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技術者たち ~エンタメ業界が求めるエンジニアの力~

開発プロジェクトリーダー:外資系IT企業から転職して仕事に取り組む“ワクワク”を実感

2024.10.25

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さまざまなエンタテインメントビジネスを手がけるソニーミュージックグループで、専門的な知識とスキルを持って働く技術者(エンジニア)に話を聞く連載企画。

第10回は、外資系IT企業から転職し、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)で音楽ライブの自動撮影システム、撮影映像のAI解析システムなどの開発プロジェクトを統括する中村葉子に話を聞いた。

  • 中村葉子プロフィール画像

    中村葉子

    Nakamura Yoko

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

ライブの自動撮影システム開発で統括リーダーを担当

──中村さんは、最新テクノロジーを活用して新しいエンタテインメントビジネスを生み出すSMEのEdgeTechプロジェクト本部に所属していますが、現在はどんな業務を担当していますか。

主にふたつのシステムを開発しています。ひとつはライブを自動撮影するシステム。もうひとつは、撮影した映像をAIで解析し、特定の人物だけを抜き出すシステムです。

どちらのプロジェクトも現場の開発は若手エンジニアが頼もしく進めてくれているので、私は進め方に迷いが出たときのアドバイスや、プロジェクトの方向性を決める際の意思決定を担当しています。あとは品質を担保する責任もあるので、システムのテスト時に、気になった点を指摘することもありますね。

白いTシャツに黒と白のニットを着た中村葉子

また、ソニー株式会社(以下、SEC)の研究開発部門が手がけたAIエンジンをもとにアプリケーションを開発しているので、SEC側と打ち合わせをしたり、AIの仕様について確認したりするなど、橋渡しのような役割も行なっています。

ただ、プロジェクトリーダーといってもチームメンバーは少人数なので、月に1、2回ライブ会場で実際に撮影を行なうときには、私自身も機材を抱えて、若手スタッフにあれこれ教えてもらいながら舞台袖を駆け回っています(笑)。

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──中村さんは、中途採用でSMEに入社したということですが、前職はどんな仕事をしていましたか?

ソニーミュージックグループは私にとって3つ目の就職先で、前職、前々職は外資のIT企業に務めていました。どちらの会社にも業務アプリケーションの開発をするシステムエンジニアとして入社しましたね。

──学生時代からITエンジニアを志望していたのでしょうか。

大学では国際政治経済学部に在籍していたので統計学なども学びましたが、自分は文系だと認識していました。ただ、私が新卒として就職活動をしていた当時は、IT業界にキラキラしたイメージがあって、なかでも外資系IT企業は一番キラキラした世界だと思っていたんです(笑)。

それで、プログラミングなどの知識はほぼゼロのまま、外資のIT企業に応募して運良く採用になりました。なので、IT関連の知識は入社後の研修や実務を通して必死に覚えましたね。

にこやかな表情で話す中村葉子

エッジの効いたシステムを開発したい

──最初の就職先の外資系企業には約16年勤めたそうですが、転職を決意した理由を教えてください。

当時はマネジメント職で、あとはこのまま社歴を重ねていくだけかなと思っていたときに、面談で若手社員に「将来どういうエンジニアになりたい?」と聞く機会があって。そうしたら「中村さんはどうなりたいんですか?」と逆に質問されたんです(笑)。

その時点で、私のキャリアはもうでき上がっているものだと思い込んでいましたが、そうではないことに気づかされました。そこでもう一度自分のキャリアを見つめ直し、違うことにも挑戦してみたいと思って転職することにしたんです。

──2社目ではどんな仕事を担当していたのでしょうか。

2社目も外資系のIT企業でしたが、ヘッドマウントディスプレイを使ったエンタテインメント性の高いシステム開発に携わることができました。ただ、それはたくさんある仕事のなかの一部で、やはり業務アプリ系のシステム開発が主だったんですね。

これでは、最初の会社でやっていたことと大きく変わらないなと思い、もっとエッジの効いたシステム開発に携われる企業はないかと調べていたところ、ソニーミュージックグループが目に留まりました。

些細なことも「ま、いっか」ですませない

──中村さんは仕事をするうえで、どのようなときに楽しさややりがいを感じていますか?

これまで20年以上ITエンジニアとして働いてきましたが、現在開発している自動撮影システムやAIによる映像解析システムは初めて見るものばかりで、作っているシステム自体がまだこの世にないものだから、お手本もありません。それについて、みんなで「どうすればうまく行くだろう」と話し合い、勉強しながらトライアル&エラーを繰り返すのは大変でありつつも充実しています。

また、一緒に働く若手のエンジニアもみんな一生懸命で、高いハードルを自分なりの方法で越えようとしています。今、2週間ごとに目標を設定して、成果のレビューを実施する「スクラム開発」を行なっているのですが、私の予想を超えた結果を出してくれて。

「どうしてこういう結果に辿り着いたの?」と聞くと、本当に目をキラキラさせながら説明してくれるので、それを見ているだけで幸せな気分になるんです(笑)。今は自分でコードを書くことはほとんどないのですが、そんな若手スタッフたちを見ていると私も現場で手を動かしたくなります。

──話を聞いていると、中村さんは技術に対する好奇心が旺盛ですよね。仕事をしていて「なんでこうなるんだろう」という場面では、突き詰めたくなるタイプですか?

