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ミュージアム~アートとエンタメが交差する場所

YO-KINGが語る『John & Yoko』【後編】

2020.10.22

東京の「ソニーミュージック六本木ミュージアム」で開催中の『DOUBLE FANTASY - John & Yoko』。そこにやってきたのは、今からほぼ四半世紀前、楽曲「拝啓、ジョン・レノン」で物議を醸した、真心ブラザーズのYO-KING。ジョン・レノン、そしてヨーコ・オノの歴史を辿るこの展覧会で、ジョン・レノンに“かぶれていた”YO-KINGは何を想ったか。

後編では、ザ・ビートルズやジョン&ヨーコとの出会い、そして、24年の時を経た今のYO-KINGからの「拝啓、ジョン・レノン」を聞く。

初めて買ったレコードアルバムが『レット・イット・ビー』

——ジョン・レノンが亡くなって今年で40年です。ということは、現在50歳以上じゃないとリアルタイムでは知らないということになりますが、1967年生まれのYO-KINGがザ・ビートルズを知ったのはいくつのときでしたか?

1978年くらいかな。小学校高学年のときに初めて買ったレコードが、ビートルズの『レット・イット・ビー』だったんだよね。

——事実上の解散から1カ月後にリリースされた13枚目のアルバムで、同名映画のサントラでもありました。どうしてこのアルバムでした?

それはね、当時の地元のレコード屋で売っていたのが、『レット・イット・ビー』だけ観音開きだったの。ほかのレコードは1枚だったんだよね。『ホワイト・アルバム』は2枚組だから当然開くんだけど、「あれ、『レット・イット・ビー』も開くぞ」って思って。上から見て、これにしようって。


——(笑)

小学生だからね。今、思うとわかりにくいアルバムだけど、そこから好きになってハマっていって。「レット・イット・ビー」って曲はいろんなバージョンがあるんだけど、僕にとっては、このアルバムのB面の5曲目の「ディグ・イット」から6曲目の「レット・イット・ビー」までがワンセット。「ディグ・イット」が終わって、ジョンが、「次はジョージ・ハリスンが、天使が降りてくるっていう曲をやります」っていうおちゃらけたMCをやるんだよね。その流れで始まるのが、俺にとっての「レット・イット・ビー」なんだよね。だからシングルを聴いてびっくりしたの。ギターソロも違うし。

——ジョン・レノンのことは意識してましたか。

どうだったのかな。初めてLPを買った2年後には亡くなっちゃってるからね。当時はいまいちその事件の大きさがわかってなかったと思う。当時は吉田拓郎とかRCサクセションとか、邦楽もたくさん聴いてたし、そのあと、YMOとか、大滝詠一の『A LONG VACATION』が出る80年代に入っていって。まだ子供だったからね。ああ、死んじゃったんだっていうのは覚えてるけど、まだ全部を遡れてもいなかったし。

——中学生以降は?

どんどん好きになっていって、ビートルズもジョン・レノンも、全部を遡って聴いて。コピーもよくしてましたね。

いかれていた時代の「拝啓、ジョン・レノン」

——ザ・ビートルズに出会って10年後の1988年、早稲田大学の音楽サークルの後輩である桜井秀俊さんと真心ブラザーズを結成し、バブル景気とイカ天ブームに湧く翌年の平成元年、YO-KINGが大学4年生のときにデビューしてますが、その後すぐにソロ活動もスタートさせ、1992年にはヒップホップユニット、エレファントラブも始めてます。当時は「ジョン・レノンを封印した」と言ってました。

今思うと、デビューした1989年ごろからだね。新しいものをインプットしないと、自分のアウトプットが変わらないんじゃないかなっていう危機感があって。

——そのくらいアーティストとして影響を受け過ぎていた?

大きかったと思いますよ。作曲のイロハだったと思う。ビートルズ、ジョン・レノンは本当にいろんな曲があるから、それだけ聴いてても無限に音楽が作れたと思う。でも、残念ながらバンドは解散しちゃったし、ジョン・レノンは亡くなっちゃったので、新作が聴けないわけじゃん。1980年で止まっちゃってるわけだよね。

でも、90年代のアメリカでは、レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)やフィッシュボーン、ビースティ・ボーイズがいて、今の音を作ってた。同時代で音楽をやっていく上では今の音を聴きながらやったほうが面白いんじゃないかなって、そのときは思ってたんだよね。だから、封印というか、寝かせたの。

——それが4年後の問題作「拝啓、ジョン・レノン」につながるわけですよね。

ジョン・レノンの代名詞的に“愛と平和”が押し出され過ぎてたじゃない。もちろん、それもジョン・レノンの表面だけど、裏には相当な悪人っぷりもある。俺は両面だと思ってたし、どっちも語ることによって、愛と平和も真実味が増すと思うんだよね。愛と平和ばかり前面に出てる風潮に、ちょっとなんだかなっていう気持ちにはなってたから、ああいう曲になったんだと思う。

