TM NETWORKが生み出し続けるインパクトの本質とは? 『TM NETWORK 2025 IP』は、その答えを体感する場になる
2025.08.29


2025.08.29
2025年8月26日から10月3日まで、Ginza Sony Parkで開催される『TM NETWORK 2025 IP』。40年以上の歴史を持つTM NETWORK初の大型エキシビションにして、Ginza Sony Parkを“体感型知的公園(Intellectual Park)”に見立てたユニークな展示構成でも注目を集めている。
今回は、今なお音楽シーンに影響を与え続けるTM NETWORKの魅力を根元から見つめ直し、その軌跡を“知的財産(Intellectual Property)”として再構築した当エキシビションの狙いと制作の舞台裏を徹底取材。企画、制作を担うふたりのキーパーソンに話を聞いた。
目次

加藤丈晴
Kato Takeharu
ソニーPCL

FT
ソニー・ミュージックレーベルズ
レガシープラス
小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登の3人により結成され、1984年にデビュー、2024年にデビュー40周年を迎えたTM NETWORKの史上初となる大型エキシビション。2025年1月にグランドオープンしたGinza Sony Parkとのコラボレーションにより、8月26日から10月3日にかけて開催される。TM NETWORKにまつわるさまざまな“IP”をテーマに構成した体感型のエキシビションのほか、メンバー監修によるオリジナルグッズの販売、そしてメンバーがよく利用したことで知られるファミリーレストラン「すかいらーく」が協力したオリジナルコラボメニューも登場するなど、TM NETWORKの過去、現在、未来に思いを馳せて楽しめる内容となっている。
記事の後編はこちら:TM NETWORKが生み出し続けるインパクトの本質とは? 『TM NETWORK 2025 IP』は、その答えを体感する場になる
『TM NETWORK 2025 IP』の体験レポートはこちら:『TM NETWORK 2025 IP』体験レポート:これはTM NETWORKの楽曲と歴史をエキシビションに再構築した“リプロダクション”の新たな形かもしれない
――初めに、『TM NETWORK 2025 IP』におけるおふたりの役割を教えてください。
加藤:これまでもGinza Sony Parkで開催されたエキシビションの企画を担当してきましたが、今回も会場構成から空間設計、体験デザインまで企画全般を担当しています。
FT:TM NETWORKにまつわるさまざまな音源、映像のうち、ソニーミュージックが権利を有するものの管理を担当しつつ、現在進行形のTM NETWORKにおいては、ソニーミュージックと契約されたプロダクトの制作、宣伝に携わっています。『TM NETWORK 2025 IP』では、主にアーティストサイドへの橋渡し役を担当しています。
――“IP”とは“知的財産(Intellectual Property)”の略語ですが、TM NETWORKというアーティストをひとつのIPとして捉える発想はこれまでにないものだと思います。今回のエキシビションを企画するにあたって、このIPというのは重要なキーワードになったと思いますが、これは誰の発案によるものだったのでしょうか。
加藤:IPというキーワードは、小室(哲哉)さんが初めに提示してくださったものですね。
FT:企画が立ち上がってすぐに、小室さんと直接お話する機会があり、そこで体験型のエキシビションを企画するにあたって、タイトルをどうするかご相談したところ、キーワードとして「IPというのは、いいかもね」と言ってくださって。ロゴのイメージも描いてくださいました。
さらに、「IPの頭文字は“Intellectual Property”という意味だけではなくて、いろんな発想に広げられるよね」といった話もあって。TM NETWORKは40周年のときに「intelligence Days」というライブツアーを行なっていたことから、今回はGinza Sony Parkにちなんで“Intelligence Park”という言葉にもできるんじゃないかと。
加藤:“Incubation Period”というキーワード(TM NETWORKが2012年に行なった日本武道館ライブのタイトル)もありましたし、解釈はいろいろと膨らみましたよね。
──IPにいくつもの意味を持たせるというところが、とてもTM NETWORK的で面白いと感じました。起点は小室さんのアイデアだったんですね。
FT:そうですね。そのうえで、実際にどのキーワードをコンセプトに当てはめるかは、加藤さんが具体的な設計図に起こしてくださいました。
──こうしたアイデアも受けて、どのようなエキシビションにしていこうと考えましたか?
