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ミュージアム~アートとエンタメが交差する場所

「『約束のネバーランド』GFハウス脱獄編」が体現するミュージアムビジネスのこれから【前編】

2021.08.18

コンテンツをミュージアムにパッケージ化して魅せる「六本木ミュージアム」。期間限定で催される、さまざまな展示会の見どころを関係者に聞いていく。

今回は、2021年7月17日から12月30日までの約半年間、「六本木ミュージアム」にて開催される「体験ミュージアム『約束のネバーランド』GFハウス脱獄編」をピックアップ。本展の実現に向けて尽力した3人のキーパーソンを招き、体験型ミュージアムを企画した意図からミュージアムビジネスの課題、そして今後の展望について聞いた。

前編では企画立ち上げまでの経緯と、“体験ミュージアム”という新コンセプトについて語ってもらった。

  • 中山三善氏

    Nakayama Miyoshi

    六本木ミュージアム館長

  • 吉岡達哉

    Yoshioka Tatsuya

    ソニー・クリエイティブプロダクツ
    ディレクター

  • 近藤辰哉

    Kondo Tatsuya

    アニプレックス

体験ミュージアム『約束のネバーランド』GFハウス脱獄編とは?

 
人気アニメ『約束のネバーランド』の世界観を再現した体験没入型ミュージアム。本展では、主人公のエマたちがGF(グレイス=フィールド)ハウスの真実に気づき脱獄するまでの各シーンが、臨場感あふれる空間演出とアニメーションによって描かれている。来場者は、エマたちと同様にGFハウスの一員となり、『約束のネバーランド』の世界観を体感することができる。

新生「六本木ミュージアム」とは?

──まずは「体験ミュージアム『約束のネバーランド』GFハウス脱獄編」が開催されている「六本木ミュージアム」について伺います。こちらは、2018年9月に閉館した初代の『スヌーピーミュージアム』(南町田グランベリーパークに移転)を引き継ぐ形で営業されていますね。

中山:はい。2019年の1月に「ソニーミュージック六本木ミュージアム」という名称に変更し、『乃木坂46 Artworks だいたいぜんぶ展』から始まって、『TYPE-MOON展 Fate/stay night -15年の軌跡-』や『DOUBLE FANTASY - John & Yoko』といった企画展を開催してきました。2021年4月にソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)に経営主体が移管されたタイミングで「六本木ミュージアム」に改称されています。「体験ミュージアム『約束のネバーランド』GFハウス脱獄編」は、新体制下での企画展第1弾となります。

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──体制変更後、第1弾の展示会に『約束のネバーランド』を選ばれた理由を教えてください。

中山:六本木ミュージアムで『約束のネバーランド』にまつわる展示を開催したいと考えたのは2020年12月ごろですね。当時は、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの軌跡を辿る『DOUBLE FANTASY - John & Yoko』が好評で会期を延長して開催していましたが、そろそろ次に何をやるか決めなくてはいけないタイミングで。

いろいろとリサーチをしていたところ、かつて私が勤務していた六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで『連載完結記念 約束のネバーランド展』という原作マンガの原画展が開催されていて、それに感銘を受けたのがきっかけです。ただし、当然同じことはできませんから、こちらはソニーミュージックグループのシナジーをいかして、アニプレックス(以下、ANX)に協力を仰ぎ、アニメで何かやれないかと考えました。

──中山館長はその当時から『約束のネバーランド』はご存じだったんですか?

中山:実はファンでして(笑)。リアルタイムではなかったのですが、娘と一緒にアニメを見たのをきっかけに、すっかりハマってしまい、深夜だったのにまとめて5話くらいまで一気に見てしまいました(笑)。

──どんなところにハマりましたか?

