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芸人の笑像

スピーディーハンター:武術+お笑いで魅せるハイブリッド芸人コンビ②

2025.04.11

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アクロバティックな動きを取り入れたネタで話題のスピーディーハンターをフィーチャー。

後編では、先輩からの助言を元にしたネタの誕生秘話や、今後の目標などを語る。

  • 『スピーディーハンター』プロフィール画像

    スピーディーハンター

    Speedy Hunter

    (写真左)タイガーDATE(タイガーデイト)/1996年12月16日生まれ。東京都出身。血液型A型。身長163cm、体重60㎏。資格:インド王族武術家(日本宗家)七段・赤帯、総合格闘技プロライセンス。獲得タイトル:TRIBELATEバンタム級チャンピオン、元パンクラスフライ級5位、パンクラスN.B.T2021優勝。

    (写真右)聖王DATE(ジョウオウデイト)/1994年5月6日生まれ。埼玉県出身。身長175㎝、体重63㎏。資格:インド王族武術家(日本宗家)六段・黒帯、総合格闘技プロライセンス。獲得タイトル:TRIBELATEスーパーバンタム級チャンピオン。

記事の前編はこちら:スピーディーハンター:格闘技+お笑いで魅せるハイブリッド芸人コンビ①

SMAの先輩芸人からもらった助言でネタが完成

こちらをじっと見つめるスピーディーハンターのふたり

新しいコンビ名も決まり、再びお笑いへのモチベーションが高まったスピーディーハンターは、初めてお笑いでも「本気で売れたい!」と思うようになった。だがここで、ひとつ大きな問題が発生する。

「僕もタイガーも、それまでのコンビでは普通のコントをやっていたんですけど……僕らどっちも“ネタを書いていないほう”だったんですよ。

格闘技ではそこそこ成績を残せるようになったからこそ、次はお笑いのほうでもちゃんと売れたい。でも売れるためには、いいネタが作れないとダメだし、事務所ライブに出るだけじゃなく外部のライブでも場数を踏んで、ネタを磨いていかなきゃいけないんだと気づいて。で、自分たちがやらなきゃいけないことはわかったけど、そもそもネタはどうするの? と」(聖王DATE)

フェンスに座るタイガーと、手を置く聖王

困ったふたりはとりあえず、自分たちが得意な身体を使ったネタをやってみようと思い立つ。

「最初はほんとに、ひたすらふたりで筋トレしているようなネタを考えて、事務所の先輩に見てもらったんです。そうしたらその先輩が、ちょっと首を傾げて『ふたりとも、なんか格闘技やってるんでしょ? 筋トレじゃなくて3分間スパーリングしてればいいんじゃない? 1回ここで戦ってみてよ』と言われて。それで実際にやってみたんです、総合格闘技的な感じで寸止めギリギリのスパーリングを。そうしたらゲラゲラ笑ってくれて、『面白いよ! そこに何か設定をつければいいんだよ』と。

じゃあ、おじいちゃんと熊が出会って、熊が襲ってくると思ったら、両者とも格闘技がめちゃめちゃできて戦うというのはどうですか? と言ったら、『それやってみなよ!』と。そんなヒントを与えてくれたのが、しゃばぞうさんでした」(聖王DATE)

大先輩・しゃばぞうのアドバイスで手応えを感じたふたりは、すぐにネット通販で熊の着ぐるみを買い、ライブで披露してみると……。

「それまで経験したことのない、“拍手笑い”が起こったんです。格闘技の試合で、相手を蹴って拍手されたことなんて一度もなかったから衝撃でした(笑)。僕らにとってスパーリングなんて生活の一部だから当たり前だと思ってたけど、みんなから『そんなことをネタにしている芸人はいないよ』と言われて、これが俺らの色なんだ! と、やるべきことが見えたんです」(聖王DATE)

■関連記事はこちら
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笑顔で横断歩道を渡るスピーディーハンター

毎日のように一緒にインド王族武術をやってきたからこその信頼感も功を奏した。お互いの手の内もわかっているのでアドリブで技を出してもガードは完璧。繰り出される技の応酬もコンビ名の通り“スピーディー”で飽きさせない。

「あのとき、しゃばぞうさんにネタを見てもらわなかったら、今の僕らにはなってなかったかもしれない。熊とおじいちゃんのネタができたころ、ちょうど『おもしろ荘』のオーディションがあって、そのネタで1次審査は通ったんですけど……さぁ2次審査はどうしよう? と。

