想いを込めた花というバトンを、廃棄花を減らすというゴールへ――『Rebloom Relay Flower』の取り組み
2025.10.27


2025年3月、ソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)は、音楽で子どもたちを応援するプロジェクトをスタート。子どもたちの体験格差など社会課題に取り組む団体の協力を得ながら、小中学生を対象に音楽の楽しさ、音を奏でる感動を提供していく。
後編では、中学生向けに開催したワークショップの内容と、このプロジェクトに携わる担当者たちの思い、そしてプロジェクトの展望について聞いた。
目次

武 哲也
Take Tetsuya
ソニー・ミュージックレーベルズ

丸子由佳
Maruko Yuka
ソニー・ミュージックレーベルズ
記事の前編はこちら:音楽で子どもたちを応援――ソニー・ミュージックレーベルズが今、小中学生に向き合う理由①
──中学生向けのワークショップについても聞いていきます。小学生と中学生では、ワークショップの内容が大きく変わりましたね。
丸子:小学生は音を楽しんでもらうことを主な目的としましたが、中学生はもう一歩踏み込んで、音楽の作り方を知ってもらい、音楽を奏でる楽しさを体験してもらうことに重きを置きました。
そこで、音楽の聴き方が少し変わるような講義と、グループでバンド演奏を行なう「Insta Session」というプログラムを実施しました。
──具体的な内容を教えてください。
丸子:音楽への興味を深めてもらうべく、前半は講義形式で“コードってこういうものですよ”“J-POPではこんなコード進行がよく使われていますよ”と座学を行ないました。
続いて“演奏ができた!”という小さな成功体験を積み重ねられるように、音楽制作アプリ『GarageBand』、メロディを奏でる『ThumbJam』、楽器を演奏する『KANTAN Play』の3種類のアプリと、誰でも簡単に演奏できる電子楽器『インスタコード』を使った講義も実施。
そして後半では4人ひと組のグループになり、講義で学んだことをいかしてアプリを使った楽曲制作を行ない、最終的にはグループでバンドセッションを披露してもらいました。
──このプログラムも、外部の識者の協力を得て作られたのでしょうか。
丸子:『インスタコード』を開発したゆーいちさんに加わっていただき、一緒にプログラムを考えていきました。楽譜が読めなくても、楽器を演奏できるワークショップを目指しました。
──実際にワークショップを行なった感想は?
丸子:「あそぼっくす・ほりさき」で開催した小学生向けのワークショップと違い、参加してくれた中学生は皆さん初対面同士。どんな雰囲気になるのか、始まるまではハラハラしていました。とはいえ、あえて場を和ませる時間を設けず、前半はずっと講義。音楽の作り方を知り、そして楽しんでもらうことに注力しました。
それがいいほうに働いたのか、後半のグループワークでは“このメンバーでセッションするんだ”というところに意識が向き、みんな和気あいあいと曲づくりや演奏をしていましたね。
武:中学生は、もっと斜に構えてしまうのかなと思ったんですけど、ピュアに楽しんでくれましたよね。前半の講義では難しい顔をしていた子どもたちも、グループワークになると打ち解けていて。SMLのスタッフも、不慣れではありながら、それぞれが頑張ってグループを盛り上げていました。
丸子:中学生の部は、参加者の募集を含めてキッズドアの皆さんにご協力いただいたのですが、“音楽のワークショップがあるので集まってください”ではなく、“音楽のワークショップがありますが参加したい人はいますか?”という任意性なので、集まってくれた子どもたちの音楽を学びたいという意欲が、そもそも高いというのもポイントだと思いました。
実際に、音色を選ぶところから“どういう音にしようか、悩んでいます”といったコミュニケーションが生まれていましたし、皆さん、音の表現を楽しんでくれたようで。アプリを使った音楽制作の経験がある子も数名いましたが、みんなでセッションするのは初めてだから楽しみ、という声も聞こえました。いつもと違う体験を味わってもらえていたらうれしいですね。
──グループで演奏を披露する前には、グループごとに曲づくりで工夫したポイントや特に聴いてほしいところを発表していましたね。
