TVアニメ「夏目友人帳」第七期放送開始―――大森総監督が振り返る、ともに歩んだ6,000日①
2024.10.21


オリジナル長編アニメーション映画『ふれる。』の長井龍雪監督と本作の企画・プロデュースを務めるアニプレックスの清水博之のインタビュー。
後編では、映画『ふれる。』に登場する3人の主人公をどのように描いたのか、キャストを務める永瀬廉、坂東龍汰、前田拳太郎を起用した経緯と、制作に費やした5年の月日を振り返る。
目次

長井龍雪
Nagai Tatsuyuki

清水博之
Shimizu Hiroyuki
アニプレックス
執行役員常務
映画『ふれる。』企画・プロデュース
記事の前編はこちら: 映画『ふれる。』監督&プロデューサーインタビュー――鑑賞前に“ふれて”おくとより楽しめる作品の魅力①
――『ふれる。』では青年3人のドラマが描かれています。そこを描くということには、どのような面白さがありましたか。
長井:やっぱり男の子3人がワチャワチャしているのは描いていて楽しいですよね。あと、今回は年齢を20歳に設定しているんです。高校生を描くときは親や保護者的なキャラクターを登場させることが多いですが、20代の青年だとそういった存在がいなくても物語が成立するので、そういう部分も新鮮に感じて、楽しみながら作業ができました。
――田中さんが描かれた3人のキャラクターデザインについては、どんな印象を持ちましたか。
長井:田中さんもおっしゃっていましたが、「自分(田中将賀のキャラクターデザイン)史上一番、目の小さい男の子だ」と。そういう意味でも、アニメらしい表現というよりは、リアルに寄せている感じがありました。
特に表情のつけ方や手の表現などは生っぽい感じもあって、今までとはちょっと違った表現になったなと思いましたね。キャラクターの作り込みの部分で試行錯誤をされていたことが、キャラクターの厚みにつながったと感じています。
――主人公の小野田秋は幼いころから口下手で、言葉が思うように出てこないために手を出してしまうという一面を持っています。そこに人と心を通じさせることができる不思議な生き物「ふれる」が現われたことで、祖父江諒や井ノ原優太ともコミュニケーションが取れるようになり、青年になってからも共同生活ができるほどの仲になっていました。キャラクターの描き方としては難しい面もあったのではないかと思いますが、長井さんは彼をどのように描こうと考えていましたか。
長井:自分は機能的にキャラクターを捉えることが多いんですね。だから、秋くんにトラウマがあって、それゆえに「ふれる」を便利に使ってしまうということは、物語としてもわかりやすいし、映画を見てくださる方にも共感してもらえる部分があるのではないかと思いました。
そのうえで、秋くんが言葉にできない思いを抱え込みながら、「ふれる」を便利に使ってしまって、他者とのコミュニケーションを怠ってしまう部分を、どう見せていくかは丁寧に考えました。
――今回、キャストは小野田秋役を永瀬廉さん、祖父江諒役を坂東龍汰さん、井ノ原優太役を前田拳太郎さんが担当しています。すべてオーディションで決定したということですが、どれくらいの規模のオーディションだったのでしょうか。
長井:オーディションは今回、すごい人数の方に受けていただきましたね。
清水:70名くらいの方に参加していただいていて、そのなかから今回は永瀬さん、坂東さん、前田さんにお願いすることになりました。
――どういうキャストをイメージしていたのでしょうか。
清水:オーディションを受けてくださったのは俳優の方々が多くて、皆さん演技のレベルは高かったんです。そのうえで今回は、実写や舞台で活躍されていて、生のお芝居をされているからこそ出せる空気感みたいなものが、ポイントになりそうだなと私は思いました。
長井:そうですね。あとは、純粋に声の演技が上手い方にお願いしたいとも考えていました。やはり秋くん役が決まらないとほかのキャラクターのキャスティングが見えないところもあって。ますは秋くんの方向性を決めて、そこから3人が揃ったときの声のバランスを考えてキャスティングしていきました。
清水:オーディションのとき長井さんからは、ともかく妥協したくないという思いがひしひしと伝わってきましたね。音響監督の明田川(仁)さんも音響のプロとして選んでくださった。文句のない顔触れになったと思います。
――『あの花』『ここさけ』『空青』のヒロインは、当時、声優としてはほぼ新人と言える方々を抜擢していました。今回も声優としての経験は少ない方々が選ばれていますね。
長井:やはり新しいものを作るときは、既に複数のキャラクターのイメージがついている方よりかは、フレッシュな方を選ばせていただいて、その声が作品の声になってもらえるような出会いをしたい。そういう意味では声優が本職とか、役者が本職とか、そういうことはいっさい気にしていませんでした。
清水:永瀬さんは別の作品で声優の経験をされたことがあるけれど、坂東さんも前田さんもアニメの声優は初挑戦でしたね。
長井:そうですね。前田さんは特撮ヒーローを経験されていますが、アニメの声優は初めてでした。
――そんなフレッシュなキャストのアフレコはいかがでしたか?
清水:これも長井さんの演出に対するこだわりだったんですが、メインキャストのお三方の収録は、可能な限り揃って録りたいということで。皆さんお忙しいにも関わらず、3人で一緒に収録する機会を設けていただけてとてもありがたかったです。
