アニメ『俺だけレベルアップな件』プロデューサーに聞く――アニプレックスとCrunchyrollの協力体制によって生まれたアニメ化の件②
2025.03.29


2025.03.28
韓国で小説作品として発表され、その後、制作された電子コミックのWEBTOON作品を原作とするアニメ『俺だけレベルアップな件』。アニプレックス(以下、ANX)とCrunchyroll(クランチロール)が共同で製作し、アニメスタジオ・A-1 Picturesがアニメーション制作を手がける本作は、現在、世界中を熱狂させるアニメ作品のひとつとして注目を集めている。
2025年1月からSeason 2となる『俺だけレベルアップな件 Season 2 -Arise from the Shadow-』がスタートし、3月29日(土)にSeason 2の最終回を迎える本作の人気の背景や、原作を含めた作品の根源的な魅力について、ANXとCrunchyrollの両社のプロデューサーに聞いた。
目次

古橋宗太
Furuhashi Sota
アニプレックス

髙橋佳那子
Takahashi Kanako
Crunchyroll
記事の後編はこちら:アニメ『俺だけレベルアップな件』プロデューサーに聞く――アニプレックスとCrunchyrollの協力体制によって生まれたアニメ化の件②
――現在、Season 2が放送中のアニメ『俺だけレベルアップな件』(以下、俺レベ)についてプロデューサーを務める古橋さんと髙橋さんに聞いていきます。まずはそれぞれの経歴と『俺レベ』との関わりについて教えてください。
古橋:私は新卒でソニーミュージックグループに入社して、最初に配属されたのは音楽営業の部署でした。ただ、学生のころからアニメが好きで、アニメ作品に携わりたいと思っていたので、異動を希望しANXの宣伝部に配属。その後、企画制作に異動となり現在に至ります。
『俺レベ』との出会いは、私自身がWEBTOONに興味を持ち始めた2019年ごろですね。マンガ作品として純粋に面白いと感じていましたし、これだけ画に力のある作品がアニメになったら映像作品としても素晴らしいものになるだろうと思い、ANX内でアニメ化の企画を立ち上げました。
髙橋:私は新卒で出版社に入社して、マンガと小説の編集に携わっていたのですが、そのときからアニメコンテンツに関わりたいという思いがあり、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントに転職しました。
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントでは、当初、アニソンフェスの企画、運営などを担当していたのですが、Funimation(アニメのビデオオンデマンドサービス)がソニーグループに入ったタイミングで異動。その後、FunimationとCrunchyrollが統合したことで、Crunchyrollの日本オフィスに配属となり、現在に至ります。
Crunchyrollは、世界各国、各地域においてアニメに特化したビデオオンデマンドサービスのビジネスを軸にしながら、さまざまなエンタテインメントビジネスを展開していて、そのなかには良質な原作から映像作品を生み出す企画、製作のビジネスもあります。
『俺レベ』は小説からWEBTOONへの展開で、さらに人気が高まっていたころからCrunchyrollでも注目していた作品で、我々のほうでもアニメ化に向けて動こうとしていたんです。そんなときに、ANXでも古橋さんたちがアニメ化の企画を立ち上げようとしていると聞いて。それであれば、ソニーグループのシナジーをいかして共同製作として進めましょう、ということになりました。
私自身は共同製作におけるCrunchyrollサイドのプロデューサーという立ち位置で、プロジェクトに参加。Crunchyrollは北米を中心に世界15カ所にオフィスを構え、それぞれの国や地域を担当するチームがいるので、私は彼らとプロジェクトをつなぐハブの役割をしています。
――Crunchyrollでも『俺レベ』の原作の魅力に早くから注目していたということですね。
髙橋:はい。良質なアニメ作品を、最適なパッケージで世界の視聴者にお届けするというというのがCrunchyrollのサービスなので、アニメ化された作品だけでなく、マンガや小説といった原作の段階からリサーチを行なっています。そのなかでも特にレビューの評価が高かったのが『俺レベ』で、非常にポテンシャルの高いIPだと考えられていました。
古橋:原作が、海外でも人気が高いということはCrunchyroll(Funimation)からレポートを受けていたので、アニメ化についても海外で大々的に展開するというのを当初から予定していました。
ただ、アニメを制作するうえで、作画や演出を海外向けにするということは想定していませんでした。海外でも日本のアニメのスタイルが既に受け入れられているので、A-1 Picturesとしては『俺レベ』に関しても日本のアニメのスタイルで、しっかりと作り込もうと考えていたと思います。
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――アニメ『俺レベ』の原作はWEBTOONですが、アニメ化にあたってはどのようにアプローチしようと考えていましたか。
古橋:WEBTOONで作画を担当されたDUBUさんの画が素晴らしく惹かれるものがあり、アクションシーンなども非常に迫力のあるものになっています。なので、高いハードルは感じていたものの、A-1 Picturesとは企画の初期段階から「WEBTOON版をしっかり踏襲していきましょう」という話をしていました。
