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連載Cocotame Series

エンタメに効くアプリ

L'Arc~en~Cielの30年の歴史が動き出す――ミュージアムアプリ開発ストーリー【前編】

2021.09.27

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エンタテインメントを活性化させるアプリをフィーチャーする連載企画「エンタメに効くアプリ」。

今回は、L'Arc~en~Cielの結成30周年を記念して配信されているスマートフォン向けアプリ『L'Arc~en~Ciel 30th L'Anniversary VR Museum(以下、VR Museum)』をフィーチャー。本アプリの企画、制作に携わった関係者を招き、ミュージアムアプリを開発することになった経緯や開発秘話を聞いていく。

参加者は、ソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)の音楽レーベル・Ki/oon MusicでL'Arc~en~Cielを担当する川崎みるくと望月俊輔。そしてソニーグループでエンタテインメント×テクノロジーを研究開発する横断プロジェクトチームで、アプリの開発を担った「Project Lindbergh(プロジェクト・リンドバーグ)」のメンバーである今村隆と古橋奈実の4人。

前編では、『VR Museum』プロジェクト立ち上げのきかっけと、開発にあたって何を重視したのかを聞いた。

  • 今村 隆

    Imamura Takashi

    ソニー・インタラクティブエンタテインメント

  • 川崎みるく

    Kawasaki Milk

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 望月俊輔

    Mochizuki Shunsuke

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 古橋奈実

    Furuhashi Nami

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

レーベルスタッフと技術開発スタッフによる混合チーム

――今回は、『VR Museum』の開発に携わった皆さんにお集まりいただきました。まずは、皆さんのプロフィールと本プロジェクトにおける役割を教えてください。

みるく:私は大学生時代のアルバイトを経てライヴハウスに就職、店長となり、アーティストたちと自主レーベルを立ち上げました。数年間、レコーディングから流通までひと通りのレーベル事業に携わり、その後、ソニーミュージックグループに入社しました。

さまざまな新人バンドの発掘からデビューまでの業務を手がけ、20年ほどアーティストの近くで仕事をしています。新人時代から関わったバンドは、SiM、SPYAIR、UNLIMITS、ねごと、BLUE ENCOUNTなどです。L'Arc~en~Cielに関しては、昨年からリリースに関する制作業務を担当することになりました。

『VR Museum』での役割は、開発チームである「Project Lindbergh」の皆さんと対をなす形でプロジェクトのとりまとめを担当しています。私たちは技術について詳しくないので、ざっくばらんに「こんなことできますか?」という内容を「Project Lindbergh」の皆さんにどんどん投げていくキュレーター的な立場だったのではないかと思います。

今村:僕はソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)のVR推進室という部署に所属しています。2018年からスタートしたソニーグループの横断型プロジェクト「Project Lindbergh」で、xR(現実世界と仮想世界をVRやARなどで融合する技術の総称)技術を用いた顧客価値検証や事業化を目指すプロジェクトに初期のタイミングから関わっていて、そのなかでさまざまなコンテンツをリリースする際のプロデュースをしたり、技術的なサポートを行なってきました。

L'Arc~en~Cielの『VR Museum』では、「Project Lindbergh」がアーティストのアーカイブをVR空間で見せるプロトタイプを過去に作った経験もあって、スマートフォンで気軽にバーチャルな展示会を行なう今回のプロジェクトを、どのように作ったら良いかという開発面での助言やサポートを担当しました。

望月:自分は、ソニーミュージックグループに入社して以来、セールスや宣伝、タイアップなどさまざまな仕事を経験したあと、昨年からみるくさんと一緒にL'Arc~en~Cielのリリースをはじめとする業務を担当しています。加えて、『Sakura Chill Beats』というLo-Fi Hip HopのYouTubeチャンネルの運営なども担当しています。

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僕は今年で30歳になりますが、L'Arc~en~Cielも30周年なので、廻り合わせのようなものを感じながら今回のプロジェクトに携わらせてもらいました。そして、リアルタイムで聴いてきた世代ではあるのですが、この『VR Museum』を開発するなかで、改めてL'Arc~en~Cielが素晴らしい実績を残してきたアーティストであることを実感する良い機会になっています。

