映画『ふれる。』監督&プロデューサーインタビュー――鑑賞前に“ふれて”おくとより楽しめる作品の魅力①
2024.10.04


西尾維新の小説を原作にしたアニメ「〈物語〉シリーズ」。5年ぶりとなるアニメ再始動にかける想いと作品の見どころを、アニプレックス(以下、ANX)のプロデューサー・石川達也に聞いた。後編では、7月6日(土)より放送が開始される新シリーズ『オフ&モンスターシーズン』の始動のきっかけやABEMAとの取り組み、海外展開について語る。
目次

石川達也
Ishikawa Tatsuya
アニプレックス
記事の前編はこちら:〈物語〉シリーズが5年ぶりに再始動――制作チームで引き継ぐ作品への熱量【前編】
――2019年に「ファイナルシーズン」の放送、イベント『〈物語〉フェス ~10th Anniversary Story』も開催され、そこで「〈物語〉シリーズ」が一段落しました。そこから5年が過ぎ、いよいよアニメも新作の『オフシーズン&モンスターシーズン』が放送となります。「〈物語〉シリーズ」が再始動したきっかけを教えてください。
『〈物語〉フェス ~10th Anniversary Story』のときに“西尾維新アニメプロジェクトの新企画が進行中”という発表をしました。それで2020年に『美少年探偵団』のアニメ化をシャフトの皆さんとご一緒させていただいて、そこから次のプロジェクトへ動こうとしていましたが、世間がコロナ禍になってしまって、なかなか次の作品に取りかかることができなかったんです。
コロナ禍が落ち着き始めた2022年くらいに「ファイナルシーズン」のBlu-ray BOXを出すことになって。そこで、「新しいシリーズも」という話が出てきて、「〈物語〉シリーズ」をやりませんかと、講談社とシャフトの皆さんにご相談をし、今回のリブート(再始動)につながりました。
――アニメ「〈物語〉シリーズ」としては久々の新作となるわけですが、『オフシーズン&モンスターシーズン』をどのようにアニメ化しようと考えていましたか?
「オフシーズン」は「〈物語〉シリーズ」の主人公である阿良々木暦(あららぎこよみ)が出てこないシリーズなんですね。これまでは、阿良々木暦の物語として描かれてきた作品でもあるので、リブート後にいきなり主人公不在のストーリーから展開していくのは難しいかもしれない。
そこで、本来なら原作小説の通りに「オフシーズン」を順番にアニメ化していくのがセオリーなんですが、今回のシリーズではあえて「モンスターシーズン」のエピソードを織り交ぜて、ふたつのシリーズをクロスオーバーさせながらシリーズを組み立てていこうと、シャフトのプロデューサー・久保田光俊さん、総監督の新房昭之さんとお話ししました。
――今回のアニメの第1話は「オフシーズン」の『愚物語』からということで良いのでしょうか。
はい、「オフシーズン」の『愚物語』のなかにある「つきひアンドゥ」からスタートします。その次が『撫物語』の「なでこドロー」です。
――原作小説の『愚物語』には「そだちフィアスコ」「するがボーンヘッド」「つきひアンドゥ」の3篇が収録されていますが、そのなかの「つきひアンドゥ」からアニメ化していく。時系列や順番がシャッフルされているというわけですね。
そうですね。阿良々木暦の妹・阿良々木月火(あららぎつきひ)のエピソードから始まり、その次は千石撫子(せんごくなでこ)のエピソードが描かれる。今までとはちょっと違うアプローチのシリーズになります。
――メインスタッフの顔ぶれも少し変わりました。今回、新たに監督に就かれたのは吉澤翠さん。新進気鋭の演出家ですね。
私自身、先日『愚物語』の第1話を見たのですが、『化物語』を初めて見たときと似たような印象を感じました。吉澤翠さんは、以前アニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 1st SEASON』のエンディングを担当されていて。七海やちよというキャラクターにフォーカスしながら実写映像が組み合わさった、吉澤さんのセンスを感じるフィルムだったんです。そういったセンスは、今回の「〈物語〉シリーズ」でもふんだんに盛り込まれていると感じます。