こうなったら、全然面識のない先輩方にもネタを見てもらって、何かアドバイスがもらえればと、平井さんに『事務所ライブ終わりにネタ見せやらせてください!』と直談判して、場を設けてもらったんです。

そうしたら、初対面の先輩方もいろいろアドバイスをしてくれまして。その年は『おもしろ荘』のオーディションには受からなかったけど、年末恒例の事務所ライブ“SMAホープ大賞”には出場できました!」(聖王DATE)

面識のない後輩のネタ見せにもつきあってくれるSMA先輩芸人の優しさがありがたかったと語る。

「だから僕らも、先輩たちには遠慮せずぶつかっていこうと決めました。ライブのときに、ちょっと今からネタやるので見てくださいとお願いしたり、事務所のネタ見せの日にも僕らのネタを見てほしいと積極的に言うようにしています。

僕たちのほうから声をかけさせてもらうと、皆さん喜んで見てくれるし、たくさんアドバイスをしてくれる。逆に先輩方から、『じゃあ、俺らのネタも見てよ』と言ってくださることもあって、僕らも遠慮なく感想を言えたり。すごく良好な関係ができてるし、SMAは団結力がある事務所だなって思いますね」(聖王DATE)

スピーディーハンターならではの異色のネタづくり

トレーニングルームで上半身裸になり、叫ぶタイガー

そんな先輩芸人の手助けもあり、アクションを盛り込んだ独特のネタで勝負するスピーディーハンターをTVで見る機会も増えていった。

前出の、彼らの代表作とも言える、おじいちゃんと熊がバトルする“キノコ狩り”のネタは、2023年春に放送された『水曜日のダウンタウン』内の企画“30−1グランプリ”でも話題を呼び、肉体派芸人としての知名度もアップしていった。

逆に周りの芸人やお笑いファンからは、「おじさん芸人の多いSMAに、こんな若手がいたんだ!」という驚きの声も届くようになったという。

「SMAらしくないとは、今も言われてますね(笑)。やっているネタも翔んだり跳ねたりだし、こんな若い人がいたんだねと言われることも多くて。事務所にも最近は若い人が増えてるんですけど、やっぱり外から見たら、いまだにSMAっておじさん芸人の事務所というイメージが強いんだなって僕らのほうが思わされてます(笑)」(タイガーDATE)

トレーニングをするタイガー

芸人としての活動の場も、SMA芸人の持ち小屋、Beach Vで行なわれる事務所ライブ“トライアウトライブ”以外にもどんどん広がっている。

「2年くらい前に東京演芸協会に入ったので、浅草・東洋館の寄席をはじめ、東京演芸協会が主催するお笑いライブだったり、ほかの方のライブにお邪魔することもすごく増えました。

おかげで格闘技の大会のほうはオファーをいただいてもここ3年くらいお断りしちゃってるんですけど、いつでも試合に出られるように武術のトレーニングは今も週3、4回ペースで続けています。むしろトレーニングを真面目にやってないと、ネタに支障が出ちゃいますからね」(聖王DATE)

トレーニングをする後姿の聖王

普段のネタの作り方も、いわゆる“ネタづくり”とはいっぷう変わっている。

「ネタづくりは、トレーニングの合間に道場でやってます。そのときに、『今度ネタでこういう動きをやりたいんだけど』とアクションや技ありきで相談しながら道場で試してみるんです。

それで、ライブ会場とかテレビの収録のときにちょっとセリフや手順だけ打ち合わせて、あとはぶっつけ本番ですね。台本も、あってないようなもので。一応書き留めてはおくけど、“蹴り→避けてタックル”とかしか書いてないから、ほかの人が読んでもまったく意味がわからないでしょうね(笑)」(聖王DATE)

ダンベルを右手で持ち上げる聖王

“武術あるある”を盛り込んだネタで勝負した『おもしろ荘』

スピーディーハンターの名前をさらに世間に知らしめたネタが、昨年末の『ぐるナイ年越しおもしろ荘!今年も誰か売れて頂戴スペシャル』で披露した“ゴキブリが出た日”だ。

今日こそプロポーズをしようと指輪を持ってきた聖王DATE扮する彼氏・ジョーが、タイガーDATE扮する彼女・ユキちゃんの家を訪れるが、そこにゴキブリが出現! アクロバティックな動きでジョーの背中に乗って大騒ぎし、そのままエンゲージリングをはめてもらって大はしゃぎするユキちゃんにジョーが翻弄されるという、彼らならではのアクション満載のコントネタだ。