古橋:私は広告代理店やイベント会社を経て、4年前にソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)に入社、EdgeTechプロジェクト本部という部署に所属しています。EdgeTechプロジェクト本部ができたのは約2年前で、その前身の部署であるデジタルコンテンツグループのころから、今村さんと一緒に「Project Lindbergh」のメンバーとして活動してきました。

「Project Lindbergh」ではPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)として、契約やバジェット管理、イベント運営などを主に担当しています。加えて最近はコンテンツの進行管理業務も担当しており、『VR Museum』に関しても進行管理として携わっています。

私は青春時代からL'Arc~en~Cielが大好きで、今回のプロジェクトの話を会議で聞いたときから「どんな仕事でもいいので携わらせてください!」とお願いして、プロジェクトに参加しました。

記念すべき30周年に「何かできないか」

――今回の『VR Museum』のプロジェクトは、SMEの広報が運営している社内向けのオンラインセミナーで、「Project Lindbergh」のリーダーを務める田中茂樹さん(EdgeTechプロジェクト本部 VRチーム チーフマネージャー)が登壇して、VRやVolumetricの最新テクノロジーについてプレゼンしたのを、みるくさんたちが見たことからスタートしたそうですね。

■「Project Lindbergh」に関連する記事はこちら
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みるく:私と望月くんは昨年からL'Arc~en~Cielを担当することになりましたが、当時から今年が30周年のアニバーサリーイヤーであることは認識していました。でも、まだわからないことが多いなかでコロナ禍に突入してしまって……。先行きが不透明な状況で具体的なアクションがとれなくなっていたときに、社内セミナーにふたりで参加したんです。

「Project Lindbergh」の取り組みを紹介する回で田中さんが登壇されたのですが、そのプレゼンを聞いて“1年あれば、最新の映像テクノロジーで何か面白いことができるのではないか”と思って、すぐにご連絡して、打ち合わせをさせてもらったんです。最初は本当に「どんなことができますかね?」というところからのスタートでした。

1991年に結成されたL'Arc~en~Ciel。今年でバンド結成30周年のアニバーサリーイヤーを迎えた。

――さまざまな可能性があるなかで、『VR Museum』という企画に決まったのはどのような経緯だったのでしょうか。

みるく:今村さんたちにいろいろな技術を見せていただいて、何度もミーティングをしていくうちにこの企画に固まっていったのですが、きっかけは、10年前にL'Arc~en~Cielの20周年を記念して横須賀美術館で開催された大規模展覧会(「L’Arc~en~Ciel 20th L’Anniversary EXHIBITION」)でした。

周年ごとに歴史をまとめるのは骨の折れる作業ではありますが、ファンにとっても、アーティストにとってもアーカイブとして大切なことだと思うんですね。その上で、L'Arc~en~Cielは常に挑戦的で、これまでにも新しいものを積極的に採り入れてきたように感じていて。20周年のときにはリアルな美術館でやっていた展覧会を、30周年ではコロナ禍という状況であるからこそ、最新のテクノロジーを使って違う形で再現できたら、L'Arc~en~Cielの方向性にもマッチするのではないかと考えたんです。

『L'Arc~en~Ciel 30th L'Anniversary VR Museum』

今村:みるくさんたちから「何かできませんか?」という相談をもらい、僕ら「Project Lindbergh」のメンバーでも「L'Arc~en~Cielの30周年企画で何ができるか?」という話になって、まずはチーム内で企画を募ってみたんです。

すると、多くのメンバーからそれぞれの持っている技術で「あれもできます!」「これもできます!」と企画のプレゼン大会になりました。

そんななかで我々がまず考えたのは、仮想空間上でファンの方々が集う“場”があれば、例えば追加でライヴ空間を作って新しい形のライヴができたり、あとからソニーの技術を使った新しい取り組みも入れていくことができるのではないかということでした。

それで、まずは“場”を作ることに注力してみたんです。それが過去に作ったプロトタイプと繋がったり、コロナ禍だからこそ仮想空間を作るといった文脈にも合ってきたので、最終的に今の形に落ち着きました。

幅広いファン層を意識したユーザビリティ

――では『VR Museum』の企画が決まってからは、どのように進めていかれたのでしょうか。

今村:L'Arc~en~Cielのアーカイブは過去30年分と膨大な量になりますが、それを単純にWebブラウザで見せるだけでは面白くない。“ミュージアム”というコンセプトにどうやって落とし込むかが重要で、この点についてはいろいろと工夫をしました。