加藤:ここからは展示内容を企画するうえでの私なりの解釈なんですが、TM NETWORKの活動や作品には“音とテクノロジー”“都市と情緒”“個と未来”といった世界観があると思っていて。音楽シーンのなかでもすごく稀有でユニークな、そういう世界観そのものがIPと言えるのではないかと考えたんです。
その視点で今回のエキシビションをとらえたときに、単なる活動40周年の歴史をまとめた展示ではなく、TM NETWORKの世界観全体をIPと捉え、再定義し、お客様に体験として提供したい。そういう着地ができたら、単純な回顧展ではなく、来展者の感性を刺激するような、本質的にTM NETWORKらしいアクティビティが作れるんじゃないか? ということを考えました。
──ユニークと言えば、今年1月に開業したGinza Sony Parkという開催地も特徴的です。
加藤:そうですね。Ginza Sony Parkには“都会のなかの公園”“地上5階+地下4階の建築”に、テナントを一切入れないことによって作られた“意図的なスペースの余白”といった特徴があります。
それに対して、“音とテクノロジー”“都市と情緒”“個と未来”という、複数のレイヤーで構成されるTM NETWORKの世界観を当てはめていくと、パークの特徴とも親和性が高くなると感じました。この志向をベースにして、今回のエキシビションでは“TM NETWORKにまつわる3つのIPを巡る”という体験、会場構成にできないかと考えていきました。
──当エキシビションにおける“3つのIP”のコンセプトと展示概要について、改めて教えてください。ひとつ目は“知の財産(Intellectual Property)”です。
加藤:まずは楽曲やミュージックビデオ、メディアミックス、いろんなコンテンツとのコラボレーションなど、TM NETWORKがこれまでに残してきたアウトプットがたくさんあるので、これらを知的財産として再構成した展示にしたいと考えました。
ここには往年のファンの方がご覧になってもグッとくるものになるよう、フィジカルの……つまり、物理的な体験で構成したいという思いがあって。
そのうえで、今回のエキシビションはソニーグループのシナジーをいかせる取り組みということで、「Get Wild」とアニメ『シティーハンター』の世界観をモチーフに、ソニーが開発中の触覚提示技術を用いた「ハプティックコントローラー」を使った射撃ゲームのコーナーなどを作りました。
『「COME ON EVERYBODY」Dancing Reel』のコーナーでは、ソニーの「可搬型ボリュメトリックシステム」という3D空間キャプチャー技術を使って、来展者の姿を3Dデジタルキャラクター化します。
3DデータができあがるとQR コードが表示されるので、これをご自身のスマホで読み込むことで、画面上のキャラクターが宇都宮(隆)さんのごとくキレキレに踊り出すダンス動画を持ち帰っていただけるという(笑)。このように、フィジカルとデジタルを織り交ぜた展示構成になっています。
──ふたつ目が、TM NETWORKの楽曲の世界観を体感できるという“知の公園(Intelligence Park)”ですね。
加藤:今回のエキシビションのために楽曲を聴き直し、いろんなことを調べていくうちに、TM NETWORKの楽曲には3つのインテリジェンスがあるのではないかと定義しました。
テクノの音楽史に紐づけた考察なんですが、ひとつ目が1980年代半ばのデトロイトを発端に、数多く生まれた身体性の高い踊れるテクノ。ふたつ目が、ヨーロッパを中心に深化した思考性の強いテクノ。そして、3つ目が日本でも根付いた“歌える”テクノというか、情緒性のあるテクノです。