丸子:小学生のプログラムと同じように、プレゼンをすることで自信をつけてほしいと考えました。ただ、みんなの前で突然「工夫したところは?」と聞かれても、答えるのに勇気がいりますし、そもそも難しいですよね。
そこで、事前にワークシートに各自コメントを書いてもらい、それを読み上げる形の発表にしました。それに、大勢の前に出た瞬間、頭が真っ白になってどうやって演奏すればいいかわからなくなることもあるはず。そこで、簡単な譜面も書いてもらうようにしたんです。どちらも“きちんと発表できた”“作曲して演奏もできた”という成功体験を味わってもらうための足場づくりでした。
──発表前には、武さんが一人ひとりの楽器のサウンドチェックをしていました。プロの現場を体験できて、参加したお子さんたちもうれしかったでしょうね。
武:少しでもそういう雰囲気が味わえると喜んでもらえるかなと思い、意識的に「サウンドチェックします。音を出してください」と声をかけさせてもらいました。
また、協力してくださった認定NPO法人キッズドアの方々からのアイデアで、演奏を録音しておいて、ワークショップの終了後に音源をダウンロードできるようにしたのも喜んでもらえたようです。
人によって弾き方の強弱が違いますし、音量が極端に小さくなってしまった子もいましたが、それもひとつの経験。あとになって聴いたとき、“あのときこうだったな”と演奏したという経験を思い出してもらえたらうれしいですね。
──プログラムの終了後、参加した中学生にアンケートを取っていましたが、どんな反応がありましたか?
丸子:“音楽が好きなので、コードについて知ることができて良かった”“みんなと一緒に曲を作れて楽しかった”“同じグループの人と協力しながら演奏できて楽しかった”という反応が多かったです。
──各グループについていたSMLのスタッフも、とても楽しそうでした。「細かいことは気にせず、ノリでいこうよ!」と盛り上げている人もいれば、「実はSMLに入社する前は証券会社に勤めていて……」と自分のキャリアについて話している人もいましたね。
丸子:特に中学生の部は、そういう話も子どもたちにしてあげてほしかったんです。
武さんが機材をいじっている姿を見るだけでも、子どもたちにとっては刺激になるという話がありましたが、子どもたちに“エンタメ業界には、こういうキャリア形成もあるんだ”と知ってほしくて。
SMLにはギターを弾ける人、ドラムが得意な人、映像編集ができる人など、いろいろなスキルを持つスタッフがいます。そういったスタッフと交流すると子どもたちの刺激になりますし、スタッフ自身も「自分の経験って子どもの目線だと、こんなにすごいことなんだ」と気づくきっかけにもなると思うんですよね。
武:この取り組みは、今のところ我々が在籍するSMLの企画戦略部のスタッフだけでまかなっていますが、今後はこれを会社全体に広げていければと考えています。“自分たちが相対しているリスナーは、こういう子たちなんだ”“音楽にはこんな力があるんだ”という学びにもなりますし、子どもたちとの対話から本当に多くのことを感じ取れるんですよね。SMLの全スタッフにとって、意義のある取り組みだと感じました。
──今後、この音楽支援プロジェクトをどのように展開していきたいと考えていますか?
武:プログラムをフォーマット化し、さらに精度を高めていきたいですね。継続することに意味があるので、無理はせず、まずは四半期に一度くらいのペースで1回1回を丁寧に取り組んでいきたいです。また、長期的なビジョンとしては、例えば僕らが担当替えや、それこそ定年退職でいなくなっても引き継がれているようなプログラムにしたいと考えています。
丸子:子どもの体験格差は地方に行くほど広がっていくのも事実ですし、ゆくゆくはこの取り組みを地方でも展開できればなと考えています。まだ始まったばかりなので先の話にはなりますが、全国各地でプログラムを実施し、そこに地元で活躍するミュージシャンやその地域にゆかりのあるアーティストに加わってもらうというのもやってみたいですね。
それによって、音楽を通した地方創生にもつながり、より意義のあるサステナビリティ活動になるのではないかと思います。
──持続性を考えると、コストを抑えることも重要ではないかと思います。それぞれのプログラムは、大きな予算をかけずに活動を継続できそうですか?
