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海外エンタメビジネス最前線

日本発のVTuberカルチャーを世界へ! グローバルVTuberプロジェクト『PRISM Project』が届けたいこと【後編】

2023.10.26

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“楽しむ”ことは国境を越え、文化を超え、言語を超える。グローバルに注目を集めるエンタテインメントビジネスを手掛ける人々にスポットを当てる「海外エンタメビジネス最前線」。

アニメ、ゲーム文化とYouTuber文化が融合し、魅力的な2次元&3次元キャラクター(アバター)が配信者となって活動する日本発祥のVTuber及びバーチャルライバー・カルチャー。その市場は“VTuber元年”と呼ばれた2017年より拡大と成長をつづけ、今では国内にとどまらず、北米を中心としたさまざまな国や地域で人気が加速している。

そんななか、2021年にはAnotherBall株式会社(以下、AnotherBall)によって、英語圏向けVTuberマネジメントプロジェクト『PRISM Project』が立ち上げられた。『PRISM Project』には、世界各国、各地域から18名(2023年10月時点)のVTuberが所属しており、2022年5月には、AnotherBallからソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)が事業譲渡を受ける。現在はソニーミュージックグループの海外事業の一環として、『PRISM Project』はさらなる市場拡大に取り組んでいる。

後編では、本プロジェクトを牽引するプロデューサーに、『PRISM Project』と所属VTuberの魅力や今後のビジョンについて聞いた。

  • ブレンデンプロフィール画像

    ブレンデン・シンデウルフ

    Brandon Schindewolf

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

SMEらしさを武器に『PRISM Project』は次なるフェーズに突入

――(前編からつづく)ここから『PRISM Project』について詳しく聞いていきます。現在は、18名のVTuberがYouTubeを主な活動の場として発信していますね。

はい。『PRISM Project』は2021年に立ち上げられ、同年にデビューした1~4期生までの12名は、SMEが運営に携わる前から活動しています。そこからしばらく間をおいて、2023年の春以降にデビューした5~7期生で活動をつづけている6名は、SMEが2022年の8月から11月にかけて募集を行なったVTuberオーディション、「PRISM Project General Audition 2022」でデビューしました。

全員、住んでいる国や地域はバラバラですが、なかには日本在住で英語と日本語が話せるバイリンガルのVTuberもいます。ただ、5期生以降のメンバーはアメリカを中心とした海外を拠点にしていますね。

1期生

2期生

3期生

4期生

――英語圏向けではありますが、日本のVTuberに近いアイドル系のルックスで、名前も日本語名になっているのが親しみやすいです。なかには日本のヒット曲を日本語でカバーしているVTuberもいますね。

そうですね。やはり日本から生まれたカルチャーですし、配信プラットフォームもYouTubeを使っているので、日本のVTuberから受けている影響は大きいです。日本語の楽曲を歌うことに関しても同様ですね。

――『PRISM Project』のメンバーを応援しているファン層は、やはりアメリカの方が多いですか?

デモグラフィック的にはアメリカが50%以上です。あとは東南アジアですね。マレーシア、インドネシアといったエリアで多く見られていて、中華圏からも見にきてくれる方もいます。また、日本のアニメファンが多い中南米は、これから拡大が見込めるマーケットだと思っているので、今後は英語だけでなく、スペイン語圏に向けたVTuberにも出てきてもらいたいと考えています。

――ちなみに「PRISM Project General Audition 2022」には、どのくらいの応募がありましたか。

約3,000人ですね。最も多かったのはアメリカからの応募です。個人で配信活動をしているという人も多く、ひとりでコツコツつづけているのが寂しいので、仲間と支え合いながら活動できる場所を求めて応募したという人が非常に多かったです。

――オーディションで、重視したポイントはどこだったのでしょうか。

いくつかありますが、最も重視したのは、配信活動だけでなくそれ以外のエンタテインメントにどれくらい興味を持っているかということです。『PRISM Project』の最大の強みは、さまざまなエンタテインメントビジネスのノウハウを持つSMEが運営、制作を手掛けていることです。

音楽をやりたい、声優やタレント活動もしたい……というように、エンタテインメントの領域で配信以外の活動も行なって、ビジネスエリアを拡大させたいという人にこそ、我々が提供できるもの、サポートできることが増えますし、本人にももっとやりがいが生まれると思うんです。

