、僕のなかでは故郷は日本で、自分は日本人であるというアイデンティティをずっと持っていました。

このことについては、今でも両親に感謝していて。やはり、幼いころに海外に移住すると、周りの環境から現地の言葉で話すほうが楽になってくるんですね。そうすると、日本の言葉や文化が少しずつ自分のなかから失われてしまう。もし、こういう家庭環境と両親の意識がなければ、自分の母語が日本語だという感覚はなくなっていたと思うし、きっとバイリンガルの英語講師にもなっていなかったと思います。

NOBU先生は現在、ご家族とアメリカに在住。取材は、オンラインにて行なわせてもらった。

──大学で日本に渡るまでは、現地でどのような教育を受けていたのでしょうか。

小学校まで現地校に通い、中学からは日本人学校に。高校は慶應義塾ニューヨーク学院(高等部)に通いました。この学校がモットーとするのは、バイリンガル、バイカルチュラルな教育。つまり、日本語や日本の文化も大切にする教育でしたね。

──その後、大学では日本の慶応義塾大学に進学して、こちらでの生活をスタートされるわけですが、当時の日本の英語教育に対して、どのような印象を持たれましたか?

アメリカで育ったこともあって、それまでは“日本人は英語が苦手”というのを、意識したことがありませんでした。しかし、日本で生活をして、同級生や周りの人たちと接していると、やはり多くの人が英語を話すのは得意ではないということに気づかされました。

それこそ慶応義塾大学と言えば、日本でもトップクラスの学習量をこなしてきた学生たちが集まっているはずなのに、簡単な英会話しかできない。「これが日本の英語教育か」と、当時衝撃を受けたのを覚えています。

そこで日本の英語教育の実情を調べてみたんですが、まず、受験で出される読解問題がとても難しいんですよね。英会話の技量レベルは低いのに、リーディングではこれほど高いレベルを求めるのかと、驚いたのと同時に、バランスの悪さも感じました。

もちろん骨のある英文を読めることも大事なんですが、同時に会話ができることも大切です。むしろ社会に出て、そんなに難解な英文と接することなんて専門職でもない限りないと思います。

逆に、英会話は外国人の方から街で道を聞かれることもあるだろうし、仕事や旅行で海外に行って英語でコミュニケーションが取れれば、ビジネスだったら強みになるし、旅であればストレスが軽減できる。そしてなにより、より多くの人とコミュニケーションができることによって、大げさではなく人生がより豊かになると思うんです。

今の日本の受験英語は、そういう可能性の芽を摘んでいる気がします。読解問題に偏りすぎず、もっとリスニングも重視した学習要項を作成したほうが、世界を目指せる人材を若いうちから育てることができるんじゃないかと、僕は考えています。

──そういった背景もあって、英語講師を目指されたんですね。

そうですね。大学3年生で周りと同じく就職活動を始めたのですが、自己分析の段階で挫折して、結局、履歴書を1枚も書くことなく就活は辞めました(笑)。

それで、どうしようかなと考えたときに、自分は日本語、英語という言語が好きで、コミュニケーションが好きで、そして人に伝えて理解してもらえたときに達成感を得られるタイプだということがわかりました。それらを結びつけて、自宅のマンションの一室で英語教室を始めることにしたんです。

──その後“実践で使える英語”を指導する英語講師として評判を呼び、監修を務めた『中学英語をひとつひとつわかりやすく。』はベストセラーに。そんななか、今年4月にご家族とアメリカに移住されて、新たなスタートを切られたそうですね。

そうなんです。“日本人である”という意識が強いからこそ、もっと外の世界を体験したいし、僕の子どもたちにも一度日本以外の文化に触れてほしいと思いました。アメリカは個が重視される社会なので、相手を認める文化が根付いているんですよね。街を歩いていて人とすれ違うと、それがまったく知らない人でも必ず目を合わせて挨拶をします。

先日も街を歩いていたら、今は残念ながらアジア人に対するヘイトクライムもあるなかで、見ず知らずの中学生ぐらいの白人の男子が手を振りながら笑顔で挨拶してくれて。こういうのはアメリカの文化として、すごく良いところだなと改めて実感しましたね。ここで得た学びや気づきを、日本人の英語講師として発信していきたいと考えています。

『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。』
山田暢彦(監修)
発行:学研プラス
価格:2,530円
判型:A5
頁数:328頁

受け身の教育では、生きた英語は身につかない

──日本の英語教育は、“聞く”“話す”が足りていないというお話が先ほどありました。なぜそうなってしまったのでしょう。

明治以降、日本では国の近代化のために“海外の文献を理解し、取り入れる”ことが求められました。文献を読むことでしか海外の学問や知識、情報を入手することができなかったので、高い読解力が必要とされていたと言われますよね。そうした読解力を効率的に身につけるためにやがて編み出されたのが、文法や和訳を重視した英語教育です。そういった歴史的背景があり、その名残で今でも受験英語では読解が重視されていると聞いたことがあります。

