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エンタメビジネスのタネ

A&Rチームと考える、全天周ドーム型シアター『PULSE DOME』の可能性①

2026.04.16

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ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)が開催した、360度全天周特設ドーム型シアターで、メタバース映像を体験するイベント『PULSE DOME(パルスドーム)』。

本イベントを実際に体験したエンタテインメント業界の専門家たちと、『PULSE DOME』の開発陣が、全天周映像空間の活用法とビジネス的な展望を語り合った。

シリーズ第2弾は、ソニー・ミュージックレーベルズより3人のA&R(音楽企画制作)が登場。音楽業界での全天周映像の活用事例と、使用シーンのアイデアを出し合いつつ、一歩踏み込んだビジネストークも展開した。

  • 神戸克磨プロフィール画像

    神戸克磨

    Kanbe Katsuma

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 小山裕誠プロフィール画像

    小山裕誠

    Koyama Hiroaki

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 菊田省吾プロフィール画像

    菊田省吾

    Kikuta Shogo

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 中居佑輝プロフィール画像

    中居佑輝

    Nakai Yuki

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

  • 赤林勇太プロフィール画像

    赤林勇太

    Akabayashi Yuta

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

『PULSE DOME』とは?

『PULSE DOME』外観画像

先端テクノロジーを活用して、新たなエンタテインメントビジネスの創出を目指すSMEのデジタルイノベーショングループが、ソニーグループ各社とともに開発した360度全天周特設ドーム型シアター。ハイスペックなゲーミングPCやVRゴーグルなしで、メタバースライブが体験できる場として、1月7日~11日までの5日間、新宿歌舞伎町シネシティ広場内にドームを仮設し無料イベントを開催した。ドームのサイズは直径約13m×高さ約7m。半円球型スクリーンに複数台のプロジェクターでVR映像を投影し、音響システムはソニーの立体音響技術を導入して没入感を高めている。本イベントで上映したコンテンツは、きくお「よるとうげ」、Kanaria & LAM 「Kanaria MV 360°VR Edition(demo)」、はるまきごはん「ぽかぽかの音楽隊 feat.初音ミク(demo ver.)」、FZMZ「FZMZ LIVE “DEEP:DAWN”」、TORIENA「FRACTURE: REBORN」、キヌ「VTUBER GO TO CITY」、Beyond a bit「Beyond a bit」、月白 累「please, keep my ghost.」といった、ボカロPやメタバース上で活躍するアーティスト、VTuberの音楽映像作品。さらに、月白 累のライブステージではリアル会場の『PULSE DOME』と「VRChat」内のバーチャル会場に同時配信を行なう技術検証ライブも行なった。

記事の後編はこちら:A&Rチームと考える、全天周ドーム型シアター『PULSE DOME』の可能性➁

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多種多彩なアーティストを担当するA&Rがドーム型シアターを体験

――360度全天周ドーム型シアターのエンタテインメント的活用法と、ビジネス的な展望を考えるシリーズの第2弾。今回は、アーティストの楽曲制作や音楽活動全般をサポートするA&R(音楽企画制作)の皆さんと『PULSE DOME』開発陣との座談会です。まずはA&Rの皆さんが、それぞれ担当しているアーティストや業務について教えてください。

菊田:僕は、エピックレコードジャパンで宇多田ヒカル、いきものがかりを担当するチームに所属していて、これから活躍が期待されている新人、若手アーティストの育成も行なっています。

メタバースやVR領域との関わりでいうと、ヒップホップ系のアーティストを中心にXRライブ※を配信する「ReVers3:x(リバースクロス)」というショートライブプロジェクトに携わっていました。

※XR:Extended Reality、リアルとバーチャルを融合し、新たな体験を生み出す技術の総称

カラフルなニットを着る菊田省吾

小山:私は、キャラクターとリアルアイドルが両存する声優アイドルグループ・22/7(読み:ナナブンノニジュウニ)を担当しています。2月には、中居さんたちのチームにサポートをしてもらいながら、『PULSE DOME』のテクノロジーを応用して、22/7では初となるプラネタリウムでのキャラクターライブ『22/7 Star Travelers』を開催しました。

神戸:自分はadieuやスカイピースなどを担当していて、yama、ALI、TOOBOEといったアーティストのチームにも関わっています。担当するアーティストの音楽ビジネスには、多方面で関わることが多いのですが、なかでもライブやイベントに付随する企画は、特に重要だと感じています。