——ジョン・レノン本人も「いかれてる」って自認してますしね。

めちゃめちゃいかれてますよ。ビートルズのころの彼らのブラックユーモアの感覚はわからなかったけど、20代だからやり過ぎちゃうところがあったんだと思う。俺もその年齢のころはやり過ぎたし、そのやり過ぎたころがあるからこそ、ロックンロールの際どさや危なさが出てたと思うんだよね。

でも、あんないかれたやつが言うからこそ、「この人は本当に心から世界を平和にしたいんだな」っていう真実味というか、すごみが増すって思ってたんだよね。

——当時はその思いが正確には伝わらない部分もありましたね。スポーツ新聞には「ジョン・レノンを冒涜する歌だ」と書かれましたし、放送禁止にしたFM局までありました。

僕自身もいかれた時代だったので、今なら言わないよなっていう表現もありますね。「なんか、ごめんなさい」っていう(笑)。当時はね、本当に勝手な思い込みなんだけど、聖人君子みたいに扱われてる舞台から下ろしてあげたかったの。そのほうが楽なんじゃないかなと思って。もうちょっと、ちゃんと黒歴史を出してあげたかったっていう感じかな。

親子では聴けない『ダブル・ファンタジー』

———ジョンとヨーコの関係についてはどう感じてました?

ジョンは、ヨーコに敬意や憧れがあったと思うんだよね。黒いほうのジョン……黒ジョンはさ、ポップの土壌で売れちゃったことに負い目を感じてたと思う。別に年取っちゃえばそんなの関係ないんだけど、若いころはとんがっていたいし、アートでいたいじゃない。で、ヨーコは、売れる売れない関係なく、本当に好きなことをやってて。だから、「うわ、俺の人生にすげーやつ、出てきたな」っていう衝撃を受けたんだと思うんだよね。

ま、ふたりともバランスを欠いてる人間だから面白いんだけども、バランスの欠けっぷりはヨーコさんのほうが桁外れにすごい。ジョンは、ヨーコさんと比べたら、「俺はバランスをとっちゃってるな」って感じてたと思う。だから、恋人ではあるけど、芸術家同士としてはライバルで、その芸術家同士の嫉妬や緊張感の裏返しとして、愛情もピタッと重なったと思うし、ほかにはないカップルだったと思います。

——今日、アルバム『ダブル・ファンタジー』を聴いてきたとおっしゃってましたね。

うん、家でレコードで聴いたけど、やっぱりすごかったね。これは子どもは親とは聴けないし、親は子どもと聴けないっていう(笑)。

——(笑)ヨーコさんの喘ぎ声とかが入ってますからね。

すごいよね、ヨーコさん。仮に芸術が衝動でないといけないんだったら、衝動の塊じゃない。ああいうところにジョンは憧れていたと思う。僕はこのアルバムのなかの「ハード・タイムス・アー・オーヴァー」っていう曲が大好きで。クレジットはヨーコさんだけど、相当ジョンが手伝ってると思う。僕は2003年に、O.P.KINGというバンドを組んだことがあって……

——ザ・ビートルズの「バッド・ボーイ」もカバーしてました。

そうそう。O.P.KINGで「OVER」っていう曲があって。<悪いときは過ぎたよ/今からもっと良くなってくんだ>って歌ってるんだけど、それは「ハード・タイムス・アー・オーヴァー」の影響だと思う。これからどんどん良くなっていくっていう。僕の根拠のない前向きさは、ヨーコさんから影響を受けた部分……それほどヨーコさんを研究したわけじゃないけど、すごく似てると思う。根拠はないんだよね、楽観性に。でも、良くなっていくと思うって、どっかで信じてる。そこはすごく共感しますね。

——『レット・イット・ビー』も聴いてきたんですよね。

『レット・イット・ビー』は3、4枚持ってるんだけど、今日は初めて買った観音開きの日本版のLPを聴いて。今日聴いた『レット・イット・ビー』が、今までで一番かっこ良かった。レコードって、聴くときによって、毎回、演奏が変わりますからね。今日はストンと入ってきて、「すげえ」って思って。で、その後に『ダブル・ファンタジー』を聴いたら、これは親子では聴けない、と(笑)。

でも、逆にその振れ幅がすごいと思って。個人的な好みで言うと、音は『レット・イット・ビー』のほうが好きだった。『ダブル・ファンタジー』はどうしても80年代の音なんだよね。でも、そういうのも面白くて。2020年に聴いてる今の僕は70年代の音のほうが好きなんだけど、10年後に聴いたらまたわからないっていう。

昔はレコードを聴くことを“レコード演奏を聴く”って言ってたけど、確かに、毎回違うんだよなって実感しますね。

アーティストとはそれまでの自分を残せる人

——ご自身がジョンの年齢を超えたときは何か感じました?

