イベント制作チームと考える、全天周特設ドーム型シアター『PULSE DOME』の可能性①
2026.04.23


2026.04.23
ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)が開催した、360度全天周特設ドーム型シアターで、メタバース映像を体験するイベント『PULSE DOME(パルスドーム)』。
本イベントを実際に体験したエンタテインメント業界の専門家たちと、『PULSE DOME』の開発陣が、全天周映像空間のリアルな活用法とビジネス的な展望を語り合った。
第3弾の後編では、ソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)でアニメ、ゲーム関連のイベントや音楽ライブなどを手がける制作チームが、『PULSE DOME』活用法の具体的なアイデアを語る。
目次

桟敷宗太
Sajiki Sota
ソニー・ミュージックソリューションズ

佐藤紘士
Sato Koji
ソニー・ミュージックソリューションズ

松山文音
Matsuyama Ayane
ソニー・ミュージックソリューションズ

外内諒
Sotouchi Ryo
ソニー・ミュージックソリューションズ

中居佑輝
Nakai Yuki
ソニー・ミュージックエンタテインメント

赤林勇太
Akabayashi Yuta
ソニー・ミュージックエンタテインメント
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――今回の『PULSE DOME』のイベントを映画監督の西山将貴さんや、ソニー・ミュージックレーベルズのA&R(音楽企画制作)にも体験してもらい話を聞きました。そこでは、従来の“演出”という枠を超えた、新しいドーム型シアターの活用方法についても多くの意見が出ていましたね。
赤林:異なるエンタテインメントのプロの方々と『PULSE DOME』の体験価値の創出について話をするなかで、イベントやライブの“演出”としてドーム型シアターを使ってみたいという声を多くいただきました。
いっぽうで私たちが目指している方向性のひとつとして、『PULSE DOME』をメタバースやVRの世界で活躍するクリエイターの方々が、“自分のやりたい表現を実現する場”にしたいという思いがあります。音楽ライブやイベントの制作を手がけるSMSの皆さんには、『PULSE DOME』の使い方について、演出に限定しない意見も聞いてみたいです。
外内:クリエイターのやりたい表現をしてもらうという意味では、“才能を見つける場”としてコンペを開いても面白いかもしれません。『AnimeJapan 2026』では、学生のクリエイター向けに「AnimeJapan新人クリエイター大賞」という短編アニメーションのコンペティションを行なったのですが、ドーム型シアターという新しい表現手段を提示して、“この空間を自由に使って作品を作ってください”と投げかければ、驚くようなアイデアが集まるのではないかと思います。
桟敷:結局、演出の枠に入ってしまうのかもしれませんが、もう少しハード寄りの視点として、ドームの構造そのものを活用した音楽ライブのかたちが考えられるのではないかと思います。例えば、ドームの半球をもっと大きくできれば、日本武道館などでいう言うところの“センターステージの逆バージョン”ができるのではないかと。
つまり、会場の中心に観客がいて、その周囲をステージにしてしまうという考え方ですね。これが実現できれば、アーティストは360度に広がる映像を背負いながら会場を周回するようにライブを行ない、最後方で観ているファンの目の前にもアーティストが現われるなど、これまでとは異なるライブ体験が提供できるのではないでしょうか。
佐藤:あのドームを見たとき、どんなシーンで使うのが一番いいだろう? と考えたのですが、私はドーム単体でイベントを行なうより、別に本体となる大きなイベントやライブがあって、その前段階として小さなドーム型ライブを楽しめるというような使い方をイメージしました。
例えば、一般的な音楽フェス会場のなかでVTuber専用のドーム会場を設けるとか、映画祭の会場にドーム型の特設シアターを作るとか。さらに違う方向性のものとしては、リアルな花や映像を組み合わせて、クリエイターの個展会場にするというような考え方もありますよね。そこに“匂い”などの要素も加えられたら、用途はさらに広がりそうです。
赤林:確かに、皆さんがお話しされたような使い方が実現できたら面白そうですね。ドームそのものをステージとして再構築する発想や、クリエイターの才能を引き出す場としての活用、大規模イベントと連動した新しい導線づくりなど、空間そのものを体験としてデザインしているアイデアになるのではないでしょうか。
こうした自由な発想をもっと気軽に試せる環境や仕組みを私たちが整えることができれば、『PULSE DOME』はより多様な表現を受け止める場として進化していけそうです。
