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サステナビリティ ~私たちにできること~

アーティスト、クリエイター、スタッフの心と身体をサポート――『B-side』という持続可能な取り組み【前編】

2022.04.04

ソニーミュージックグループでは、持続可能な社会の発展を目指して、環境に配慮した活動や社会貢献活動、多様な社会に向けた活動など、エンタテインメントを通じたさまざまな取り組みを行なっている。連載企画「サステナビリティ~私たちにできること~」では、そんなサステナビリティ活動に取り組む人たちに話を聞いていく。

第2回は、アーティストやクリエイター、そして彼らを支えるスタッフの心と身体をサポートするプロジェクト、『B-side』をフィーチャーする。より良い社会の実現、持続可能な社会を発展させていくために、人の心を震わせ、ときには生きるための活力となるエンタテインメントは、なくてはならないもの。だからこそ、それを生み出すアーティストやクリエイターへのサポートは必要不可欠であるという考えから始まった『B-side』。このプロジェクトの具体的な取り組み、将来に見据えるビジョンついて、外部コンサルタントとしてプロジェクトに携わる石井由里氏と、プロジェクトリーダーを務める徳留愛理に話を聞いた。

前編では、『B-side』の概要とプロジェクトが生まれた経緯を中心に語ってもらう。

  • 石井由里氏

    Ishii Yuri

    ユリコンサルティング合同会社
    代表

  • 徳留愛理

    Tokutome Airi

    ソニー・ミュージックレーベルズ
    SML Management

『B-side』とは

エンタテインメント業界で活躍するアーティストやクリエイター、そして彼らに直接携わるスタッフの心と身体の両面をサポートすることを目的として、2021年9月に、ソニーミュージックグループ内で発足したプロジェクト。プロジェクト名の『B-side』には、表に立つ自分(A-side)だけでなく、普段の自分(B-side)を大切に、そしてソニーミュージックグループのスタッフはどんなときでもアーティストやクリエイターのそばにいたい(Beside)、というメッセージが込められている。

アーティストとクリエイター、それを支えるスタッフの心身をケアする4つの柱

──まずは『B-Side』の概要から教えてください。

徳留:『B-side』は、アーティストやクリエイター、そして彼らを支えるスタッフの心と身体をケアするためのプロジェクトです。大きく分けて4つの柱があります。

■『B-side』の4つの取り組み

①定期チェックアップ(年1回)
②オンライン医療相談(通年)
③外部講師、有識者を招いたワークショップの開催(年複数回)
④専門カウンセラーによる個別サポート(通年)

「定期チェックアップ」は、ソニーミュージックグループと専属マネジメント、及びエージェント契約をしているアーティスト、クリエイターに対して、健康診断を無料で受診できるようにしています。その際、希望者に対してはメンタル面のチェックアップも行なっていて、受診はどちらも任意です。

「オンライン医療相談」では、24時間365日、健康上の不安について匿名で医師に相談できるオンラインツールへのアクセスを提供します。心身の不調について、医師と直接でチャットやりとりができます。

また、ソニーミュージックグループの全スタッフを対象に、メンタルケアに関するレクチャーなどを行なう「ワークショップ」では、メンタルサポートのプロやさまざまな経験をされてきた有識者の方々にお話を聞くことで、メンタルケアに関する知見を個人でも深めてもらい、アーティストやクリエイターをサポートするときの一助にしてもらったり、自分自身の心と身体のケアにも役立ててもらえたらと考えています。

そして「専門カウンセラーによる個別サポート」では、同じくソニーミュージックグループと専属マネジメント、及びエージェント契約をしているアーティスト、クリエイター、そして彼らと直接仕事をするスタッフが、臨床心理士、公認心理士資格を持つ専門カウンセラーによるカウンセリングを受けることができます。以上の4つが、現在の『B-side』の取り組みの柱です。

──表に立つ側の方たちと、それを近くで支えるスタッフのために立ち上げられたサポートプロジェクトということですね。

徳留:はい。ソニーミュージックグループで働く全従業員と、その家族を対象にした相談窓口を会社が用意するなど、組織全体として意識が変わってきたタイミングでもありましたが、アーティストやクリエイターに対しては、マネージャーを中心としたサポートスタッフが個別に対応していて、組織としてのサポート体制が今まではありませんでした。今の時代、そういったサポートが全くないのはおかしいのでは? と思い『B-side』を始動させました。

『B-side』が発足した経緯

──石井さんは、コンサルタントとして『B-side』に携わっていただいていますが、関わることになった経緯を教えてください。

石井:私はレコード会社に入社し、30年近く洋楽、邦楽の制作に携わってきました。その会社でのキャリアの後半に、私自身もメンタルの不調から休職したことがあります。その経験を踏まえ、人事部に異動し社員のメンタルヘルス対策をはじめ、働きやすい職場環境を作る取り組みを担当していました。2016年に独立してからは、エンタメ業界全般の企業に向けて、コンサルタントとしてメンタルヘルスやコミュニケーションに関する企業研修、組織改善に向けたプログラムの構築などに携わるようになりました。

そんななか、2020年に共通の知り合いから紹介を受けて徳留さんと出会い、そのとき『B-side』発足に関するご相談をいただきました。個人的には、こうしたプロジェクトがボトムアップで立ち上がったことに驚きを感じました。主務をこなしながらメンタルヘルスについて学び、プロジェクトを発足させたわけですから、大変な熱意だと思いますし、徳留さんはじめ運営に関わる皆さんからは、私自身とても大きな刺激をいただいています。