例えば、食べ物のシーンは実写的な映像を使っていたりして。過去の「〈物語〉シリーズ」でも実写の要素はありましたが、それとは違う、新しい印象もありましたね。
あと、今回は阿良々木月火や、千石撫子といったキャラクターにフォーカスする物語でもあるのですが、女の子らしい描写や会話のテンポ、間は、吉澤さんならではと思わせるところが随所にあって。吉澤さんに監督をお願いできて良かったなと感じました。これまでの「〈物語〉シリーズ」の流れを踏まえつつ、新しい表現に挑んでいる感じがあります。
――そして音楽にもトピックがあり、YOASOBIが本作のエンディング主題歌を担当しています。これはどういう経緯で決まったのでしょうか。
新房監督から、今の時代にフィットするエンディング主題歌が良いというお話があったんですね。「〈物語〉シリーズ」は前作が2019年ですから、そこからリブートするなら、エンディング主題歌を2024年らしいものにしたいと。それで今までお願いしたことがなくて、今を感じさせるアーティストを探していたんです。
――それがYOASOBIだったということですね。
これは個人的な思いなんですが、YOASOBIがヒットタイトルをたくさん手がけられているから……という考えはまったくなくて。最初はYOASOBIというユニットが生まれるきっかけになった小説投稿サイト「monogatary.com」と「〈物語〉シリーズ」の共通点が気になっていたんです。どちらも小説と密接な関わりがあって、“物語”がキーワードになっていることですね。
そうしたら、コンポーザーのAyaseさんがあるインタビューで「〈物語〉シリーズ」が好きだと話されていて。もしかしたらご縁があるかもと思いオファーしたところ、引き受けていただけた、という経緯でした。
――YOASOBIは“小説から音楽を生み出すユニット”ですが、今回のエンディング主題歌はどのように作られたのでしょうか。
西尾先生が短々編を書き下ろしてくださって、それをもとに「UNDEAD」という楽曲が生まれました。アニメ「〈物語〉シリーズ」として芯を食った楽曲になっていますし、西尾先生の原作という「〈物語〉シリーズ」としても純度の高いエンディング曲になったなと思います。『化物語』のときのsupercellの『君の知らない物語』を思わせる、新鮮なイメージがありました。
『〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン』 愚物語&撫物語PV
――『オフシーズン&モンスターシーズン』は、動画配信サービスのABEMAで独占見放題配信されます。これまでテレビ放送が主軸になっていた「〈物語〉シリーズ」にとって、これも変化ということになるのでしょうか。
ABEMAの皆さんは2016年のころから「〈物語〉シリーズ」の配信に積極的に取り組んでくださっていて、劇場版『傷物語』の最速配信などでもお世話になっていました。また、『オフシーズン&モンスターシーズン』の視聴に関しては登録も不要で、視聴者の方にとっては一番参入障壁が低い配信プラットフォームであるというのも理由です。
加えて、「〈物語〉シリーズ」は最初の『化物語』のときから配信を使った試みをいろいろとしてきているんですね。2009年に制作された『化物語』は全15話でしたが、第12話まではテレビで放送をして、残りの3話は公式サイトで配信する。当時としてはものすごく斬新なやり方をしていました。
ほかにも『暦物語』という短編シリーズは、専用のスマートフォンアプリを作り、そのアプリを介して1話数分の短編を配信するという試みでもありました。「〈物語〉シリーズ」は、そういうチャレンジをしてきたシリーズでもあったので、今回のABEMAの皆さんとの取り組みもスムーズに進められたのだと思います。
――配信をベースに制作していくと、テレビ放送作品とはフォーマットが変わってくるところもあるのではないでしょうか。
そうですね。配信は尺(1話分の放送時間)の制限が緩和されます。『愚物語』の第1話「つきひアンドゥ」は1話分の尺が約35分になっていて、配信をベースにしたことで映像制作の選択肢は広がったと思います。