ブレンデン画像1

――それが『PRISM Project』自体の魅力にもつながりますよね。

まさにそうです。そういうメリットを含めて、「PRISM Project General Audition 2022」では、一般的なオーディションのようにボイスサンプルを提出してもらったり、歌を歌いたい参加者からは歌のサンプルを提出してもらって審査をしました。その上で、最終的な決め手になったのは、自分自身の将来をどう考えているか? そして、VTuber業界が5年後どうなっていると思うか? といった質問に対してビジョンを共有できる人たちと『PRISM Project』を盛り上げていきたいと考えました。

――「VTuberに興味があります」ぐらいのテンションでは、なかなか良い回答が思いつかなさそうな質問です。

はい、実際、かなり厳しいオーディションだったと思います。でも、そこを突破したタレントは、VTuberとしての魅力だけでなく、客観的に自分がやりたいことを考えて行動する力を持っている人たちだと感じています。

――配信活動以外でも活躍できるタレントを育成することが、『PRISM Project』の目標でありコンセプトだと。

そうですね。『PRISM Project』ならではの強みは、やはりそこだと思います。同時に、SMEが運営に携わる前にデビューしている1~4期のVTuberのなかにも、配信以外の活動に興味を持っている人はもちろんいて、SMEグループに入ることで、さらに自分のやりたかったことを実現するモチベーションが高まっていると思います。

SMEのサポート体制になったことで、ぜひ夢を実現してもらいたいと思いますし、昨年の「PRISM Project General Audition 2022」を第一歩として、現在は、配信以外のエンタメにも積極的に関わる英語圏向けVTuberの発掘、育成の仕組みを含め、『PRISM Project』の基盤を強化し、次のフェイズへの戦略を練っている最中です。

――配信だけでなく、皆さんの特技も楽しめるのは、リスナーにとってもうれしいですね。

応援のしがいもありますよね。5期生の雨海あみは、VTuberデビューとともにオリジナルソングを発表したくらい歌に対して意識が高いですし、7期生のアステリアななもアーティストデビューを目指しています。ほかにも6期生の赤金ジュンは、『PRISM Project』初の男性ビジュアルのVTuberであり、さらにプロゲーマー枠での参戦で、人気のFPSゲーム『VALORANT』のトップランクに名を連ねるほどのすごい実力の持ち主。今後の活躍にも期待してもらいたいです。

5期生

6期生

赤金ジュン

赤金ジュン

7期生

メジャーデビューを果たすVTuberも登場

――『PRISM Project』では、VTuberの個性をいかした、よりエンタテインメント性の高いコンテンツを生み出していくのも目標のひとつかと思います。そんななか、3期生の美吉野しきが、7月にソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)から、1stデジタルシングル「hanahaki syndrome」でメジャーデビューを果たしましたね。

美吉野しき全身写真

美吉野しき

はい。美吉野しきは、2021年6月に配信デビューした3期生で、“「情熱」を失った飼い主の迷う霊魂から生まれたオカルト好き犬神”というキャラクターです。ファンの間では“歌姫”と呼ばれ、ボーカロイドを思わせる美しいハイトーンボイスと、高い歌唱力が人気を呼んでいます。それがSMLの担当者の目に留まり、メジャーデビューの企画が1年ほど前から進んでいました。

――英語圏のVTuberで、音楽アーティストとしてメジャーデビューしたという話はあまり聞きません。

そうなんですよ! 国内ではVTuberでメジャーデビューする方は増えてきていますが、英語圏VTuberでメジャーレーベルと契約した例は、過去にひとりだけで、美吉野が世界でふたりめとなります。作詞作曲をしてくれたのは、アメリカで活躍するボカロPのGHOSTさん。YouTubeのチャンネル登録者数が40万人を超える人気クリエイターです。

――楽曲「hanahaki syndrome」の世界観も独特ですね。ミュージックビデオもミステリアスで、ボカロ曲らしい魅力があります。

美吉野はオカルト、ホラー系の世界観を大切にしているアーティストです。彼女自身が配信でもよく言っていますが、“死ぬ寸前かと思っている瞬間が一番、人生を貴重に感じられる”という考えを持っています。それをテーマにして、GHOSTさんも曲を作ってくれました。美吉野もYouTube登録者数14万人を超える人気のVTuberですし、「hanahaki syndrome」も英語圏だけでなく、日本のボカロ曲ファンにもきっと好きになってもらえる魅力的な楽曲です。SMLが手掛けているアーティストということで、クオリティにも非常に自信があります。ぜひ世界中の方に聴いていただきたいですね。

Shiki Miyoshino / 美吉野しき [PRISM Project]

――SMEらしいエンタテインメントな展開がグローバルに始まっているのですね。今後は、どういう方向で『PRISM Project』の展開を拡大していく予定ですか?