──改めて徳留さんたちが『B-side』を始めることになった経緯、その背景について教えてください。

徳留:私は、ソニーミュージックグループのマネジメント会社であるソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)で、長年、マネージャーの仕事をしてきました。マネージャーは、アーティストの一番近くにいてサポートをする存在です。だから、アーティストにまつわることはすべて向き合って取り組んできました。

しかし、昨今ではSNSが普及して、アーティストとファンの方々との距離感も大きく変わってきています。さらに、ひと昔前のように、気合や根性ですべてを乗り切るような時代でもありません。そして、専門家ではないマネージャーが、アーティストやクリエイターの心や身体のケアをすべて行なうのは、無理があるのではないかと感じるようになりました。

石井:会社員の働き方も、多様化してきたと感じています。特にエンタメ業界には、これまで“楽しいことを生み出す仕事だし、好きで働いているのだから、たとえ昼夜が逆転しても労働時間が長くても耐えられるはず”という考え方が根付いていました。実際、私もそうでした。

しかも日本人には、弱音を吐いてはいけない、他人のことに強く踏み込んではいけないという遠慮、そんな文化が根強くありますよね。だから辛いなと思ってもなかなか言い出せなくて、我慢してひとりで抱え込んでしまう。でも、もしそれで心や身体を壊してしまったら、楽しかったはずの仕事がそうでなくなってしまうし、自分だけでなく周りの人たちにも辛い思いをさせてしまうかもしれない。 メンタルの不調はどんな人でもなり得るものです。悩んでいる方には、“誰かに話すだけでも楽になる”ということを知っていただきたいし、周りの方にはその方に声をかけて、話を聞いてあげていただきたいです。

お互いの価値観を尊重し合える環境作りが大事

──確かに、以前はハードワークをしたことを、武勇伝のように語る風潮もありました。世代間による価値観の違いについては、どのようにお考えですか?

石井:育った環境、受けてきた教育も違いますから、世代によって価値観が違うのは当たり前なんですよね。だからこそ年齢が上の世代も下の世代も、その違いを受け入れて、尊重し合うことが大事だと思います。どちらかいっぽうに無理に合わせようとするとハラスメントにも繋がりますし、相手の価値観を押し付けられてしまうと“自分を認めてもらえない、否定された”と感じてしまかもしれません。

また、日本の景気が良かったころは、やった分だけお給料があがったり、目に見える成果も出やすかったので、無理をしてでも仕事をする人がたくさんいました。でも今は、いくらやっても結果に結び付きにくい社会になっています。だから、しゃにむに仕事をすることだけが正解ではないということをみんなで話し合えれば良いのですが、年配の方は「少しでもきつい言い方をするとパワハラになってしまうのではないか」と考え、若手の方は「年配社員のお説教や武勇伝はもう聞きたくない」と思ってしまう。そうやってお互いが敬遠し合うと、閉塞的な職場環境になっていってしまうのではないでしょうか。

ここ数年、エンタメ業界でも「若手がすぐに辞めてしまい困っている」というご相談が増えました。そのときは、まず価値観の多様化を意識していただき、お互いの価値観を尊重し合える環境作りのお話からさせていただくことが多いですね。“言わなくてもわかる、わかってほしい、は危険な思い込み”ということをあちこちでお伝えしています。

時代が移ろうなかで変わること、変わらないこと

──徳留さんは、社会人の先輩、会社の上長として、今の若手社員の働き方、アーティストへの接し方をどのように見ていますか?

徳留:マネージャー職を志望する人は、相手とまっすぐに向き合おうとする性格の人が多い気がしていて、みんな本当にアーティストやクリエイターと向き合いながら、一緒にヒットを生み出そうと頑張っていると思います。ただ、マネージャーという職業は、100人アーティストがいたら100通りの仕事のやり方があって、それは自分で探りながら見付けていくしかないと思います。

相手は生身の人間ですから、“こうすれば正解”というものがない。あるアーティストではうまくいったことが、別のアーティストではうまくいかないなんてこともしょっちゅうあります。

そして、その状況では、経験値がないと対処できないことも当然出てきます。そういうときに、上長や先輩が「こういうときはこういうふうに伝えたほうが良いよ」「そこはちゃんと話したほうが良いよ」とアドバイスができる雰囲気作りと、何か壁にぶつかったときに、チームが一枚岩になってアーティストをサポートできる体制を作れたらベストだなと思います。

石井:一般的にマネージャー職の方々は、待機時間も含めると長時間労働になりがちという特徴もあります。それが積み重なってしまうと、スタッフの方たちも心身に支障が出ることがあるのではないかと思います。そういうこともチームとして解決できると良いですよね。

──アーティスト側の意識や対応というのにも、変化はあるのでしょうか。

徳留:変わってきていると思います。昔は多少社会のルールから離れることがあってもアーティストだから、という許容範囲が今より広かったのではないかと思います。

今はそれこそSNSですぐに広まってしまいますから、アーティスト自身も、いろいろ気遣いをしなければいけないことが増えていると思います。

──それでは、アーティストやクリエイターサイドの悩みや抱える問題に変化はあるのでしょうか。

徳留:根源的な部分は大きく変わらないと思います。ただ、SNSの時代になって個人でも発信力が持てるようになると、今までは届かなかったような意見もアーティストの目に触れるようになりましたし、そこは昔と大きく違うところですね。

また、そうした意見を見ること自体を止めることはできないので、良いこと、悪いこと、どんな意見が書かれていても、それがすべての人の声ではないということや、俯瞰で見て、今、どういう状況なのかをアーティストに正確に伝え、サポートしていくことが大事なのではないかと思います。

文・取材:野本由起
撮影:冨田望

後編へつづく

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