yamaのアジア戦略について聞きに行ったら、アーティストが自分の殻を打ち破る瞬間の目撃談も聞けた①
2025.08.08


Sony Music Entertainment Korea(以下、SMEK)のジェームズ・イムが、昨年デビューした6人組ボーイズグループ・KJRGL(カジャーグル)のデビューまでの道のりを振り返りながら、日韓アイドルグループの実情を考察。
後編では、韓国の音楽業界のスタンダートを解説しつつ、KJRGLのデビューステージも振り返る。
目次

ジェームズ・イム
James Im
Sony Music Entertainment Korea
記事の前編はこちら:K-POPの視点で見たアイドルグループのリアル——日韓合同プロジェクト「KJRGL」担当者が考察①
──今の韓国の音楽シーンというのはどのような状況なのでしょうか。どんなアーティストが注目されていますか。
ネット上で検索数が多いグループとしては、RIIZE、SEVENTEEN、IVE、aespa、NCTなどがいつも上位にいますね。各グループのファンダムのパワーを考えてみると、世界的になった分だけ大きくはなっていますけど、人気が出るグループの傾向自体は大きく変わっていない気がします。
また、これらのグループに共通するのは、アーティストの世界観やコンセプトをしっかりとファンに伝えるために、ミュージックビデオやプロモーションビデオにたくさんの資本が投入されているということ。あとは当然ですが、韓国でもSNSにはすごく力を入れているので、TikTokやインスタに上げるための振り付けがセットで考えられているところもスタンダードになっています。
ファンによるUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)は、ファンダムの強さの目安であり、SNS上で大きなプロモーションになることも当然のことと認識されているので、今となってはオーソドックスではありますが、YouTubeやTikTok、インスタなどのSNSに無料のコンテンツを定期的かつ地道にアップすることが、大事なことなのではないかと感じています。
──現時点でKJRGLは韓国でどのように捉えられているのでしょうか。
ニュースや映像は見られますが、韓国ではまだデビューしていないので、音楽番組にも出ていませんし、認知度はありません。ただ、SMEKの仲間たちに感想を聞いてみたところ、K-POPにインスパイアされているし、歌詞に韓国語が混ざっているのもユニークで、期待できるグループだと思うというフィードバックは受けています。
──彼らのデビューライブを観て、イムさんはどんな感想を持ちましたか?
このプロジェクトを2年間見てきましたが、これまではワンマンライブを開催するなんていうことは、彼らにとって夢の世界の話でした。でも、それがついにこの6人で実現しました。
そして、この目でステージ上のKJRGLを観たときに、彼らは想像以上に頑張ってくれていましたし、自分としては初めてのワンマンのステージとしては、いいパフォーマンスだと思ったので、感無量な気持ちがありましたね。
いっぽうで、あれで満足してはいけないし、ここが本当のスタートラインなんだとも感じました。実際、ステージ上ではアーティストとして未熟な部分や経験不足だと感じるところもありました。
そういった部分を周りが指摘しながら、彼らの成長を見守りつつ、もっとKJRGLが世間に知れ渡って、日本や韓国だけでなく、世界で活躍できるアーティストになってほしいと思いますし、そのためのサポートをしっかりやっていきたいと考えています。
──具体的には、どういったところに課題を感じましたか。
KJRGLは、2024年3月に現在の6人で活動をスタートして、半年の準備期間を経て9月にデジタルシングル「overture~the blue wave」をリリースしました。そして、12月23日のデビューライブを迎えたわけですが、6人のグループになってからは、かなり短い準備期間でデビューしていて、そのなかでパフォーマンスをここまで引き上げることができたというのはポジティブに考えています。
私は、彼らが共同生活しているのも間近で見ていて、その日常のなかで、彼らがどうしたらお客さんに喜んでもらえるか、どんなパフォーマンスであればファンになってもらえるかを一生懸命、全員で考えながらあの日を迎えたことを知っています。その点についても、いいことだと感じました。
ただ、ステージ上での時間の計算ができていなかったり、自分がどんなことを言えばお客さんが熱狂的なファンになってくれるのかがわかっていなかったり、まだまだこれからの部分がたくさんありました。実際、2時間で終了するはずのステージがかなり押してしまって、関係者の方にもご迷惑をおかけしてしまいました。
──本編が終わって、メンバーからファンに向けたメッセージが映像で流れたあとの、最後のあいさつが30分を超えるMCになっていましたね(笑)。
デビューライブは、メンバーたちにとって、初めてたくさんの方々が集まったところでのパフォーマンスだったので、そんな自分たちにちょっと酔ってしまったのだと思います。ステージ上でエモーショナルであることは、決して悪いことではないですが、お客さんを楽しませることは絶対に忘れてはいけない。そこにつきますね。
そのうえで、私はあのステージを観て彼らの成長の可能性も強く感じました。KJRGLのホームページをチェックしてもらえればわかりますが、世界観やコンセプトはかなり作り込まれているので、彼らがパフォーマンスを高めていきつつ、我々スタッフが楽曲やミュージックビデオでハイクオリティなものを提供していくことで、コアファンをたくさん生み出していきたいと改めて思いました。
──メンバーはステージ上で号泣していましたが、あれはどんな涙だったんでしょうか。