中山:当初は多くのファンの方と同じく、「え? 食べられちゃうの?」といったドキッとする展開に心を掴まれたのですが、物語を追いかけていくうちに、その世界観の深さにも惹きつけられていくようになりました。

『約束のネバーランド』には、イギリス文学のエッセンスや、いくつかの古典的カルチャーの要素がちりばめられていて、しかもそれらが物語にしっかり溶け込んでいます。特に『ピーター・パン』や『不思議の国のアリス』といった英文学の名作を想起させる設定は、自分が歴史好きということも相まって刺さりましたね。

『約ネバ』の世界観を“体感”できるミュージアム

──「体験ミュージアム『約束のネバーランド』GFハウス脱獄編」について伺っていきます。特に気になるのが“体験ミュージアム”という部分なのですが、具体的にどういった内容なのでしょうか。

中山:“体験ミュージアム”とは、文字通り、その作品のなかに入り込んでいく体験を提供するミュージアムのことです。体験没入型と言えば分かりやすいでしょうか。一般的なミュージアムは、ある芸術家が創った絵画作品などを鑑賞するというスタンスで楽しむものですが、このとき、作品と波長が合うと、自分がその作品のなかに入り込んだかのような感覚を得ることができます。

学芸員出身の私としては、お客さまをなるべくその境地に導きたいと思っているのですが、これがなかなか難しくて……。ただ、『約束のネバーランド』のように物語性の強い作品であれば、その世界観を会場内にしつらえることで、没入することができるのではないかと考えました。

──ミュージアムを運営するSCPの吉岡さん、アニメ版『約束のネバーランド』のライセンス周りを管理するANXの近藤さんは、その企画を聞いたときにどう感じられましたか?

吉岡:私は1年前にSCPに入社して、現在はミュージアムビジネスを手がける部署で働いているのですが、これまでの職歴で、美術品やIPの展覧会を企画する仕事と大型テーマパークでアトラクションを企画する仕事をしていました。中山館長のお話は、そのミュージアムとアトラクションの中間のものを作るというような発想で、自分がこれまで培ってきた知見が少しでも生かせると思いましたし、単純に面白いなとも感じましたね。

近藤:私は最初にこのお話を伺ったとき、先ほど中山館長のお話にもあったように、原作のほうで既に素晴らしい原画展を実施していたため、たとえアニメ版をベースに行なうにせよ、ファンにとっては二番煎じになってしまう、実施は厳しいのではないかと思っていました。

ただ、企画内容を詳しく聞いてみると、一般的な展示をただ観賞する展覧会とは異なり、映像や音をいかしながら、うまくその世界のなかへ入っていけるようなものになっていて、これなら作品的にもやる価値があるのではないかと思い、ANXとして企画を受けることにしました。

作品への愛があふれる企画書を提示

──この時点のやり取りで印象に残っていることがありましたら教えてください。

近藤:こういうお話は、まず企画書をいただくところから始まりますが、一般的な企画書というのは企画者がやりたいことの大枠、概要程度がざっくりとまとめられていることがほとんどですよね。

ところが今回、中山館長と吉岡さんから最初にいただいたものは、企画書の初案でありながら、何をやって、どういう体験を皆さんにご提供するか、それこそルート設計も含めて、詳細に書き込まれていました。しかも、その端々から作品がものすごく好きなんだということが伝わってくるんです。このおふたりとなら、ファンの方に喜んでいただける展覧会が作れると思わせてくださる熱量を感じたのを覚えています。

展覧会の一角。この扉の向こうから誰かの話声が聞こえてくる。

中山:確かに企画書は作り込みましたね(笑)。というのも、この企画をやりたいと思った時点で、ミュージアムのなかにGFハウスを建てちゃおう、その先の展開はこんなふうにしようっていうのがかなり見えていました。

ちなみに、ギャラリー内をどのように分割して、『約束のネバーランド』のストーリーをどうやって紡いでいくかについては、実写映画版の『約束のネバーランド』のプロットを担当された方にご協力いただいています。実はここにも面白い話があるんですよ。

──ぜひ聞かせてください。

中山:この時期、体験ミュージアムのイメージを確かめるため、館長室に実物大のイザベラ(ママ)の立ち絵を貼りつけていました。そうしたら、館長室の小窓から彼女の顔がのぞいているような見え方になっていたんです。それを見たある人が「館長、『約ネバ』のファンなんですか? 実は私の夫が映画のプロットを書いているんです」と言ってくださいまして……(笑)。

──それはすごく縁を感じるお話ですね。

中山:そうなんです。それで本当に偶然なのですが、既に『約束のネバーランド』のことを知り尽くしている専門家に、企画の初期の段階からご協力いただけることになりました。

