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2024年9月に宮崎県・ひなた宮崎県総合運動公園・ひなたサンマリンスタジアムで開催された『ひなたフェス2024』。日向坂46と宮崎県の絆から始まった本フェスは、ライブイベントという枠を超えてメンバーとスタッフ、そしてファンである“おひさま”がともにSDGsに取り組む場となった。
後編では、『ひなたフェス2024』の企画、運営に携わったスタッフ3名が、イベント当日を振り返りながらSDGsの在り方を考える。
目次

茂木 徹
Mogi Toru
ソニー・ミュージックレーベルズ/Seed & Flower合同会社

森 槙一郎
Mori Shinichiro
ソニー・ミュージックレーベルズ/Seed & Flower合同会社

矢澤ゆり
Yazawa Yuri
ソニー・ミュージックソリューションズ
記事の前編はこちら:日向坂46とおひさまが『ひなたフェス』で一緒に考えた“楽しみながら”始めるサステナビリティ①
──『ひなたフェス』開催にあたって、日向坂46のメンバー、スタッフともにSDGs講習会に参加したと聞きました。メンバーはどのような反応でしたか?
矢澤:はい。メンバーとスタッフにそれぞれ、世の中を取り巻く状況や日常でもできるSDGs、また実際に『ひなたフェス』で行なう取り組みについて、質疑応答の時間も交えながら講習会を実施しました。
その際、あるメンバーが「今日古着を着ているんですが、これもSDGsと考えていいですか?」と話しかけてくれたんです。SDGsというと堅苦しく考えがちですが、そうじゃない。生活のなかで楽しみながら取り組めることはたくさんあるし、そこから考えるきっかけが生まれることこそが大切なんだと、メンバーから気づかされました。
茂木:この“楽しむ”というスタンスは、『ひなたフェス』とSDGsを自然に馴染ませるためにとても大切なものです。当然ですが、『ひなたフェス』は楽しんでもらうために企画したイベントなので、そこにSDGsを押しつけるようなかたちで入れてしまうと、お客さんが快適に楽しめなくなってしまうのではないかというのが、私たちがもっとも懸念したことでした。
森:“フェスを楽しんでいたら、結果的にSDGsにコミットしていた”といったさじ加減は、フェスを組み立てるうえで、気を配ったところでしたね。ただその心配は杞憂だったというか、私たちの想像以上におひさまの皆さんのモラルが高くて。自販機の横であふれているゴミ箱を、自主的に掃除しているおひさまもいたほどでした。
──ひなたフェスの翌日には、全国でクリーン活動を行なう「SNOOPY Loves NATURE “Team up!”」とコラボしたゴミ拾いイベントも行なわれました。
森:「SNOOPY Loves NATURE “Team up!”」もスヌーピーをアイコンにして、楽しみながら街をきれいにすることをテーマに掲げているイベントで、ピーナッツのファン、おひさまを合わせて抽選で300人の方が参加してくれました。
会場のひなた宮崎県総合運動公園は、プロ野球をはじめさまざまなスポーツイベントが行なわれていますが、最寄駅は1時間に1本くらいしか電車が来ない小さな無人駅。今回のイベントのように大勢の人が溜まると、どうしてもゴミ問題が発生するのが課題となっているという、地元の声もお伺いしたことで、会場内だけでなく会場から駅までの道の清掃も取り入れることができました。
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矢澤:当初は当選した方だけで行なう予定だったのですが、日向坂46のメンバーたちが「私たちもやりたいです」と声を上げてくれて。メンバーが参加することは事前に告知していなかったので、おひさまの皆さんもとても驚いたと思います。
ただ混乱が起きることはいっさいなく、おひさまとメンバーがごく自然に混ざり合ってゴミ拾いをしている光景は、通常のアイドルが行うイベントではなかなか見られないものだなと思いました。
茂木:また、うれしい誤算だったのは『ひなたフェス』の翌日は、ほとんどゴミが落ちていなかったことです。実際、開催前からSNSで“みんなで会場をきれいにして帰ろう”とおひさま同士が呼びかけ合う投稿も見られました。
“ゴミ拾いイベントがあるんだからそっちに任せればいい”という発想ではなく、一人ひとりが自分ごととして『ひなたフェス』に参加してくれたんだなと、あの最寄駅までのきれいな道路を見て実感しましたね。
──来場者が受動的にフェスを楽しむのではなく、“より良いフェスにしよう”という当事者意識を持って参加していた。そうした意識はどのように醸成できたのでしょうか。
森:どんなライブも、イベントも運営やアーティストの尽力だけでは成立し得ないものですが、特に『ひなたフェス』は初めての挑戦でしたし、宮崎県はもちろん来場者も含めて関わる人すべての協力なしには実現できないものでした。
なかでも、おひさまとの“目的意識の共有”という意味で大きかったのは、特設サイトに「ひなたフェス対策本部」というページを設けたことだったと思います。
茂木:『ひなたフェス』は私たちのみならず会場となったひなた宮崎県総合運動公園にとっても初めて行なわれた音楽イベントで、2日間にわたって開催するうえでは交通インフラや宿泊キャパシティ、熱中症リスク、携帯端末の電波の確保など、さまざまなハードルが立ちはだかっていました。