例えば写真をタップすればGIF動画が動き出すとか、歌詞がビジュアライズされる、アルバムのジャケットをタップすれば音楽が再生されるなどといった仕掛けですね。素晴らしいアーカイブを、さまざまな遊び心を持って魅せる形に実装していきました。

――そういった『VR Museum』アプリならではの面白さのなかには、これまで「Project Lindbergh」が培ってきた知見や技術がどのように注ぎ込まれているのでしょうか。

今村:むしろこれまでとは文法が違うと言いますか、作り方がだいぶ違うなと思いましたね。これまで「Project Lindbergh」が手がけてきたコンテンツのなかにもスマートフォンに対応したものはありましたが、基本的にはヘッドセットを装着して見る体験というものでした。

でも今回は、スマートフォン専用アプリとしての展開で、新しい手法が入ってきます。我々がVRで大事にしている没入感や実在感とは異なる部分にも気を配らなければ、スマートフォン専用アプリの面白さが出せないのではないかと試行錯誤しました。ただ、ユーザーの間口を広げるという意味でもやらなくてはいけない、必要なチャレンジだったと考えています。

みるく:スマートフォン専用アプリにしたのは、私たちレーベル側からの強い要望で、今村さんたちはそれに応えてくださいました。いろいろな技術を見せていただくなかで、たしかにヘッドセットを装着したら、もっと没入感のある素晴らしい体験ができるとは感じました。

でも、L'Arc~en~Cielは歴史を積み重ねてきた分だけファン層も幅広く、ガジェットに慣れていない方もいらっしゃると思ったので、どの対象に照準を当てるかというところはすごく悩んで。最終的には、より多くのファンの方に楽しんでいただきたいというのを最優先に、「今回はスマートフォンのなかで完結できるものにしたいです」とお願いしました。

――スマートフォン専用のVRコンテンツを制作するという新たなチャレンジのなかで、「Project Lindbergh」の皆さんは、具体的にはどんなところを意識しながら制作をされていたのでしょうか。

今村:ヘッドセットを装着するタイプのものだと、多くの場合、コントローラーなどを持って操作することになりますが、スマートフォンの場合は画面がインターフェイスになるので、最適な操作方法を見付け出すのに、いろいろと学びや苦労がありました。

例えば、『VR Museum』内の移動に関してはけっこう議論をした部分で。今はスマートフォンの画面をダブルタップすると展示物がベストポジションで見られる位置に自動で移動するようになっているのですが、もともとは3D空間を自由に動けるようにしていたんです。ただ、そうすると操作に慣れない人が自分の見たい位置にうまくたどり着けなくてストレスになってしまう可能性があるので、これは止めようと。

みるく:最初はGoogleのストリートビューみたいな感じでしたよね。私はそれも気に入っていたのですが、周りのさまざまな年齢層の人にアプリを触ってもらっても、その操作をうまくできる人が少なくて。最終的には使いやすさを重視して、現在のものにしていただきました。

望月:最新テクノロジーを使ったオンラインコンテンツやリアルライヴに代わるようなエンタメが今たくさん提案されていますが、テクノロジーだけが先行してしまうと瞬間的なインパクトだけが注目されて終わってしまうことがあります。

このアプリの開発と運営を通して、テクノロジーのすごさが、ちゃんとファンの方々にエンタメとして届いていることが、いかに重要であるかということを改めて感じました。


古橋:そういったユーザビリティの面で言うと、今回のアプリには“ノーマル”“AR”“VR”という3つのモードがあるのですが、その名称も議論しました。

“ARモード”も最初は“6DOF(シックスドフ)モード”という名称で、これは「自由に移動できるよ」という意味なのですが、「専門的すぎてその呼び方ではピンとこないよね」というご意見をおふたりからいただいて。じゃあ、どういう呼び方ならユーザーの皆さんが直感的にタップしてみようと感じられるのかをチームで話し合って、最終的に「ARモード」という呼び方に落ち着きました。