まだ実際に取り組んだものはないのですが、メタバースやVRなどのテクノロジーを通じて、アーティストのIP化であったり、楽曲やファンダムを強化できないかということだったりを模索していたので、今回の『PULSE DOME』にもとても興味がありました。

音楽業界の専門家からみた『PULSE DOME』の印象

――A&Rの皆さんにも『PULSE DOME』を体験してもらいましたが、まずは率直な感想から聞かせてください。

菊田:ドーム内に入った瞬間、“とても綺麗なプラネタリウム型シアター”だと思いました。そのうえで、僕が体験したFZMZの「FZMZ LIVE “DEEP:DAWN”」は、CGのキャラクターがライブを行なっている映像だったこともあり、ゲームのなかに入り込んだような感覚があって。ライブを観ているというよりは、アトラクション体験に近い感じで、テーマパーク的な楽しみ方ができるコンテンツだと思いました。

FZMZ「FZMZ LIVE “DEEP:DAWN”」 PULSE DOME

1st LIVE "DEEP:DAWN" at FZMZ Point Zero - Recap

あと、VTuberの月白 累のコンテンツでは、ステージがバッと開けていく瞬間にゾゾっとして。普段、自分が目にしている音楽ライブでは味わえない演出効果が新鮮でした。僕自身は「VRChat」などで開催されているメタバースライブについてあまり詳しくないのですが、純粋に楽しいと思いましたし、生ライブのステージ演出とは異なるゾクゾク感が味わえて、すごく魅力的だと感じましたね。

神戸:自分も『PULSE DOME』に入った瞬間、空間に包まれるような感覚を覚えました。加えて、背景色が黒のシーンの映像演出は、ものすごく没入感が高かったです。ただ、今回の『PULSE DOME』はプロジェクターによるスクリーン投影だったので、映像表現という意味では、LEDビジョンと比べると発色や解像感の部分で、やはり物足りないと感じる部分もありました。

あと、自分が体験したコンテンツでは、お客さんが前方に集中してしまって、横とか後ろを見わたしている人が少なかったんですね。それがもったいないなと。

ドーム型スクリーンの強みは360度全天周に映像を出せること。ドームを覆うようにキャラクターを巨大化させたり、立体物を表示させたりといったことに加え、見ている人の視線を一点に集中させてから、反対方向に何かを飛ばすことで振り向かせるという行動導線を作る。そうやって周囲を見渡す映像体験をもっと生み出せたら、より全天周ドーム型シアターならではの映像体験を提供できるんじゃないかなと思いました。でも、言うは易しで(笑)、そういった没入感の高いコンテンツを作る難しさも同時に感じましたね。

手で表現する神戸克磨

没入感を生み出すのはテクノロジーではなくコンテンツとストーリー

――プラネタリウムで開催した22/7のキャラクターライブに、直接携わった小山さんはどうですか?

小山:個人的には、“没入感”の作り方はふたつあると思っていて。ひとつは、『PULSE DOME』のようにハード面からテクノロジーのアプローチで生み出す方法。もうひとつはコンテンツの文脈やストーリーから“感情移入”という意味での没入感を生み出す方法です。

――アーティストや作品に感情移入を促すことでも、没入感を提供できるということですね。

小山:22/7では、ありがたいことにソニーグループのテックチームから、メタバース以外にも新しいテクノロジーのお話をいただくことが多いんですが、どんなに優れたテクノロジーでもそれだけでは人は感動しない。そこに私たちエンタテインメント側の人間がストーリーをかけ合わせることで、初めて価値が生まれると思っています。

真剣な表情で語る小山裕誠

先日、西新井文化ホールで開催した22/7のリアルライブ『ナナニジライブ in ジャパンフェスタ』では、ソニーの群ロボットシステム「groovots(グルーボッツ)」と共演しました。

昨年12月に開催された『Sony Technology Exchange Fair(STEF)』に参加し、「groovots」の展示を見たことがきっかけだったのですが、本公演ではリアルメンバーと「groovots」に投影されたキャラクターが“同じステージ上でかけ合いながらパフォーマンスしているように見える”演出を行ないました。

キャラクターとの共演はメンバーやファンの悲願であり、ちょうど後輩メンバー5人のキャラクターソングができたタイミングだったことも重なって、公演後のSNS上には、いつものライブ以上の反響が寄せられました。

こうしたテクノロジーに“ストーリー”の要素をかけ合わせることで、ファンの皆さんの体験価値は上がりますし、それがテクノロジーに興味を持ってもらうきっかけになることもあると思っています。

神戸:確かにそれはありますね。僕ら制作側のミッションは、あくまでも“アーティストや楽曲のファンダムをどう広げるか?”。テクノロジー発ではなく、“どういうことがしたいか”という企画発の考え方が重要です。

メタバースコンテンツを広めるためのアイデア

――没入感の重要性という話が出ましたが、『PULSE DOME』の活用法について、ほかにはどのようなことが考えられますか?