特に思わなかったかな。自分の40歳とジョン・レノンの40歳って違うからね。自分の40歳はかなり精神年齢低かったから。数字的には、「ジョンが年下になったんだな」とは思うけど、基本的に年齢では変わらないと思うんだよね。もしもジョンが生きてて80歳になってたとしても、きっと40歳のジョンも、10歳のジョンも残ってたと思うし、そういう文脈で言うと、それまでの自分を残せる人だったと思うんだよね。捨てちゃう人もいるけど、アーティストは嫌でも残っちゃってる人が多いんじゃないかなと思う。それを燃やして、創造を続けていく。

ただ、昔は、自分のなかに残っちゃってるネガティブなもの、忘れてしまいたいようなことを糧にして絵を描いたり、曲を書いたりする人が多かったと思うけど、そんな時代はもう終わってて。これからは、幸せな記憶を糧にして、何かを作っていく人の時代になっていくんだと思う。そこは、ジョンの時代とは大きく変わったと思うよ。幸せな人や普通の人が芸術をやって、すごいものを作っていく時代になるんじゃないかなと思いますね。

——ザ・ビートルズが作った“アルバム”というアートフォームも終わりを告げてますからね。最後に改めて、YO-KINGにとってのジョン&ヨーコはどんな存在かを伺えますか。

リバプールのガキ大将だったのが、「世界的に偉大なミュージシャン」と称されるくらいの作品をたくさん生み出したのは、天賦の才もあったと思うけど、いろんな縁でいろんなことを知っていったおかげだと思うんだよね。勉強とか学びとかではなく、人との出会い。だから、やっぱり縁や流れって本当に大事なんだなって思うし、今回、時系列に展示を見ると、ジョンはジョンになるように自分を育てていった経緯が感じとれて面白いなって思って。

正直言うとね、このところ、ビートルズもジョン・レノンも聴いてなかったんですよ。でも、今日久しぶりに聴いてみて感じたのは、やっぱり声で持っていくすごさかな。しかも、ジョンは自分の声が嫌いだったっていうのも良いよね。大体ダブル(トラックボーカル)になってるから。

でもこの前、『ライヴ・ピース・イン・トロント1969』(『平和の祈りをこめて-ライヴ・ピース・イン・トロント1969』。ジョン・レノンとヨーコ・オノが在籍したザ・プラスティック・オノ・バンドが1969年に出演したイベントのライブアルバム)を聴いたらかっこ良かったよ。ああいうロックンロールをやってたときのジョンは本当にカッコイイ。

——ちなみにYO-KINGは自分の歌声は?

僕はね、大好きなんですよ。そこがジョンと違うところですね(笑)。

 

  • YO-KING

    1989年に桜井秀俊と真心ブラザーズを結成。「どか~ん」(1990年)「サマーヌード」(1995年)「拝啓、ジョン・レノン」(1996年)などのヒット曲がある。17thアルバム『Cheer』発売中。奥田民生らと結成したバンド、カーリングシトーンズにも参加している。

文・取材:永堀アツオ
撮影:塚原孝顕

 
■ジョン&ヨーコについて知っておきたい15の事柄【初級編中級編上級編

■『DOUBLE FANTASY』を日本に招致したキーパーソンのインタビューはこちら

『DOUBLE FANTASY - John & Yoko』

2021年1月11日(2020年12月31日、2021年1月1日を除く)まで、ソニーミュージック六本木ミュージアムにて開催。当日券会場にて発売中。
 
リバプールで開催された大規模な展覧会を、ジョン・レノン生誕80年の今年、東京にて開催。ジョンとヨーコによる数々のアート作品や、貴重な私物などを展示する。
https://doublefantasy.co.jp/

真心ブラザーズ ニューアルバム『Cheer』(発売中)

(通常盤)

通算17枚目となるオリジナルアルバム。茂木欣一、川上つよし、沖祐市(東京スカパラダイスオーケストラ)、サンコンJr.(ウルフルズ)ら豪華ミュージシャン参加による、ポップでカラフルな楽曲が詰まった快作。
https://magokorobros.com/cheer/

関連サイト

真心ブラザーズ オフィシャルサイト
https://magokorobros.com/
 
真心ブラザーズ オフィシャルTwitter
https://twitter.com/magokoro_bros
 
YO-KING Instagram
https://www.instagram.com/yokinghonnin/

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