ここに挙げられる“身体”“思考”“情緒”というキーワードが融合しているのがTM NETWORKの音楽なのではないかと定義し、この3つのキーワードをテーマにしたイマーシブ(没入型)な音楽体験を実現したいと考えたのです。
それらを実現するために、ソニーの高画質LEDディスプレイ「Crystal LED」や、26.2chという膨大な数のスピーカーを用いて構成する立体音響技術「360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)」も採り入れました。

3面の「Crystal LED」と、26.2chのスピーカーを用いた立体音響技術「360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)」に「Haptic Floor」を加えて、TM NETWORKの楽曲を体感できる
さらに、床からの振動で感触を全身に届ける触覚提示デバイス「Haptic Floor」も用いて、全身で音楽を体験していただけるという構成です。
もちろん、これらは技術ありきではなく、あくまで表現の手段として導入しているもので、いかに高次元でTM NETWORKの世界観をイマーシブな体験にできるか、ということにフォーカスしています。
──最後は“知の哲学(Inspiring Philosophy)”となります。
加藤:ここではTM NETWORKのメンバーの個性が表われた言葉や、第三者の方々からのTM NETWORKに対する思いやメッセージを見ていただくことで、TM NETWORKが持つ哲学(Philosophy)を感じてもらいたいという意図で構成した展示です。
ここで浮かび上がってくる言葉は、来展された方々にそのまま持って帰っていただきたいと思っているので、言葉そのものがストレートに伝わる展示内容にしています。
──3つの“IP”の展示は、見る順番もあるということですね。
加藤:はい。Ginza Sony Parkの4階から入場して3階に下りていく動線で、ここまでにご説明した3つのIPを順に巡っていただくという構成です。初めに“知の財産”に触れてから、次に“知の公園”で楽しんでいただいて、最後は“知の哲学”を知る、という流れですね。
さらに、地下2階に下りるとオリジナルグッズのショップがあって、地下3階のカジュアルダイニングではたくさんのコラボメニューもご用意しています。パーク全体を回遊して楽しんでいただく旅のようなイメージで構成しました。
──エキシビションの設計図が具体化していくなかで、アーティストサイドとして展示内容に関するリクエストはあったのでしょうか。
FT:先ほど加藤さんも言っていたように、「既存のものをただ展示するだけにはしたくないです」というお話はしていました。FANKSと称されるTM NETWORKのファンの皆様に見ていただきたい展覧会であることは大前提でありつつ、ファンではない方がご覧になったときに、いかに興味を持ってもらえるかということも強く意識したかったからです。さらに、銀座という場所がら、多くの方々に見ていただきたいという思いも強かったです。
あとは、楽曲や映像とソニーの最新技術を組み合わせることで、“今後、こういうこともできる”というのをアーティストサイドへ提案するアイデアも見つけられたら、ということも考えていました。
もちろんテクニカルな部分は加藤さんをはじめスタッフの皆さんにお任せしていますが、そのなかでもなるべく最先端の、まだ、ほかではやられていないようなことをやってほしいというお願いはしましたね。
TM NETWORKにはその時代、時代で新しいものを採り入れてきた歴史もありますから、それを踏まえた見せ方をぜひお願いします、というリクエストになりました。
──そのリクエストを受けて、加藤さんとしてはどういった見せ方が最先端、かつTM NETWORKにフィットすると考えましたか?
