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技術者たち ~エンタメ業界が求めるエンジニアの力~

システムエンジニア:必要なのは純粋な好奇心だった――データという財産でエンタメ企業をサポートする楽しさ

2024.11.25

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さまざまなエンタテインメントビジネスを手がけるソニーミュージックグループで、専門的な知識とスキルを持って働く技術者(エンジニア)に話を聞く連載企画。

第11回は、システムエンジニアとして、ソニーミュージックグループ内で使用する業務アプリの開発と運用に加え、データ利活用プロジェクトにも携わる野島大輝に話を聞いた。

  • 野島大輝プロフィール画像

    野島大輝

    Nojima Daiki

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

入社10年で感じた“理系タイプ≠エンタメ業界に不向き”

──野島さんが在籍しているソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)のエンタプライズシステム本部は、どのような業務を行なう部門ですか。

ソニーミュージックグループのスタッフが日々の業務で使用する社内アプリケーションの開発から保守、運用を行なう部門です。

ソニーミュージックグループは20社以上のグループ会社で構成されていて、事業領域も音楽、アニメ、ゲーム、キャラクター、ソリューションなど幅広いため、必要とされる業務アプリが多岐にわたります。現在、エンタプライズシステム本部で運用しているものだけでも、170近くのアプリが稼働しています。

──すべてのアプリの開発をエンタプライズシステム本部で行なっているのでしょうか?

プログラミングなどは、外部のベンダーにお願いすることが多いのですが、最近は少しずつ内製も増えてきました。エンタメ業界の働き方や業務内容には、ある種、独特なところがあるので、使いやすさを追求することを考えると、要望によっては内製したほうがいろいろと都合がいいだろうと。

私自身は社内の要望を聞き、そのためにはどんなシステムが必要なのかを企画立案して、外部の協力会社をコーディネートすることが多いのですが、最近は自分の手を動かすこともあります。

ブルーグレーのシャツに黒のジャケットを羽織った野島大輝

──学生時代にプログラミングやシステム開発を学んでいたのですか。

私は工学系出身で、大学ではPCに向かうよりもハンダづけをしている時間のほうが長かったんです。元々音楽が好きで、スピーカーやマイクといった音響工学を学んでいました。それらを動かすためにプログラミングに触れることも多少はありましたが、本格的にシステム開発を学んだのは入社してからですね。

──ソニーミュージックグループを志望したのも、音楽好きという動機からでしょうか。

はい。中学生のころに大好きだったアーティストがソニーミュージックに所属していて、当時から漠然と「この会社で働きたい」と思い描いていました。

ただいっぽうで、理系の自分がエンタメ業界で働くイメージがわかなかったのも正直なところです。就職活動を行なっていたときもエンタテインメント系の会社を受けたのはソニーミュージックグループだけで。当時は記念受験だと思っていましたね。

──やはり“エンタメ業界=文系”のイメージがあるのでしょうか。

そういうイメージを持っている人もいると思いますが、どんな業界であれ、大勢のスタッフが円滑に業務を進めていくためには、当然ながらITのシステムが必要です。そういう意味では理系の人だって、純粋に自分の趣味嗜好で業界を選択していいのではないかと思っています。

人によって考え方はそれぞれですが、私の場合は好きなものを扱う仕事のほうが、モチベーションを高められているので良かったなと感じています。

エンタテインメントとIT――言語が異なる現場をつなぐのに必要なのは翻訳力

──これまで携わったプロジェクトで印象深かったできごとはありますか。

経費精算のシステムをリニューアルするプロジェクトですね。市販でも優秀な経費精算のソフトはたくさんありますが、エンタテインメントの会社ならではの働き方にフィットするものはなかなかないので、私たちの部門で独自開発しています。

また、経費精算アプリは経理がオーナーのシステムですが、スタッフ全員に関わるシステムでもあるので、誰にとっても使いやすいものを目指していました。私が入社して3年目の2016年ころに、そのプロジェクトが始動したんですが、さまざまなスタッフにどんな機能が必要か、かなりの量のヒアリングを行ないました。

──事業領域が広いだけに要望もさまざまでしょうし、調整が大変だったのでは?

そうですね。またシステム開発の現場ではさまざまな専門用語が飛び交いますが、スタッフのなかにはITに詳しい人もいれば、そうでない人もいます。

実際、私も当時はエンタテインメントの現場がどのように回っているのか、知らないことばかりでした。いわば共通言語が違うなかで、相手が何を求めているのかを聞き出して、“それを実現するにはこんな技術がありますよ”と提案するのは、なかなか苦労しましたね。

手を使って話す野島大輝

──確かにITの専門用語だけで話してもらっても、分野が違う人は戸惑いますよね。

これは自分への戒めでもあるのですが、普段からITを触っている人同士は共通言語で通じ合える分、属性が異なる相手に説明するのが不得手だったりするところがあります。そこをきちんと噛み砕いて話す“翻訳する力”が、このプロジェクトを通して養えたのではないかと思います。

もちろん翻訳をするためには相手の“言葉”も知らなければいけないので、エンタテインメントの現場がどのように動いてヒットを生み出しているのかを知ることができたのは、とても有意義な経験でした。

