スピーディーハンター:武術+お笑いで魅せるハイブリッド芸人コンビ②
2025.04.11


ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)所属の芸人たちにスポットを当て、ロングインタビューにて彼らの“笑いの原点”を聞く連載「芸人の笑像」。
第22回は、アクションやアクロバットを取り入れたネタで注目を集めるお笑いコンビ・スピーディーハンター。今年1月に『おもしろ荘』や『山-1グランプリ』に出演し、その独特なネタで話題となった彼らに、コンビの成り立ちから今後の目標までを聞く。
目次

スピーディーハンター
Speedy Hunter
(写真左)タイガーDATE(タイガーデイト)/1996年12月16日生まれ。東京都出身。血液型A型。身長163cm、体重60㎏。資格:インド王族武術家(日本宗家)七段・赤帯、総合格闘技プロライセンス。獲得タイトル:TRIBELATEバンタム級チャンピオン、元パンクラスフライ級5位、パンクラスN.B.T2021優勝。
(写真右)聖王DATE(ジョウオウデイト)/1994年5月6日生まれ。埼玉県出身。身長175㎝、体重63㎏。資格:インド王族武術家(日本宗家)六段・黒帯、総合格闘技プロライセンス。獲得タイトル:TRIBELATEスーパーバンタム級チャンピオン。
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「ずっと『芸人の笑像』のオファーが来るの待ってたんですよ! 念願叶いました!」と、明るく挨拶をしてくれたのは、観客の度肝を抜くアクロバティックなネタで注目されるお笑いコンビ、スピーディーハンターだ。
2024年大晦日から2025年元旦にかけて放送された『ぐるナイ年越しおもしろ荘!今年も誰か売れて頂戴スペシャル』と、1月に放送された『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の名物企画“月亭方正プレゼンツ 第19回 山-1グランプリ”に連続出演。数々のSMA芸人が出演を果たしてきた若手の登竜門に登場し、新感覚の肉体派お笑いコンビとして話題を集めている。
メンバーは、昨年JRAのWeb CM“馬拳”で、ブルース・リーそっくりのアクションを繰り広げていた28歳のタイガーDATEと、スラっとしたモデルのようないで立ちも魅力の聖王DATE、30歳。
出演する番組で必ず話題に上がるのは、ふたりともパンクラスなどの総合格闘技大会に参戦してきた、現役のプロ格闘家であることだ。そんなふたりの出会いも当然、お笑いには縁遠い場所だった。
「小学生のころから通っていた、インド王族武術の道場でした。ふたりとも母親から、『体を動かすのは健康に良いから』と言われて行ってみたのが始まりで(笑)。でもやってみたら夢中になって、中学生になっても部活には入らず、学校が終わったら毎日道場に通う、みたいな生活をしてました」(聖王DATE)
彼らが習ってきたインド王族武術(マハーラージャ カルーリカ&ヨーガ)は、紀元前6世紀ごろに誕生したと伝えられている。そこからインドではほかの武術に発展し、中国に渡って中国武術となり、中国から日本に渡って空手になったという説もあるほど。一説では、総合格闘技の呼び名として知られる“マーシャルアーツ”の源流とも言われている。
「素手の格闘術だけじゃなく、いわゆるヌンチャクや棒術のような武器術もやりますし、準備運動の動きはヨガだったりします。日本にある道場は僕らが通っていたところだけなので、人に説明するのはすごく難しいんですよ(苦笑)」(タイガーDATE)
武術に夢中だったふたりが、お笑いの真似事をするようになったのもその道場だった。道場の先生が自分の好きなお笑い番組の映像を見せてくれることが多かったそうで、それに影響された彼らが、道場の余興として、ザ・ドリフターズのモノマネなどを披露したのが最初。そこから人前で笑いを取ることが楽しくなり、お笑いを武器に外に出ていくようになる。
「僕ら『エンタの神様』や『爆笑レッドカーペット』世代なので、最初は見よう見まねで笑える演し物をやっていて。せっかくなら思い出づくりをしようと、いろいろなところに出ていくようになったんです。