――映像体験をさらに進化させる要素として、“匂い”や“振動”といった五感へのアプローチも注目されています。こうした追加要素をドーム型シアターに取り入れる場合、運用面での課題や制約はあるのでしょうか?
中居:運用面での制約はありません。身近なソニーグループにもそういった技術が開発されているので、必要に応じて総動員して取り組むことも可能です。ただ、要素をひとつ追加するごとに、それなりのコストがかかると思うので、そこは当然、課題になってきますね。
赤林:『PULSE DOME』でも本当はそのあたりの要素も盛り込みたかったのですが、やはりコスト面が大きなネックになりましたね。それだけコストをかけるなら、やはり、コンテンツも全編通して、匂いや振動に対応していないと総合的な体験価値を高めることができないので、今回のイベントでは導入しませんでした。
――これまでの話を踏まえて、メタバース空間と相性のいいVTuberやアニメ、ゲームなどのIPとの親和性が非常に高いように感じます。SMSの皆さんが普段携わっている企画と組み合わせるとしたら、『PULSE DOME』にはどのような活用法がありそうですか?
松山:VTuberのフェスや展示会といったイベントに関わらせていただくことが増えているのですが、そういったイベントの定番に“再現展示”というものがあります。VTuberのライブ配信の背景にいつも映っているお部屋など、ファンの皆さんが“見慣れている空間に入ってみたい”という思いを叶える展示ですね。『PULSE DOME』はそうした再現展示との相性がとても良さそうだなと感じました。
佐藤:独自の世界観を持つVTuberの皆さんの“やりたい表現”に、『PULSE DOME』は柔軟に応えられるという印象は私も持ちました。
外内:もともと3Dモデルを持っているVTuberの場合、音楽ライブを一から作り込むよりも、既存の素材を活用してVRコンテンツを作成できるのもメリットになりますよね。
中居:VTuberのライブ制作もメタバースの空間でのコンテンツ制作も、作り方は同じですからね。LEDなどに平面の映像を出すバーチャルライブも、内部的には3D空間を構築し、そこにリアルの照明を当てるという手法が一般的です。つまり、その3D空間はそのまま『PULSE DOME』に持ち込むことができる。平面で映し出す場合もドームに映す場合も、制作コスト的には変わらないんです。
低コストで活用する、という方向性で考えるなら、A&Rチームの皆さんとの座談会でも話しましたが、全国に300施設ほど存在するプラネタリウムを活用するという方法もあります。『PULSE DOME』は既存のプラネタリウムと基本構造が同じで、半球型のドームに複数のプロジェクターで映像を投影する仕組みです。
音響についても、今回のイベントでは16chの立体音響を設計しましたが、実施する施設の仕様に合わせて切り出せるようにしているので、その点でも互換性があり、会場ごとのカスタマイズが可能です。
――今回はさまざまな意見やアイデアが挙がりましたが、イベントとのコラボレーションなど『PULSE DOME』の可能性が広がったのではないでしょうか。
中居:そうですね。現在はドーム型映像空間として、技術面はあらかた開発が完了していて、実際の運用が可能なフェーズにあります。『PULSE DOME』のように仮設ドームを設置するのは、場所やコストの面で確かにハードルが高いかもしれませんが、お伝えした通りプラネタリウムなど既存の施設でも活用できる仕組みです。もし何かアイデアがあれば、いつでも我々がサポートさせてもらいます。
また、IP活用の面ではゲーム分野にも大きな開拓の可能性があると考えています。3Dで構築された空間があれば、そのなかに入り込んでリアルタイムにゲームをプレイする、といった体験も実現できると思います。アイデア次第で、まだまだ活用法は広げられると考えています。
赤林:皆さんと対話ができたことで、改めて課題もたくさん見えてきました。このドーム型映像空間をもっと楽しんでいただくためには、ただ“360度で映像が展開する”だけでなく、もう一歩踏み込んだ、アーティストやコンテンツに寄り添う仕かけが必要だと感じました。動線の工夫や、会場側からの問いかけなど、『PULSE DOME』ならではの体験を導き出す仕組みをもっと詰めていけるはずです。
加えて、音楽ライブ以外の楽しみ方をSMSの皆さんと一緒に作り上げていける可能性も強く感じました。今後、一緒にコラボレーションできることがあれば、ぜひよろしくお願いします!
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文・取材:柳 雄大
撮影:冨田 望

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