また、昨今の配信作品の尺は、1話ごとに違うのが当たり前になっていて、映像作品に対するフォーマットが世界的に変わっていくなか、我々も1話24分に縛られない映像制作にチャレンジできる時代になったのだと感じています。
もちろん1話24分という制約のなかでこそ生まれる表現もあるので、それがすべてということではなく、あくまでその作品にとってベストな方法を選んでいくことが大事だということです。そのうえで「〈物語〉シリーズ」は特に、キャラクターの魅力とセリフの面白さが何よりも大事な作品ですから、尺の制限は緩いほうがより面白くなるのかなと思っています。
――配信ということで言えば、海外への展開も重要な取り組みかと思いますが、その点はどのように考えていますか。
そもそも「〈物語〉シリーズ」の初期のエピソードは10年以上前に作られているんですよね。当時は今のように配信環境が充実しておらず、海外へアニメを展開する方法は非常に限られていました。なので、当時から「〈物語〉シリーズ」を支持してくださっているのはとてもコアなファンなんだと思います。
今回の新作『オフシーズン&モンスターシーズン』では、クランチロールなどを介して海外で「〈物語〉シリーズ」をもっと広めていきたいと思っています。
――これまでも海外で『傷物語 -こよみヴァンプ-』の上映や、「〈物語〉シリーズ」が放送されたことがあると思いますが、そのときの反応はいかがでしたか。
『傷物語』は映像的にかなり過激な演出をしているのですが、日本ではシリアスに受け入れられるシーンでも、アメリカの方は爆笑をしているんですよ。そういう意味では、まだまだ「〈物語〉シリーズ」は海外で高い評価を得られると思っています。
以前、シャフトの久保田(光俊)さんと一緒にドイツに行って、現地のファンとの交流会に出席したことがあるんですが、そのときもファンの方々の熱量がすごくて。「〈物語〉シリーズ」のファンの方は、作品好きが高じて日本語を勉強している方も多い印象でした。
――アニメ「〈物語〉シリーズ」は、今年で15周年を迎えます。その間、ANXのプロデューサーも代替わりしていますが、「〈物語〉シリーズ」に携わるうえで、何か受け継がれていることはありますか。
具体的にはないですね。ただ、好きにやってみなさい、という感じで。でも、「〈物語〉シリーズ」に関わっていくと、自然とスタイルが似てくるということはあるかなと思っています。
「〈物語〉シリーズ」の制作に関わる人は、総じてこの作品のことが大好きなので、やっぱりフィルムができあがるギリギリまで粘るし、たくさんのこだわりを作品に詰め込もうとする。
それは我々プロデュースサイドだけでなく、シャフトの皆さんをはじめとする制作スタッフも同じです。なので、代替わりをしても、このチームには自然と受け継がれていることがあるのかもしれませんね。
関連記事はこちら:岩上敦宏のイズム:インプットしつづけることが成長の近道になる
――リブートした「〈物語〉シリーズ」はまだまだこれからもつづいていくのだと思います。石川さん自身は今後、どんなことに挑戦していきたいと考えていますか?
私は当然、アニメが好きなんですが、それ以上に面白いことが大好きなんです。アニメ本編を作るのもそうだし、アニメ以外のもの……例えば『〈物語〉フェス~10th Anniversary Story』のようなイベントをプロデュースするのも楽しい。祭りの真ん中にいるのは大変なことも多いですけど、これからも面白いことをつづけていきたいと思います。
記事の前編はこちら:〈物語〉シリーズが5年ぶりに再始動――制作チームで引き継ぐ作品への熱量【前編】
文・取材:志田英邦
撮影:増田 慶
©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

2026.07.11
2026.06.30
2026.07.04
2026.07.03

2026.07.02
2026.07.01
ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!