それで、15歳のときですね、当時、素人飛び入りコーナーをやっていた『笑っていいとも!』に出ようと、朝、新宿アルタに並んでオーディションを受けたら通っちゃって、生放送でネタをやらせてもらいました」(聖王DATE)
「その同じ日、僕は別の子たちと『キングオブコント』の1回戦があったので、『笑っていいとも!』は諦めて。そのときは2回戦までいけました」(タイガーDATE)
そんな中高生時代、ふたりは武術だけでなく、なんとなくの芸能活動もスタート。『魔女たちの22時』『行列のできる法律相談所』『人生が変わる1分間の深イイ話』『ザ!世界仰天ニュース』など、人気バラエティ番組の再現ドラマやCMなどにもエキストラとして出演するようになり、芸人としての活動も本格的に始めた。
「タイガーとはずっと別のコンビだったんですけど、みんなでアマチュアの学生お笑い大会にも出てました。当時大会で一緒だったのは、レインボーの池田(直人)くんとかパーマ大佐とか。関西では霜降り明星の粗品くんがすごく有名でしたね。僕らは東京でやってましたから、大会を勝ち上がっていくと、池田くんたちと会ったりしてたんですよ」(聖王DATE)
「それこそ大学でお笑いをやってたSMAの先輩、スタミナパンのトシダ(タカヒデ)さんも。この『芸人の笑像』でトシダさんが優勝したと話していた“全日本お笑い選手権 お笑い全日本カップ2012 学生芸人日本一決定戦”には、僕も出てました」(タイガーDATE)
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「でも……当時は別に、プロの芸人になりたいとか、TVに出て売れたいとか考えていたわけでもなくて。僕とタイガーは、お互いに道場の同級生とコンビを組んでいたんですけど、それもただ、自分たちでネタを作ってやることが面白かっただけなんです。だからお笑いは趣味みたいな感じでしたけど、アマチュア大会とかではちょっとずつ結果も出せるようになっていったんです」(聖王DATE)
本腰を入れていたのは、もちろん武術。夢はプロの総合格闘家だった。
「当時の総合格闘技大会は、今と違って高校生以下は出られないというルールがあったんです。だから、グラップリングやキックボクシング、ムエタイなど、個別の技で競える大会に出てました。
ちょっと自慢できることとしては、日本の総合格闘技界で18歳の最年少プロデビューが僕なんですよ。そこから、高校生の大会とかが一気にバーッと広がっていきましたし、僕もリトアニアとか中国とか、プロ選手として海外遠征にも行ってました」(聖王DATE)
「僕もプロ選手を育成する総合格闘技大会の『THE OUTSIDER』で朝倉海選手と戦ったり、いろんな大会に出てました。目標はもちろんチャンピオンになること。インド王族武術でほかの格闘技を制したい! という気持ちでしたね」(タイガーDATE)
お笑いは趣味の延長、格闘技は本気モードだった彼らだが、根っからの修行好き(?)が顔を出し、お笑いを続けているうちに、“どうせやるなら両方を極めよう!”と考え方も変わっていった。
「格闘技でトップを取って、お笑いでもトップを走っている人はいないし、逆もしかり。それができたら面白いよな! と思ったんです。じゃあ、お笑いで仕事をもらえるように、事務所に入ろうとなって。どうしたらいいかを調べたら、まずはみんな養成所に行くんだとわかったんですね。でも養成所に通うには入学金が必要。それは無理だなと思って、探し当てたのがSMAでした」(聖王DATE)
「事務所のこととか全然知らなかったので、あのソニーミュージックがお笑いをやってるんだということにもビックリしたんですけど……」(タイガーDATE)
「所属芸人に、『キングオブコント』で優勝したバイきんぐさんやコウメ太夫さんがいることを知って。さらに調べてみたら、どうやら誰でも入れそうなところだというので(苦笑)、さっそく申し込みをしたんです。それが2017年でした」(聖王DATE)
2017年2月、聖王DATEが組んでいたコンビのほうが、先にSMA入りを果たす。その理由は「年上だから先に行って、SMAがどんな事務所か見てきてほしい!」と、道場仲間から背中を押されたから。面接当日になんとなく所属が決まり、すぐに翌月の事務所ライブに出演することになった。