永瀬さんと坂東さんは何度か共演されていて、前田さんはおふたりと共演されるのは初めてという状況だったんですが、アフレコの回を重ねるごとにどんどん3人の生活感みたいなものが感じられるようになったなと。演技の部分だけでなく、3人の関係性がすごく良かったなと思いましたね。
長井:皆さん本当に楽しそうに演じてくださって、3人のキャラクターの関係性だけでなく、リアルな3人の関係性も作りながら収録ができたと思います。収録を見ているこっちが楽しくなってしまうような、マッチングがすごく良かったなと。
清水:3人の声からキャラクターがどんな人柄なのかも想像できましたし、喧嘩するシーンなどではそれぞれの思いも伝わってきました。生っぽさがありながら、それが見る側の共感にもつながる演技だったと思います。
――『ふれる。』の企画は、前作『空青』の公開直後から始まっていたということですが、約5年の制作期間を、どのように振り返りますか。
長井:今回は特にシナリオの制作がコロナ禍の影響が激しいタイミングで進めていたので、コミュニケーションが取りづらい時期がつづいて、こういうときに創作物を生み出すことへの難しさを感じましたね。
清水:『空青』から5年の間に、岡田さんはいまや監督としても活躍されているし(2023年9月公開『アリスとテレスのまぼろし工場』)、田中さんもキャラクターデザインでさまざまな作品に携わっていらっしゃる。長井さんもいろいろなTVシリーズ作品で活躍されていて、皆さんがそれぞれトップクリエイターなわけです。
その3人が監督、脚本、総作画監督/キャラクターデザイナーとして集まったときにかけ合わされて出てくる熱量は、ものすごいものがあるなと実感しています。今回の作品でも、その魅力はしっかりと出ていると思いますね。
長井:岡田さんはご自身で監督を務めるようになって、作品全体のビジュアルにもより気を配るようになったなと思いますね。シナリオにおいても、そういう全体的なビジュアルイメージをすごく大事にされているなと。
田中さんもいろいろな作品に参加されるたびに表現の幅を広げられていて。ふたりともどんどん進化している。僕は、そのふたりの作ったものをまとめていく立場なんですけど、今回もふたりについていくのは大変でした。
――音楽は『あの花』『ここさけ』『空青』の劇伴を手がけてこられた横山(克)さんに加え、新たにTeddyLoidさんが参加されています。この座組についてはどのようにお考えだったのでしょうか。
長井:今回は舞台を前3作の秩父から、東京・高田馬場に変えたということもあって音楽にも新しい要素を入れてみたいなと思ったんです。ただ作曲家が2名いることは作業的に難しいところがあるんですよね。でも、横山さんとTeddyLoidさんはもともとお知り合いで、おふたりがうまく作業をしてくださったので、とてもまとまりの良いかたちで音楽を作っていただくことができました。
清水:本当に、お互いを尊敬し合っている関係だったのですごくやりやすかったですよね。監督の音楽のアイデアも伝えさせていただいて、作品にマッチする、新しい音楽ができたのではないでしょうか。
――主題歌はYOASOBIの「モノトーン」。YOASOBIを起用した経緯も教えてください。
清水:主題歌はアニプレックスの小田桐(成美)プロデューサーを中心に、作品に相応しいアーティストを探しました。そのなかで、今年デビュー5周年を迎えたYOASOBIの名前が挙がったんですね。
さらに、YOASOBIのプロデュースを担当しているチームに連絡を取ったところ、担当者のひとりが『あの花』のファンだったそうで。そういうところにもご縁を感じて、今回は主題歌をお願いすることなりました。
映画『ふれる。』本予告 10月4日(金)公開
――『ふれる。』がいよいよ劇場公開を迎えます。どのようなところに注目して楽しんでもらいたいですか?
清水:不思議な生き物「ふれる」もかわいらしいし、今回の舞台となった東京の夜景も素晴らしいなかで、ファンタジーも盛り込まれた、青年3人を中心とした青春物語が繰り広げられます。長井監督がかつてないほどエンタテインメントの要素を詰め込んでくださった作品だと思いますので、ぜひ、劇場に足を運んで楽しんでほしいと思います。
また、本作はソニーミュージックグループの力を発揮できた作品じゃないかと思っています。アニプレックスのプロデュースチームと、CloverWorksが連携して制作を進め、CloverWorks社内の美術、仕上げ、撮影チームそれぞれが活躍してくれた。そして音楽面でもさらに磨きをかけてくれましたし、グループの力を結集できた作品になったと思います。
長井:清水さんのおっしゃる通り「ふれる」という不思議な生き物のかわいさをぜひ味わっていただきたいです。本作では、マスコットキャラクターを作るという挑戦をさせてもらったので、その魅力が皆さんに伝わったらうれしいですし、もし映画館を出たときに、「ふれる」が欲しくなってくれたら最高だなと思います。ぜひ、劇場で「ふれる」をご覧いただきたいです。よろしくお願いします。
記事の前編はこちら: 映画『ふれる。』監督&プロデューサーインタビュー――鑑賞前に“ふれて”おくとより楽しめる作品の魅力①
文・取材:志田英邦
撮影:干川 修
©2024 FURERU PROJECT

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