武:大きな課題のひとつですよね。欲張らずにプログラムの内容をシンプルにフォーマット化することで、予算面も含め、より継続しやすくなると思っています。もちろん、さまざまな方たちのお力を借りて、子どもたちに出会える環境と場所があってこそ実現できるということが前提ではありますが。
──このプロジェクトには、SMLの辻野代表も深くコミットしているとのこと。プロジェクトを続けるなかで、辻野代表とはどのようなコミュニケーションを取ってきましたか?
武:話し合いを進めるなかで、辻野自身が強い思いを持って取り組もうとしていると感じました。
プログラムの内容は我々に任せてもらいましたが、進捗は常に気にしていて。小学生の部はどうしても都合がつかず来場できなかったのですが、中学生の部は、見学に来て自らの思いを込めて中学生の皆さんに挨拶しています。会社に戻ってすぐに参加者のアンケートを読んだり、中学生の皆さんが作った音楽を楽しそうに聴いたりもしていました。
それと活動を具体化するなかで、辻野から「会社として“こんなことをしています”というアピールのためではなく、純粋に子どもたちに音楽の楽しさを届けられる企画にしてほしい」と言われたことが印象深く、我々も肝に銘じています。
今回オウンドメディアとは言え、こうして外部に発信するのは、アピールが目的ではなく、今後もたくさんの子どもたちと出会うために、さまざまな団体や個人の方のお力をお借りすることがあると思うので、そのときの名刺代わりとして、この記事でお話しさせてもらいました。
──実際、中学生向けのプログラムが始まる前には、辻野代表から「我々がソニーミュージックであることを意識してもらう必要は一切ありません。ただただ、音楽の楽しさを知ってもらって、好きになってもらって、アーティストでもスタッフでも、将来、音楽業界を志望してくれる人がひとりでも増えてくれたらうれしいです」というメッセージをお子さんたちに送っていましたね。
武:それは我々も言われ続けてきたことですね。何より、その言葉を活動当初から聞けて良かったと思っています。辻野の思いを知らないままだったら、何のために行なうのかというプロジェクトの軸が固まらないまま取り組むことになり、いい形にはできなかったのではないかと感じています。辻野のパッションと僕らの「よし、やるぞ!」という思いがハマったからこそ、一歩目を踏み出せたのではないかと思います。
──小学生向けのワークショップ「クワトロミュージック」も含めて、今後はターゲットを広げたり、プログラムを増やしたりと拡張性もありそうですね。
武:すべての子どもたちにいますぐ活動を届けることはなかなか難しいので、まずは日本財団、そしてキッズドアの皆さんにご協力いただくことで出会える子どもたちに音楽の楽しさを伝えつつ、活動の輪を広げていきたいですね。
丸子:最終的には、高校生や大学生にもプログラムを広げていきたいです。活動を長く続けていけば、小学生のころにワークショップを経験した子が大学生になり、またこのプログラムに参加したり、いつかスタッフとしてプログラムを提供する側になってくれたりするかもしれません。人もサイクルしていくと思うので、レイヤーを広げて「音楽が好き」「音楽って楽しい」と思っていただけるような連鎖を増やしていきたいですね。
武:まだ、本当に始まったばかりなので、大風呂敷は広げず、SMLのスタッフが担当するのが難しければボランティアの大学生などとの連携をお願いするとか、ルールを決めすぎず臨機応変にプロジェクトを進めていきたいです。“一瞬盛り上がったけれど続かなかったね”ということがないよう、SMLとしてできるやり方で長く続けていけたらと思います。
記事の前編はこちら:音楽で子どもたちを応援――ソニー・ミュージックレーベルズが今、小中学生に向き合う理由①
文・取材:野本由起
撮影:干川 修(インタビュー)/千々岩 友美(ワークショップ)
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