そうした懸念を運営だけで抱えるのではなく、すべて開示したうえで参加者に意見を聞く。そして課題をクリアするために地元各所に協力をいただくというプロセスを歩みながら、『ひなたフェス』は実現に向かっていったんです。
森:そうしたプロセスを通して、おひさまの間にも“より良いフェスにしよう”という意識が広がっていったのだと思います。個人的に「『ひなたフェス』は本当に素敵な空間になったな」と感じたのが、宮崎学園高校の吹奏楽部の皆さんによる演奏と、ともにメンバーが園内を巡った「ひなたフェススペシャルパレード」でした。
将棋倒しなどのトラブルが起きないよう警備体制も万全を期していたのですが、皆さん本当にマナー良く観てくださって。しかもメンバーが退場したあとに残った吹奏楽部の皆さんに鳴り止まない拍手が起きたんですよ。
茂木:あれは本当に感動的な光景でしたね。また、地元の教育機関との取り組みとしては、宮崎大学農学部のサステナブルな研究活動で生まれたサクラマス漬丼やミルクプリンなどの飲食販売を実施しました。
さらにフェス開催前には、NHK宮崎と一緒にメンバーが、サクラマス漬丼やミルクプリンといったサステナブルな研究活動に関するロケを行なったんです。その内容がフェス前に放送されたのですが、それによって“自分たちが今食べてるフードはこういった過程で作られたんだ”と、おひさまにも事前に、取り組みの背景や研究活動を知っていただくことができたと思います。
また、宮崎大学にはさまざまなかたちで参加していただき、開催後には地域資源創成学部の学生さんと運営スタッフによる、フェスの振り返りと、未来の宮崎でのイベントを考えるディスカッションを実施しました。
学生からは、「『ひなたフェス』を通して私たちも知らない、新たな宮崎の魅力を発見することができました」と言っていただけたことが印象的でした。学生時代の経験は一生モノですし、宮崎大学の学生さんたちにとって『ひなたフェス』が何かしら人生のインパクトになってくれたらうれしいですね。
①ひなたフェスの体験を日常へ
■サステナブルな取り組みをしている研究室の飲食販売
宮崎大学・農学部における、SDGsに関連する教育、研究活動により生まれた商品を販売。研究に関するパネルを展示し、宮崎大学のSDGsに対する取り組みをフェス参加者にも発信した。
■宮崎大学Milk
「宮崎大学ミルク」「宮崎大学ミルクプリン」を販売。大学附属施設としては西日本最大級の住吉牧場で飼育され、自給自足による牧草での給餌や、徹底した育成管理による飼育でGAP認証を受けた牧場で育てられた乳牛を使用。
■サクラマスの漬け丼
宮崎大学・農学部 海洋生物環境学科の研究により、環境に配慮して養殖された「サクラマスの漬け丼」を販売。冬季の低水温による成長停滞が大きな問題となっていたヤマメ養殖において、内水面養殖と海面養殖を組み合わせた“循環型養殖技術”を確立。その研究から誕生したサクラマスを使用した。
②より良い地球へ繋がるフェスに
■日向坂46×宮崎トヨタ×宮崎大学 宮崎大学で生成した太陽エネルギーの活用
宮崎大学のソーラーパネルで生成された電力を、宮崎トヨタ提供の電気自動車によって運搬、給電し、フェス会場内の来場者向けモバイル充電スポットなど一部ブースで活用。
③未来をつくる応援
■「SNOOPY Loves NATURE “Team up!”in ひなたフェス」クリーンアップイベント
──未来を築く人たちとともに“より良い方向に進んでいく”ための取り組みができたのは、「ひなたフェス×SDGs」において大きな意義があったのではないかと思います。最後に、『ひなたフェス』を終えた今、エンタテインメントがSDGsにおいて果たせる役割をどのように考えていますか?
茂木:私たちもまだまだ学びの途中ですが、エンタテインメントが何のために存在するのかと言えば、それは人を楽しませるため。どうしても難しいイメージがついてしまうSDGsに“気づいたら自分も取り組んでいた”という場やきっかけを提供して、その体験で得た気づきが、いつしか皆さんの日常にも浸透していったという流れを作ることができたら理想的だなと思いますね。
森:例えばペットボトルを大量に消費する課題ですが、『ひなたフェス』でも途中までなんとかできないか検討は重ねたんです。ただ夏場に大勢が関わるイベントにおいてはなかなか難しく、クリアできなかったこともたくさんありました。
それでも誰かのハッピーにつながると信じて“できることからやる”。その一歩一歩の積み重ねを世の中に発信、拡散していくのがエンタテインメントが果たすべきSDGsの役割なのではないかと思います。
矢澤:私が今回、印象的だったことのひとつが、地元の企業や教育機関、自治体、おひさま、日向坂46のメンバーも、『ひなたフェス』に関わった方たちが“楽しんで”SDGsに取り組んでいたことでした。
人の心を動かすエンタテインメントには、SDGsという一見硬そうな文脈もワクワクする体験に変えてくれる力がある。『ひなたフェス』はいちアーティストのイベントを超えて、ソニーミュージックグループにとっても財産になる取り組みになったのではないかと感じています。
記事の前編はこちら:日向坂46とおひさまが『ひなたフェス』で一緒に考えた“楽しみながら”始めるサステナビリティ①
文・取材:児玉澄子
撮影:冨田 望
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