今村:話に出た“ARモード”は、まさに“スマートフォンならではの面白さ”という部分で試していたもので、“自分の部屋がミュージアムになったように、歩きながら見て回れる”というのをテーマにして採り入れたものです。

逆に、L’Arc~en~Cielのニューシングル「ミライ」「FOREVER」完全生産限定盤※の購入者が見られる、『VR Museum』の限定エリアのひとつの“6面シアター”では、簡単に組み立てられる箱にスマートフォンをはめて“VRモード”を楽しむ「ハコスコ」というものを使用することで、没入感高くコンテンツを見ることもできます。

『VR Museum』では、単に3D空間を移動するだけでも、VRだけではない、スマートフォンのいろいろな機能を使って楽しむことができるコンテンツをご提案しています。

※「ミライ」の完全生産限定盤購入者は「虹」の6面シアターが見られるようになり、「FOREVER」の完全生産限定盤購入者は「Driver's High」の6面シアターが見られるようになる。

後編につづく

文・取材:髙橋裕美
撮影:冨田 望

最新情報

L’Arc~en~Ciel
「ミライ」
2021年8月25日(水)発売

 

 
■通常盤:880円
<CD>
1.ミライ
2.ミライ (hydeless version)
 
 

 
■初回盤A(CD+BD):2,200円
<CD>
1.ミライ
2.ミライ (hydeless version)
 
<BD>
ミライ -Music Clip-
The Making of "ミライ -Music Clip-" version A
 
 

 
■初回盤B(CD+BD):2,200円
<CD>
1.ミライ
2.ミライ (hydeless version)
 
<BD>
ミライ -Music Clip-
The Making of "ミライ -Music Clip-" version B
「BLUE PROTOCOL(ブループロトコル)」オープニングアニメーション
 
 

 
■完全生産限定盤(CD+ハコスコ+VR Museum QRコード):4,200円
<CD>
1.ミライ
2.ミライ (hydeless version)
 
<ハコスコ>
「ミライ」オリジナルハコスコ
 
<VR Museum>
L'Arc~en~Ciel 30th L'Anniversary VR Museum
スペシャルコンテンツが楽しめるQRコード
・Music Clipシアター
・6面シアターで「虹」の鑑賞が可能
 

 
 
L'Arc~en~Ciel
「FOREVER」
2021年9月29日(水)発売
予約はこちら(新しいタブで開く)
 

 
■通常盤(CD):990円
<CD>
1.FOREVER
2.FOREVER (hydeless version)
3.FOREVER (Anime Edit)
 

 
■完全生産限定盤(CD+ハコスコ):4,300円
<CD>
1.FOREVER
2.FOREVER (hydeless version)
3.FOREVER (Anime Edit)
 
<ハコスコ>
「FOREVER」オリジナルハコスコ
 
<VR Museum>
L'Arc~en~Ciel 30th L'Anniversary VR Museum
スペシャルコンテンツが楽しめるQRコード
・楽器展示
・6面シアターで「Driver's High」の鑑賞が可能

 

 
■LE-CIEL限定盤(CD+GOODS):3,740円
<CD>
1.FOREVER
2.FOREVER (hydeless version)
3.FOREVER (Anime Edit)
 
<GOODS>
SCHEDULE BOOK 2022
[2022年スケジュール帳]
A5サイズ変形(152mm×204mm)
全96ページ 2022年1月始まり
 
※ファンクラブ限定グッズとして毎年大好評のスケジュール帳が登場、FOREVERのジャケ写仕様のスペシャルなデザインです。
 
 
【『L'Arc~en~Ciel 30th L'Anniversary VR Museum』概要】
タイトル:L'Arc~en~Ciel 30th L'Anniversary VR Museum
プレイ人数:1人
対応ハード:iOS / Android
配信日:2021年8月25日

関連サイト

■オフィシャルファンクラブ
L’Arc~en~Ciel Official Fan Club LE-CIEL
www.LE-CIEL.com(新しいタブで開く)
 
L’Arc~en~Ciel Digital Fan Club LE-CIEL
www.DIGITAL-LECIEL.com(新しいタブで開く)
 
■オフィシャルリンク
www.LArcom.net(新しいタブで開く)
www.LArc-en-Ciel.com(新しいタブで開く)
https://youtu.be/UBEoZ-eTa-o(新しいタブで開く)

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