そんなにすぐ入れる事務所ならあとに続けと、聖王DATEの1カ月後に、タイガーDATEのコンビもSMA所属となる。聖王DATEにはそのころの鮮烈な記憶があるという。
「SMAに入って1カ月後に最初の事務所ライブに出たんですけど、その翌日が『R-1グランプリ』の決勝で。事務所ライブが終わったあと、アキラ100%さんが最終調整のための単独ライブをやってそれを観ていたんです。翌日テレビを見たら、見事にアキラ100%さんが優勝して。すごい華やかな事務所だなと感動しました。いい時期にSMAに入れましたね」(聖王DATE)
事務所に所属する際には、SMAにお笑い部門を立ち上げたプロデューサー・平井精一との忘れられないエピソードもあるそうだ。
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「オーディションで面接をしてくれた平井さんに、プロとして格闘技の試合にも出ていることを伝えたら、『じゃあ、とりあえず1カ月頑張ってみてごらん、多分続かないと思うよ』って言われたのを覚えてます(苦笑)。
そんな会話をした1カ月後には、今度はタイガーたちが面接に来て同じことを言ったので、平井さんにしてみれば、『また同じようなのが送り込まれてきたぞ、どうなってんだ? でもこいつらも続くわけないな』って思ってたでしょうね(笑)」(聖王DATE)
現役プロ格闘家とプロの芸人の両立を目指してSMAに所属を決め、新しい一歩を踏みだした聖王DATEとタイガーDATE。その生活ぶりはどうだったのだろうか。
「当然ですけど、格闘技のほうがメインでした。月イチとか2カ月に一度くらいは試合に出てファイトマネーをもらうんですけど、下っ端だと本当にわずかで。しかも僕は階級が軽いんで、なおさらですね。1試合で数万円もらえればいいほう。それだけじゃ生活していけないから、アルバイトをしながら試合に向けて練習して、事務所ライブも出て……という」(タイガーDATE)
「もちろんお笑いのほうでもお金がもらえているわけじゃないから、普通にアルバイトをしてたほうが全然稼げるんですよ(笑)。ありがたいことに僕ら、格闘技のほうでちょっとは名前が知られていたので、試合が終わるたびに次のオファーをもらいつつ、なんとかやりくりできてた感じです」(聖王DATE)
そんな生活が4年ほど続いた2021年、2人に転機がやってくる。どちらもコンビを解散し、それぞれの相方はお笑いも武術もやめてしまった。
「残った僕とタイガーはお笑いをやめる気がなかったし、やっぱり人を笑わせるのが好きだったんですよね。特に僕は、人前に出るのが昔から好きだったから、残ったふたりでコンビを組めばいいかなと。相方だったヤツらも含めて4人は同じ道場でずっと一緒にやってきた幼なじみだったから、誰と誰が組んでも成り立つんですよ。じゃあもう、このふたりでやっちゃおう! って感じでした」(聖王DATE)
そんな聖王DATEの話を聞きながら、頷いているタイガーDATEの表情からも、このふたりが長い間に絆を結んできたことがよくわかる。そして新たにつけたコンビ名は“スピーディーハンター”。武術家のふたりにふさわしい、速くて強そうな名前だ。
「とにかくカッコいいコンビ名にしたかったんです。それこそ“スピーディー”とか“ロイヤリティー”みたいな格好良さげなカタカナ英語をふたりでいっぱい出して、いろんな組み合わせを試して一番良かったのがコレでした」(タイガーDATE)
「スピーディーなハンター。素早く狩り取る、KOするみたいで、なんかこれカッコいいぞ! と。最短で成功を掴み取ろう! みたいな意味もあって良かったんですよね。タイガーも納得して決めたんですけど……なんかテレビに出るようになってテロップで見ると……結構ダサいかも(笑)?」(聖王DATE)
後編では、ネタづくりへの思いや、SMA芸人の先輩からもらった助言を明かす。
文・取材:阿部美香
撮影:遠藤勇司

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