笑顔でこちらを見つめるタイガー

「あのネタができたきっかけも、総合格闘技、武術あるあるなんですよ。試合中に後ろを取られて、背中に乗られるなんてことはよくあって、試合ではそこから首を締めたりするんだけど、ある日、道場でタイガーが急に僕の服を脱がせてきたんですよね(笑)。

タイガーは小柄なので、人の背中に乗ったまま結構何でもできちゃうんで、相方の上から1度も降りずに服を全部脱がせます! という特技がひとつできまして。最初はTシャツ、短パンでやってたんですが、難易度を上げたくてスーツになり。せっかくならその特技をいかしたネタにしようと、ゴキブリ嫌いな彼女が彼氏の上に乗ったまま、いろんなことをするというコントができたんです」(聖王DATE)

笑顔でウインクをする聖王

最初は、『おもしろ荘』でこのネタを披露する予定はなかったそうだ。

「アクロバットを入れた漫才ネタで勝負するつもりだったんです。一昨年の『おもしろ荘』には漫才ネタで最終選考まで行けたので、出演にこぎ着けるにはそっちの方向だろうと思って、去年1年はライブでもほとんどコントをやらず、漫才ネタを磨いていたんです。

なので、オーディションのときも2本漫才ネタを持っていったら、1本目をやったとき、毎年オーディションでお会いしているディレクターさんに『今年の漫才は微妙だな、去年のほうが良かったよ』と言われまして。

これはもう1本漫才見せても無理だなと思って、急遽“ゴキブリが出た日”の原形をやってみたら、『こっちのほうが面白い! さっきの漫才のアクロバットとゴキブリネタをミックスして、最終審査に持ってきて』と言ってもらえて、番組に出られることになったんです」(聖王DATE)

バージョンアップしていくタイガーの女装

ビルとビルの間に佇むスピーディーハンター

彼らにとって『おもしろ荘』は、結成当時から一番出たかった番組だった。何度もオーディションを受けてようやく出演が決まり、喜びもひとしおだったという。彼らのコントネタには、“ゴキブリが出た日”のように、タイガーDATEが女性役をするネタも多くあるが、より笑いを取るために、こんな工夫もしているという。

「大体はジョーが彼氏役で僕が彼女役。でも昔は、女性役の見せ方にこだわっていなかったからかなりブサイクだったし、そもそも女の人に見えないと言われてて。お客さんからしたら、僕が女の子に見えなさすぎてネタが頭に入ってこない(苦笑)。

前に、コント赤信号の渡辺(正行)リーダーにネタを見てもらったときも、『男前のジョーがタイガーに告白する設定はあり得ない。女装のビジュアルを良くするか、話を変えろ!』と言われました。

そこからですね、カツラを変えてメイクをちゃんとして、ファッションにも気を使って……と、徐々に女装の質をバージョンアップしていって。だから『おもしろ荘』では、随分かわいくなっていたはずです!(笑)」(タイガーDATE)

こちらを見つめるタイガーと、後姿の聖王

『おもしろ荘』放送後には大きな反響があり、そんな声にも励まされたという。

「僕は、九州のおじいちゃん、おばあちゃんに驚かれました。まさか孫が女装してるとは思ってなかったみたいで(笑)」(タイガーDATE)

「僕のほうはインスタのDMをたくさんもらいましたし、SNSのフォロワーも増えました。初めて見た人からは、すごく面白かった、カッコ良かったという感想もいただけて、出られて良かったと思いましたね。逆にSMAの先輩たちは、結成当時から『おもしろ荘』にはきっと出られるだろうとずっと応援してくれていたので、『良かったな』と言ってもらえました」(聖王DATE)

目線を外した聖王と、後姿のタイガー

結成4年目にして、念願の番組出演を果たしたスピーディーハンター。2025年はさらなる飛躍を目指す年になるはずだ。そして彼らには、次なる目標も見えている。

「芸人だけに止まらず、当然インド王族武術もあっての今の僕らなので、いろんな方法でエンタテインメントを極めていきたいと思ってます。せっかく身体を使った、言葉じゃなくても伝わるネタをやっているので、海外進出にはすごく興味があります。『アメリカズ・ゴット・タレント』とか……出場できたらいいですよね。

もうタイガーとは20年近く……なんなら家族よりも一緒にいる兄弟みたいなもの。そんな相方と同じ方向、同じ夢に向かって進んでいけるのも自分たちの強みだという自信があります。そんな僕らを応援していただけるよう、これからも頑張ります!」(聖王DATE)

記事の前編はこちら:スピーディーハンター:格闘技+お笑いで魅せるハイブリッド芸人コンビ①

文・取材:阿部美香
撮影:遠藤勇司

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