音楽好きの理系学生だった自分をワクワクさせてくれた新プロジェクト

──現在、野島さんが携わっているプロジェクトについて教えてください。

私は、ソニーミュージックグループの物流を担うシステムの開発と運用に携わるチームのリーダーを務めています。近年、グループ全体で販売データを利活用する動きが盛んになっています。

ひと昔前のヒットの生み出し方というのは、エンタテインメントを生み出す現場の人間の感性に委ねられていた側面が少なからずあったのですが、昨今では、それをもっとデータで可視化して、売上予測を立てたり、次の施策に役立てたりと使われ方が変化しつつあります。

そうなると必要になってくるのが、これまでソニーミュージックグループが積み上げてきた膨大なデータをどうやって活用していくか? このデータを取り扱う立場として、プロジェクトに携わっています。

──ヒットの背景が蓄積された、いわばソニーミュージックグループの財産とも言えるデータを扱っているんですね。

そうですね。また、これが仕事を超えてとても楽しいんです。音楽が好きだった私は、聴くのはもちろんですが、それに付随するデータ的なものにも関心がありました。

大学時代には、毎週発表される音楽ランキングをExcelで集計するのが趣味で、気づいたら何年分ものデータが溜まっていたほどです。そういう意味では、データを扱うことに抵抗がないというか、むしろ性に合っているところもありまして(笑)。このプロジェクトにもワクワクしながら携わっています。

──ほかにはどんな楽しさ、やりがいがありますか?

大学時代は“このCDは何百万枚売れた”といった表面に出てくるデータしか見えていませんでした。しかし、その何百万枚を売るためには広告宣伝費もかかっていますし、CD1枚を作る材料費、ユーザーに届けるまでの物流費などさまざまなコストがかかっている。

そうしたヒットのリアルなあらましが面白いと言いますか、サービスを提供する人の動きが数字を通して垣間見られるところに、純粋に好奇心を揺さぶられるものがありますね。

にこやかな表情で話す野島大輝

“新しいことに好奇心を持って取り組めること”が重要

──野島さんは、ソニーミュージックグループのエンジニア職には、どのような人が向いていると思いますか?

音楽やアニメといったエンタテインメントへの興味関心は、入り口になると思います。そのうえで、常に新しいことに好奇心を持って取り組める人が向いているのではないかと思いますね。

ITはどんどん進化していきますが、エンタテインメントも移り変わりがとても激しい業界です。例えば音楽、映像、ゲームのメインストリームは、配信、サブスクリプションビジネスに移行しました。

──エンタテインメントの届け方が変われば、そこに付随するシステムもアップデートしなければいけないということですね。

はい。先ほど例に挙げたように、パッケージビジネス自体も大きく変化しています。かつては単体で売れたCDも、今はさまざまな特典をつけるのが定番になりました。それもショップによって特典が異なったりと、パッケージをショップに届ける営業担当者の動きも非常に複雑化しています。

変わりゆくエンタテインメントの現場が円滑に回るよう、新たな機能を追加したり、システムを開発、改修したりといった動きは、今後ますます加速するのではないかと実感しています。

──それだけITエンジニアの人材が求められているということですね。

まさに今は、各グループ会社でシステムのチームがどんどんでき始めているところです。私たちの部署は、主にSMEのスタッフのための業務システムを扱っていますが、ファンクラブ運営やEC事業といったエンドユーザー向けのシステムは、事業会社が独自で手がけているものも多いですし、システムに詳しい人を各事業会社が求めていると思います。

──今の野島さんの立場で、学生の間に“これはやっておくといい”といったアドバイスはありますか?

理系の学生であれば、世間でトレンドになっているITにはぜひ触れてみてもらいたいですね。最近はクラウドサービスの敷居もどんどん下がっていますし、少しでも触れておけば、そこからの発展も抵抗なく活用できるのではないでしょうか。

今は検索すれば比較的情報を得られる時代ですが、自分のなかにスキルとして落とし込むには、やはり手を動かすことが大事だと思います。そして手を動かした時間は、きっとどこにいっても自分を助けてくれると思います。

やわらかい表情で語る野島大輝

エンジニアだからこそ見えるエンタテインメントの世界が、次なるヒットを生み出す!?

──野島さんの今後の目標を教えてください。

ソニーミュージックグループの多種多様なビジネスの動きを、システムを通してすべて把握できる状態にまで持っていきたいというのが野望です(笑)。今はまだ限定的な領域にしか携わっていないのですが、どの事業会社の困りごとにも対応できるスキルと情報を培いたいですね。そのためにインプットしなければいけないことは、まだまだたくさんありますが……。

──データ利活用プロジェクトの話もありましたが、エンジニアの立場から新たなエンタメビジネスやヒットを生み出せる可能性はあるのでしょうか。

データ利活用というのはいわば“知の共有”のようなものです。現場の皆さんそれぞれが持っているアイデアやノウハウをもっと共有しやすくなったら、次なるヒットやアクションにもつながるのではないかと思いますし、そこに携われていることにとても喜びを感じます。

現場のみなさんとは視点が異なる、エンジニアだからこそ見えるエンタテインメントの世界をさらに掘り下げることで、世の中をワクワクさせる一助になれたらうれしいです。

文・取材:児玉澄子
撮影:冨田 望

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