加藤:単純に最先端の技術として提供できるものもあるのですが、それを普通にポンと出して「はい、イマーシブです」と言ってしまうのは、TM NETWORKらしくないなと思ったんです。
やはり、そこをつなげるコンテクストがかなり重要視されると思ったので、先ほどの“3つのIP”もそうですが、表現をするために何をやるべきなのか、という文脈づくりの部分にはかなり時間をかけました。とは言え、“TM NETWORKが作り上げてきたものとは何か”という部分については、我々の勝手な解釈もあるのですが。
──TM NETWORKの持っている世界観、コンセプトをベースにしたうえで、最適なテクノロジーの最新版をそこにマッチさせるという考え方ですね。
加藤:そうです。そこが逆転してしまうと、テクノロジーを前面に打ち出すことになってしまい、完全に本末転倒になってしまうので。そういう意味でも、非常にこだわったポイントですね。
ソニー・ミュージックレーベルズ
レガシープラス
チーフ・ゼネラルマネージャー 黒木大哲
──音楽レーベルであるソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)のレガシープラスが、アーティストのエキシビションを開催することになった経緯と理由を教えてください。
レガシープラスは、さまざまなジャンルの原盤を数多く保有しており、レーベルとして得意なフィジカル(音楽商品のBOX、アナログレコードなど)に加え、ここ数年はさらにデジタル強化という戦略を実施してきました。
しかしながら今後、フィジカル商品はさらに厳しくなることが予想されるなかで、原盤だけではない新たな音楽ビジネスを模索し始めたのがきっかけです。
そして、今回のTM NETWORKのエキシビションでは、会場を検討し始めたころに、Ginza Sony Parkの担当者とお会いし、相談したところ、先方の展示企画の方向性とTM NETWORKの思想が合致しました。TM NETWORKと、ソニーグループが有するテクノロジーの有用性をエンタメ領域で再定義し、新たな表現、新たなエンタテインメントを提供しようというアイデアが生まれました。
──昨今、アーティストをテーマにしたエキシビションが多数開催されていますが、このジャンルにレガシープラスが参入する意味、そして強みはどこにありますか?
歴史の厚さがそのひとつに挙げられます。アーティストとそれを支えた歴代のスタッフが制作してきた楽曲、アートワーク、写真、ライブ、衣装、書籍などが数多くあり、それは更に新たな価値を生み出し、あらたな表現を語っていき、世代を超えて伝えることができる。そして、それを表現できるのは我々ならではの強みだと考えています。
──レガシープラスとして、エキシビションビジネスにどのような可能性を感じていますか? SMLでは『TM NETWORK 2025 IP』をはじめ、「Spookiz(スプーキッズ)」でキャラクターのIPビジネスに参入するなど、レコード会社の枠を超えた取り組みが加速しています。今後、レガシープラスでも音楽ビジネスを起点とした新規ビジネスの横軸展開というのがさらに活発化していくのでしょうか。
シティポップや昭和という切り口で、過去の名曲が新しく聴かれるようになり、特定の年齢層だけでなくターゲットが広がっています。アーティストに興味を持ったデジタル世代がエキシビションも含めたフィジカルを通して、そのアーティストを深く知っていく経験は、きっと感銘、感動を得られるものだと思います。だからこそ、エキシビションはひとつの興行ビジネスとして考えていいものだと捉えています。
レガシープラスには、数多くの素晴らしいアーティスト、楽曲が揃っています。そして、まさしく今、各々のアーティストの歴史的な活動とともに生まれた新たな価値を、世の中に芽生えさせるチャンスだと思います。
また、楽曲だけでなく、時代ごとのアートワーク、写真、ライブ、衣装、書籍などは、新たなモノ(グッズ)としての活用も考えられ、そこに商機と勝機は必ずあると考えています。
このようなビジネスを考えられるのは、その時代を創造してきたアーティストとスタッフの制作のこだわりから生まれた結晶があるからなのです。アーティストと音楽が持つ普遍的な感動を、2025年の今、再び伝えられるのは素晴らしいことだと感じています。
後編では、こだわり抜かれたイマーシブ音楽体験のさらなる詳細に迫る!
文・取材:柳 雄大
撮影:干川 修
【開催日時】
2025年8月26日(火)~10月3日(金)
※休園日 9月16日(火)
11:00-19:00 (18:30最終入場)
※下記日程に限っては、開場時間が11:00~20:00(19:30最終入場)となります。
8月26日(火)~31日(日)、9月 6日(土)、9月13日(土)、9月14日(日)、9月20日(土)、9月21日(日)、9月22日(月)、9月27日(土)、10月3日(金)
【会場】 Ginza Sony Park(東京都中央区銀座5-3-1)
詳細はこちら
2026.07.06
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