GFハウスの一員となって物語を追体験

──では、具体的に「体験ミュージアム『約束のネバーランド』GFハウス脱獄編」でどういった体験を味わえるのかを教えてください。

中山:まず、最初の部屋のなかにGFハウスを作りました。ハウスの入り口前にはエマやノーマン、ハウスの子供たちが集合しているので、お客様にはまずここでハウスの一員になりきっていただきます。

──ハウスをのぞきに来たという設定ではなく、ハウスの一員になるんですね。

中山:はい、この展覧会にはいくつかのルールがあって、そのひとつが“自分もGFハウスの一員となったつもりになること”です。来場される際は、ぜひ、心構えとして知っておいていただけると幸いです。

そしてGFハウスのなかに入って行くと、物語の冒頭で描かれる食堂での幸せな朝食のシーンを体験できます。その先の部屋はテストルームですが、あの印象的なデスクもしっかりと再現しました。そしてそれぞれの部屋では、アニメの名場面が流れており、シーンごとに子どもたちがどういう状況に置かれていたのかを体験することができます。

──部屋を進む度に物語が進んでいき、徐々にGFハウスの真の姿が明らかになっていくのはアニメを追体験しているようでドキドキしますね(編集部注:実際にミュージアムを体験したレポートは“後編”でお届けします)。

吉岡:このミュージアムでは、本当に『約束のネバーランド』の世界にいるかのように感じられる空間づくりにこだわりました。例えば、作中に出てきた重要なアイテムからちょっとした小物までしっかり作り込んでおり、それによって一層、作品世界に入り込んだような体験を味わっていただけるようになっています。

ちなみに、個人的に一番見てほしいのは、コニーがトラックで出荷されていくシーンの再現ですね。トラックなどの作り込みもすごいのですが、何よりも演出にこだわりました。エマが荷台をのぞき込んでGFハウスの真実に気がついてしまうところの体験を、映像のタイミングなども含めて何度も検証して作りあげています。アニメをご存じの方にも驚いていただけるものになったと思います。

──近藤さんはそうした作り込みを監修する立場で本展のプロジェクトに参加しているわけですが、実際、どのように感じられましたか?

近藤:企画書の段階からディテールへのこだわりがすごかったので、どういったものになるのかワクワクしていたのですが、実際にできあがったものは、作品のファンであればあるほど楽しむことができるものになっていると感じました。

本作は原作の世界観がとても印象的な作品です。その世界観を制作スタジオのCloverWorksがアニメ映像で丁寧に表現されたことが、この作品の人気にも繋がっていると思います。そのアニメのシーンや作中に登場するプロップスが、そのまま立体化したように感じさせる作り込みの細やかさが作品の世界観を感じさせて、体験ミュージアムの没入感を高めている大きな要素になっていると思います。

 
後編へつづく

文・取材:山下達也(ジアスワークス)
撮影:干川 修

体験ミュージアム「約束のネバーランド」

会期:2021年7月17日(土)~12月30日(木)
会場:六本木ミュージアム/東京都港区六本木 5-6-20
開館時間:10:00~18:00(土曜日のみ20:00まで)会期中無休
入館料:一般・大学生1,800円、中学・高校生1,200円、小学生600円(すべて税込)
※混雑緩和と感染症対策のため、日時指定制となります。
※チケットはローソンチケットにて販売します。
※全国のローソン・ミニストップ設置のLoppi/インターネット予約でお求めください。
※コンビニ店頭販売は各入場開始時間まで、インターネット予約は各入場開始2時間前までとなります。
※当日券は館内の滞留人数に余裕のある場合のみ、現地にて販売します。
主催:体験ミュージアム「約束のネバーランド」製作委員会
ソニー・クリエイティブプロダクツ / 中山マネジメント

©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会

関連サイト

「体験ミュージアム『約束のネバーランド』GFハウス脱獄編」公式サイト
https://neverland.taiken-museum.com/
 
「体験ミュージアム『約束のネバーランド』GFハウス脱獄編」公式Twitter
https://twitter.com/yakuneba_taiken

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