菊田:立体音響が実現できる『PULSE DOME』の特性に注目すると、新しい見せ方ができそうだと思いました。例えば、ライブビューイングの新しい形として、ステージの真ん中にカメラを置き、その映像を『PULSE DOME』に飛ばしてリアルタイムで見せる。立体音響も使って本会場の臨場感を再現できるといいですね。

赤林:確かに、そういう活用方法もありますね。大勢のアーティストが出演するフェスなんかだと、その活用法は特に喜ばれそうです。

顎に手を当てて話す赤林勇太

菊田:あと思うのが、メタバースコンテンツは、エンタメ感度の高い若い人たちが体験するものだという先入観があると思うんです。そういった先入観を覆せるようなコンテンツ、最新テクノロジーに触れる機会が少ない人や、ゴーグルをつけたVR体験についてよく知らない層にアピールできるコンテンツが作れたら、もっと興味を持ってもらえそうだなと思いました。

小山:今は視覚と聴覚に訴えていますが、五感すべてに響くものも面白そうですね。有名テーマパークには、匂いや風も一緒に体験できるアトラクションがありますけど、それを『PULSE DOME』でもできたら面白いんじゃないでしょうか。いわゆる4Dですね。

赤林:香りや匂いを局部的に体験できる技術は既にあるので、技術的には可能だと思います。

小山:そうなると、アーティストのパフォーマンスのシチュエーションに合わせた展開の幅も広がりそうですね。例えば、歌っているアーティストの後ろに映し出された映像が花畑だったら花の香りがして、特効でシャボン玉が出たらフローラルの香りがするとか。嗅覚や触覚の仕かけも加わればもっと没入感が高まりそうです。

22/7のキャラクターライブで挑戦したこと

――改めて小山さんは、『PULSE DOME』の技術を使った22/7のライブを中居さんたちのチームとともに開催しました。このイベントでは技術だけではなく、ストーリー性も重視したとのことですが、演出のなかで特に意識したことはありますか。

小山:キャラクターライブとしては、かなり理想に近いものができたと思います。今回は、宇宙船に乗り込んだメンバーが、宇宙で起こる異変に歌で対抗し、音楽のパワーで解決していくという物語だったんですが、それだけだと体験価値として弱いような気がして。そこでリアルグループの22/7のこれまでの活動を伏線にしたストーリーを取り入れました。

例えば、彼女たちが“なぜこの宇宙船に乗っているのか”という葛藤を“なぜアイドル活動を続けているのか”という理由になぞらえたり、物語の最後に現われる星座に、卒業メンバーの存在をほのめかしたり。今までなかったテクノロジーによる映像演出に、そういったストーリーが加わったことで、ファンの方にも好評をいただくことができたと感じています。

神戸:僕もそのライブを見に行きましたが、映像の演出で特にすごいと思ったのは、会話劇と歌との場面転換でした。キャラクターが白い光に包まれてシューッと消えていくんですが、「あ、こういう使い方ができるのか!」と思ったんです。それだけでもドーム型シアターのプラネタリウムで開催した意味が伝わりました。先ほど言った、見ている人の視線を誘導する演出がしっかり入っていたんですよね。

中居:我々のコンテンツは、一度制作すればどのドーム型会場でも使えるというような仕組みにしています。ただ、プラネタリウム会場は水平型だったり、傾斜型だったりそれぞれ形状が違っていて、傾斜型も考えると映像を左右方向に広げることが難しいという課題もあります。

笑顔で語る中居佑輝

小山:それで考えると、“ドーム型シアターの特長を最大限いかす”なら、横の動きではなく、奥行きを表現する縦の動きを軸にしてもいいのかもしれないですね。

中居:席の作り方によるところも大きいかもしれないですね。立ち見だったら、周りを見わたしやすいので、演出の自由度も高くなると思います。そういう意味では、ライブと同じで座席を用意しつつ、必要に応じて立ち見になるというスタイルでもいいのかもしれません。

後編では、音楽ビジネスにおけるドーム型シアターの具体的な活用法を考える。

後編に続く

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文・取材:阿部美香
撮影:干川 修

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