また、それと同時に、母語である日本語を大事にしたいという想いもあると思います。英語で互いにコミュニケーションを取ることが当たり前になると、母語や日本人としてのアイデンティティが脅かされるのではないか。そんな懸念もあったのでしょう。それが、読解中心というアンバランスな状態につながったのではないでしょうか。

こうした現状を変えるのは、非常に大変なことです。2021年1月から始まった大学入試共通テストは、リスニングがより重視され、読解問題ももう少し日常生活に寄せた内容に変わりましたが、各大学の2次試験は従来型のテストが多くつづいています。

──だから優秀な大学を出ていても、英会話自体は得意じゃない人が多いわけですね。

そういう弊害はあると思います。最近は“高校までは、文法をしっかり学んで英語の基礎力をつける。聞く、話すなどの英語コミュニケーションは、大学以降でやれば良い”という論調もあるぐらいですから。

でも、英語で人を目の前にしてスピーチをするのは難しいと感じませんか? 自分自身を表現するのは、母国語でだっていきなりやろうと思ってできることではありません。幼いころからの積み重ね、何を当たり前とするかという価値観が重要だと思います。

アメリカでは、小学校低学年のうちからクラスメイトの前で自分の意見をハッキリ伝える授業を行ないます。今、小4の娘のクラスでは、毎日30分読書をしてから、ノートに記録をつけるのですが、なぜ読書が大事なのかを先生が丁寧に説明してくれるんですね。先生が手本になって自分の考えを伝え、子どもにもそれを求める。

こうした教育を受けていれば、おのずと自分の意見を表明できるようになるのだと思いますが、受け身の教育を受けてきた若者たちに、社会に出た途端、突然上手にプレゼンをしなさいというのは、酷ではないかなと感じます。

表現は“生きた場面”のなかで覚えよう

──NOBU先生が監修した『スヌーピーえいご』は、多くの日本人が持つ“英語コンプレックス”の解消の一助になることを目的に開発されたアプリです。どのような思いで取り組まれたのでしょう。

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僕自身はネイティブなので、高度な英語の授業をカリキュラムにする選択肢もあったのですが、英語講師を始めてからずっと入門の英語を教えたいと思い、実践してきました。なぜなら、それによって可能性が開ける人がたくさんいると思ったからです。

今回の『スヌーピーえいご』も、英語初心者の可能性を広げたいという気持ちで監修しています。実は『ピーナッツ』の原作コミックで使われている英語って、意外と難しいんですよ。それらをひとつずつ「この構文はこうで……」と受験英語のように取り上げていたら、頭がパンクしてしまう。

だからこのアプリは、もっと手前でつまずいている人たちに向けて作りたかった。コミック全部と言わず、1ページだけ、ワンフレーズだけでも読んで、聞いて、話せれば、それだけでも英語の捉え方が変わるはずです。その最初のステップが本当に大事なので、コミックやフレーズを厳選し、レベルを調整させてもらいました。

──監修という立場から、どのようなアイデアを出されたのでしょう。

僕のモットーのひとつが、「表現は“生きた場面”のなかで覚えよう」です。そのため、共感しやすい場面のあるコミックをチョイスし、和訳も普段の話し言葉に近い親しみやすいものにしました。

『ピーナッツ』という作品は、何か大事件が起こってエキサイティングなストーリーが展開されるわけではありません。すごく淡々としているので、ただ訳をつけるだけだとスッと頭を通り過ぎてしまうと思ったんです。

そこで、“ピックアップフレーズ”というスタイルを導入して、コミック1話につきキーフレーズをひとつ取り上げ、場面や状況が思い浮かぶような解説、そのフレーズがより身近に感じられる短い例文を入れました。Too Muchにならないよう、取り上げるフレーズをひとつに絞ったのもポイントです。

──場面が思い浮かぶと、キャラクターの気持ちも伝わりやすくなりますよね。

そうなんです。解説や例文を読んだあとにまたコミックを読むと、よりキャラクターの気持ちに近づき、感じ方も変わるはず。僕は“自分ごと化”と言っているのですが、一度自分ごととしてしっかり落とし込まないと、共感もできないし英語が入ってこないと考えています。

受験英語の英文は、気持ちが動いたり、共感したりというエモーショナルな要素が抜け落ちてしまっています。でも、英語を学ぶ原点は、気持ちを通わせることにあると思うんです。僕は、英語に込められたニュアンス、話者の意図をかなり細かく読み取れますし、それを日本語でも解説できます。その強みをいかして、場面や気持ちを大事にした学習アプリにしたいなと思いました。

後編につづく

文・取材:野本由起

英語学習アプリ『スヌーピーえいご』

プラットフォーム:iOS/Android
基本プレイ無料(アプリ内課金あり)
プレミアムチケット価格:2,940円
好評配信中

©2021 Peanuts Worldwide LLC

関連サイト

『スヌーピーえいご』公式サイト
https://www.snoopy.co.jp/snoopyeigo/(新しいタブで開く)
 
『スヌーピーえいご』Twitterアカウント
https://twitter.com/SNOOPYEIGO_APP(新しいタブで開く)
 
PEANUTS 70周年記念サイト
https://www.snoopy.co.jp/70th/(新しいタブで開く)

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