そうですね。最初の会社で、インターネットバンキングのシステムに携わっていたんですが、銀行のシステムですから当然24時間365日、常に安定稼働させなければいけない状況で。絶対にバグがあってはならないうえに、いつサービスが開始されるのか告知されているので、期限も厳守という常に緊張感の高い現場でした。

そのとき、この仕事をするなら「ま、いっか」の姿勢ではダメなんだと気づいたんです。何かトラブルが起きたら、根本原因を探って元から断つ。同じような不具合がどこかに存在しないか、すべて洗い出す。

それをしないと、また同じようなエラーが起きますし、実際にエラーが起きてしまったときに激しく後悔するんですよね。「あのときちゃんと考えておけば良かった」と。そんな経験もあって、仕事をするときは「どうしてそうなるの?」と常に考える癖がつきました。私のITエンジニアとしての基礎は、この時代に培われたと思います。

──では中村さんの仕事上でのポリシーも、「ま、いっか」では終わらせないことでしょうか。

そうですね。ユーザーがいつも快適に利用できるシステムを構築するには、トラブルを未然に防がなければならないので、手を尽くすというのは大事だと思っています。

手を使いながら説明する中村葉子

現在の仕事でも、ライブ会場には舞台を設営する方がいて、音響や照明を担当する方がいて、撮影をする方もいる……本当に多くのスタッフが関わっています。皆さんが一丸となってステージを作り上げる姿を見るたびに感動しますし、その場に参加させてもらう私たちも本当に手を抜けないなと思います。そして、こんなに手間暇かけて皆さんが作り上げたステージを記録として残せるシステムを作っているんだと考えると、本当にやりがいのある仕事だなと感じています。

エンタメに対する知見がひらめきを生む

──中村さんたちのチームに新しいメンバーが加わるとしたら、どんな人が向いていると思いますか?

新しいシステムを自分たちで考え出す仕事なので、新しい知識を得ることに楽しさを感じる、探究心を持って物ごとに取り組める人が向いていると思います。何か課題が生じた際にも、解決するにはどうすれば良いか、自分で考えようという意欲がある方が向いていますね。

──今まで見たことのないシステムを開発するので、答えがない。そこに面白さを感じられるかどうかがポイントですね。

そうですね。あと、現在のプロジェクトメンバーは、ライブの楽しみ方を知っているというのも大きいです。扱っているのは映像ですが、その映像と聴こえる音が組み合わさると、どういう効果が生まれるかまで考えていて、私もとても勉強になっています。

そのうえで、こうしたエンタテインメントに対する知見は、やはりソニーミュージックグループの強みだと感じました。単に撮影、映像を解析するだけでなく、音楽やライブの楽しみ方を組み合わせたひらめきや感性が重要だと思います。

──これからエンジニアを目指す皆さんが、やっておくべきことはありますか?

ひとつで良いので、社会に出る前にプログラミング言語をマスターしておくことですかね。私自身は学生時代に何も学ばずに入社して、いきなりJava言語を勉強することになりました。その経験を踏まえ、何かひとつマスターしておくと、新しい言語で開発をするときにも応用が効きます。実際、今私が関わっているシステムはC言語で書かれていますが、ベースがあったことで対応できました。

もちろん趣味やカリキュラムで学んだことが、仕事でそのまま使えるわけではないのですが、その蓄えがあるだけで社会に出てからの成長のスピードは違ってくると私は思います。

──前職、前々職でIT企業を経験していますが、エンタメ業界で働く楽しさについてはどのように捉えていますか。

ほかの企業ではあまり作らないものの開発に携われていることに楽しさを感じます。かつての同僚たちは、「え、ソニーミュージックに行って何をするの?」と不思議がっていましたが、自動撮影システムや、それ以外にも部門で手がけたシステムの話をすると「ソニーミュージックがそういうシステムを開発しているとは知らなかった」と驚いていました。

それに、開発現場もとても風通しが良いです。これまでの職場は業務の内容的に思い切った提案をするのが難しい環境でしたが、今は突拍子もないアイデアも話せます。若手の皆さんも「いや、それならこうしたほうが良いんじゃないですか?」と意見を返してくれるので、前向きな議論が生まれて、それがとても楽しいですね。

微笑みながら話す中村葉子

この会社なら、自分のやりたいことができる

──今後、中村さんはどのようなキャリアを築いていきたいですか?

可能な限り現場にいたいと思っています。現在は、ライブの自動撮影システムを開発していますが、そもそもこのプロジェクトが立ち上がったのは、人手や予算が少なくてもライブを開催できるようにするためです。そして、自動撮影以外にも、どのアーティストでもライブを行なうことができ、ファンの皆さんにももっと喜んでいただけるシステムはまだまだ考えられるはず。そういった点で自分のスキルや経験を役に立てられたらうれしいです。

──前職、前々職は外資の大手IT企業ですから、正直なところ、そのままキャリアを維持したほうがいろいろな面で安定したのではないかと思います。後悔するようなことはありませんか?

2度目の転職活動のとき、前職に近いIT企業も受けたことがあって、経歴を加味した好待遇を提示していただいたのですが、その条件を前にしても「何か面白いことがあるはず!」と思える会社に入って、ワクワクしながら仕事をしたほうが良いんじゃないか、と思ったんです。

いろいろと頭のなかでシミュレーションし、私はSMEを選びました。おそらく前職と同じようなIT企業を選んでいたら、結局また転職活動をしていたのではないかと思います。

手で表現しながら話す中村葉子

──“エンタテインメントに直接触れたい”というモチベーションから、ソニーミュージックグループを志望するエンジニアは多いですが、中村さんの場合は「システムを通して、エンタメ業界で楽しいことがしたい」という思いが強かったんですね。

そうですね。「ここなら、きっと何か楽しそうなことができる」という思いでSMEに入りました。若いころはつらいこと、やりたくないこともスキルアップのためと思ってすべてやってきましたが、キャリアを重ねた今は、自分がやりたいことをやりたい。そんな私にとって、ソニーミュージックグループはぴったりの環境だったのだと思います。

文・取材:野本由起
撮影:増田 慶

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