シナリオについても同様で、『俺レベ』という作品の魅力のひとつとして、最低ランクのハンターがレベルアップの力を得て、それまでは手も足も出なかった敵をなぎ倒していくというカタルシスにあります。このスピード感のある物語に、多くの人が爽快感を覚えるところなので、その特徴を可能な限り忠実にアニメに落とし込んでいくことを目指しました。
髙橋:原作があるアニメ作品では、原作へのリスペクトを非常に大事にするファンの方が多く、その感覚は全世界共通だと思います。そのうえで、現在の『俺レベ』の世界的な反響を見ると、間違いなく制作現場の皆さんの原作に対するリスペクトや思いがしっかり伝わっているのだと感じます。
――逆に、アニメ化するにあたって難しかったことはありましたか?
古橋:主人公視点でのストーリー展開が多いということですね。原作は、各話をコンパクトにまとめることでテンポ良く読み進められるWEBTOONというメディア特性をいかした構成になっています。
しかし、それをそのままアニメ化すると所々で単調に見えてしまう懸念がありました。なので、アニメ化するにあたっては、ほかのキャラクターの心理描写もしっかりと見せながら、ストーリーに絡めていくという構成にしています。
――世界に向けて作品を展開するためには、各国、各地域へのローカライズというのも重要な作業だったのではないでしょうか。
古橋:原作自体が世界展開されているので、原作と同じかたちでアニメも展開できるように考えていました。一番大きなローカライズの作業でいうと、キャラクターの名前ですね。
WEBTOON版の『俺レベ』は、日本での展開にあたり、主人公の名前が“水篠旬”に変更されています。いっぽうで海外では韓国名の“ソン・ジヌ”で展開されています。そこで原作の権利元であるD&Cメディアの皆さんやCrunchyrollともご相談して、アフレコ収録のときに、日本名のバージョンと海外名のバージョンをそれぞれ収録することにしました。
同じ話数、同じシーン、同じセリフを2回ずつ収録するというのは、あまり例がないと思いますが、企画の段階から世界展開を目指した作品なのでローカライズについても手間を惜しまずにやろうということで取り組んでいます。
また、名前と同様に、劇中の地名なども日本語版と海外版を用意していますし、美術で描かれている文字や、作中で表示されるステータス画面などの言語については英語表記で統一することにしました。
――日本語によるアフレコが、日本版と海外版で分かれているということは、海外でも日本のキャストによる芝居が求められているということですね。
髙橋:はい。海外のコアなアニメファンは日本で制作されたアニメ作品に関して、日本の声優さんによるオリジナル音声が入っていないと、残念に思うんですね。日本のアニメを海外の視聴者に届けるという使命を負ったCrunchyrollとしては、海外名バージョンの日本語音声を海外に届けたいと思っていたんです。なので海外で展開するときは、そこに字幕をつけて、日本とほぼ同時期に配信を行なっています。
古橋:ローカライズするための時間を確保しなくてはいけないので、その分、制作現場にはかなりの負担をかけてしまっています。監督をはじめとした主要クリエイターの方々、そしてA-1 Picturesのスタッフの皆さんがアニメーションのクオリティを追求しつつ、ローカライズ対応の時間もなんとか捻出してくださっているので、海外のファンの皆さんから高評価をいただけている現状です。
髙橋:本当にありがたいですね。ちなみに、Crunchyrollではオリジナル音声の字幕版だけでなく、吹替版も制作して配信しています。ただし、こちらは放送からタイムラグが発生します。
――どれくらいの言語の吹き替えを制作しているのでしょうか?
髙橋:作品によって吹替版を作る数は違うのですが、『俺レベ』に関しては最大数を作っています。同じスペイン語でもラテンアメリカ向けとスペイン向けで分かれていることなどを含めると、全部で11言語を制作していますね。
――最初から海外を視野に入れて取り組んできた『俺レベ』のアニメ化プロジェクトですが、アニメ化に関する第1報も海外からスタートしたんですよね。
古橋:はい。『俺レベ』のアニメ化を公にしたのは2022年の『Anime Expo』です。『Anime Expo』は、ANX、Crunchyrollともに毎年出展している北米最大級のアニメコンベンションで、2022年のCrunchyrollのパネルが『俺レベ』アニメ化プロジェクトの初お披露目の場となりました。
コロナ禍を経て、アニメの世界配信が定着した現在は、海外での情報解禁という事例も増えてきましたが、当時はまだ珍しい展開で。ただ、海外でも原作の人気がどんどん高まっていて、アニメ化を熱望する声が多かったので、現地での反響はすごかったみたいですね。
髙橋:会場から地鳴りのような歓声がわきましたね。“この発表を待っていた!”というリアクションが見られて、私たちも改めて『俺レベ』のアニメ化は間違っていなかったと勇気をもらいました。
――Season 1の放送がスタートする直前には、ワールドプレミアも実施しましたね。
古橋:Crunchyrollの皆さんとANXの海外事業部にも協力してもらいながら、世界各国、各地域で先行上映会を行ないました。こちらでも大きな反響があり、ファンの方たちに喜んでもらえる作品になっているという手応えを感じることができました。
髙橋:先行上映会は、何かのコンベンション内で行なうことが多いんですが、『俺レベ』に関しては、このために会場を借りて単独で実施しました。原作の人気はありつつも新規の作品で、これだけ大がかりなプロモーションを行なうことは珍しく、これもアニメ化への期待値が高くないとできないことだと実感しましたね。
後編では、海外展開を踏まえたプロモーション施策やオンエア後の反響について語る。
文・取材:志田英邦
撮影:冨田 望
©Solo Leveling Animation Partners

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