全員がオーディションでの落選やアーティスト活動上の挫折を経験して、やっと辿り着いたステージだったんです。なかでもAKIRAとKOUKIは一番長く準備をしてきました。
さらにあの日は、関係者席にそれぞれのメンバーの家族や友人も来場して見守っていたので、それを見ながら、今までを振り返りあの涙につながったのだと思います。また、フロアの最前列にはメンバーがオーディション番組に出演していたころから応援してくれているファンの方もたくさんいたようで、涙を浮かべたファンの顔を見ていたら、自分も感情が昂ってしまったと話すメンバーもいました。
──今後は韓国をはじめ、世界デビューを目指していく形なんでしょうか。
まずは日本でしっかりとした実績を残すことに集中ですね。海外展開は、その先に続く道だと考えています。でも、いつか彼らがその道を歩むことを心から願っていますし、そのために全力でサポートしていきたいです。
──イムさんは今回のプロジェクトで日本の音楽業界に触れて、どんなことを感じましたか。
韓国の音楽業界はグローバル化で急成長した分野なので、制作の環境的にまだ成熟しきれていないところがあると思います。例えば、レコーディングや撮影の現場で、AがBに変わったり、1時間後にはやっぱりAに戻っていたり。よく言えば、臨機応変とも捉えられますが、正直、行き当たりばったりという部分も多くあります。
いっぽうで、日本の音楽産業は世界でも有数であり、歴史が長く、経験も蓄積されているので、いろいろな面で安定的なシステムが構築されているなと感じています。韓国も見習うべきところですね。
──最後に、今回はKJRGLのプロジェクトでSMLとSMEKのコラボが実現しましたが、今後はどのような連携を目指しますか。
今回のプロジェクトをきっかけに、韓国と日本のソニーミュージックが協力することで何ができるのかがわかりました。せっかく開いたこのチャンネルを、このプロジェクト限定にするのはもったいないので、今後、さらにコミュニケーションを密にして、KJRGL以外のアーティストでも協力体制を敷いていきたいですね。
また、日本のソニーミュージックグループは、音楽だけにとどまらず、アニメやゲーム、キャラクターなど、さまざまなIPを展開し、さらにはそれをワンストップソリューションで拡張する機能もグループ内に持っていることに改めて驚きました。
自分もゲームやアニメといった日本のカルチャーが大好きで、いつかは作品の主題歌やサントラ盤の制作に参加してみたいという夢があるので、今回のご縁を大切にしていきたいです。
日韓米6人組のボーイズグループKJRGL(カジャーグル)が、昨年12月23日に東京・渋谷Spotify O-WESTにてデビューライブ『KJRGL DEBUT LIVE ~KJRGlad to sea you!! ~』を開催した。
プレデビュー曲「prologue~the deepest blue」のアコースティックバージョンが流れるなかでメンバーのシルエットが浮かび上がった紗幕が落ちると、初のワンマンライブに集結したVOISEA(読み:ヴォイシー、KJRGLのファンネーム)から歓声が上る。
続く、デビュー曲「overture~the blue wave」ではVOISEAによる完璧なコールも湧き上がると、DIENは「今日はみなさんの心を奪いにきました!」と呼びかけ、会場を盛り上げた。
さらに中盤ではソロコーナーも展開。アメリカ生まれのISAACがアコースティッギターの伴奏のみでインドネシアのシンガーソングライターであるステファニー・ポエトリ「I Love You 3000」を語るように優しく歌唱すると、SAERONはAyumu Imazuの「SUPER STAR」のカバーを、RIKUとAKIRAをダンサーに従えてパフォーマンス。
DIENが韓国の女性アイドル、イェナの「SMILEY」をキュートにチャーミングに歌い踊るなかで、RIKUがラップで参加。さらに、桑田佳祐「白い恋人たち」のカバーでロングトーンを響かせたKOUKI、SAERONのキーボード演奏でサム・スミス「Lay Me Down」を熱唱したAKIRA、ミコラス「Lalalalalalalalalala」で切れ味の鋭いダンスで魅せたRIKUとメンバーの個性をダイレクトに見せつけたあと、韓国人メンバーによるYUI「CHE.R.RY」、日本人メンバーによるNEWS「チャンカパーナ」のカバーと、組み合わせの魅力も存分に発揮。
本編の最後には、メンバーからのクリスマスプレゼントとして、2025年1月29日にデジタルリリースした新曲「Generation_Cloud」を初披露。片足でのスキップや回転速度の速いスピン、移動の多いダンスフォーメーションなど、見どころの多いダンスポップで、ライブパフォーマーとしてのこの先のステップアップを予感させてくれる楽曲となっていた。
アンコールではミラーボールが回るフロアでback number「クリスマスソング」をロマンチックに歌い上げたあと、最後の挨拶ではメンバーそれぞれが家族や友人、ファンへの感謝を伝えるうちに涙を流し、「BTSのライブを見たのがプロを目指すきっかけで、その夢を叶えてくれたのは皆さんです」と語ったRIKUは声を詰まらせながら号泣。
AKIRAはメンバーがいろいろと変わったこの2年間を振り返りながら、「最終的にこの6人でKJRGLになれたのは運命だと思っています」と胸を張った。最後の「overture~the blue wave」のジャパニーズバージョンでは笑顔で手を振りながら歌ったが、RIKUが「もう1回やりませんか?」と呼びかけて、再び同曲をパフォーマンスし、名残惜しそうにファーストステージをあとにした。
記事の前編はこちら:K-POPの視点で見たアイドルグループのリアル——日韓合同プロジェクト「KJRGL」担当者が考察①
取材・文:永堀アツオ
撮影:干川 修(インタビュー)/上飯坂一(ライブ)

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