美吉野のアーティストデビューもそうですし、今年は5~7期生もデビュー、まさに『PRISM Project』は次のフェーズに足を踏み入れています。世界的な戦略を立てて、プロジェクトのさらなる認知と各VTuberの展開をしっかり構築する準備を進めているところなのですが、今後はよりソニーミュージックグループのエンタメ力と、ソニーグループのテクノロジーとの連携も強めて、それぞれのVTuberの望むエンタメコンテンツを実現していくのが、ミッションのひとつと考えています。

――“テクノロジー×エンタテインメント”は、ソニーグループとソニーミュージックグループが力を入れている分野でもありますね。

はい。『PRISM Project』はまだまだ新しいプロジェクトなので、社内でもいろいろな部署に声掛けをして、協働できる体制を整えていこうとしています。

――今後の施策に関する展望を教えてください。

音楽ライブを含めたリアルイベントを単独で開催したいですね。ありがたいことに、昨年も海外を含めてさまざまなアニメイベントに『PRISM Project』メンバーが出演させてもらい、ファンとも交流ができました。今年も日本では夏のコミケ(コミックマーケット102)に出演し、秋以降も世界のアニメイベントに出演する予定なのですが、そのあとは『PRISM Project』のメンバーだけのイベントにも挑戦したいです。現在は所属VTuberのキャラクターモデルは2Dビジュアルで展開していますが、ライブを視野に入れた3Dモデル化も今後は検討していきます。

――英語圏VTuber界隈は発展途上のマーケットだと思いますが、市場拡大を見据えて、現在課題と思われることは何ですか?

海外にはVTuberの活動を伝える大手のメディアがまだ存在しないので、情報の拡散には苦労しています。VTuberの情報は、先行する大手プロダクションのファンコミュニティの口コミでしか広がっていかない。

今回の美吉野しきのメジャーデビューについても、それを伝えてくれる大手の媒体がまだないのが悔やまれます。日々のVTuber情報に関しても、ファンベースではネガティブなニュースのほうがピックアップされやすいので業界全体で考えなければならない課題だと捉えています。もうひとつ、VTuber文化が一般に浸透するまでには至っていない海外では、企業のタイアップ案件が得にくいという課題もあります。それをどう打開していくかも、今後のポイントだと思います。

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――新しいムーブメントならではの苦労ですね。そしてSME内には『PRISM Project』のほかにも『VEE』や『VERSEⁿ(ヴァース)』といったVTuberプロジェクトが立ち上がっています。

そうですね。それぞれのプロジェクトは、所属する各VTuberが目指すものも、プロジェクトとしてのコンセプトも異なっていますが、今後、良い形でコラボレーションができればと考えています。実際、『VEE』とは去年、ゲーム『マインクラフト』を題材にしたコラボをしました。ただ国内VTuberとは、言語のコミュニケーションがひとつの壁になってしまうことがあるので、それを解消する手段も考えたいです。

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――『PRISM Project』の日本国内での認知も高まりますからね。

はい。英語圏VTuberプロジェクトではありますが、やはり日本のVTuberファンの皆さんとのエンゲージメントも強化したいポイントです。日本語を話せるVTuberも『PRISM Project』のなかにいるので、オーソドックスではありますが英会話講座のようなコンテンツを展開するやり方も、シンプルながら取り組みやすいかもしれません。今は基本英語圏向けとして活動していますが、もともとは日本のサブカルチャー文化と親和性が高いのがVTuberですから、国境を越えて日本でも活躍の場を得られるよう、頑張っていきたいですね。

言語の違いはあっても、VTuberだからこその異文化コミュニケーションや魅力的なコンテンツづくり、エンタメとしての在り方が、これから生まれる業界だと思いますので、日本の皆さんもぜひ彼らの活躍に注目していただきたいです。

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文・取材:阿部美香
撮影:干川 修

関連サイト

『PRISM Project』公式サイト
https://www.prismproject.jp/(新しいタブで開く)

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